※本商品は「ファナティックブラッド」の本編とは異なるアナザーノベルであり、「ファナティックブラッド」ならびに他ゲームコンテンツでプレイングやキャラクター設定の参照元にすることはできませんのでご注意ください。
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君と、星を見上げた日
夕日が、海に飲み込まれるように沈んでいく。
赤い光を一身に浴びて、カレンデュラは波打ち際で、素足を波に浸していた。
Gacruxは少し離れたところから彼女を眺めていた。
彼女はいつもそうだった。歪虚の体を抱えていても、消滅することを知っていても、無邪気に、悲しみなんて欠片も見せないで、笑っていた。
海に夕日が沈むから、カレンデュラの姿は逆光になってよく見えなかった。
でも、目を逸らしてはいけない気がした。
すると、Gacruxの視線に気付いたのか、カレンデュラが動きを止めた。
「Gacruxくん」
カレンデュラが呼びかける。逆光で表情はわからない。
けれど、きっとカレンデュラなら笑っているのだろう。Gacruxにはそんな確信があった。
──そんな彼女だからこそ、
──俺は……。
「今日は楽しかったね」
カレンデュラが言う。それは喜びに彩られた言葉だった。
「デートができるなんて、夢にも思わなかったよ」
「……カレンデュラが楽しかったのなら、なによりですよ」
「Gacruxくんは? 楽しかった?」
カレンデュラが問いかける。
「俺は……俺は、カレンデュラの笑顔が見られた、それで充分です」
「そうなの?」
それから、少し間を置いて、カレンデュラは言葉を紡ぐ。
「ありがとう、あたしのことを考えてくれて」
言葉を言い終わると、俄かに、カレンデュラはGacruxの背後を指差した。
「見て、Gacruxくん! 星が見えるよ!」
Gacruxもカレンデュラの示す方へ振り返る。そこには一番星が紫色の空に煌々と輝いていた。
「綺麗だね。……もしかするとあの星は昔あたしたちが見ていたのと同じものかも知れないんだよね」
懐かしそうにカレンデュラが言う。
「この先の人間も、あの星を見て…………」
不意に、言葉が途切れた。
「カレンデュラ?」
Gacruxが不審に思いカレンデュラに向き直る。
しかし、そこには彼女の姿はどこにもなかった。
夕日もとっくに水平線の向こうへ沈み、空は夜に満ち始めていた。一番星の光だけが儚く地上に届いている。
Gacruxは改めて、カレンデュラのいた世界を見渡し──静かに瞳を閉じた。
一陣の風が吹き抜ける。
次に目を開けた時には全てが終わっているだろう。
だから──思い出を綴じ込めるように、目を瞑るのだった。
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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【ka2726 / Gacrux / 男 / 25 / 闘狩人】
【kz0262 / カレンデュラ / 女 / 17 / 仇花の騎士】
ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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全ては束の間の夢
けれど、彼女の笑顔は本当だった
あの星のきらめきは、まぶたの裏でなお輝いている
──さあ、目を開こう
それでも続いた世界が待っている