※本商品は「ファナティックブラッド」の本編とは異なるアナザーノベルであり、「ファナティックブラッド」ならびに他ゲームコンテンツでプレイングやキャラクター設定の参照元にすることはできませんのでご注意ください。
戦中小話

 大量のゴキブリ型雑魔を引きつけ路地を疾走しながら、カイン・シュミート(ka6967)は並走するシャンカラ(kz0226)を横目で見やる。ソウルトーチで勢いよくマテリアルを燃やしているが、その顔色はすこぶる悪い。

(やっぱゴキブリ初遭遇のシャンカラに、囮役をやらせるのは酷だったか)

 幅の狭い路地、そして互いが備えていたスキルを合わせて考えると、短時間で駆除しきるにはこれしかないのだが。彼のあまりの慄きっぷりに、カインは何だか気の毒に思えてきた。

「あー……こんな役させちまって悪いな、また今度スモアでも作ってやるから」

 そう言うと、死んだ魚のようだったシャンカラの目が光り、勢いよくカインを振り向く。

「本当ですかっ?」
「お、おう。でも今は前を見ろ」
「あのとっても美味しい、」
「こっち見過ぎだ、前見て走れっ」
「焼いたマシュマロの、」
「後ろは俺が確認すっから! とにかく前だ前!」

 何とか彼の軌道修正に成功したカイン、密かに溜息をつく。この隊長大丈夫だろうかと。
 思い返すと、会った時には何かしら食べていることが多かった。おまけに菓子作りに長けたカインを『甘味の師匠』などと言い慕っている。

(作る側としちゃ、旨そうに食ってくれんのは嬉しいんだが)

 複雑な心境で走り続けていると、ようやくスモアへの執着を断ち切ったらしいシャンカラが、今度は目線だけを寄越した。

「カインさんが気にされるようなこと、全くないですからね」

 お手伝い頂いていることも勿論ですが、と彼は続ける。

「だってカインさん、今僕の隣を走ってくれてるじゃないですか」
「ん?」
「あの群れを焼き払うのは、群れを追走する形でもできるでしょう?」

 カインのスキルなら、囮に殺到する群れの後方からより安全に仕掛けることもできる。
 何ならどこかで待ち伏せしていても良かったのだ。
 それでも囮の彼と一緒になって、追われるように走っていた。
 気付かれていたのかと、カインは少々バツが悪くなる。独りで囮をさせるわけにはと思ったのは事実でも、それを相手から面と向かって言われるのは面映い。

「単に勢いってやつだよ」
「そうですか? アレのいる後方確認を請け負ってくださったのも、」
「ほら、気合い入れて走らねぇと追いつかれるぞっ」
「それはそれとしてスモアは、」
「だから今度な!」

 やいやい言いながらの必死の全力疾走は、黒いヤツらの最後の一匹が果てるまで続いたのだった。



━あとがき━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・
【登場人物】
カイン・シュミート(ka6967)/離苦を越え、連なりし環
シャンカラ(kz0226)/龍騎士隊隊長
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発注者:キャラクター情報
アイコンイメージ
カイン・シュミート(ka6967)
副発注者(最大10名)
クリエイター:鮎川 渓
商品:おまけノベル

納品日:2019/12/06 14:17