※本商品は「ファナティックブラッド」の本編とは異なるアナザーノベルであり、「ファナティックブラッド」ならびに他ゲームコンテンツでプレイングやキャラクター設定の参照元にすることはできませんのでご注意ください。
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『置き忘れたもの、満たされるもの』
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彼と私が似ていることは、常々感じていたことだった。
護りたい、と願う私と同じように願い、同じように、護れなかったことに苦しむ彼。
本当に、よく似ていたのだ、私たちは。ときに、周囲の人びとを時に翻弄してしまうところまで。
だからこそ私は、彼を認めてあげたかった。葛藤に見合うだけ頑張って、傷ついていることを――それでも前を向いていることを、認めたかった。
同じことに苦しむ私には、答えを出すことはできなかったけれど、せめて、それだけはと。
あの日。
はらはらと涙を流す栗色の髪の毛の少年を見たとき――私は自然と、納得していた。はじめは驚いたけれど、その涙の理由は、思い当たるところがあった。
けれど、違っていたのかもしれない。
彼は最後に、こう言った。
『……貴女自身のことも、認めてあげてください。たとえその強さが虚構でも、虚勢でも』
あの言葉が、胸に刺さっていた。
―・―
“周りからの評価は、関係ない。”
他ならぬ、私自身が告げた言葉だった。
どう評価されようが、不安で、自信なんて持ち得ない。十分だと、思えない。彼自身がそうだったように、私もまた、同じことで足を止めている。
周りに強く見せているのは――虚勢を張っているのは、不安を抱かせないためだ。私のために、心労を抱いてほしくないからだ。
いつからか、こうだった。
心配をかけないために、自然に振る舞っていた。不安は表にださないことに慣れきっていた。他人の評価には満たされないくせに、他人の視線は、気にしている。
遠慮を、している。
そのことを、まっすぐに射抜かれた心地がした。
いつから、こうなのかな。
自問する。
“彼”が、死んだときか。
――ちがう。
ハンターになったときか。
――ちがう。
村を、出たときか。
――ちがう。
もっと、前からだろう。私が、柏木 千春として生きはじめたときには、私はもう、こういう生き方をしていたと思う。
その生き方が、間違いだとは思わない。
けれど、私が彼を肯定したとき、彼は涙を流した。
その彼が、懇願したのだ。彼も私を尊敬していると。自分で、自分を、認めてほしいと。
ほう、と。息をつく。手元には、彼からの感謝の手紙があった。学友に勝利したという報せを添えて。
道を定め、進むと決めたのだろう。
「…………頑張ろう」
彼に掛けた言葉は、私自身への、戒めでもある。
だから。
いつか――。
いつか、この不安から解放されるように。
そしていつか、自分を認められるように。
今は、進もう。
登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【 ka3061 / 柏木 千春 / 女性 / 17 / 進むは意思と光芒と共に】
ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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お世話になっております。ムジカ・トラスです。
おまけノベル、納品させていただきました。過去のシナリオの、補完的なお話になります。
自己肯定、というのは非常に難しい話ではあるのですが、千春ちゃんはその過去もあって非常に難度が高いことなのだろうなあ、と感じる次第です。それでもネガティブに陥るわけではなく、黙々とやるべきことをやる彼女ですから、周りの方々も惹きつけられるのでしょうね!
頑張っても、心が折れても、色々な形で物語が進む予感がするのは、きっと丁寧に動かしていらっしゃるからだろうなあ、と常々思います。
以上になります。この度はご発注ありがとうございました!