※本商品は「ファナティックブラッド」の本編とは異なるアナザーノベルであり、「ファナティックブラッド」ならびに他ゲームコンテンツでプレイングやキャラクター設定の参照元にすることはできませんのでご注意ください。
-
ディーナさんはご機嫌ナナメ
「んん……」
ディーナ・フェルミ(ka5843)さんが目を覚ました時、おおきなベッドに一人きりでした。うみゅ、と目をこすりスリッパを履いて寝室の扉を開くと、キッチンから良いにおいが漂ってきます。
そう。
朝食のにおいです。
「んんん……」
普段からそうですが、こういうのをキャッチするとディーナさんは魔法にかかったようにそちらに吸い寄せらせるのです。
「あ。おはよう、ディーナ」
旦那のイ寺鑑(kz0175)さんがおたまを持ったまま振り返ります。テーブルにはすでにご飯にお味噌汁などがそろっていますね。後はフライパンで焼いている目玉焼きを待つばかりです。
「うう……おはよなの」
「もうちょっとでできるから顔洗っておいで」
鑑さんにいわれるまま支度して、夫婦そろっていただきます。
そんな、いつもな感じの一日の始まりだったのですが……。
「鑑さん最近だらしがないの!」
突然ですがディーナさん、朝食後に青竜紅刃流門下生に稽古を付けに行こうとした鑑さんをそういって呼び止めるのです。がたっと椅子から立ち上がってばんっ、って机を両手でたたいて。
これを聞いた鑑さん。そういわれる心当たりがなく目をぱちくりさせてますね。
「ええと……じゃ、しっかり稽古をつけてくるよ」
前向きにとらえて出て行こうとします。
「違うの違うの~っ!!」
ディーナさんは、お顔ぶんぶん。
「え? 違うの?」
力いっぱいの否定を心配した鑑さん、玄関から戻ってきました。
「たくさん違うの。鑑さん、最近わたしのいうことちっとも聞いてくれないの」
「ちゃんと聞いてるよ。……それで、何か欲しいものでもあるの?」
「孤児院が欲しいの」
ディーナさん、小さな顎を上げて前のめりで主張します。
「保育園とか幼稚園とかそういうのじゃなくて」
「うーん、孤児院かぁ……。ちょっと高くつきそうだね。ほかのものにしてくれたらうれしいなぁ」
鑑さん、そういってはぐらかしますが……。
「道場の横に孤児院作るのもう決めたの! それでユニゾンからの追放者さんの受け入れも行うの!」
ふしゃーっ、と毛を逆立てた猫のような勢いになるディーナさん。
それだけではありません。
「姫ちゃんと太郎くんと次郎くんも中学生さんになったら王国の聖導士学校に行かせるの立派な聖堂戦士な道場主にするのー!」
どかーん、と感情爆発。顔を真っ赤にして思いっきり目をつぶって主張します。なお、この夫婦は一姫二太郎の子宝に恵まれているようですね。それでいてディーナさんは若くて可愛らしいという、旦那さんはとっても幸せな状態です。なお、三人の子供は早起きして道場へ早朝の体操に行っているようです。
「寂しいけど留学には賛成かな。といっても、資金が問題だけど」
鑑さん、肩を落としました。あまり高給取りでないという自覚があるのでしょう、自らの情けなさに表情も暗くなってます。
あ。
ここでディーナさんの小さな唇が、んむぅ、ととがりました!
