※本商品は「ファナティックブラッド」の本編とは異なるアナザーノベルであり、「ファナティックブラッド」ならびに他ゲームコンテンツでプレイングやキャラクター設定の参照元にすることはできませんのでご注意ください。
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けっぱれ★ぷにっこサンタ!
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聖夜。
紅界では聖輝節、蒼界ではクリスマス。呼び名は違えど、家族や恋人と過ごす素敵な日。街は綺麗に飾り付けられ、イルミネーションが輝いている。そしていい子の枕元には、サンタクロースから贈り物が――
が。
そんなの関係ねぇとばかりに暖かな部屋へ引き篭り、コタツに首まで埋まりながら、携帯ゲーム機のボタンをガタガタ言わせている少年がひとり。
甘味中毒駄ハンターこと香藤 玲(kz0220)だ。
「外は寒いし、カップルとかカップルとかカップルがイチャついてんでしょー? はー無理無理。こんな日はコタツでゲームに限るよー」
食べ終えた苺大福の包みを屑籠へ放り、今度はナッツの袋を封切ろうとした、その時。
突如窓が開き、冷たい風が吹き込んできた。
「寒っ! ってか何!?」
慌ててこたつから這い出した所で、窓から部屋へ侵入を試みている子供と目が合った。
ぷにっとしたほっぺ。
零れそうなまんまるおめめ。
ふわふわした白花色の髪。
玲はその子を知っていた。
「杢、くん? だよね?」
何故疑問形なのかと言えば。
杢(ka6890)の格好がサンタクロースそのままだったからだ。雪景色に映える真っ赤な服に、同じ色の三角帽子。首に結いたリボンの鈴がリンと鳴る。そして背には白くて大きな袋。
「玲さん起きてたんず? 子供が夜更かしばっかしてればダメだんずよ」
「杢くんの方が年下じゃん。って、何してんの?」
「今年はおらがサンタ当番だんずっ」
誇らしげに顔を輝かせる杢。一方、サンタの正体が親だと思っている蒼界人の玲は、額を押さえて頭を振る。
「えーと? ごめん、理解がおっつかない……まあ入って、寒かったでしょ?」
「お邪魔するだんず」
そう言ったが、杢はぎしっと音を立てたきり部屋に入ってこない。
「遠慮しないで」
「んんん」
「杢くん?」
「袋っこが窓枠さ引っかがってー」
「あっ……」
そうして玲に引っぱってもらい、無事部屋の中へ入った杢。ぬくぬくなこたつに入り、人心地。
「コタツは魔性の道具だんずー出たくなくなってまうずー……」
冷えた身体を温める杢へ、玲はホットチョコのカップを差し出した。
「で、サンタ当番って何?」
「そのまんまだんず」
杢は甘いチョコを飲みながら、サンタが当番制であると説明した。
「サンタって親じゃないの!?」
「そったらこと言ってっと、サンタ組合に睨まれてまうよ?」
「サンタ組合?」
「あれ、協会だったんず?」
「ホント!?」
ともかく、紅界のサンタについてはそういうものなのだろうと、玲も納得した。
「んで、プレゼントを持ってきたんず! 玲さんの欲しい物は分かってるだんずー」
杢はコタツの上で、担いできた袋をひっくり返す。するとプレミアムチョコに可愛らしい形のクッキー、色鮮やかなマカロンや宝石めく飴などが溢れてきて、たちまちお菓子の山ができた。
「うわぁ、ありがと♪」
早速お菓子へ手を伸ばそうとする玲。杢は袋の底から何かを取り出し、その手へ握らせた。それは――最高級ハブラシ。
「本命はコレだんず。玲さん、前も言ったけど、甘いモンばっか食べてっと虫歯になっでまうよ? ちゃんとハミガキせねばなんねぇよ?」
「覚えてたんだぁ、ありがとね」
苦笑する玲をよそに、杢は時計を見て慌てて立ち上がる。
「もう次さ行がねぇとっ。ごちそうさまだんずー、へばなー玲さん」
「へばねー杢くん、気ぃつげてねぇ」
玲は杢の口調に釣られ、故郷の秋田弁で答えると、再び窓から飛び出していく杢を見送った。空飛ぶソリに跨った杢は、瞬く間に夜空へ舞い上がる。辺境よりも更に北を目指して――。
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「せば、ダルマさんもどうぞだんず!」
「お、おう? よく分からんが、すまねェな」
年長龍騎士・ダルマは、独り自室で寝酒を呷っている所だった。そこへ突如現れたぷにっこサンタ・杢は、綺麗にラッピングした箱を彼の鼻先に差し出した。
礼を言って受け取ったダルマは早速開けてみる。中から出てきたのは……
「何だァ!?」
