※本商品は「ファナティックブラッド」の本編とは異なるアナザーノベルであり、「ファナティックブラッド」ならびに他ゲームコンテンツでプレイングやキャラクター設定の参照元にすることはできませんのでご注意ください。
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生きてたら、よかったのに。
その出会いは偶然であり、衝撃的であった。
決して、望まれた出会いではない。
できれば、出会いたくはなかった。
だが、出会ってしまったのなら、やらなければならない。
それがミコト=S=レグルス(ka3953)に課せられた――試練なのだろうから。
「……はぁはぁ」
石造りの壁に囲まれた部屋で、ミコトは肩で息をしている。
既に体は疲労困憊。限界が近い事も自分で分かっている。
だが、止まる訳にはいかない。
連れ掠われた強化人間の子供達を救うまでは。
「この映像を見ているという事は、貴公は二体目の実験体を倒したのですね」
「コーリアス……っ!」
ミコトのいる部屋の上部に取り付けられたモニターには、コーリアス(kz0245)の姿が映し出されていた。
錬金の到達者。
ミコトの記憶では自殺に等しい状況でハンターに殺されたはずだ。
「映像でなかったら、叩っ切ってやるのに」
ミコトは灼滅剣「イシュカルド」を強く握り締める。
イギリスのエディンバラにある強化人間研究施設『アスガルド』より強化人間の子供が誘拐されたという情報を聞きつけたミコト。早々に捜索を開始し、サンピエトロ大聖堂にある隠された通路の奥に子供がいると分かった。
そこまでは良かったが、通路に入った瞬間、ミコトの退路は断たれてしまったのだ。
「貴公の活躍をこの目で見られないのが残念だ。この映像を見ている頃には、きっと僕はこの世にいないから」
自虐的な言葉と裏腹に、コーリアスは笑みを浮かべている。
この罠はおそらくコーリアスが倒された後に発動する仕掛けだったのだろう。強化人間を誘拐したのも、ハンターをここへ誘き寄せる為だ。
「あなたのやり方は気に入らない。人を誘い込んでゲームを仕掛けて楽しんでる。巻き込まれた子は道具じゃないんだよ」
ここへ来るまでミコトはたった一人で戦い続けてきた。
コーリアスの準備していた実験体やオートマタと連戦。体に複数の傷を受けているが、自己治癒が追いつかない。
それでも、ミコトは前へ歩み続ける。
「次。次の相手を出しなさいよ。うちはまだまだ戦えるんだから」
映像のコーリアスを前にミコトは啖呵を切った。
いつ終わるか分からない戦いを強いられているが、今は誘拐された子を救わなければ。
「最後の戦いだ。倒せば、子供も貴公も自由だ。僕が約束しよう」
「!」
――最後の戦い。
コーリアスは、そう言った。
だが、ミコトは素直に喜べない。コーリアスの事だ。何か仕掛けがあると考えるべきだ。すべての物事をゲームと捉えるような相手。決して油断はできない。
「いいよ、来なよ」
ミコトはイシュガルドを構える。
白い壁が開き、最後の相手が現れる。
そこには――。
「子供!?」
ミコトの前に現れたのは、一人の少年。
捜索前に見せられた子供の写真が間違っていなければ、前に立つのは捜索していた子供に間違いない。
問題は、その子供の手に握られたレイピアだろうか。
「さぁ、最後の相手だ。存分に戦い給え」
「……やっぱり、あなたは最低だわ」
映像のコーリアスに対してミコトは吐き捨てるように呟いた。
掠った子供を操ってミコトと戦わせる。
倒せば二人は自由になる。だが、倒すには子供を犠牲にする他無い。
底意地の悪いやり方にミコトは苛立ちを隠せない。
怒りの炎を燃やすミコトだが、少年はそのような事情を考慮せずにレイピアを繰り出してきた。
「……!」
「その攻撃じゃ、当たらないよ。悪いけど」
少年のレイピアにタイミングを合わせてパリィグローブ「ディスターブ」で突きを弾く。
レイピアの切っ先は虚空へと向けられ、宙を泳ぐ。
その隙に一気にミコトは間合いを詰める。
(問題は、ここからだよね)
普段であれば、このままイシュガルドによる攻撃を叩き込めばいい。
だが、それは子供の命を奪う事に繋がる。
怪我もさせたくはないのだが――。
「えいっ!」
ミコトが突き出したのはイシュガルドの柄。
その柄が少年の鳩尾へと吸い込まれる。
一瞬呼吸ができなくなる少年。その隙を突いてミコトは少年の背後へと回り込む。
「……ごめんね」
少年の首に腕を滑り込ませるミコト。
そのまま頸動脈を締め上げて、一気に気絶させる。
暴れる少年であったが、強烈な締めを前に抗う事ができない。
数分後には少年の腕から力が抜ける。
「ふぅ。殺しはしなかったけど……」
「最後の一人も倒したのか。これは僕の負けだな」
再びモニターにコーリアスの姿が映し出される。
「約束だ。来た道の扉が空いているはずだ。少年を殺したかどうか。それは僕には分からない。でも、それはどうでも良い。少年と対峙して感じたかい? 自分が戦いの獣になっていく気分が。
貴公は、戦いなしでは生きていけなくなっているんじゃないか?」
こんな事を言うためにこんな仕掛けを――。
背後の扉が開く音を耳にしながら、ミコトはポツリと呟いた。
「あなたが生きていたら、良かったのに。
この手で倒したかったよ。今日の恨みを込めてね」
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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【ka3953/ミコト=S=レグルス/女性/16/霊闘士(ベルセルク)】
ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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近藤豊でございます。
この度はノベルの発注ありがとうございます。
映像ですが、コーリアスを描かせていただきました。もし、コーリアスがハンターへ罠を仕掛けていたら……。そんな事を考えてシーンを描いております。気に入っていただければ幸いです。ゲーム本編はまだまだ続きます。今後とも宜しくお願い致します。