※本商品は「ファナティックブラッド」の本編とは異なるアナザーノベルであり、「ファナティックブラッド」ならびに他ゲームコンテンツでプレイングやキャラクター設定の参照元にすることはできませんのでご注意ください。
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「んっ……んん。……はぁ、随分と懐かしい夢を見たな」
フェリル・L・サルバ(ka4516)は十五歳の頃の出来事を夢で見て、ベッドの中で重いため息を吐く。
ベッドから出て窓から外の様子を見てみると、朝日は昇ったばかり。まだ起きるには早い時間だ。
「……しかしすっかり眼が覚めた。同居人の二人を起こさないように、静かに朝食でも作るか」
二人はまだ眠っており、幸せそうな顔をしているところを見ると、良い夢を見ているんだろう。
「俺もここしばらくは、良い夢しか見なかったんだけどな。……たまに現れるんだよな、あの人」
女性を『母』と呼ばなくなって、数年が経過する。
今のフェリルはハンターと呼ばれる職に就き、奇妙な縁から同業者二人と同居をするようになった。
「あの頃の俺からは、全然想像がつかない人生を送っているな」
思わず笑みが浮かぶ。
しかしそれは自虐的なものではなく、今が満ち足りた幸せな日々を過ごしているからこそ浮かべられる笑みだ。
さまざまな出来事を経験して、いろいろな人と出会ったことで、自分が明らかに変わったことが分かる。しかも良き方向へ。
でもだからと言って、彼女と過ごした日々を後悔しているわけではなかった。
「まっ、多少反省はしているけどな」
罪深き人生を送ってきた自覚はある。
けれどその罪があったからこそ、今の自分があるとも言えた。
無駄だったとも忘れたいとも思わないのはきっと、今の自分が幸せだからだろう。
それに歪んでいても彼女に愛されていた記憶があるからこそ、フェリルも誰かを愛することができた。
「もっとも、俺の愛は純粋だけどな!」
ニヤッと笑いながら、テーブルの上に三人分の朝食を並べていく。その中で、スープは夢の中に出てきたものと同じだ。
「……子供の頃の思い出は、無意識のうちに表に出るものなんだな」
彼女が作ってくれたスープの味は、今でも優しい思い出として残っている。
そして眠れぬ夜は、ブランデー入りのホットミルクを飲むことも未だにあった。
成長した今でも時折昔の思い出がこうやって現れるということは、フェリルが完全に過去を受け入れて自分の一部にしている証拠でもある。
「さて、そろそろ起きる時間だな。二人を起こして、朝食を食べるか」
そしてフェリルにとって、いつもの朝がはじまった。