※本商品は「ファナティックブラッド」の本編とは異なるアナザーノベルであり、「ファナティックブラッド」ならびに他ゲームコンテンツでプレイングやキャラクター設定の参照元にすることはできませんのでご注意ください。
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そしてまた……
何処かの世界の、何処とも知れない場所にある、何処にでもある人里に、何処にでもいるような少年が一人いた。
ちっぽけで偉大な、ありとあらゆる世界を見渡しても、たった一人しかいない少年が。
少年はある時、一人の男と出会う。
それは、見る限りにおいては、壮年半ば程の男だった。だがその男の纏う気配は、もう幾年の年月(としつき)を過ごしているように感じられた。たとえば、青い葉を付けながらも、幾層にも輪を重ねた杉の木のように。
男は、その腰に飾り気のないガンベルトを巻き、無骨なリボルバーをホルスターに差していた。
少年が男に声を掛けようとしたのは、その日の晩。月のない夜の事だった。
「──おめェさん、俺に用でもあるのかィ」
焚き火の傍で銃の手入れをしていた男は、近付いて来た少年よりも先に口を開く。男は解体した銃を繋ぎ終えてから、おもむろに少年へ顔を向けた。
男の目許を覆う黒水晶のレンズに、少年の顔が映り込んだ。その表情は緊張に強張っていたが、彼の瞳は、はっきりと男を見ていた。あるいは、もっと別の何かを見据えていた。
その瞬間、男が表情を変えた。
まるで、突然目の前に古い鏡が現れたかのような、驚きと懐かしさが入り混じった表情だった。そこには、ちょっとした居心地の悪さも含まれているようだったが、しかし男はやがて口許に微笑を浮かべながら言った。
「──坊主、銃を見るのは初めてか」
男の問いに、少年はかぶりを振った。
「おいらの父ちゃんは猟師だから、鉄砲は知ってらァ」
少年は、男が手に握るリボルバーを惹かれるように見ながら言った。
「そうかィ。じゃァ、おめェさん、なんでまたこの銃に惹かれたんでェ。話によっちゃァこの銃、くれてやってもイイ」
「くれんのか! ……でも、なんでだィ」
男の申し出に、少年はまず眼を輝かせたが、やがて訝しむような表情を浮かべる。
「まァ、まずは聞かせてみな」
その反応に苦笑しながら、男は言った。
やがて少年は語り始める。小さな胸に秘めた、大きな野望を。最初は小さかった声が、言葉を重ねる内に大きくなってゆく。
その声に耳を傾けながら、男は手許に納まるリボルバーの銃把を撫ぜた。
そして、少年が息を上げながら語り終えると、男はゆっくりと口を開く。
「──この銃は、俺の銃じゃねェ」
とうとうこの時が来たかと、安堵と達成感と、一抹の侘しさを感じながら。
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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【ka3351/J・D/男/26/猟撃士】
ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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こちらは、本編ノベルの続きと言いますか、その果てにあるかもしれない未来になっております。本編は回想としての雰囲気を重視して、少年の台詞を無個性にして地の文に組み込んだので、別人ではありますが口調設定を受け継がせてみました。かつて在りし日の自分との対面というシチュとして相応しいかなという思惑もありますが。
手前味噌ですが、最後の一文が気に入っています。