※本商品は「ファナティックブラッド」の本編とは異なるアナザーノベルであり、「ファナティックブラッド」ならびに他ゲームコンテンツでプレイングやキャラクター設定の参照元にすることはできませんのでご注意ください。
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瑠璃に舞い降りた初の白
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「冬も近うなっとるんに、なかなか寒うならしまへんなぁ」
はぁと息を吐くも、吐息微かにしか白く染まらない。
静玖が住んでいた土地では、冬になると厳しい寒さに加えてましろの雪が降るものだった。
家出、という形で土地を離れた静玖たちは、今は兄弟水入らずで暮らしている。
鬼という種族がこの世界に名を馳せ始めたのは最近の事。
人にはあり得ない角を持つものを、人々はなかなか受け入れられずにいた。
それでも少しずつ歩み寄ってくれる人たちもいて。
同じハンターとして戦う仲間として、背を預けてくれる人もいて。
静玖はそれがほんの少しだけ気恥ずかしくも、嬉しかったりもした。
きっと、自分の半身や兄も、同じように思ってくれているだろう。
思ってくれているといい。
だって、色付く草花や素敵な歌や踊り。美しい景色に心奪われるのは、鬼も人も同じだろうから。
外見がどうであれ。力がどうであれ。生まれがどうであれ。
いつかはきっと、全てとは言わずとも分かり合える時が来る。
静玖はそう思っている。
ふと、視界を過った小さな何かに目を奪われる。
ひらりひらり、まるで舞い散る小さな花びらのようなそれ。
あまりにもほんの少しで分かり辛かったけれど。
静玖の瑠璃の髪に、着重ねられた金襴の着物の上に。
大切な扇の上に。
舞い落ちて、溶けていくのは。
「あらまぁ、まだそんな寒うないのに、気の早い雪ん子はんが遊びに来ぃはったわ」
瓶覗の瞳がゆうるりと細められる。
雪が舞うには気温がまだ低くない筈だが、どうやらあわてんぼうの雪の子がいたようだ。
前髪に隠れたようにそっと生えた真白と深紅の角にも、ひやりと小さな雪の落とし物。
小さく笑って静玖は身を翻した。
家の中には大切で大好きな人たちがいるだろう。
どうせなら、一緒にこの一足早い雪ん子を見てやるのもいいかもしれない。
なんなら即興で歌や踊りを舞ってもいい。
あぁ、なら楽器は濡れないように軒下で。
もし見物人が寄って来たなら、それを縁に出来れば上々だ。
「でも、その前に……」
軒先に置いてあった桶の中の水は、流石に冷たかった。
ひんやりとしたその水へと、我慢して手を付けた。
後ろから響く足音にそっと水から手を抜いて、振り返る。
「静玖、あんまり外にいると風邪を引くうひゃああ!?」
兄の言葉の途中でぴとり、と水に浸けていた両手を首筋に当ててやれば、それはそれは素敵な悲鳴が上がった。
「え?なぁに。どうしたの静玖」
「ふふ。ちょうど悪戯に成功したところやったんどす」
現れた双子は、その瞬間を見逃してしまったせいか、普段の無表情からほんの少しだけむっと膨れているように見えた。
「ほら、二人とも。まだちらちら散ってはるだけやけど、初雪さんどすえ?」
愛する兄妹たちと観る初雪は、揃いの瑠璃髪へとちらり、ちらり。
(あぁ、こんな平和な日も、ええもんどすなぁ)
小さく微笑みながら、静玖はそっと空を見上げ続けるのだった。
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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【ka5980/静玖/女性/11歳/符術師】