※本商品は「ファナティックブラッド」の本編とは異なるアナザーノベルであり、「ファナティックブラッド」ならびに他ゲームコンテンツでプレイングやキャラクター設定の参照元にすることはできませんのでご注意ください。
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夜の後に
瞼を透過して、眩しい光が見えた。
真はようやく目を覚ます。
体の下には柔らかく温かいものがあり、空気は清浄で肺腑に染み渡る。壁や天井は真っ白で、カーテンは染み一つないクリーム色だった。
「ここは?」
思わず真は呟いた。
すると、そんな温かさとは対照をなす冷たい声が降ってくる。
「病院の、あなたの病室の、ベッドの上です」
声の主は、真が寝ているベッドの脇で作業をしているようだった。
「病院……?」
「ええ、そうです。昨晩あなたが抜け出した、ね」
機械のようにカタカタと喋る女性だった。彼女は白い衣服を着ているし、きっと看護師なのであろう。
真はどうして自分が病院にいるのか理解できなかった。最後の記憶を思い出す。たしか、訓練場で夜明けを見て……。
と、考えているところへ看護師の彼女が口を挟んだ。真が状況を理解していないのを見て取ったらしい。
彼女曰くこうだ。
真はあの後訓練場で倒れたらしい。それを朝早く体を動かしに来たハンターの一人が発見して、真が病院着であることから推理し、この病院に連絡をいれたのだそう。そして、病室に戻され、今目が覚めた、ということらしい。
「……私は眠っていたのか」
「ええ、そりゃもう、ぐっすりと」
魘されるようなこともなかったようだ。こんな気分は随分久しぶりな気がした。
真はふと、胸の傷が気になって手を当てて見た。しかし、包帯は取り替えられたらしく、血で汚れた後はなかった。
再び、真のそんな疑問が伝わったのか、看護師はせかせかと喋った。
「胸の包帯はなぜか汚れていましたね」
「なぜか、とは?」
「とくに傷もないのに、ということです」
真は、指先で、あの影に貫かれた部分を撫でた。夢だから跡になるはずないし、依頼でも胸には傷は負わなかったはずだ。
「夢の中で、刺されてしまって」
真は本当のことを言って見ることにした。
しかし看護師は眉を吊り上げて、ご冗談はおよしなさいという表情をみせたので、真は曖昧にはにかんだ。
「それじゃ、わたしは先生を呼んできますから」
と、きびきびした動作で病室を出て行こうとした。
「待って」
真はその背中を呼び止めた。そして、
「ありがとう」
と、短く告げた。
看護師はちょっと振り返って、まったく表情を崩さずに、
「仕事ですもの」
と、言った。
しかし、その言葉は少しだけ温かい気がした。
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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【ka5819 / 鞍馬 真 / 男 / 22 / 闘狩人】
ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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傷を負う者もいれば、傷を治そうとする者もいるのだ。
重ね重ね、ご依頼いただきありがとうございました。