※本商品は「ファナティックブラッド」の本編とは異なるアナザーノベルであり、「ファナティックブラッド」ならびに他ゲームコンテンツでプレイングやキャラクター設定の参照元にすることはできませんのでご注意ください。
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フラさん、お花見にいきましょぉ~
「うわあ、すっごい!」
フラ・キャンディ(kz0121)さんが瞳を見開いて見上げました。
「今日はちょうどお花見日和ですねぇ」
隣には、弓月・小太(ka4679)さん。穏やかな陽だまりのような笑顔です。
その時でした。
――どんっ。
「わわっ」
「おっと。お嬢ちゃんすまねぇな……こりゃ一つ貸しを作っちまったな」
フラさんの背後からサングラスの怖そうなオジサンがぶつかってきたのです。上機嫌のようで絡んでくることはなくむしろ爽やかに謝っていますが。
でもって、その直後。
「その、天気も良くて花も満開で……はわっ」
気を取り直して小太さんがしゃべり始めた時でした。
――こん、ころころ……。
「すまねえ、そこの。拾ってくれ!」
遠くからの声に反応し振り返ると、慌てて近寄って来るこれまた怖そうなオニイサン。小太さんの足元を指差しています。
「ええと……これですかぁ?」
「おお、ありがとな。恩に着るぜ」
足元に転がって来た丸つば帽子を拾い上げて手渡すと駆け寄ってきたオニイサンにお礼を言われます。
今は春の花が満開の季節。
ここは、ソメイヨシノが満開に咲き誇った土手の桜並木。
満開のトンネルの下、たくさんの人が行き交っています。
小太さん、天気のいい日にフラを誘いお花見デートに来たのですが……。
「ママ―、こっちこっち~」
「きゃーっ、キレー。ここで二人で写真撮ろうよぅ」
後ろから家族連れが追い抜いたり前を歩いていたカップルが突然立ち止まったりしています。油断するとぶつかってしまいそうです。
あまりに人出が多くて、ちょっと窮屈ですよね。
「あ、あの、離れてしまわないように…そ、その、手を繋ぎましょうかぁ」
小太さん、もじもじと提案します。伏せた顔が少し赤いですね。
「うんっ」
「はう……その、温かいですよぅ」
フラさん、にっこり笑っていつものように手を引っ張って駆け出すように……あ、危ない!
「飛行機発進、ぶうう~ん……わあっ!」
おもちゃを手に駆け出した子供が、つないだ手に引っかかりましたよ?
「だ、大丈夫ですかぁ?」
慌てて心配する小太さん。子供は無事でぺこりと謝ると駆けて行きました。
「うーん、こうした方がいいかな?」
これに責任を感じたフラさん、小太さんの真横に寄ると左腕に抱き着きました。
「その……ダメ?」
「……うぅ」
問い掛けてくるつぶらな視線。
小太さんはしどろもどろですが、フラさんの方に一歩近寄りました。
フラさんもそれを合図に、安心して身を預けてくるのです。
(や、柔らかいですよぅ)
肩にフラさんの寄りかかる感触を受け止めながら満開の桜の下を散歩します。
「わー。さっきの子がおもちゃを持ってたわけだね~」
フラさん、土手の下に立ち並ぶ屋台を発見。食べ物に射的と多彩です。
「ち、ちょっと行ってみましょうかぁ」
周囲で花見をする人たちを分けて緩やかな傾斜の土手を下りて行きます。
「はい、フラさん。綿菓子ですよぅ」
小太さん、食べ物屋台で購入したふわふわの綿菓子を差し出します。
「あー……ん。……んん? んんぅ……」
「ふえっ?」
フラさんが何をしたかというと、ぱくっと差し出された綿菓子に食いついて引きちぎったのはいいのですが、それがとても大きくて口元から伸びていたから。今度は小さな顎を差し出してフラさんの方から「あーん」ですね。
「え、ええと……あー、ん」
「ん♪ んむんむんむ……」
ええと。何をしているかというと、小太さんが食いついて引きちぎろうとしたところで、フラさんがそうはさせじともぐもぐ食べ進みはじめたという感じです。
「んんぅ?」
小太さん、びくうっ!
(こ、このままだと……キスすることになるのでしょうかぁ)
真っ赤になりつつも、これはこれでいいのでしょうかぁ、とか思ったり。
その時でした!
