※本商品は「ファナティックブラッド」の本編とは異なるアナザーノベルであり、「ファナティックブラッド」ならびに他ゲームコンテンツでプレイングやキャラクター設定の参照元にすることはできませんのでご注意ください。
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南瓜と星
ルベーノ・バルバラインは手元の大きな南瓜を眺める。この時期にはよく見られるものだ。
「イノアにも楽しんでもらいたいのだが、どうしたものか?」
ここの領主イノア・クリシスのことを考える。歪虚化した兄の問題で父親が引責する形で隠居したため、イノアが領主となった。むろん、兄がいなくなった時点で想定はしていただろうが、唐突な変更だっただろう。
ルベーノは歪虚の討伐に関わっている。だからこそ、イノアのことが気になっていた。
今回、この南瓜を入手する経緯を考える。精霊とユグディラが南瓜畑で暴れそうになったため、ハンターが止めに入ったのだった。
「……? そういえば、この町でハロウィンのイベントはしないのか!?」
この南瓜は食用ではないため、ここでイベントがあると思っていた。
町の中を思い出す。店によっては南瓜お化けがありそれらしい何かはあった。一方で仮装して子どもたちが練り歩いたり、南瓜ランタンを作っているのを見ていない。街に明かりがともる時間になっているが、見渡しても日常そのもの。
「まさか、ただ単に、交易用なのか!?」
それはそれだが、ハロウィンという行事は聞けば、子どもが楽しむには良いものだと思える。ハンター仲間でも楽しんでいるはずだ。
イノアのためとはいえ、これからイベントを計画したところで突貫になる。最低限でも楽しめるものと言えば、手元の南瓜だろう。
ルベーノは決心すると領主の屋敷に向かった。
屋敷に到着すると面会を頼み、イノアの護衛の騎士の見張りの下、執務室に入る。
「まさか、まだ仕事をしているのか!」
机にいるイノアを発見して驚いた。
「あ、はい、これで終わりです。それより、ルベーノ様、何かありましたか?」
イノアは涼しい顔で告げる。
「町でイベントはしないのか?」
「しませんよ?」
イノアはあっさり告げる。
「南瓜は何のために!」
ルベーノにイノアは個人用や商売用だと告げる。
「別にイベントを頑張れとは言わんが、息抜きに楽しまないか、ということだ」
ルベーノは南瓜を見せる。
イノアはきょとんとしてルベーノと南瓜を見つめる。
「南瓜のランタンを作って、火をともす。それだけでつまらないかもしれないがな」
猫耳カチューシャを取り出す。仮装、と言えば仮装。
「まあ」
イノアが微笑んだ。
(なんか、こっちが子ども扱いされている気もするが? しかし、イノアの顔を見ると喜んでいるな)
ルベーノは内心苦笑しつつ、話がまとまったとニカッと笑った。
道具などを用意して部屋で作業する。ルベーノが南瓜の底を丁寧に皮を丸く取る。
「この中の出すんだが、イノア、してみるか?」
「任せてください」
スプーンやおたまで中身を取り出す作業だ。
「少し皮というか果肉みたいなところは削った方がいいな」
ルベーノが言うと、イノアはうなずきせっせと作業をする。
南瓜の種などをルベーノはまとめて置く。
「そのくらいでいいぞ。さて、どういうふうな顔にするかな?」
南瓜を受け取ると、正面となるところを見せる。どういう顔にするか話し合い、イノアにインクで書いてもらい、ルベーノがナイフで切る。
柔らかい皮であるが、きれいに素早く穴は開いた。
「できたぞ」
南瓜のランタンを見せるとイノアがぱあと顔を明るくした。
「これを台にしてろうそくを置く……のだが、せっかくなら暗いところで見よう。……そうだ、星がきれいだし、バルコニーで見よう」
イノアと屋敷のバルコニーに向かう。バルコニーに出ると心地よい風が吹く。あと少しすれば冬となり、寒さが身に染みるだろう。
ろうそくをともし、ランタンに入れる。
ふわりとオレンジ色の光が広がる。
「おお、なかなかのデザインだ」
イノアは胸を張る。そのあと、空を見上げた。
「星、きれいですね」
「家の中でも十分見えるかもしれないが、外で見る方がいい」
ルベーノも空を見上げる。
「ランタン、笑ってます……皆笑えるといいです」
「町の者は笑っているぞ。それと領主も笑わないとな」
事件はあったとしてもこの町は平穏な生活が保たれている。ルベーノは来るたびにそれを感じている。
「とはいえ、イノアは十分笑っているぞ」
ルベーノは太鼓判を押した。もう少し笑ってもいいと思ってはいるが、笑うために頑張るのは良くない。
不安があるから彼女は心から笑えていないのだろう。
だから、ルベーノは彼女を助けたり、息抜きを勧めるのだ。
「空を見るだけでも違うからな」
「そうですね」
空の星は瞬き、ランタンの炎は揺らめいた。
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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【整理番号/PC名/性別/年齢/職業】
ka6752/ルベーノ・バルバライン/男性/26/格闘士(マスターアームズ)
???/イノア・クリシス/女性/15/グラズヘイム王国とあるところの領主
ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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発注ありがとうございます。
『精霊対ユグディラ、南瓜ピンチ!』の後日談です。「日」でなく「後時」談? 時期的になんかあれですが、ルベーノさんを見たとき、これが浮かびました。
別に、南瓜推しなわけではないのですが、たまたま南瓜話題が多くなっていますね。
いかがでしたでしょうか?
今後ともよろしくお願いします。