※本商品は「ファナティックブラッド」の本編とは異なるアナザーノベルであり、「ファナティックブラッド」ならびに他ゲームコンテンツでプレイングやキャラクター設定の参照元にすることはできませんのでご注意ください。
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ぴくにっく・でぇと♪
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――どうして、人生奪われてばっかりなんだろう……。
「ん……」
もぞ、と布団がうごめいた。
中のだれかさんはごろりと寝返り。横を向いて肩をうごめかしさらに掛け布団をひっかぶる。
まだ寝るつもりのようだが……。
「んん……フラさんは一人じゃないですよぅ」
そんな寝言とともにもぞもぞ。やがて布団の掛かり具合に満足いったのかうごめきはなくなり規則的な寝息に落ち着いた。
が、それは短かった。
「んんぅ!」
突然、跳ね起きる小さな姿。夢で何を見たのだろう、瞳を丸く見開き手を伸ばしている。
そしてここが寝室と分かり目をこしこしとこする。
「フラさん、しょんぼりしてました……」
弓月・小太(ka4679)の朝は、想いを寄せる少女、フラ・キャンディ(kz0121)の幻影とともに。目の当たりにした姿は小さく、打ちひしがれた後ろ姿。後味の悪い目覚め。
窓の隙間から差し込む日差しだけが明るかった。
カーテンを開けたときの清々しさは、なんと素晴らしかったことか――。
だから小太、最近元気のないフラをピクニックに誘った。
今度の週末。朝から待ち合わせて。
当日は快晴に恵まれた。
「その……待った?」
「ぼ、僕もいま来たところですよぅ」
ちら、とフラの表情をいかがうとやはりどこか笑顔に明るさが足りない。
「……」
おや。急にフラが両手で帽子のつばをつかんで下げて顔を隠してしまったぞ。
「あ、あれ、どうしました。フラさん?」
「その……ボク、冴えない顔、してるかなぁ」
「そ、そんなことないです。可愛いですよぅ」
つばの影からのぞいて聞くフラ。どうやらまじまじ見すぎたらしい。小太もフラの仕草にどきっとしていたり。
「きゃー、可愛いカップルさん♪」
「初々しいわよね~」
通り掛かる女性二人組がくすくすとこちらの様子を楽しんでいる。それに気付いた二人は見つめ合ったままぽんと赤くなる。
「い、行きましょう」
「うん」
小太、フラの手を取り逃れるように出発した。急ぐだけの足取りも、そのうち並んで軽快な足並みに変わっていった。
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初夏の山は風が涼しく、新緑が目にまぶしい。
二人は狭い山道を並んで歩き、大きな岩では小太が先行しフラに手を伸ばして乗り越えたり。東屋での小休止ではフラが小太の額の汗を拭いたりも。
「よかったです」
薄手の上着の袖まくりをしてもらっているとき、思わず小太がこぼした。
「え? 誘ってくれたこと?」
顔を上げて問い掛ける顔に、今朝方のもやもやした表情はない。いつものように、一生懸命でまっすぐで。
(もう、あの時のフラさんじゃないです)
小太の胸中によみがえる、いつかの依頼の時のフラ。
――人生、奪われてばかり……。
はっ、とひらめく。
「いい気分転換になりますよね……フラさんも袖まくりしましょう」
「あん。自分で……」
「手伝ってあげますよぅ」
何かをしてあげたかった。人生奪われるだけじゃないと感じてほしかった。
「あ、ありがと」
「さあ、頂上までもうひと頑張りですよぅ」
「うん……あっ、待って。いきなり走るのは卑怯だよう」
弾む心のまま走り出す小太。フラ、急いで追い掛ける。何かしてあげて、喜んで。じっとしていられないこの気持ち。そして走り出してもついてきてくれる。幸福感に包まれる小太。
楽しいひとときだが、故に大切な事を見落としていた。
のちのち酷い目に遭う事になる。
そして山頂に到着。
「うわぁ」
「すごいですねぇ」
ぐるりと広がる雄大な景色。
遠い山々に眼下の自然。鳥たちのさざめきは遠く、渡る風は汗ばむ肌に心地良い。
山頂付近を歩いて回るうち、そろそろお昼になった。
「お弁当といったらやっぱりおにぎりですよぉ。頑張って朝早く起きて作ってみましたぁ」
小太の広げたお弁当は、三角おにぎりに黄色い卵焼きなど。
「わー、面白い形だね~」
「ぼ、僕の地元風ですよぅ」
フラにとってはなじみが薄く、形や色合いに目を輝かす。
でもって、仲良く並んでおにぎりを両手に持って、ぱくっ。一緒の仕草で同時に食べたものだから、それがおかしくて一緒に笑ったり。
「お茶はボクが入れてあげるね」
「あ、ありがとうですよぅ」
「ん? お米粒がこんな所に……」
「はわ……」
楽しい時間はあっという間に過ぎ、やがて下山の頃合いに。
「そういえば、ほかに人がいないよね」
「い、言われてみれば……ピクニック日和なんですけどねぇ」
ゆったり下山している途中に気がついた。
そしてすぐに理由を思い知る。
―-ぽつ……。
「あれ? 急に曇って……」
「はわ!? あ、雨ですぅ!?」
――ぽつぽつ……ざあぁぁ!
本格的に降り出した!
