※本商品は「ファナティックブラッド」の本編とは異なるアナザーノベルであり、「ファナティックブラッド」ならびに他ゲームコンテンツでプレイングやキャラクター設定の参照元にすることはできませんのでご注意ください。
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おこたで一緒のお正月
「小太君、時間だよ。ご苦労様でした」
「長い時間頑張ってくれて本当に助かったわ~」
とある神社の社務所でそんな声が掛けられました。畳の間に足袋の擦れる音が入り乱れる、せわしいさなかのことです。
「いえ、お疲れ様ですよぉ」
神職衣装の弓月・小太(ka4679)がぺこりとお辞儀しました。
少し疲れたような表情をしているのは、昨晩の大みそかからほぼずっと働いていたから。お御籤や破魔矢などの販売は窓口を担当する巫女さんたちが頑張りましたが、ひっきりなしにお客様が来るので補充など裏方の仕事も大変でした。また、日の出前になると再び初詣客が増えました。先着で甘酒を振る舞ったのですが、その手伝いもしました。
仮眠の時間もほとんどなく、とにかく長時間の勤務。
さすがに少し疲れた様子で息をつきます。
ですけど、まだ昼前。
参詣者はむしろ多くなってますし、勤務交代した神社の人たちが忙しく働いています。
邪魔にならないよう、勤務中と間違えられないような衣装に着替えて社務所を後にしました。
ここまでくるとさすがに緊張もほぐれたような感じです。
小太、働いていた時には見せなかった、何か期待するような表情で周りを見ていますね。
「ええと……先に来てるって言ってましたし、どこかにいるはずですがぁ」
きょろ、と巡らせた視線。
やがて大きく見開かれます。
「あ、いましたぁ」
探していた女の子を見つけたようです。
一の鳥居のそばの石燈籠の向こうにたたずむ小さな姿。
それが、小太の視線に気付いて顔を上げて手を振ったのです。
「小太さん!」
「フラさん、こっちですよぉ」
手を振る小太の元に赤い晴れ着に身を包んだフラ・キャンディ(kz0121)が駆け寄ってきます。
「あ……ちょっと通して……ごめんなさぁい、通して……」
「ふ、フラさんっ」
人波に煽られふらつく姿を見た小太、慌てて駆け寄って手を差し伸べます。
「あ……良かった。小太さん、ありがとっ」
つんのめったりもしましたが、転倒することなく無事に小太の腕に収まりました。
はっと見上げる少女の瞳と、あっと改めて気付いた少年の瞳。
「フラさん、その……き、綺麗ですよぉ?」
「ホント? ありがと……小太さんも凛々しいよ……」
赤くなって少し視線をそらしてますね。
「そ、そうですよぉ……せっかくですからお参りと御籤をしていきましょぉ」
「う、うんっ」
でも、すでに拝殿には長蛇の列ができてますね。
その時でした。
「お? 小太君じゃない。ちょうどいい。神社で広告用の写真を取るからモデルになってよ。その代り、列に並ばなくてもいいから」
「え? ええっと……」
「お仕事? だったら頑張ってお手伝いするよ!」
実は小太さんの彼女さんかもしれないから撮ってみんなに見せようとかそんな魂胆のようですが、素直なフラさんは真に受けました。
「はいはい。神社の広報です。通してください……じゃお二人さん、ここで手を合わせて」
というわけで、列を待つことなく割り込んでお参り。ぱしゃり。
(はう……可愛いですぅ)
横目でしおらしく両手を合わすフラを見る小太。もちろん小太も和服で手を合わせる様子が堂に入って決まっています。
「今度はこっち。お御籤で撮るよ」
「わ。大ってついてるからこれっていい結果だよね?」
「……えーと、良くない籤は若木にくくって邪気を払ってもらうのがいいんですよぉ」
「えーっ! 大凶って良くないの?」
「代わりに僕の中吉をあげますよぉ」
「ホント?」
両手を上げてくくる小太に、その様子をキラキラ見上げるフラをぱしゃり。
そんなこんなで初詣をして小太の住処に移動。
「疲れたねっ。お腹も減っちゃった!」
「どうぞ上がってくださいですよぉ。……クリスマスはフラさんの手料理をごちそうになったので、お礼に今度は僕が作りましたよぉ」
「あっさりそう言っちゃうところがすごいよね」
なおこの時、小太は少しドキドキした様子でした。
フラ、これに気付いて少し控えめに言葉を掛けたのですが……。
(そ、そう言えばフラさんを住処に呼んだのは初めてですねぇ)
そっちにドキドキしていたのだったり。
「わ。神社のように畳敷きなんだねっ」
「料理を持ってきますからフラさんはおこたに入って待っててくださいねぇ」
で、重箱を手に小太が戻ると。
「あの、フラさん?」
「んん……わっ! えへへ……」
どうやら晴れ着で座布団に座るのに裾の自由が利かないので困っていた様子。ちょうど、ぐいっと緩めて足を広げるというはしたない格好をしていた時だったようで。
ともかく、二人がこたつの隅を挟んで扇状に座り、重箱を置きました。
ぱかっ、と開けると赤い海老のまわりに栗きんとんや昆布巻きなどが。もひとつ下の段をぱかっと開けると鰻巻き、寒天、黒豆、お煮しめなどが並んでいました。
「すごーい。お仕事だったんでしょ? いつ作ったの?」
