※本商品は「ファナティックブラッド」の本編とは異なるアナザーノベルであり、「ファナティックブラッド」ならびに他ゲームコンテンツでプレイングやキャラクター設定の参照元にすることはできませんのでご注意ください。
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まどろむ精霊
私がいつからこうしているのか覚えていない。
そもそも私という存在がいったい何なのか、それもわからない。
私はこの星に生まれてからずっと、深く深く眠っていた。――のだと思う。
とにかくある日、私は『私』として独立した存在になった。
我々とは全く違う、やや高い温度を発するあまり硬くはなさそうな存在が、我々の仲間らしき何かをいきなり叩きつけてきたのだ。
それで『私』は小さな『私』として切り離され、小さな『私』にできた真新しい断面は、今まで知らなかった大気に触れた。
不思議な感覚だった。私の断面は、もう二度と大きな存在に同化することはないのだ。
私は元いた場所を離れて、硬くはないが自由に動き回る存在の傍に置かれることになる。
そこには私と似た連中がいて、動き回る『生物』という存在について教わった。
私はそこでまた眠っていた。
以前よりは浅い、以前と変わりない眠りの時間が流れて行った。
そんな私が、少しだけ『目覚めた』ことがある。
目覚めという感覚を知ったのはその時だ。
生物が別の生物を連れてきて、私と、ほかのいくつかの同類を傍に置いた。
――ああ、この生物は、もうすぐ存在を終えるのだな。
触れた時に、なぜかそう思ったことを覚えている。
だがそうではなかった。
私の中にあった私の知らないものが弱った生物に流れ込む感覚。
私はそれによって『目覚めた』。
しばらくして、弱っていた存在は強くなった。
『我々の中にはそういう力があるらしい』
同類が教えてくれたが、私には良くわからなかった。
だが不思議なことに、あの温度が失われずに済んだことは良かったと思った。
そして私はまた眠りについた。
だがまたいつか、誰かの求めによって目覚めることもあるかもしれない。
私はまどろみながら、その日を待っている。
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ノワ様
おまけノベルのご依頼、誠に有難うございます!
何を書けばいいのか迷ったのですが、WTシングルノベルのタイトルをつけた理由の補完も兼ねて、このような感じになりました。
昔、とある宝石店のコマーシャルで「その宝石は貴方とめぐり合うのを何十億年も待っていた」のようなコピーがあった覚えがあります。
鉱石の持つ力というノワ様の設定から、なんとなくそれを思い出しました。
……話がそれました。
これからも元気いっぱい、前進し続けるノワ様の活躍を楽しみにしております!
樹シロカ