※本商品は「ファナティックブラッド」の本編とは異なるアナザーノベルであり、「ファナティックブラッド」ならびに他ゲームコンテンツでプレイングやキャラクター設定の参照元にすることはできませんのでご注意ください。
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初めて手を繋いだ時の事
繰り返すループの中の、クリムゾンウェストからリアルブルーへの転移が可能になりリアルブルーが凍結されるまでの期間。即ち、二つの世界が行き来可能な時期。
あまり長いとは言えないこの間にだから、リアルブルーでデートしたいというメアリ・ロイド(ka6633)の要望を、高瀬 康太(kz0274)も無下にすることは無かった。
転移門のある秋葉原からは少し移動して、都心の町を歩く。ウィンドウショッピングの真似事や喫茶店に入ったりなどしてみて、それは十分幸せではあるが、並んで歩く二人の距離はまだ恋人と言うには若干開いていた。
つまりはまだ、手を繋いだりその他接触する切欠が掴めずにいた。
そんな時間。穏やかに過ごしていた時間に不意に陰がさしたのは、何気なく顔を上げたそのときだ。
ビルに組み込まれた街頭テレビ。そこに映されたニュースのテロップ──『強化人間、また暴走か』。
ああそうだ。どんなにこれまでと違う想いで違う過ごし方をしても、私達は今なおループに囚われている。思い知らされる。
この先何が起こるか知っている。何をしなければいけないのかも。何もかも。
……リアルブルーの凍結は防ぐべきではないというのが今のイレギュラーたちの主流の見解だ。ここで邪神の動きを暫く食い止めること。そこに至る事件の流れで人々が団結することは邪神戦にたどり着くための必須の流れ。今はそう言う結論だ。
分かっている。
だから、知っていて見過ごさなければならない。強化人間が暴走することも。イクシードアプリが蔓延することも。
はじめの時よりは助けられる子を増やすことも出来た。でも助け過ぎてもいけない。その事実は余計に「選んでいる」事を意識させられた。ここまで助けて、助けない。それを意図して決めるのだ。私達は。
……こんなこと、している場合なのだろうか。
考えまいとしているのにそんなことが胸を過る。
いつしか、上げていた視線を伏せて。歩調も、少し落ちて。
──掌を暖かな感触が包んだのは、そんなときだった。
え、と、目線をやると、しっかりと繋がれた手がそこにあった。
ついで彼の顔を見ようとすると……そっぽを向いていた。
すぐに浮かれて舞い上がる、ような気分には切り替わらなくて。でも、沈んだ気持ちにじわじわと幸せが満ちてくる。
……ああ、だから今にしてくれたのか。
泣きそうになってメアリは、ぎゅっとその手を握り返した。
━あとがき━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・
凪池です。そんなわけでおまけはこう、どっかのデートの詳細でも書くかとおもったんですが。
何故地獄みを増しにいくのか私は。発注文にはほのぼのって書かれてるでしょーが。
なぜ普通に仲良くしてれば良いだろうにループ中の出来事であることを活かしにかかりたがるのか。
そういうやつなんですよ。凪池ってやつは。
すみませんてした。
ご発注有難うございます。