※本商品は「ファナティックブラッド」の本編とは異なるアナザーノベルであり、「ファナティックブラッド」ならびに他ゲームコンテンツでプレイングやキャラクター設定の参照元にすることはできませんのでご注意ください。
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迷いと覚悟
「あんたも大変だねぇ」
チューダの寝所を出た雪都の前に大巫女が姿を見せた。
周囲は既に帳が落ち、唯一の灯りは二人の間にある焚き火だけである。
「大変? 先生の為に尽くすのは当然だ」
「アイツも食っちゃ寝ばかりだが、あんたのおかげでアイツは助かっているんだ。尽くして貰っているって認識は無いだろうけどね」
大巫女は雪都へ温めたミルクを差し出した。
器からも伝わるほんのりとした温もり。
鼻腔をくすぐるミルクの香りが、雪都に安心を与える。
「先生は、幻獣王だ。そして……その務めを支えるのが俺の役目だ」
「そうかい。だけど忘れちゃ駄目だよ。結局、チューダとあんたは他人。別の人生を歩んでいるんだ」
「…………」
雪都は反論を試みようとしたが、敢えて口を閉じた。
大巫女の心が雪都に向けられている事が分かったからだ。
「きっといつか、あんた自身が考えて答えを出さなきゃならない時が来る。
その時、アイツが横にいるとは限らない。もし、アイツの為に本当に尽くすならあんた自身の判断が必要になるんじゃないかい?」
「時には先生に逆らっても、前に進まなければならない時が来る。
……そう言いたいのか?」
雪都の心は僅かに乱れた。
今も多くのハンターが歪虚と戦っている。いずれ雪都も『戦わなければならない時』が来るだろう。
その時、本当にチューダの事を考えて行動できるのだろうか。
「さぁね。ただ、尽くすって事は自分を殺す事じゃない。時に相手を否定してでも、次へ進ませる事も必要じゃないかねぇ」
ミルクを飲み終わった大巫女は立ち上がる。
雪都は、ただその様子を黙って見守るしかなかった。
(俺が先生にできる事は……。今はこれでも良い。だが、先生が更に上を目指されるとすれば、俺はどうすれば……)
「もっと悩みな。いつかは自分を通さなきゃならない時も来る。その時までに答えを出せるようにしておけばいいんだ。
あたしからすれば、アイツは食っちゃ寝の馬鹿な幻獣なんだけどねぇ」
大巫女は、去り際に雪都の顔を見つめる。
心の迷いが顔色として浮かぶ雪都。
今は、それで良い。
もがき苦しみ抜いて出した答えに、後悔しないように覚悟を決める時間が必要なのだ。
(覚悟、か……)
雪都は、空を見上げる。
辺境の空に無数の光が瞬き始めていた。
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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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ka6604/雪都/男性/19/符術師
kz0219/ディエナ/大巫女(NPC)
ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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近藤豊です。
今回はチューダが眠った後、大巫女との会話を描いてみました。
チューダと共に歩む生活も楽しいですが、ハンターであるが故に別の世界を見つめる
覚悟を考える機会になれば幸いでございます。