彼が驚愕したのも無理はない。それは龍園ではついぞ見たことがない、巨大な縮れ毛の塊――いや、通常よりも大層ボリューミーなアフロカツラだった。その縮れ具合たるや、天然パーマのダルマの髪より随分込み入っている。
「こりゃ一体……」
「サンタ・データベースによると、ダルマさんは案外天パを気にしてるってあっただんず」
「!?」
決して表に出さぬよう努めていたダルマ、密かなコンプをずばり言い当てられて思わず噎せた。
「だども、リアルブルーではこんなにくるくるな髪型が流行ってるらしいんず。なぁんも気にすることねぇず!」
「これが流行りだと?」
「『これでアナタも宴のキング、皆の視線を釘付けに☆ パリピな夜の主役になろう!』ってパッケージに書いてあったんず。ナウなヤングにバカウケだんずっ」
「何言ってっかよくわかんねェが、被りゃ良いんだな?」
ダルマ、おずおずとアフロカツラを頭に装着した。途端、両眼がくわっと開く。
「おおぉ、力が湧いてくる! ような気がする!」
杢がぱちぱち拍手していると、天パからアフロに変貌を遂げたダルマ、突然表へ駆け出した。
「どこさ行ぐんずー?」
「隊長殿に見せびらかして来ンだよ!」
「次のお届け先だんず、おらも行くだんずー」
杢は袋を背負い直すと、とてとてとアフロ・ダルマの後を追った。
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杢はダルマを見失ってしまったが、シャンカラの家はすぐに分かった。何故なら堪えきれず吹き出した彼の笑い声が聞こえてきたからだ。
入って行くと、ダルマに頭を小突かれながらも、涙目になって笑い転げるシャンカラの姿があった。彼は目許を拭い杢に向き直る。
「こんばんは、寒い中お疲れ様です」
そう言う彼の傍らには、書類が積まれた机がある。
「シャンカラさんも遅くまで大変だんずね。……んで、あの……」
杢は口ごもった。サンタ・データベースをもってしても、彼の欲しい物は分からなかったのだ。
「何か欲しいもん、ねぇだんずー?」
「んー。僕は皆が笑顔でいられればそれで」
「それはおらひとりの力では無理だんず……」
「ええ、だから龍騎士隊もハンターさん方も、皆頑張っているんですもんね。これからも一緒に頑張りましょう」
にこりと微笑むシャンカラに、
「うう、サンタのコケンに関わるだんずー」
杢はしょぼんと肩を落とす。すると彼は少し考えてから、杢の前にしゃがみこんだ。そして気恥ずかしそうに目を伏せる。
「では……杢さんのほっぺに、触らせていただけないでしょうか?」
「おらのほっぺ?」
きょとんとする杢に、彼は頬を赤くして頷く。
「初めてお会いした時から、その……杢さんのほっぺ、触り心地良さそうだなって」
「そんなんで良いだんず? せば」
杢はシャンカラの手を取ると、自らの頬に宛てがった。
「あッ……♪」
シャンカラ、堪らない様子で杢のほっぺをぷにぷになでなで。
「しっとりして柔らか……まるでお大福のようです♪」
「ちょっと俺にも触らせろ。……おぉ!」
「ふふ、ぷにぷに……すべすべ♪」
「癒されるなこりゃァ」
「好きなだけ触ったら良いだんずー」
もちもちほっぺは幸せの感触。
魅惑のほっぺにハマった龍騎士達は、デレきった顔で杢のほっぺを堪能し続ける。
何とそれは、東の空が白むまで続いたのだった。
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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【ka6890/杢/男性/6歳/いけ!ぷにっ子スナイパー】
ゲストNPC
【kz0220/香藤 玲/男性/14歳/甘味中毒駄ハンター】
【kz0226/シャンカラ/男性/25歳/龍騎士隊隊長】
【ダルマ/男性/27歳/年長龍騎士】
ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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聖夜、いい子達(?)へプレゼントを配る杢サンタさんの物語り、お届けします。
お届けが遅くなり、時期外れとなってしまい申し訳ありません!
杢さんのぷにぷにほっぺは、きっと幸せな感触がするんだろうなぁと思ったらこうなりました。
触ってみたいですよね……あのほっぺ……
イメージと違う等ございましたら、お気軽にリテイクをお申し付け下さい。
この度はご用命くださり誠にありがとうございました!