※本商品は「ファナティックブラッド」の本編とは異なるアナザーノベルであり、「ファナティックブラッド」ならびに他ゲームコンテンツでプレイングやキャラクター設定の参照元にすることはできませんのでご注意ください。
孤軍奮闘 後日談

 いい香りがする。
 麦の香り…そして酵母の香り…それぞれの素材の持つ独特の香り。
(…そうこの匂いは確か、あのパンの)
 その事に気付いて、彼・鞍馬 真(ka5819)がゆっくりと目を開ける。
 するとそこには見慣れない天井があって、
「あぁ、やっと目覚められましたか! よかった…本当に良かった」
 それは男の声だった。その声の主を探ろうと首を捻って、彼は自分の今の状態に気付く。
 清潔なシーツに白いカーテン、視界が九十度傾いているのはきっと自分が横たわっているからなのだろう。
(そうか、あの後私は…)
 突然の雑魔の襲来に立ち向かった彼――しかし、今はもう穏やかなものだ。
「あの…そこのハンターさん。あの時は有難う御座いました」
 そんな彼に礼を言うのは隣りのベッドの女性だ。
 彼同様、頭に包帯を巻いて…話から察するに彼女があの時の女性らしい。
「いや、私は当然の事をしたまで…それより子供の方は?」
 彼女が抱えていた筈の幼子がいない事を心配し彼が問う。
「ええ、お蔭様で傷一つなくて…本当になんて言ったらいいのか…」
 女性の瞳に涙が浮かぶ。
「本当はもう諦めかけていたんです。でも、どうしてもあの子だけはって思って…」
 意識を失くしていた間も彼女は必死に子供の生を願ったのだろう。あの時、彼女は蹲ったまま微動だにしなかった事を彼も覚えている。
「貴方がいてくれたから助かったんです。本当に有難う」
 彼女が上体を起こして、小さく頭を下げる。自分も身体を起こそうとして、ずきりと痛んだ頭に傷の深さを改めて知る。
「どうぞ、寝ていて下さいまし。もうすぐお医者様が…」
 彼女がそう言いかけたと同時にさっきの声の主が医師を連れて戻ってきた。
 腕には子供を抱えて、彼女の傍に戻ったという事は彼が旦那様なのだろう。
 そんな光景を横目に、彼は医師の診察を受ける。
「ふむ、さすがハンターですな。数日様子を見たら退院しても構わんでしょう」
 それを聞き良かったと胸をなで下ろす隣の夫妻。それに加えて、真には嬉しい贈り物が待っている。
「あの、これ宜しければ食べて下さい」
 鼻を擽るこの香り…目覚める前から気になっていたもの。受け取った紙袋を開けばそこには焼立てのパンが詰まっている。
「これはもしや…」
「ええ、うちの主人、パン職人なんです。評判いいんですよ」
 少し興奮気味の彼に女性は小さく微笑む。
「そうか…それはそれは」
 何たる偶然に驚きつつも、あの時食べ損ねたパンにした舌鼓を打つ。そして、レシピを尋ねた彼に夫妻は笑顔で応じてくれる。
 世界が変わっても人の温もりは変わらない――彼はパンを噛み締めつつ、そう思うのだった。

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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【 ka5819 / 鞍馬 真 / 男 / 25 / 闘狩士 】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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お待たせいたしました。
おまけの発注も有難う御座います、奈華里です。
全く別物も考えていたのですが、シングルの文字数いっぱいを戦闘で使わせて頂きましたので
おまけは気になるであろう助けた後の『後日談』という形にまとめさせて頂きました。
本発注のシングル共々気に入って頂けたら嬉しいです。それでは。
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発注者:キャラクター情報
アイコンイメージ
鞍馬 真(ka5819)
副発注者(最大10名)
クリエイター:奈華里
商品:おまけノベル

納品日:2016/01/29 11:03