※本商品は「ファナティックブラッド」の本編とは異なるアナザーノベルであり、「ファナティックブラッド」ならびに他ゲームコンテンツでプレイングやキャラクター設定の参照元にすることはできませんのでご注意ください。
-
彼の疵痕
「――ところで、」
しばらくして、シャンカラがおずおず切り出した。
「お怪我は……もう癒えましたか?」
「怪我?」
アークは一瞬何のことか分からず――職業柄、負傷するのは日常茶飯事なので――首を傾げたが、ああと頷き胸元のボタンを外した。
「これのこと?」
はだけた襟を引き、肩を露出させる。そこには先日受けた大剣の傷痕が残っていた。白い肌と赤い痕の対比が痛々しい。シャンカラは息を飲み、片手で口許を覆う。
その大剣を振るったのは、誰であろうシャンカラなのだ。
蒼白になる彼に、アークは「大したことない」と頭を振る。
「少し傷が深かったから、今はまだ痕が残っているけど」
「『深かった』から、」
「じきに消えるはずだよ」
「消える『はず』」
気になる箇所だけ復唱し、項垂れるシャンカラ。
覚醒者の傷は、重篤なものでない限り綺麗に消える。痕が残るのは、本人があえて残したいと願うものだけだ。
アークはそれを丁寧に説明したが、あまりに衝撃的だったのか、彼の耳にはろくに届いていないようで。
(参ったな。シャンカラも傷には慣れていると思って、軽率に見せてしまったけど……)
止めておけば良かったと後悔するも、もう遅い。シャンカラは制止も聞かず、あらゆる謝罪の言葉を尽くし頭を抱える。
「どうしよう……もし痕が残って、アークさんがお婿に行けなくなってしまったら」
「大袈裟だよ」
「大袈裟!? 一生の問題ですよ!?」
「いや、あの、ちゃんと消えるから……」
シャンカラは、もう半ば呆れかけてきたアークの傍らへ回り込むと、おもむろに片膝をつき真剣な面持ちで手をとった。あまりに真摯な碧い眼差しに呑まれ、アークは言葉を失う。
「もし……もし、その傷痕が原因で、アークさんがお婿へ行けなくなってしまったら……その時は――」
その時、背後の扉が突然開いた。ノックはない。それだけでアークには誰が来たのか分かってしまった。けれど、勢い込んだシャンカラは気付かない。
「その時は僕が責任をもって、アークさんをお婿に貰いますからッ!」
「ファッ!?」
素っ頓狂な声を上げたのは、アークではなく扉を開けたダルマだった。
三者の間に、何とも形容詞がたい空気が流れる。
ダルマは生温い笑みでグッと親指を立てて見せると、元通り扉を閉めた。
「…………」
残されたアークとシャンカラは、黙って顔を見合わす。
――その後どうなったのかは、ふたりしか知らない。
━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・
登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛
【ka6568/アーク・フォーサイス/男性/17歳/龍騎士隊隊長の友人】
ゲストNPC
【kz0226/シャンカラ/男性/25歳/龍騎士隊隊長】