「おおっ、何してくれるんや!」
どこかで騒ぎです。
思わずそちらを見る二人。綿菓子は真ん中で千切れてしまいました。
「す、すみません。酔った勢いで……」
「それで済む思ぅとんか、ええ?」
花見酒の宴会で酔っぱらってしまった一般人がつい勢い余ってサングラスの怖そうなオジサンにビールを掛けてしまったようです。
とっても険悪な様子ですよ?
「もぐもぐ……小太さん、あの人って……」
「さっきぶつかった人ですよぅ。行ってみましょう」
で、駆け寄る二人。
「待ってくださいですよぅ。お花見はみんな楽しく、ですぅ」
「濡れたのならボクが拭いてあげるよ」
「ああん? 何だ、さっきのお嬢ちゃんたちか……しゃあねぇ。この子らの顔を立てて今日のところはこれで勘弁しちゃらぁ」
割って入る小太さんにかいがいしくハンカチで拭くフラさんに心をほだされたオジサン、先の約束もあって引き下がってくれました。
「おおー」
この結果に周りに集まって成り行きを見守っていた人たちから拍手が沸き起こります。
「よっしゃ。お手柄の二人にはおっちゃんがおごっちゃる!」
「おにぎりもたくさんあるから食べてくださいねぇ」
「今の、良かったよ。これ、美味しいから食べてみな」
「よ! これは俺からだ」
たちまち二人に人だかりが。
甘酒を手渡したり重箱をよそってきたり焼き鳥の串を押し付けてきたり。
「お。何の騒ぎかと思ったらさっきのガキか。……花見すんのか? だったらこの敷物をくれてやるから使いな」
突然の声に土手の上を見ると、今度は丸つば帽子をかぶった怖そうなオニイサンがいました。
「これで貸し借りなしだぜ?」
「ボクが食べ物持ってるから小太さん、お願い」
「わ、分かりましたよぉ」
小太さん、荷物をフラさんに預けてオニイサンの方に走り出しました。フラさんは両手に焼き鳥串とか甘酒とか持って見送ります。
その時でした。
「危ない。そこにバナナの皮が……」
「ふぇ? ……ふわっ!」
周りからの声でむしろよそ見した小太さん、すってんころりん。
仰向けに倒れると、草の土手を滑ります。
そう。
フラさんの足元まで。
「いたたですよぉ……はわっ!」
「……え? えええーっ!」
テニスウエア風の白いミニスカート姿だったフラさん。両手がふさがっているのでスカートの裾を押さえたくてもできません。
だもので、腰からぺたんとしゃがもうとしたのですが、その時には小太さんの顔が真下に!
「も、桃色?」
――むぎゅ。
(も、桃のように柔らかいですぅ)
何がどうとかは、伏せます。
「その……フラさん?」
「ん? 何、小太さん」
「さっきはごめんなさいですよぉ」
「ううん。いいよ」
あれから楽しく飲み食いした二人。
甘酒がアルコール入りだったので小太さんがフラフラになったので、フラさんが膝枕しています。太腿の上に乗った小太さんの顔は真っ赤なのでした。
(フラさん、確か泣き上戸だったはずですけどぉ……大丈夫そうですね)
小太さん、安心しつはらりと落ちてきたサクラの花びらを見上げるのです。
フラさんの顔とともに。
「……まさか、見下ろすことになるとはですよぉ」
その日の終わり。
小太さんがフラさんを部屋まで送った時のことです。
「か、可愛い寝顔ですねぇ」
そう。
だから、仕方ないですよね。
――ちゅ☆
自分でフラさんの頬にお休みのキスをしたくせに全力で真っ赤になる小太さんなのでした。
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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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ka4679/弓月・小太/男/10/猟撃士
kz0121/フラ・キャンディ/女/11/疾影士
ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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弓月・小太 様
いつもお世話様になっております。
ギリギリまで遅くなって申し訳ございません。フラちゃんとのお花見デートのお話です。
舞台は、歩道の両脇に満開の桜並木で、まるでサクラのトンネルのようになっている名所。とっても綺麗なんですよ。
今回はあっさりとトラブル解決。桜が綺麗ですからケンカとかはあまり、ね。
フラちゃん、騒ぎを収めたお礼にと周りの人から奢ってもらったものは落としてないですよ。えらいですね。その分いつもな感じになっちゃいましたが。純白かシマシマか、桜なのでピンクがいいか迷ったのですが、腕を組んだ時に書いた「柔らかい」が頭に残っていたので、桃色で(何)。
それではご発注、ありがとうございました。