※本商品は「ファナティックブラッド」の本編とは異なるアナザーノベルであり、「ファナティックブラッド」ならびに他ゲームコンテンツでプレイングやキャラクター設定の参照元にすることはできませんのでご注意ください。
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年長龍騎士の言う事にゃ
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「何だァ?」
警邏から帰還したダルマ(kz0251)と新米龍騎士達は、転移門そばの通りに賑やかな人集りができているのを見つけた。十代の若者や子供ばかりで、何やら楽しげではあるのだが、一部興奮しすぎて押し合いへし合いしている子供達もいる。
ちょっと様子を見てみるかと、ダルマは人集りの背後に大股で歩み寄った。
「おいおい、こりゃ何の騒ぎだァ?」
野太い声で威圧しないよう、極力やんわりと声をかけると、
「ダルマさん!」
人集りの中心から、聞き覚えのある澄んだ声がした。次いで、その声の主が人垣を掻き分けまろび出てくる。
屈託なく輝く若葉色の瞳に、流水を思わす爽やかな碧髪。左耳前に垂らした一房の結い髪が特徴的なその青年は、龍園出身のハンター・ニーロートパラ(ka6990)だった。
人集りの中心で揉みくちゃにされ、やや疲れた表情のニーロだったが、ダルマと目が合うと嬉しそうに、そしてどこかホッとした様子で駆け寄る。
「ニーロじゃねェか! 郷帰りかァ?」
ダルマの方もニーロの帰省を歓迎し、歯を見せて笑った。
「ンで、この騒ぎは一体どうした?」
「すみません。お土産を持って来たら、皆を興奮させてしまったみたいで……龍園にない物をと思い、色々見繕って来たんですが」
大量の土産を抱え里帰りして来たニーロは、転移門を出てすぐ地元の友人達に出くわし、早速お土産を配りだしたのだと言う。彼らはニーロと同じく、見た目は二十歳前後でも中身は十代半ば。子供のように大はしゃぎする友人達の声を聞きつけ、近くにいた本物の子供達も続々集まって来て、この騒ぎになってしまったと。
そう説明し恐縮しきりで頭を下げるニーロは、ダルマの眼が光ったことに気付かなかった。
「ほう。で、その土産ってのは?」
「え? えっと、玩具の魔導光線銃やプラモデル、携帯ゲーム……それに、西方や東方のお菓子です。マカロンとか、桜餅とか。あとはお茶や飲料とかですね」
ニーロはダルマの問いに内心首を傾げたが、龍園の治安維持を務める龍騎士隊がやって来たのだ。これで騒ぎも収まってくれるはずと、安堵して人集りを振り返った。
けれど彼の目に映ったのは、いつの間にかちゃっかりお土産争奪戦に参加している新米龍騎士達の姿。ダルマもそれに気付き、くわっと眉をつり上げた。
「オイお前らァ! 俺の分は残ってんだろうなァ!?」
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「さっきはみっともねェとこ見せちまったなァ。うちの若ェのがすまん」
「いえ、喜んでもらえて良かったです」
ダルマが警邏報告を終えたあと。
ニーロとダルマは高い防風壁によじ登り、並んで腰掛けていた。風にさらされ寒さは否めないものの、こうしていると神殿や龍舎、立ち並ぶ住居など、龍園内が一望できる。
ニーロの手には、龍園特製の瓶入りコケモモジュース。ダルマの手には、土産袋の底に辛うじて残っていた炭酸飲料のボトルがある。それをちびちび傾けながら話に興じていた。
なおニーロは大変素直な性格のため、「一番みっともなく大人気なかったのはダルマさんです」なんて、心の中でも茶々を入れたりはしない。ツッコミ不在のまま、穏やかな時が流れる。
「そう言えばシャンカラさんは? ……あ、お忙しいですよね。隊長ですし」
肩を落としかけたニーロだが、ハッとなり慌てて首を横に振る。
「いえ、その、ダルマさんがお暇と言っているわけでは……!」
くるくると表情を変えるニーロに、ダルマは可笑しそうに吹き出した。
「隊長殿は、俺達と入れ替わりに警邏に出ちまってなァ」
「そうでしたか……ダルマさんも警邏帰りでお疲れでしょう? すみません、付き合ってもらって」
「気にすんな。外へ行った同郷の仲間に会えんのは、嬉しいモンだからなァ」
ダルマの何気ない一言に、ニーロは視線を落とす。
