※本商品は「ファナティックブラッド」の本編とは異なるアナザーノベルであり、「ファナティックブラッド」ならびに他ゲームコンテンツでプレイングやキャラクター設定の参照元にすることはできませんのでご注意ください。
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また雨の日に
くるりくるりと傘を回しながら池から戻った柊が、門を潜ろうとした時だ。
突然、横合いから桜色の小さな何かが飛び出してきて、柊の足首にしがみついた!
「ふ、ふにゃあぁ!?」
思わず飛び退る柊。ばくばくする胸を押さえ、飛び出してきたものを改めて見やる。
そこに居たのは――桜色のワンピースを着て、見覚えのある小さな小さな和傘をさしたキノコ……もとい、幼いパルムだった。
「……パー子、さん?」
柊が名前を呼ぶと、そのパルムは嬉しそうにぴょんこぴょんこ飛び跳ねる。
「ああ、やっぱりパー子さんですー! お久しぶりですねぇ」
傘に見覚えがあるのも当然で、以前パー子が家に迷い込んできた際、柊がプレゼントした手製のものだった。
「ふふ、傘使ってくださってるんですねぇ。嬉しいですよぅ」
柊はパー子を抱き上げ玄関に連れて行く。散歩に出る前に用意しておいた手拭いで、濡れた身体を丁寧に拭いてやった。
「今日はどうしたんですかー? また迷子ー……では、ないですよねぇ? パー子さんも雨の日のお散歩ですかぁ?」
かくりと首を傾げる柊に、パー子は首から下げたネームタグを指さした。そこに書かれた主の名前をガツガツ突っつきながら、ぷりぷりと地団駄を踏む。
(……笑ってはいけませんけどぉ……一生懸命怒ってるのも、可愛いですねぇ)
柊は必死に笑いを噛み殺しつつ、パー子が主とケンカでもして飛び出してきたらしいと察した。
「そうですかぁ、それはそれはー……パー子さんも大変ですねぇ」
パー子、コクコク。
「でも、心配しているんじゃないかしらー?」
パー子、頭のキノコ笠がもげそうな勢いで首を横に振る。
「そうですかぁ? あ、これからお八つに葛餅でもと思ってたんですー。パー子さんもご一緒にいかがですかぁ?」
すると、ムスッとしていたパー子の顔が、たちまちぱぁっと明るくなった。
その代わり身の早さにまた笑ってしまいそうになって、柊は先立って歩き出す。
「どうぞこちらへー。実は葛餅、私が作ったんですよぅ。パー子さんのお口に合うと良いんですがー」
それを聞いたパー子は、スキップしながら柊のあとをついて行った。
思わぬ来客を得たお八つの時間は、和やかに過ぎる。
パー子はしゃべれないけれど、ちまちました身振りが可愛いやら可笑しやらで、柊は何度も声をあげて笑った。
ふたりが食べ終わる頃には、雲の切れ間から金色の陽が覗いていた。
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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【ka6302/氷雨 柊/女性/20/縁を絆へ】
ゲストNPC
【パー子/パルム/駄ハンターのペット】