※本商品は「ファナティックブラッド」の本編とは異なるアナザーノベルであり、「ファナティックブラッド」ならびに他ゲームコンテンツでプレイングやキャラクター設定の参照元にすることはできませんのでご注意ください。
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戦いの前に……
クリムゾンウェストの空に浮かぶ二つの月。
リアルブルー封印という事件は、統一地球連合宙軍だけではなくクリムゾンウェストの連合軍にも衝撃を与える事態となった。
最悪の事態は免れたのかもしれないが、連合軍やハンターの面々にとっては非常に厳しい戦況と言えた。
しかし、すべてが悪い事ばかりではない。
「いい? クリムゾンウェストにおける戦況は予断を許さない状況なの」
教師役となったマリィア・バルデス(ka5848)は、指し棒を片手にクリムゾンウェストの地図を前に力強く説明する。
生徒は――元強化人間のジェイミー・ドリスキル(kz0231)である。
「マジかよ。リアルブルーの敵はこんなに種類も豊富じゃねぇぞ?」
「リアルブルーにいたのは『狂気』と呼ばれる眷属よ。クリムゾンウェストにはそれ以外の眷属もいるの」
リアルブルーが封印される際、統一地球連合宙軍の一部も共にクリムゾンウェストへ転移した。
統一地球連合宙軍の本体は地球と共に凍結。この為、クリムゾンウェストへ転移した部隊を中心に再編が進んでいる。再編が完了すれば連合軍と歩調を合わせて対歪虚へ動き出す事になる。
だが、問題は山積みだ。
その一つがリアルブルーから転移したばかりの人々だ。クリムゾンウェスト側は先にサルヴァトーレ・ロッソからの大転移があった。この為、受け入れにそれ程難はない。
しかし、今回初めてリアルブルーから訪れた者達は違う。クリムゾンウェストで見るすべてが初めての物なのだ。
「早くこの世界に馴染みたいから、クリムゾンウェストの事を教えてくれというから教えているのに……ジェイミー、もう少し真面目に聞いてくれる?」
「聞いてるさ。だが、熱心に説明するお前の顔に見とれちまうんだ」
マリィアは現在の戦況を中心に歪虚の動向を必死に説明していたが、ドリスキルは相変わらずの態度。元々新兵相手に教官をやっていたとは思えない。
「あのね、ジェイミー」
「分かってるさ。こっちの世界でもかなりやべぇって事がな」
ドリスキルはテーブルに足を投げ出しながら、葉巻に火を付けた。
端的に言えばドリスキルの言う通りだ。狂気以外の眷属は各地でほぼ健在。ハンターズオフィスが指名手配のように名前を挙げた災厄の十三魔も一部は生存。そこへ各眷属の
歪虚王が残っている。
リアルブルーでドリスキルが目撃した黙示騎士や邪神がここに加われば、敵戦力は強大と言っても差し支えはないだろう。
「で、連合軍の戦略は?」
「ハンターが各地で各個撃破ってところね」
「各個撃破ねぇ……」
ドリスキルは葉巻の煙をため息と共に吐き出した。
マリィアはドリスキルが何を言わんとしているかを理解していた。大陸各地に敵が存在しているが、連合軍は組織だって戦略を立てている訳ではない。つまり、各地へハンターが主力となって敵と対峙している状況であり、戦力バランスを考えている訳ではない。
それは攻略方針が存在せず、ハンター任せの現状であるという事だ。
「連合軍と言っても対歪虚で集まった連合体でしかないの。それに各国の事情もあるから、連合軍でも各国への命令権はないと考えていいわ」
「なるほどね。つまり、地球と大して変わらんという訳だ。何ともやりやすい事で」
ドリスキルの嫌味を前に、マリィアは押し黙った。
現在の戦況を維持できているのはハンターの独自判断と献身の結果だ。
自由裁量を与えられた有能なハンター達がいなければ、クリムゾンウェストもとっくに歪虚の前に敗北している。
「ジェイミー、言いたい事は分かるわ。ハンターは謂わば傭兵。その傭兵を前面に押し立てて対歪虚の主力にしている。連合軍がやっている事は……」
「そうだ。俺にはまだ分からんが……連合軍って連中は信用できるのか?」
ドリスキルが危惧していた事。
それはハンター達が事実上捨て駒にされるのではないか、という事だった。統一連合宙軍でも似た境遇ではあったが、軍内部にも良識派は存在していた。
だが、ドリスキルにとって連合軍は未知の組織。軍のような良識派がどの程度いるかは分からない。その上、連合軍がサルヴァトーレ・ロッソとクリムゾンウェスト諸国が対歪虚という利害関係の一致で手を組んでいる点だ。
利害関係の一致は、不一致になった瞬間で関係が崩れる。その場合、主力となっていたハンターがどうなるのか――。
「大丈夫。私が保証するわ。彼らは決してハンターを見捨てない」
自信をもって答えるマリィア。
今までマリィアが出会ってきた人々を知っているからこそ、答えられる。
その様子にドリスキルはニヤリと微笑んだ。
「妬けるねぇ。それだけ自信を持って答えられるとな」
椅子から立ち上がるドリスキル。
そっとマリィアの肩を抱き寄せた。
「……もう話を聞く気はないの、ジェイミー?」
「あるさ。場所を変えて、ゆっくりとな」
手を握って部屋を出る二人。
新たなる旅が、始まろうとしている。
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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【ka5848/マリィア・バルデス/女性/24/猟撃士(イェーガー)】
【kz0231/ジェイミー・ドリスキル/男性/53/猟撃士(イェーガー)】
ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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近藤豊でございます。
この度はおまかせノベルの発注をありがとうございます。
二度目の発注を受け、クリムゾンウェストについて何も知らないドリスキルを必死で説明するマリィアさんというシーンを書かせていただきました。教官なのにドリスキルが真面目に生徒をしているとは思えなかったのでこんな態度になってしまいました。
クリムゾンウェストに転移したばかりですが、二人の良き思い出を作っていただければと思います。
それではまたの機会がございましたら、宜しくお願い致します。