ゆらり揺らせた爪先の先には、精緻な結晶細工めく街並みが広がっている。つい一年程前まで、ここは外界から隔絶されていた。死ぬまでここで暮らしていくのだと信じて疑わなかったし、この都がニーロの世界の全てだった――あの日までは。
橄欖石の瞳を伏せ、ぽつりと零す。
「龍騎士ではなくハンターの道を選んで、外を見て、少しは成長できているでしょうか」
真面目なトーンの呟きに対し、ダルマはけろりと言い放つ。
「そりゃしてるさ。お前さっきの新米ども見ただろ、アイツらお前と歳変わんねェぞ?」
夢中でお菓子を頬張っていた彼らを思い出し、ニーロは苦笑する。
「オレだって西方へ行ったばかりの頃は、何もかも珍しくてきょろきょろしていましたよ。そうじゃなくて」
どう言い表わせばいいのかニーロが言葉を探していると、ダルマは炭酸水で喉を湿してから口を開く。
「俺ァしてると思うぜ。暮れに戻って来た時、自分の力について悩んでたろ? それだって成長の証だ」
「そうでしょうか、」
「おうよ。うちの新米どもは敵を1匹でも多く倒すため、生きて帰るために、強くなりてェとがむしゃらに突っ走るばかりだ。お前さんみてェに自分を省みれるようになるのは、もうちっと先だろうなァ」
ハンターとなって早々に己の力と向き合えたのは、ニーロにとって大きなプラスになるだろう。それができたのも、色々な考えの人がいるハンターになったからこそだ。
そう語るダルマの言葉を、ニーロは胸の内で噛み締めた。
「ま、しっかりやれよ」
力強く背を叩かれ、油断していたニーロは壁から転げ落ちそうになる。慌てて縁を掴んで堪えると、思い出したように首を傾げた。
「そうだ。オレ、気になっていることがあるんです」
少なくなった炭酸水を一気に呷るダルマへ、ニーロは少しはにかんで言う。
「……恋って、どんな感じなのでしょうか」
次の瞬間、ダルマの口から炭酸水が放物線を描き噴出された。しかし思案中のニーロは気付かない。
「ダルマさんなら経験があるかと思って」
「おま……突然何を」
「守らないと、とか、愛らしいと思うことはあるのですけれど」
鼻を押さえ悶絶するダルマだったが、咳払いして取り繕う。
「何だァ、気になる相手でもできたのか?」
「そういうわけでは……ない、のかな。それが分からないから聞いているんじゃないですか」
ちょっぴりむくれるニーロ。ダルマは顎髭を擦って考え込む。
「俺も随分前の記憶しかねェからなぁ……よく言う『命懸けてでも守りたいと思う』なんざ、俺らみてぇな職じゃある意味日常茶飯事だしな」
「やっぱり経験おありなんですね?」
「この歳まで何もなかったら、それはそれで怖ェだろ」
「まあ確かに」
ダルマは眉間に皺寄せ考えこむ。ニーロは期待を込めて次の言葉を待った。
が。
真剣な顔のダルマから飛び出したのは、
「下半身に聞いてみちゃどうだ?」
ニーロ、身体をずらし、無言でダルマから遠ざかる。
「待て冗談だ!」
「真顔でしたよね?」
「冗談だって! いや照れンだろ、昼間っから素面でこういう話はよォ!」
「ならシャンカラさんに、」
「やめとけ、アイツは色恋なんざ解さん朴念仁だ」
そうしてやいやいやっていると、遠くの空から飛龍の一団が近付いて来るのが見えた。件の朴念仁率いる警邏隊が戻ってきたのだ。
「随分早ェな。負傷者でも出たか」
「オレも何か手伝います」
即座に壁から飛び降りたダルマに続き、ニーロも身軽に着地する。
「悪ィな」
「いえ。離れたとは言え、オレも龍園の民ですから」
ふたりは顔を見合わせ笑い合うと、急ぎ出迎えに走った。
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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【ka6990/ニーロートパラ/男性/19歳/碧蓮の狙撃手】
ゲストNPC
【kz0251/ダルマ/男性/36歳/年長龍騎士】
ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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お世話になっております。帰郷したニーロさんのお話、お届けします。
当方のオッサンがすみません。ダルマがすみません!!
本当に本当にすみません……もうそれしか出てこないです、すみません。
イメージと違う等ありましたら、お気軽にリテイクをお申し付けください。
この度はご用命下さりありがとうございました!