※本商品は「ファナティックブラッド」の本編とは異なるアナザーノベルであり、「ファナティックブラッド」ならびに他ゲームコンテンツでプレイングやキャラクター設定の参照元にすることはできませんのでご注意ください。
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鼓動 ver.シグルド
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私はぼんやりと意識が浮上したのを感じた。
高瀬 未悠(ka3199)の声に、シグルド(kz0074)という個は形を取り戻す。
看護師と何やら話している、その表情は安堵と不安に彩られている。
呼び止めようかと思ったが、未悠は看護師と話しながらそのまま部屋を出て行ってしまった。
荷物は置いたまま、ということは間もなく帰ってくるだろうと踏んで、このまま待つ事にする。
暫くすると洗面器を抱えた未悠が入ってきた。
「顔を拭くわよ、シグルド。ちょっと冷たいかも知れないけど、我慢してね」
水を含ませたタオルはひんやりとしていて気持ちが良い。
「……相変わらずポーカーフェイスね。我慢しなくて良いのに」
――狸寝入りがばれたのだろうかと思ったが、そうでは無いらしい。
「声、聴きたいな……ねぇ、私を、見て……?」
「わがままかな……」
未悠は優しすぎるぐらいのソフトタッチで肌に触れていく。
……いやいやいけない。余計な事を考えてはいけない。無にならなければ。鎮まれ、鎮まれ。
布団が上半身まで捲られ、首を、鎖骨を拭いていく。
……ヤバイ。この流れはもしかして全身を拭くつもりだったりするのだろうか? それはいけない。
目覚めるきっかけをどうにかして作らねばと考えていたその時。
「離れたくない。あなたを感じていたい」
「死ぬのが怖い。あなたに会えなくなってしまうから。あなたを独りにしてしまうから」
「それでも行かなくちゃ。あなたが願う変わらぬ明日を守る為に」
そっと胸に当てられた横顔。
暖かなものが胸に落ちる。
……そうか、未悠。君は行くんだね。
「それでこそ、未悠だ」
しまった。うっかり言葉を発してしまった。
未悠の動揺が伝わってくる。
「シグルド……?」
「まだ陽も高いうちから寝込みを襲われるとは思わなかった」
「……!?」
派手な音を立てながら跳ぶようにして距離を取った未悠は本当に猫のようで。
あぁ、ほら、顔が茹でタコのようだ。
本当は、あの日、あんな風に想いを伝えるつもりは無かった。
だが、そうだな。未悠のこんな表情を見られたのだから、告げて良かったのかも知れない。
「武運を」
そう告げて額に口づければ、照れ顔の奥に物足りなさそうな表情を見せる。
……本当に、正直な子だ。
「無事、帰ってきたら」
そう言って未悠の唇を掠めた親指に唇を当てて微笑んでみせれば、今度こそ本当に顔から火が出るんじゃ無いかと思うほど未悠は真っ赤になって。
愛おしいと、心から感じた。
━あとがき━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・
この度はご依頼いただき、ありがとうございます。葉槻です。
何を隠そう、初めて「おまけ」ノベルを書かせて頂きました。貴重な体験を有り難うございます。
そして……妄想炸裂した結果がコレです。……あとで閣下に怒られない程度には抑えたつもりですが(←)
一応、彼も普通に年並みの男の子の筈ですし、こんな面もあったらなーとかとか。
かつ、恋人には意地悪しつつもめっちゃめっちゃ甘やかすタイプだったらいいなぁという私の妄想と願望の結果、このおまけは捏造されました。
「こんなん違うやい!」と思われましたら本当にゴメンナサイ。
どうか、少しでも楽しんで頂けたなら幸いです。
この度は、ステキなご縁を有り難うございました!