※本商品は「ファナティックブラッド」の本編とは異なるアナザーノベルであり、「ファナティックブラッド」ならびに他ゲームコンテンツでプレイングやキャラクター設定の参照元にすることはできませんのでご注意ください。
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デザートは愛の証
約五〇Kg。それだけの重量を一度に喰らうのは無理だったので。
丁寧に丁寧に切り分けて、大事に大事に保存していた。
今日もまた冷蔵庫を開ける。哀しさと愛おしさと逸る想いと共に。初デートの時のように心をドキドキさせながら。「おはよう」「こんにちは」「こんばんは」挨拶の言葉と挨拶のキスも忘れずに。
今日も。今日も。今日も。
そして。
最後に残ったのは指輪が輝く細い一本だった。
飴餅 真朱也(ka3863)はそれをケーキにした。
彼女はケーキが好きだった。
チョコレートケーキが好きだった。
真朱也が作るチョコレートケーキを世界で一番好きだと言ってくれた。
「ああ、あなたのケーキに溺れてしまえたらいいのに」
そんな言葉を思い出した。笑いながら彼女が言っていた。大きな大きなチョコレートケーキ。イチゴを添えて、クリームで飾って。キラキラ、宝石のようなアラザンをまぶして。
塔のように大きな立派な、そして細工のように美しいチョコレートケーキ。
その天辺に、真朱也は彼女をそっと『埋葬』した。
食前のお祈り。
喪服のように黒いケーキ。
死が二人を別つまで。婚約の言葉を思い出した。
死が二人を別つまで? いいや、彼女はいる。ここにいる。いなくなったけど、ここにいる。真朱也は己の腹をさすった。寂しさを紛らわせる自己暗示のように。
手を合わせた。祈りの姿に良く似ている。
「いただきます」
ナイフを手に。
切り分ける。
恭しくお皿に盛った。
それをそっとフォークで刺して。
大きな大きなひとかけら。
彼女が眠るひとかけら。
開く限りの口を開けた。
――……甘くて甘くて美味しかった。
頬から涙が伝っていく。
無言のまま、愛の証を喰らってゆく。
さようなら。さようなら。
愛してる。
「ごちそうさまでした」
『了』
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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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飴餅 真朱也(ka3863)/男/23歳/聖導士