※本商品は「ファナティックブラッド」の本編とは異なるアナザーノベルであり、「ファナティックブラッド」ならびに他ゲームコンテンツでプレイングやキャラクター設定の参照元にすることはできませんのでご注意ください。
指先の攻防戦
 故郷がどのような場所だったのか、鞍馬 真には思い出すことができない。
 リアルブルーという言葉は知っている。が、空の色も風の匂いも人の姿も、すべてが茫漠とした霧の向こうに隠れ、真を追憶に浸らせてなどくれないのだ。
「リアルブルーの私はどんな人だったんだろうね」
 町外れの目立たない場所に建てられた自宅の居間、ソファに寝転んだ真がうそぶく。
 応える者はなかったが、止まり木から飛んできたモフロウが彼の左肩にとまって小首を傾げた。
「きみにとって私はどんな人だい?」
 やわらかな羽毛に包まれた首筋を指先でくすぐってやる。
 モフロウはうれしげに喉を鳴らし、羽をばたつかせた。
 少なくともモフロウにとって、真はいけすかない奴ではないようだ。しかし。
 考えてしまわずにいられなかった。リアルブルーの鳥はモフロウのような形をしているんだろうか? ――家族は、鳥が好きだったんだろうか?
 と。
 真の上をモフロウが歩いてきて、顔の真ん前に陣取った。どこか憮然とした顔で彼をのぞきこみ。フォッ、フォッ、低い声をあげる。
 多分だが、「自分を見ろ」というアピール。
「……ちゃんと見てるよ。ちゃんと見えてる」
 故郷も家族も見えなかったが、モフロウのふわふわした丸っこい体は見える。モフロウがここにいて、真もまたここにいるから。
 置いてきたものをなつかしむことはできずとも、今これからを重ねていくことはできる。まずはそれを楽しもう。まずはそう、目の前にいる“家族”を大事にして。
 そしてまたモフロウに指を伸ばしかけた、そのとき。
 猛烈な勢いで横からぶっ飛んできたもう一羽のモフロウが、元からいたモフロウに体当たり。弾き飛ばして真の指先を奪った。
 あっけにとられた真と、満足げなもう一羽。そこへ戻ってきたモフロウが激しく鳴きながらもう一羽に蹴りをくれ、もう一羽もまた応戦し――真の上でバトルが開始した。
「ちょっと――待って痛いから!」
 ギャーギャーと互いを蹴り合い、つつき合うモフロウたちの間に割って入る術はなく、かぎ爪で胸をチクチクにじられながら真はうろたえるよりなかった。
「ああもう、私の右手と左手を分け合ったらいいじゃないか!」
 ぴたり。モフロウたちは動きを止めて首を傾げ。今度はどちらがどちらの手を独占するかでバトルを開始。
 胸元を深く抉られて真が悲鳴をあげるまで暴れ続けたのだった。


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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【鞍馬 真(ka5819) / 男性 / 22歳 / 献身なる武人】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 人は前へ進まばこそ、返り見る時を得るもの。しかし慢心するなかれ。災厄はその時をこそ狙い澄まし、降り来たるものなれば。
 
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発注者:キャラクター情報
アイコンイメージ
鞍馬 真(ka5819)
副発注者(最大10名)
クリエイター:電気石八生
商品:おまけノベル

納品日:2017/07/28 16:36