※本商品は「ファナティックブラッド」の本編とは異なるアナザーノベルであり、「ファナティックブラッド」ならびに他ゲームコンテンツでプレイングやキャラクター設定の参照元にすることはできませんのでご注意ください。
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灯籠アパートの913号室の烏天狗
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なあ、あんたは知ってるか?
俺は知らなかった。だから、教えてやるよ。世の中、死んでも終わりじゃねぇってこと。
俺はどっちかなぁって思ってたんだ。天国に羽ばたくか、地獄に落ちるか。でも、違った。
救いってあるんだな。またあいつらとこうやって、笑い合えるなんてよ。
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「にゃんにゃん」
「うん……」
「うにゃあぅなーご」
「うんうん……」
「にゃあーん」
「そっか……陸ー……このにゃんこ……やっぱり、なに言ってるかわからない……」
じゃあ、今のやり取りは何だったんだ……!?
「んー……多分、だけど……――よっ」
俺は他のやつらの邪魔にならねぇように背中の羽を広げると、街の真ん中から飛翔した。クリスマスのイルミネーションで溢れる虹光が夜の色に一層煌めいて、俺の双眸を細める。
「さーて、何処だ?」
俺は推測に任せて、目と羽を泳がせながら街を見下ろしていると――
「おっ?」
いた。
あそこの通りは……ああ、そういや最近、新しい店が入ったってヴァンパイアの姫が言ってたな。大家とデートしてきたんだって、嬉しそうに話してたっけ。そんなことを考えながら、俺の羽は風を切り、降下していく。目標はスープ専門店――の隣にある、デッカいもみの木だ。
「うお、間近で見るとスゲェー。オーナメントも気合い入ってんなぁ。もしかして、コレに釣られたか?」
俺はオーナメントだらけの枝を指先で退けると、首を傾げるように奥を覗いた。そこには――
「ふにゃあ」
「あ……おかえりー……」
夜空を仰いでいた相棒の所に戻ると、俺は腕に抱えていた仔猫を放してやった。
「ちっちゃいにゃんこ……?」
「ああ。ミネストローネ通りのもみの木に登って降りられなくなっていたみたいだ」
仔猫は相棒の足許を横切り、一目散に親猫の元へ駆けていく。母猫は安心したように仔猫に頬ずりをすると、甘えた声を出す仔猫の身体を舐めてやっていた。
「この子が迷子になってるって、よくわかったねー……?」
「んー。実は前、この猫が子供産んだっていうのをウチの“猫”から聞いたことがあってさ。でも子供の姿はないし、必死に何か訴えてるみたいだったから、まさか……って思ってな」
「はわぁ……なるほど……。名推理だねー……さすが、しゃちょー……」
その呼び名に、思わず苦笑する。そんな大したものじゃないし、企業でもない。
「いや、今回のはまぐれだよ。“猫”の情報がなきゃ、未だに迷走してたかもしれないし」
「そうかな……? でも……猫語のわかるあの子が一緒だったら、ラクだったね……」
「まあ、あいつらには別件任せちまったからな。今頃、向こうも頑張ってると思うぜ」
俺と、俺の相棒の九尾の狐、ウチの“猫”もとい猫娘と、天邪鬼――俺達はこの四人で、万屋を営んでいる。こんな世界だ、依頼をしてくるやつも“人”とは限らない。いや、人って言う言い方は変か。この世界に“人間”って一人もいないんだよな、そう言えば。俺だって、烏天狗だし。まあ、この世界では化物も、動物も、良い意味で平等だ。
「――ん? 何だ、礼か?」
親子の再会も終わったのか、親猫が何やら口に咥え、俺に寄越してきた。
「ありがとなー」
猫の親子は一声鳴いて返事をすると、イルミネーションの海に消えていった。
「なに貰ったの……?」
俺が手許に視線を落とすと、それは個包装されたクッキーだった。……鼠の。
「半分に分けるか。ほら」
俺は鼠の形をしたクッキーを二つに割り、封を切って、一つを彼女に手渡す。途端、俺の胸にむくむくと湧き上がったのは純粋(←これ大事)な悪戯心。
「見ろよ、灰色のクッキーだぜ。もしかして、本物の鼠が材料だったりするのかもな?」
俺がニヤリと笑って――って、あ。食べた。
「んむんむ……美味しいー……最近のネズミさんは味がよくなったのかなぁ……?」
……。
なあ、それは冗談で言ってるんだよな……?
「陸は食べないの……? ネズミさん……」
言い方。その言い方ヤメテ。
「……いや、食べるよ(ぱくり) あ、胡麻味」
うん、フツーに美味い。
「――よし。迷子猫の依頼も無事に片付けたし、そろそろ戻るか」
「あ……私……アパート地下のお茶屋さん、行きたいな……。ナスちゃんとキュウちゃんに会いたい……」
「それはいいんだが、時間大丈夫か? そろそろ閉店っぽい頃合いだが……」
腕時計に据えていた視線をふっと彼女に移すと――
「抱っこー……」
彼女は俺に向けて細い両腕を広げていた。
……。
これは……アレだよな。
「陸の羽でひとっ飛びー……して……?」
デスヨネ。
「しょうがねぇな。仰せのままに、お狐様」
無防備に抱き付いてくるその体温に、甘い香りに、俺は何時も負けてしまう。でも、それはしょうがないんだ。こいつは俺の相棒で、俺の――
「ちゃんとつかまってろよ」
唯一だからな。
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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【ka7041 / 浅生 陸 / 男性 / 外見年齢:26歳 / 森月の烏天狗】
【kz0239 / 紅亜 / 女性 / 外見年齢:18歳 / 赫花の九尾の狐】
ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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日頃よりお世話になっております、ライターの愁水です。
烏と狐の冬の一幕、お届け致します。
陸くんの烏天狗は、以前の妖怪PPの印象がとても強く残っていたので、参考にさせて頂きました。紅いお狐も同様です。そして私はうどん派です←
陸くん自身もそうですが、周りのお友達様も縁を大切になさるお方が多いので、色々な方の存在をちょろ出しさせて頂きました。此処では無い何処かの世界でも、皆様と共に仲良く過ごしている姿がとても、とても、陸くんらしいかな、と。
当初の予想よりもNPCとの描写が多くなってしまい、申し訳ありません。少しでもお気に召して頂ければよいのですが。
ご依頼、誠にありがとうございました!