※本商品は「ファナティックブラッド」の本編とは異なるアナザーノベルであり、「ファナティックブラッド」ならびに他ゲームコンテンツでプレイングやキャラクター設定の参照元にすることはできませんのでご注意ください。
彼が彼にもたらしたもの

 ――熱い。

 身体を焦がすような熱を覚え、彼の意識はゆっくりと表層に浮上する。
 それにつれ強烈な痛みが彼を苛んだ。

「――ッ……」

 瞼をこじ開けると、石造りの天井が視界いっぱいに飛び込んで来る。

「……ここは、」

 呟くが早いか、

「気がつかれましたか!?」

 大きな声がしたかと思うと、視界の脇からにゅっと青年の顔が突き出てきた。
 驚きに思わず肩を跳ねさすと、左肩に激痛が走る。

「まだ動いちゃいけません、酷いお怪我なんですよ!?」
(いや、きみが驚かせたからなんだけどな……)

 ため息混じりに彼の顔を眺める。
 少しあどけなさが残る彼の額には、空色の鱗が煌めいていた。――龍人である。
 そこでアークは、自分がどこにいるのか、どうして怪我を負ったのかを思い出した。
 龍園を守る為、五頭もの竜を向こうに回し、独り戦い抜いたのだ。
 全て斬り伏せたまでは良かったが、深い傷を負った彼もそこで意識を失ってしまった。
 石造りなのは龍園の建物の特徴だ。手当の為ここへ運び込まれたのだろう。
 視線を動かすと、寝台に横たえられ、包帯だらけになった自分の身体が見えた。

「……きみが手当てを? 手間をかけたね」
「とんでもないです、アークさん!」

 名を呼ばれ、アークは目を瞬く。何故自分の名を知っているのだろう。
 しげしげと彼の顔を眺めている内、見覚えがあることに気付いた。

「きみ……前の宴の時、刀について尋ねてきた……?」
「覚えててくださったんですね!? 光栄です!」
「やっぱりあの時の」

 思いがけぬ再会に、アークも何だか嬉しくなる。
 聞けば、彼は先程アークが戦っている間、防衛線に詰めていたと言う。
 気を失ったアークを連れて戻った年長龍騎士から、アークが孤軍奮闘したことを聞かされたのだとも。

「龍騎士でも龍人でもないあなたが、独りきりで龍園を守ってくださってたのに……まだ覚醒者じゃない私は何もできなくて、」
「そんなことは……こうして手当してくれたよね? 有難いよ」

 アークの慰めにも彼はしばらく俯いていたが、やがて何かを決意したように顔を上げた。


「でも、もうすぐ覚醒者になれることになったんですよ」
「そうなんだ、クラスはもう決めたのかな?」

 日頃口数の少ないアークだが、再び気落ちさせまいと急ぎ言葉を継ぐ。彼はしっかりと頷いた。

「はい。少し前までは聖導士になりたいと思ってたんです、仲間を癒せるように。でも、今は」

 そこまで言うと、彼は傍らに置かれたアークの刀に目をやり、はにかんだように笑う。

「舞刀士になれたらなと。あの時、あなたの剣舞を見て――そして今日の戦いを知って、そう決めたんです」

 予想だにしなかった言葉に、アークの金色の目が丸くなる。ややあって、彼とよく似た種類の微笑を浮かべた。


 それからふたりは迎えが来るまで、舞刀士にまつわる様々なことを語らった。
 窓から挿す北国の淡い陽が、若者達を照らしていた。





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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【ka6568/アーク・フォーサイス/男性/17歳/舞刀士(ソードダンサー)】
【ゲストNPC/男性/新米龍騎士】
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発注者:キャラクター情報
アイコンイメージ
アーク・フォーサイス(ka6568)
副発注者(最大10名)
クリエイター:鮎川 渓
商品:おまけノベル

納品日:2017/08/28 10:44