※本商品は「ファナティックブラッド」の本編とは異なるアナザーノベルであり、「ファナティックブラッド」ならびに他ゲームコンテンツでプレイングやキャラクター設定の参照元にすることはできませんのでご注意ください。
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永遠の星
●星の病室
ずっと前、どこかの年寄りに聞いた話だ。
曰く、人の記憶というものは成長過程に体験したことほど鮮烈に焼きつくものであるらしい。
独り立ちしてからは一部の印象的な出来事を除きどこか大枠で捉えているきらいがあるのに対し、子供のそれはもっと局所的で、何事にも常に等身大で臨み、向き合っている。
だから大人になると時が経つのを早く感じるのだと――わざわざ言われずとも誰もが自発的に思い至りそうなことを、たぶんそのときは適当に流していた。
なのに、レオーネ・ティラトーレ(ka7249)はこの話を時々思い出してしまう。
なぜなら、じき二十代も終えようと言うのに、夜毎観る夢は決まって思春期の頃のそれだから。
始まりは懐かしいローマの静かな街、何度も歩いた情景の連続。
隣にはいつも“彼”がいて、他愛もないことから若いなりの真剣な悩みまで、たくさん語り合った。
瞬間でしかないひとつひとつは、けれどいつまでも色褪せずに残る。
永遠に等しい、輝かしい星との思い出達。
ここから場面はいつも、あの日の病室へと切り替わる。
でも、顔がよく見えなくて、聞こえるのに声が分からなくて。
苦しそうな“彼”の手を握りながら、自分はなにかを言っていて。
気がつくとレオーネは“彼”になり、その視点で自身の顔を見ようとして。
そこで目が覚めて、涙を拭う。
それがかつてのレオーネの、一日の始まりだった。
だが、地上の星を見つけてから、夢の内容が変わっていった。
病室でも、レオーネは“彼”と語り合うようになっていた。
記憶にあることも、そうでないことも、いつかのようにたくさん話して聞かせた。
息の合った掛け合いが嬉しくて、“彼”もまた笑顔で、ひどく安心したものだ。
そしてある夜の夢で、“彼”は彼女のことを聞きたがった。
翌朝、レオーネはやはり、涙を流していた。
けれどそれは、悪いものではなかった。
━あとがき━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・
おまけもご依頼ありがとうございました。
はじめはローマの情景をがっつり書いてみたのですがぜんぜん字数に収まらずレオーネさんの出番を圧迫するばかりでしたので思い切りよく割愛し、三千の妄想成分多めに、うっすらと本編の続きっぽくしてみました。
こちらもお気に召しましたら幸いです。