※本商品は「ファナティックブラッド」の本編とは異なるアナザーノベルであり、「ファナティックブラッド」ならびに他ゲームコンテンツでプレイングやキャラクター設定の参照元にすることはできませんのでご注意ください。
十字墓

 帰り際、挨拶にと礼拝所へ立ち寄った大樹は、司祭から祭壇布と同じ柄の包みを差し出された。
 僅かながらの遺品の中でも十全な状態なのはこれだけだったそうだ。
 大樹は少しの迷いもなく受け取り、そうっと布をめくってみた。
 中から姿を見せたのは、幾重も連なる数珠、そしてあの不思議な十字墓――否、ロザリオ。
 大樹の掌ほどもない、木製の小振りな品だ。
 司祭はいった。
 彼女はリアルブルーよりおいでた御仁と伺っておりました。
 ならば多少なりとあちらに近い形で葬って差し上げたほうが安らかに眠れるのでは――と。
 ゆえ、これを異界の祭具と見受け、同じ形の墓標を仕立てることを思い立ったのだそうだ。
(どうりで)
 大樹は赤く深い瞳をこらして、小さな小さなロザリオを、そこに刻まれた文字を見つめた。
(あ)
 その言葉に、目を見張る。
「……」
 司祭がいかがなされたと尋れば、ようやく我に返ることができた。
「すみません、少し考え事を。あの、ありがとうございます。ところで、」
 大樹はそこで一旦言葉を区切る。
 自分にその資格があるのかと、少し逡巡があったから。
 けれど皆まで言うまでもなく、あの方もそう望んでおられることでしょうと司祭は頷いてくれた。

 そうして今、大樹はリアルブルー行きのゲートへ向かっている。
 村を訪れたときは花束を抱いていた手に、今度はロザリオを握り締めて。
 刻まれた言葉を。
 彼女の思い出を。
 この胸の感謝を。

 僕の知らない彼女のことを知っている、きっと優しい人達の元に届けるために。
 


━あとがき━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・
 登場人物
【ka7084 / 深守・H・大樹】

 刻まれた言葉については敢えて触れないでおきます。どうかPL様の御心のままに。
 ご依頼まことにありがとうございました。
  • 0
  • 0
  • 0
  • 0

発注者:キャラクター情報
アイコンイメージ
深守・H・大樹(ka7084)
副発注者(最大10名)
クリエイター:工藤三千
商品:おまけノベル

納品日:2019/11/18 11:03