※本商品は「ファナティックブラッド」の本編とは異なるアナザーノベルであり、「ファナティックブラッド」ならびに他ゲームコンテンツでプレイングやキャラクター設定の参照元にすることはできませんのでご注意ください。
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●貴族の義務
「わしには一人息子がおったんじゃよ。……先の革命が起こる前に死んでしまったがの」
突然の告白にユリアン・クレティエ(ka1664)は表情を凍らせた。
「まぁ、40近くもなってわしに対する反抗期が終わらんでなぁ。まともに会話も出来ないままじゃったな」
あまりにも淡々と告げるフランツ・フォルスター(kz0132)とは対照的に、受けた衝撃が大きすぎたユリアンはうまく思考が纏まらない。
「そん、な……伯なら、何か手を打てたのでは……?」
「だと良かったんじゃが……まさかあそこまで見え透いた駄策に嵌まるほど愚か者ではないだろうと、自分の息子を過信した結果じゃな」
――それほどまでに、自分を出し抜きたかったのか。それほどまでに、追い詰められてしまったのか。
今となってはわからない。
「わしは当時、王の側近として重用して貰っておったが、あの方は厳格な実力主義者でもあった。ゆえに見合う能力のなかったアレは功を焦ったんじゃろうなぁ」
覚醒者であれば、また違っただろう。
フランツほどに努力を重ね、己を変える出逢いがあれば違ったかもしれない。
だが、そのどちらも息子にはなかった。
与えられた家柄と富を享受するだけで、それに見合う……否。維持する為の努力すら出来なかった。
「思えば、母親が死んだ後から自暴自棄のようになって、わしの言う事には耳を貸さなくなったのぅ」
ユリアンは少なからず混乱した頭でフランツを見た。
今まで笑顔で会話をしていた好々爺のようなフランツと、今、自分の息子の死について淡々と話すフランツが、自分の中で一致しない。
「それは……寂しかったのでは?」
カラカラに乾いた喉から出た言葉はとても陳腐に聞こえた。
「かもしれん。だが、人が“ただ人のまま”この国を支え、領土を守る為には思考する事を止めてはいかんのだよ。わしや妻にはこの領地で暮らす人々を護る責任がある。それを放棄するというのなら、たとえ息子であっても庇い立ては出来ん」
『ノブレス・オブリージュ』――その言葉がユリアンの中で煌めいた。
それは、誰よりも厳しくなければ、これほどに厳しくなければ護れない物なのかとユリアンは愕然としてフランツを見つめる事しか出来なかった。
━あとがき━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・
ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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引き続き、有り難うございます。葉槻です。
例のお爺ちゃんしゃべりすぎシーンです。
ノベルでは、ユリアン君の中で答えが出て微笑んだ後です。
FNB本編の中ではOPとかではちょいちょい出ていた黒フランツ。
皆さんの前では好々爺ですが、違う面を目の当たりにしたユリアン君は吃驚しただろうなぁと。
それでもユリアン君なら落としどころを見つけるんじゃないかなぁと、この内容になりました。
口調、内容等気になる点がございましたら遠慮無くリテイクをお申し付け下さい。
またOMCでお逢いできる日を楽しみにしております。
この度は素敵なご縁を有り難うございました。