※本商品は「ファナティックブラッド」の本編とは異なるアナザーノベルであり、「ファナティックブラッド」ならびに他ゲームコンテンツでプレイングやキャラクター設定の参照元にすることはできませんのでご注意ください。
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今再びの祈りを込めて
レナード=クーク(ka6613)が目を覚ますと、部屋の中は濃い闇に包まれていた。テーブルに置かれた龍鉱石の置物が、淡い光を放っている。
一瞬自分がどこにいるか分からなくなったけれど、すぐ傍から聞こえてきた地響きのようなイビキでたちまち思い出す。ダルマ(kz0251)が借りている農家の離れだ。話し込む内にいつしか眠ってしまったらしい。身動ぎして身体を起こすと、きちんと寝台で寝ていたことに気付いた。
「あれ? ダルマさんは……」
暗がりに目を凝らすと、ソファで爆睡するダルマを見つけた。その腕にはワインの空き瓶を抱えている。
「もう、仕方ないなぁ」
苦笑いで寝台を抜け出し、そっと毛布をかける。彼は気付かず大イビキ。あまりの轟音に、いずれ近所から苦情が来やしないかと、他人事ながらハラハラする。
少し考え、閉じた瞼の前でひらひら手を振ってみる。反応がないのを確認すると、レナードは静かに荷物を纏めた。外套を羽織り、旅の相棒である杖を手に再び彼の傍らに立つと、薄明かりに照らされた寝顔へ語りかける。
「……ダルマさん。俺、行くよ。
何日でも泊まっていけって言ってくれたけれど……一緒にいたら俺、甘えてしまいそうだから。
大丈夫。帰りたい場所なら、ちゃんとある。きっと無事に帰るから。
そこは、龍園からは離れた場所だけれど……俺、暖かな居場所をくれた龍園の人達にも感謝してるんだ。
故郷が大好きで、大事にして生きてきたダルマさんに伝わるかな?
戻りたい故郷のない俺が、居場所をもらえてどんなに嬉しかったか。
ダルマさんが俺の"家族"……父さんだったら、最初から居場所をなくしたりしていなかっただろうにね。
……本当に、今日は会えて嬉しかった」
聞こえているはずがないけれど、それでいい。
それでも、きちんと告げておきたかった。
彼の紅玉のお守りに指先で触れた。それはかつてレナードが贈ったもの。不老長寿の願が掛けられた紅玉に、今再び祈りを込める。
持って生まれた"時間"が違うことは承知している。けれどいつか"音"を見つけ旅を終えたあと、再び会えるように。
「"またね"、ダルマさん」
レナードは音を立てず扉を開くと、夜風の中へ駆けだした。
ややあって、離れの中に静寂が落ちた。ダルマの瞼がうっすら開く。
「おう、"またな"レナード」
窓から覗く夜空高く、一等輝く銀の星へと呟いて、再びイビキをたて始めた。
━あとがき━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・
【登場人物】
レナード=クーク(ka6613)/夜空に奏でる銀星となりて
ダルマ(kz0251)/年長龍騎士