次の瞬間。
「内弟子もっと増やせるようにおうち増築するのだから私ももっと聖導士学校や北征南征で働くのー!」
身長の高い鑑さんの懐に潜り込んでぽかぽかぽかぽか……。
「ちょ……ディーナ、それもっと寂しい。っていうか、ちょっと落ち着いて」
鑑さん、これはたまらないとディーナを抱きしめて持ち上げます。
「あ……にへ……じゃないの、落ち着いてるの落ち着いてないのは鑑さんの方なの」
ぽかぽかしてたディーナさん、鑑さんにぎゅってされてふわっと持ち上げられてにへーな顔になりますが、すぐにツンと澄ましたお嬢様な感じに戻ります。
――すとん。
「……あ」
優しく下ろされた場所は、ソファでした。ふかふかのクッションでとても座り心地が良いです。
「ディーナ。今日はどうしたの?」
気付くと鑑さんがディーナさんの横に座って目線の高さを合わせて聞いてきます。身勝手なお嬢様に振り回されてほとほと困った執事さんのように眉の先がへにょっと垂れています。余り他人に見せないような表情ですね。
ディーナさん、一瞬にへ~としましたが、またすぐにツンと澄ま以下略な感じで、改めて鑑さんに襲い掛かります。
「どうもしないのどうもしないの~」
ぽかぽかぽかぽか……。
「うわっ。ちょっとディーナ、やめてやめて降参……」
あまりの攻勢にとうとう鑑さん、両手で身を守りつつソファにごろん。それまでディーナさんの攻撃を受けきってたのですが、ついに参ったな表情で逃げてしまいました。
一方のディーナさん。
「お、おかしいの、鑑さんと喧嘩にならないの~……」
ぜーはーぜーはーしつつ失意体前屈。さすがに暴れっぱなしで一休み。鑑さんの様子は見てないですね。
「……け、喧嘩?」
鑑さん、この言葉が耳に入ったようでガードを緩めて聞いてみます。
「け、喧嘩したら、その後は、もっと仲良くなれるって聞いたのに~……」
あ。
ディーナさん。それ、口にして良かったんですか?
「……ディーナ。本当に欲しかったのは、何?」
「ふにゅ?」
はっと気づいて顔を上げたディーナさんの前に、ジト目の鑑さんがいますね。思わず視線をそらしたり。
「ディーナ、ちゃんとこっち向いて。……本当は、何か欲しかったの?」
あああ。
ディーナさん、わざとない物ねだりしたのがバレて目を白黒させてます。
完全に形勢逆転。
でも、ディーナさんは今日はお嬢様。そんなことではくじけません。引き下がりません。欲しがりせん。勝つまでは!
「きょ、今日のご飯は1日6食を希望するの、それに今日は姫ちゃんや太郎くんや次郎くんより甘々希望なの!」
ぷくぷー、と頬を膨らませて視線を逸らしたまま主張します。
「え、何を……希望?」
おろ、と鑑さん。
ディーナさんが何を言っているのか分からないようです。
「だから6食甘々なの」
おろおろたじたじする鑑さんに、がばーっと襲い掛かります。
「うわっ! 何?」
びくうっ、と身構える鑑さんですが……。
「にへへ~鑑さんなの~♪」
気付いた時には膝の上にディーナがすっぽり収まって、小さな白い手で鑑さんの頬を愛おしく撫でています。
「あ……んもう、僕を寂しがらせるようなことばっかり言って困らせて」
「困るの困るの~鑑さんいっぱい困るの~♪」
普段は「わたし」としか言わない鑑の言葉にご満悦なディーナさんです。
「そういう子には、お仕置きだよ」
「んふふ~、お仕置きされちゃうの~」
んぎゅう、と背後から抱き締められる幸せ。思わず身体がうずいてもぞもぞすると、鑑さんはさらに、んぎゅう。背中を曲げたようで、ディーナさんのほっぺに鑑さんの頬がぴとっ。すりすりすると、嬉しそうにすりすりが返ってきます。
至福のひとときです。
が、その幸せは長くは続きません。
――ばたん!
「たっだいま~」
「パパ、道場に来なかったけどどうしたの?」
子供たちが帰ってきたようですね。
「あ! ママずるい。私も!」
で、イチャイチャしてたのが娘に発見されます。
「ボクも~」
「まぜてまぜて~」
たちまち子供3人がソファに飛び込んできたり。
「ママ、場所代わってよう」
「にへへ~」
「じゃボクはママの膝の上~」
「お兄ちゃん……僕は~?」
「はいはい。パパの横においで」
今日もディーナさんちは仲良し家族なのです。
おしまい
━あとがき━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・
ディーナ・フェルミさま
いつもお世話さまになっております。
ディーナさんと鑑さんの、五人家族でらぶらぶいちゃいちゃなお話です♪
それにしても一日六食かぁ……。
早朝はご飯に目玉焼き。昼前にフィッシュ&チップ。昼にパスタにフォカッチャ。おやつにピザ。晩御飯にビーフシチュー。お夜食にソーセージ。
……あ。余裕でいける(笑
この度はディーナさんの可愛らしい発注、ありがとうございました。
「失意体前屈」にくすっとしましたよ♪
そのお礼として、鑑さんの普段はみせない様子をば。
それではご発注、ありがとうございました♪