※本商品は「ファナティックブラッド」の本編とは異なるアナザーノベルであり、「ファナティックブラッド」ならびに他ゲームコンテンツでプレイングやキャラクター設定の参照元にすることはできませんのでご注意ください。
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はじめてのおでかけ
参拝を終えたシエル・ユークレース(ka6648)と香藤 玲(kz0220)は、仲見世に並んだ出店を次々に渡り歩いた。じきにふたりの両手は戦利品でいっぱいになる。
狐色のカルメ焼きに、焦げた醤油が芳ばしい五平餅。お揃いで買ったハッカ笛は、咥えると爽やかな香りが口に広がる。他にも、射的で当てた小招き猫に、愛くるしいもふもふの幻獣のお面、地物の果実を使った果蜜水。
出店巡りを堪能しきったふたりは、茶屋の軒下の長椅子へ腰を落ち着けた。座面に敷かれた緋毛氈が、シエルの振袖によく映える。
「思いがけずお祭り気分満喫しちゃったねっ♪」
元々の目的は初詣だったが、参拝客の多い社寺仏閣には往々にして出店が連なっているもの。きちんと参拝は済ませたあとだ、買い食いも天下御免。おまけに(一見少女と少年のようではあるが)少年ふたりきりでの外出で、口煩く言うオトナもいない。
シエルが店の者にお茶を頼む間、玲は餡がたっぷり詰まった大判焼を割り、当たり前のように半分差し出す。
「はい」
「玲くんまだ食べるのー?!」
「一応自重したんだよ? だからはんぶんこ」
「それ自重かなー?」
シエルは帯で締めたおなかを撫でて苦笑い。それでも揃って食みつけば、ほっくり甘い小豆が心もおなかも満たしていく。それを熱々のお茶で流し込み、人心地ついた時。
玲は、徐々に傾き始めた陽を仰ぎ、ぽつりと言った。
「僕、こうやって歳近い子同士で出かけるの、初めて」
「ホント!?」
シエルは碧い瞳をぱちくりしたが、
「だって、転移して来る前から安定のぼっちだし」
玲は当然のように頷く。シエルは唇を尖らすと、「もうっ」と言って軽く玲を睨んだ。
「玲くん、よく自分のこと『ぼっち』って言うけどさ。もう違うでしょ? ボクがいるじゃない!」
目も口もぽかんと開けた玲に、シエルは半ばムキになって続ける。
「『ともだち』だもん! ともだちがぼっちぼっち言ってるのは寂しいよ。ボクはともだちじゃなかったの?」
「あ……」
玲はようやくハッとなって、赤くなるやら青くなるやら。
「ご、ごめん! その、長い事ぼっちが染み付いてて……そうだよね、シエルがいるもんね」
「えへへ……改めて言われると恥ずかしいなぁ」
「先にシエルが言ったんだよね!?」
互いに『ともだち慣れ』していないふたりは、照れ臭いやら面映いやら。それでも顔を見合わせ微笑み交わすふたりを、東方の西日が薄橙に染めていた。
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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【ka6648/シエル・ユークレース/男性/15/はじめての『ともだち』】
ゲストNPC
【kz0220/香藤 玲/男性/14/はじめての『ともだち』】