※本商品は「ファナティックブラッド」の本編とは異なるアナザーノベルであり、「ファナティックブラッド」ならびに他ゲームコンテンツでプレイングやキャラクター設定の参照元にすることはできませんのでご注意ください。
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緋、舞い散りて
山道を、慎重に、ゆっくりと踏みしめながら歩いていく。
足の裏に感じるのは湿った土の感触。それに時折、散り始めた葉を踏むそれが混ざる。
終わりかけの紅葉の山道。場合が場合なら楽しめたそれに、気分は浮かなくて。
俯きそうになるのを自覚した。緊張を抜くように、ふう、と息を吐く。
(……んなつもりじゃ、無かったってのになあ)
そうして、彼女、大伴 鈴太郎は現状を振り返り、思わず独りごちた。
……ただの気分転換だったのだ。ようやく訪れた一区切り。少し時間をかけてリフレッシュしようという気持ちの余裕が生まれて、ふと思い付いたのがバイクで遠乗りでもするか、という事だった。
開かれた風景の中、ただただ風を感じてかっ飛ばして進む道行き、そのことは、爽快だったと思う。
予め調べてあった、旅人を受け入れる宿屋もあるという山村の一つ……そこにたどり着いたとき。
「もしかして貴女様はリアルブルーの方……では、ハンターではありませんか!?」
彼女の姿を見るなり、そう駆け寄ってくる者が居たのだ。
……それから言われたのは、猟師が山中で、不審な動物の遺体を見た、という話だった。
二筋、鋭い刃物で鮮やかに斬られたような傷口は、別の動物にやられたものではあり得ないだろう。人間の仕業にしても、これ程深く綺麗に斬撃を入れるのは並大抵の技では無い。村には、そんなことが出来る人物は居ない。
その他状況を総合して、これは雑魔の仕業ではないか、と猟師と村長は直ぐに考えた。
「無論、ハンターオフィスにはこれから調査をお願いしようと思っていたのですが……偶然、貴女が居られた」
「……お、おう……」
捲し立てる村長に、ぎこちなく頷いた。
まだ何も分かっていない、倒せとは言わない、だが村人の危険を少しでも減らすため、先行して少し調べて頂けないか。勿論、礼はする──まあ、そんな成り行きになるのは、分かる話ではある。
(旅先で偶々、事件に巻き込まれる……なあ)
そうした話は聞く……割りと良く聞くとすら言ってもいいかもしれない。
身近な人間に起こるそれが、だから、自分の身に起きたことが、鈴には逆に中々ピンとこなかった。なんというか、そういうのは起こる人間が決まっていて、自分はそういう質ではないと、なんとなく思っていたのだ。
いたのだが……。
「出来る範囲でよろしいです! これも何かの神のお導き! 何とぞ!」
そんな風に懇願されて、勢いに押されるまま気がつくと引き受けていて──そして、冒頭の状況となる。
一歩一歩、歩いていく。そうして、進むごとに降り積もっていくものを感じていた。
──心細い。
ぎゅ、と彼女は腕で己の身体を抱き締める。
覚悟はしてこなかった。装備は……まるきりの無防備ではないにしろ、ちゃんと依頼に臨む時ほどではない。仲間も居ない、一人の道。待ち受けてるのが……どんな敵かも分からない。
どんな敵。そこが一番問題かもしれない。鈴は無意識に、握りしめた拳を見つめた。
刃物を使う敵……人型だろうか。人型の雑魔……ならいい。
気付けばこの拳でどんな敵と戦ってきただろう。深く考えることの無かった、深入りするつもりの無かったそのうちに。
……亜人を倒したことがある。
……動物の姿の敵とも戦った。
……そして。
リアルブルーでは、紛れもなく、生きている人の腹をこの拳で打った。
上手くやれた。殺さずに。でも、次は……?
あの感触は忘れられそうにない──忘れてはいけないとも、思うけど。
次々と思い出して……思い知る。独りで居ると、自分はこんなにもビビリだったのかと。
恐れながら進んで──不意に、視界が開けた。
鮮やかに紅葉が輝く広場に出て、そうして彼女は思わず足を止める。
不思議な光景、不思議な感覚に包まれる。燃えるような景色、なのに肌に感じる気温は粟立つほどに寒い。
熱と、冷気。
同時に感じて、彼女は立ち尽くす。
考えろ、見極めろと言われた気がした。
止めた脚を再び動かすために。
燃える心。冷える心。何が在るのかを。
──ああ、オレはビビってる。
静かに、認める。
何に? 何を今一番、恐れている?
戦うこと、怪我すること、傷付けること……。
順番に、考えて。
(オレが今、一番、恐れる……のは、)
答えは。
「後悔する……こと。ビビって、逃げて、……そんで明日、村の人が怪我したって聞かされることが、一番、怖え」
答えを見つけて、彼女は目を見開いた。再び脚を踏み出していく。
気配が生まれた。
がさりと木々の葉を揺らし何かが迫ってくる!
見えたのは……巨大な蜻蛉! その羽をぎらりと刃のように輝かせる──
「取り敢えず、一匹……? へっ……そういうことならっ!」
腰を落として向かい合い、構える。
「来やがれっ! 村人誰一人、手出しさせやしねえっ!」
気合い一閃。紅葉よりなお緋き焔が、彼女の身体から迸っていった。
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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【ka6016/大伴 鈴太郎/女性/18/格闘士(マスターアームズ)】
ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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この度はおまかせノベルを発注いただきありがとうございます。
というわけで凪池式おまかせノベルルールに従い今回ランダムで選ばれた作業用BGMは──?
【出陣 秋】
でした!
いやータイミングよく秋を引きましたね。これ本当にランダムなんですよ。
さて、こちらの曲は、落ち着いた、繰り返しの曲。
その繰り返しの中でじわじわと、じっくりと意志を固めていくような、そんな雰囲気を思わせる曲です。
春夏秋冬とパターンがあるこの出陣、の中で、秋は、涼しさを感じるような透明感が特に印象ですかね。
そんな曲と雰囲気から、これまでの依頼で垣間見せてくれた大伴さんの色々な側面を思い出して、
こんな風に私の中でまとまりましたが、いかがでしょうか。
改めまして、この度はご発注有難うございました。