「東方の正月料理はお節っていうんですよぉ。大みそかの日に作っておいて、三が日でゆっくり食べるんです」
「でも、こんなに種類たくさんでキラキラしてていろどりもきれいだし……魔法みたい!」
「東方に居た頃は一人で家族分作ってましたから……あ」
魔法じゃないですよぉ、と言い掛けて気付きました。
「何、小太さん」
聞いたフラに改めて向き直り、背筋を正し東方男児として凛々しい姿勢を取りました。
「あ、あけましておめでとうございますぅ。今年もよろしくお願いしますぅ」
「……あ! こ、こちらこそあけましておめでとうございますっ。今年もよろしくね」
かしこまった二人ですが、それは一瞬だけ。
すぐにくすっと笑い合ってこたつに入りリラックス。
「じゃ、いただきましょうかぁ」
「うんっ、いただきますっ。どこから食べてもいいの?」
「はいですよぉ。フラさんの好きなところから食べてください」
「じ、じゃあ食べ慣れてる栗から……わっ。あま~い」
「その……口に合うでしょうかぁ?」
「うんっ。とっても美味しいよ……こんなのがあるんだね~。わ、こっちのはふんわりしてるねっ」
「鰻巻きですよぉ」
「あ、うんしょ……ああん、失敗~」
「そういえばお箸ですからねぇ。そ、その……」
「え? うん。あーん……」
黒豆を箸でつまむのに失敗したフラさんに食べさせてあげたりも。
って、あれ?
果物の入った寒天?
お正月にそんなの……。
「あ、ウチの実家特有かもしれないですねぇ」
「あの、小太さん? いまだれと話したの?」
「独り言ですよぉ」
説明ありがとうございます。
そんなこんなで箸は進み……。
「お屠蘇?」
「縁起ものですからぁ」
お酒はほんのちょっとだけ。
「美味しいね。これも味がしみてて美味しいよ!」
「良かったですねぇ」
ほんのり頬を染めて重箱のいろんなところに箸を伸ばすフラ。それをマイペースに食べつつ観賞している小太。急須からお茶を入れて、フラも小太にあーんして食べさせてと楽しい時が流れます。
それはそれとして、結構動きが大きくなっています。
腰を浮かせて遠い所の重箱の隅を、ということもあるようですね。
小太はもちろん、最初から正座です。
おかげでこたつの中で足と足がぴとっと触れ合うとかはほぼなかったです。
フラは最初足を崩していたのですが、あれを取ってこれを取ってお茶を入れてあげて、とかしてると何度も腰を浮かせることに。
次第に小太の格好を横目で見て、正座をしていました。
「うーん、結構食べたけどまだずいぶんあるね」
「おせちは一回で食べきるものでもないですがぁ……ジルさんたちにも持って帰って食べてもらおうと思いましてぇ」
小太の思いやりにフラ、うれしくなりました。
「そうだねっ。それじゃこれとかこれとか……」
再び腰をあげようとした、その時でした!
「わ……きゃんっ!」
「ふ、フラさん?!」
どうやら足がしびれていたようで、中腰の体勢から横に倒れてしまいました。小太が気付いて支えようとしたのですが……。
――どしーん……。
「はわわっ」
「ご、ごめん~」
小太、見事フラに押し倒されました。
でもって、少しお酒が入っているのも影響しているようで。
「ん……あれ? うまく立ち上がれない……」
「ええとぉ……」
二人でもぞもぞ。
で、気付けば手と手を合わせ指を組み合ってました。
胸を合わせた体勢から起き上がり、顔の近いまま。
「少し横になってのんびりしましょうかぁ……」
「うん……大人しくしてた方がいいね」
ん、と力を抜いて小太の胸に顔をのせて力を抜くフラです。
(これが、フラさんの重みなんですねぇ)
どきどきしつつも、安心して身を預けてくれるフラに嬉しくなるのでした。
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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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ka4679/弓月・小太/男/10/猟撃士
kz0121/フラ・キャンディ/女/11/疾影士
ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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弓月・小太 様
いつもお世話様になっております。
小太さん、神社での元旦勤務、お疲れ様です。人がいっぱいで疲れたことでしょう。そんなお疲れの中、さい銭箱までの長~い行列を待ってもらうのは忍びないので特権を利用しました。……あとで「これが小太さんの恋人ですよ~」と広まったのは間違いありませんが(酷
お料理、せっかくなので重箱に入れました。こういう器の雰囲気もお正月らしいですし、フラちゃんに喜んでもらえるでしょうから。古い名家であれば重箱も格式の感じられる立派なのがあったりするものですが、こちらでは一人暮らしなのでそういうのは無しで。
最後になんかお約束が入っちゃいましたがまあ、畳敷きでこたつということで。ここでやらねばいつやる、な根性です。
それではご発注、ありがとうございました。