※本商品は「ファナティックブラッド」の本編とは異なるアナザーノベルであり、「ファナティックブラッド」ならびに他ゲームコンテンツでプレイングやキャラクター設定の参照元にすることはできませんのでご注意ください。
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明日はきっと、良い日になるから
アーク・フォーサイス(ka6568)が子猫との別れてから数日後。
アークは、未だ迷いの中に居た。
子猫との出会いは本当に良かったのか。
あのまま死んでいた方が、子猫の為になったのではないか。
自己満足の偽善心が暴走した結果、より悲しい結末になっただけではないか。
その想いが、アークの心にふと蘇る。
その度にアークは身を震わせていた。
「浮かない顔ですね」
気付けば傍らにはノアーラ・クンタウ要塞管理者ヴェルナー・ブロスフェルト(kz0032)の姿があった。
アークが参加した依頼の依頼者なのだが、アークの顔色を見て気になったようだ。
「何でもない。依頼には影響させない」
「もしかして、子猫の件ですか?」
「……!」
アークの瞳孔が開いた。
予想外の人物から飛び出して子猫という言葉。
何故、その事を知っている?
そう問い掛けようとしたアークであったが、ヴェルナーの言葉により遮られる。
「ふふ、こう見えても帝国ではそれなりの地位でしてね。依頼に参加いただいたハンターの近況も私は入手できます。
ですから、私は知っています。
あなたが救おうとした子猫の事も。
そして、その子猫が亡くなった事も」
「…………」
プライバシーの侵害だとも思ったが、アークは黙ってヴェルナーの言葉に耳を傾けた。
反抗する気力もない上、反抗したところで既に知られているのであれば意味は無いからだ。
「あなたの行動にとても好感を持ちました。ハンターの鏡とも言うべきでしょうか」
「お世辞を言いに来たのか?」
「いえ。私があなたに伝えたいのは、誰にでも時間は訪れるという事です。
明日失われる命があっても、時間は容赦なく訪れます。生まれた時からすべての生命は死に向かっていくのですから、当然です。
では、時間が進むのを嘆くべきでしょうか? 否。私たちは命あるからこそ、最後の瞬間まで生にしがみつかなければなりません。
大切なのは生きた時間の長さではなく、満足した生き方が出来たかどうかです」
ヴェルナーがどこまで知っているのか。
それはアークには分からない。
だが、アークの心を見透かしたかのようなヴェルナーの言葉。
アークは少しずつそれを脳内で反芻する。
「最後に笑って死ねる人生かどうか、か」
「はい。それは子猫でも同じです。あなたは目の前の命を救おうとした。その行為は賞賛されるべきです。
……無駄な出会いなんて無いんですよ、アークさん。」
そう、無駄な出会いなどないのだ。
すべての出会いには何かしらの意味があり、相互に影響を与えていく。
アークと子猫の出会いもそうであるはずだし、『そうでなければならない』。
「そろそろ出発の時間だ」
アークはヴェルナーへの返答を誤魔化すように立ち上がる。
その顔は、既に依頼へ向かうハンターの物へ変わっていた。
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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【ka6568/アーク・フォーサイス/男性/17/舞刀士】
【kz0032/ヴェルナー・ブロスフェルト/男性/25/疾影士】
ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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近藤豊です。
おまけノベルをお届けします。
シングルノベルの方が少し悲しいお話になっているので、こちらは希望を持てる形で描いてみました。明日は誰にでも訪れますが、待っている苦難を乗り越えるだけの力を持っているならば今日よりも良い日になるでしょう。その力は一人の力ではなく、二人の力でも良いと思います。
またご機会があれば宜しくお願い致します。