※本商品は「ファナティックブラッド」の本編とは異なるアナザーノベルであり、「ファナティックブラッド」ならびに他ゲームコンテンツでプレイングやキャラクター設定の参照元にすることはできませんのでご注意ください。
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輝く、唯一の華
花束にはひとつとして同じ花はなくて、けれど全てが青かった。
紫を青と呼ぶような、そんな花はひとつもない。
レオーネ・ティラトーレ(ka7249)の脳裏をよぎるのは、愛を伝える為の常識と自然と覚えたいくつもの花言葉。
一輪ずつを集めた花束は小さくとも種類は多く、言葉はひとつに限られない。流れゆく言葉を並べて、組み合わせて、選び直して。導き出される言葉を考えようとして、けれど上手く纏まらない。
その様子を見た彼女の言葉は簡潔で、だからこそはっとさせられた。
『空の青だ』
レオーネの瞳にもある空の色を真直ぐに見つめられ、伝えられたその言葉に導かれて、視界が広がる。
それまでレオーネの中でひしめき合っていた言葉達は全て輝きの前にかすんで、ただ花束を見つめ直す。
花言葉に限らず、別の意味合いを与えられ、声に出さずとも言葉を想いを伝える手段となった者はいくつもあって、レオーネ自身その言葉を利用しているし、それを当たり前に思っていた。
けれど彼女はそれがあることを知ってなお使わない。
レオーネの本質を見透かすその瞳で、その気質で、レオーネの為だけの想いを込めて形にしてくれた。
誰かの言葉を借りるのではなく、彼女自身の言葉を添えてくれたのだ。
小さな植木鉢もまた、空色の花が咲くらしい。
夏に咲く晴天の花は、星の形を描くとのこと。
まさに地上に咲く、レオーネ自身を映す星だ。
レオーネの奥底にある空を写しとった花束と、彼女の写し身のような鉢は、同じ部屋の中に仲良く並んでいた。
交わしたのは花束という約束で、だからこそ気遣いを、運びやすさを考えてくれたのだろうけれど。
籠を含めた全てが未来を示しているようにも思えて、どれだけ喜びが沸き上がったか。
思いつくままに重ねた愛の言葉に、彼女の頬が鮮やかな赤に染まっていった。
やりすぎたかもしれないと思いはしたけれど、レオーネ自身止められなかった。
その言葉を全て、どれも真正面から受け取ってくれる彼女は愛らしく、そして、綺麗だ。
所作や外見だけには限らない。
言葉選びや気遣いにも表れる、その在り方が。
彼女の前では見せなかったけれど、家まで送り届けて、彼女の部屋からは見えない場所までは抑え込んだ。
自室でひとりになってはじめて、胸元のペンダントに触れる。
懐中時計の意匠を、星を、指でなぞる。
「お前のことも含めて俺を示してくれる、そんな華なんだ」
━あとがき━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・
【レオーネ・ティラトーレ/男/29歳/猟撃影士/甘やかすだけでなく、互いに】