「し、しかもなんですか、この土砂降りはぁ……」
「小太さん、途中にたしか山小屋、あったよね?」
「そ、そこまで急ぎましょう」
とはいえ先のまで見通せないほどの豪雨。むやみに走るのも危険で、安全に配慮しつつ急ぐのだった。
●
「お、お邪魔しますよぅ」
がらっと扉を開けて中をのぞく小太。誰もいない。
「うわ……川で泳いだようにずぶ濡れ~。すぐに脱いだ方がいいよね?」
続いて入ったフラは帽子も服も髪もびっしゃびしゃ。とにかく上着を脱ぐ。
「そ、そうですね。囲炉裏にも火を入れて……はわっ!?」
小太も続いて服を脱ごうとして、びくっ。
「え……?」
濡れた上着を脱いで絞ろうとしたフラの姿は裸ではなかったのだが、下着のキャミソールまでずぶ濡れ。肌にべったり張り付き透けていた。
「あ……」
気付いて身を抱くフラのしぐさに見惚れた小太、ぽんっと真っ赤に。
「と、とにかく火をつけますよぅ」
慌てて背を向けバックパックを確認する小太。
何とかマッチは濡れていない。大きく厚手のタオルでくるんでいたからだ。
「あ、これは使えますねぇ」
無事に火をつけた小太。大きなタオルも濡れていないことに気付いた。
「ボク、タオル首に掛けてたから……」
「そ、それじゃフラさんこれ使ってください」
「だ、だめだよぅ。小太さんのタオルがなくなっちゃう!」
「でも……」
「じゃ、じゃあ……」
というわけで、囲炉裏の傍に濡れた二人の服とフラのキャミソールや下着、そして小太のふんどしが仲良く並んでいる。
「早く乾くといいね」
「それと雨が止めば……」
小太とフラは囲炉裏の火を眺めつつ、一つの大きなタオルにくるまって並んで座っている。小太が右側で、フラが左。小さな二人なので何とかくるまることができている。
ただ、ぴとっと肩と腕がくっついている。
(フラさんの肌……すべすべですぅ)
肌越しに女の子の柔らかさを感じドキドキの小太。
「くしゅん!」
噂したわけではないがこの時、フラがくしゃみ。
「フラさん、寒いですか?」
「あ、ううん。大丈夫……小太さん、温かいから」
「そ、それなら……」
小太、意を決して腕を動かした。
触れていた肩から左手を外して伸ばし、さらにフラの横に身を寄せ……。
「あ、あの、こうすれば温かいですからぁ」
フラの反対側の肩に手を置いた。
左腕の内側全体と手の平、そして左半身をフラに密着させる形だ。女の子の肩の小さな様子や体の柔らかさなどが自分の肌に伝わる。
フラの肩を抱いた小太はもちろん、さらに真っ赤になっている。その温かさがフラに伝わる。
そしてフラは健気である。
「あ、待って。ボクの方が小さいから……」
何か思いついたようで、ごそごそ動く。
なお、無防備であるともいう。
その心に罪は全くない。
あくまで健気な思いやりからなのだ。
「こうした方がもっと温かいよ」
「ふ、フラさん?!」
見上げる笑顔。
さらに真っ赤になって目を回し気味の小太。
何とフラ、うんしょと体に角度をつけて自分の右腕を相撲でいうところの下手に回し、小太の右ウエストに手を掛けたのだ。
つまり、フラのふくよかな胸が小太の左の胸に横から微妙にむぎゅりと当たっているという形。もちろんタオルでくるまっているので大事なところは見えないが、むしろ見えない分触れ合う素肌と素肌の感触がより意識されてぷにっとした感じが……。
「ん……」
さらにフラ、むぎゅむぎゅと体を押し付けてくる。
(ど、どういうことでしょうかぁ……)
目を回しつつそんなことを思う小太だが、すぐに理解した。
「すぅ……」
フラ、寝息をたたえている。枕や布団を体になじませる身動きみたいなものだった。
「そ、そういうことですねぇ……」
ほっとする小太だが、ちゃんと聞いていた。
「……もう一人は嫌……」
寝息交じりの、そんな呟きを。
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そんな二人秘密のどきどき昼下がりはやがて終わりを告げる。
「あ!」
「ん……」
うとうとしていた小太がはっと気付き、フラがむにゃりと目を覚ました。
窓から日が差しているのだ。
それだけではない。
青空にうっすらと架かる色鮮やかな……。
「フラさん、綺麗な虹が出てますよぉ」
思わず立ち上がり、見てください、と振り返る。
そして気付くのだ。
「ひくっ……」
フラが真っ赤になってしゃっくりしているようにのけぞっているのを。
「……ふぇ?」
小太、自分の姿を確認する。
もちろん、肌で体を温め合っていたのでなにも着ていない。
で、フラはタオルにくるまって座ったまま。顔の高さはちょうど小太の腰くらいの高さで、そこに小太は思いっきり振り返ったわけだから……。
――ぱおーん。
もろに可愛い象さんが以下略で。今度はフラがふらふらと目を回し気味に。
固まる二人のそばでは、すっかり乾いた服が軽やかにふわりと揺れる。囲炉裏の火はすっかり消えていた。
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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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ka4679/弓月・小太/男/10/猟撃士
kz0121/フラ・キャンディ/女/11/疾影士
ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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弓月・小太 様
いつもお世話様になっております。
二人楽しくピクニック。
コンテンツの方ではちょうどフラちゃんが精神的に参っている時に気分転換に連れ出していただきました。フラちゃん、とても喜んでますよ。お気遣いいただきありがとうございます。
春のどさイベ大阪会場で購入と「内容はまだ考えてないけど」という報告をいただき、どんな発注分が来るんだろうと思ったら、とっても優しさと爽やかさにあふれる内容でした。……いまやすっかり様式美となったオチも一緒ですが(笑)。
そしてやっぱりこういうところで食べるお弁当はおにぎりですよね。
早起きして作ってくださいましてありがとうございます。私もすっかり美味しくいただいた気分でございます。
それでは、この度はありがとうございました♪