※本商品は「ファナティックブラッド」の本編とは異なるアナザーノベルであり、「ファナティックブラッド」ならびに他ゲームコンテンツでプレイングやキャラクター設定の参照元にすることはできませんのでご注意ください。
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冥府の番犬
「急な依頼で申し訳ないザマスね」
森山恭子(kz0216)は、そう言いながら鞍馬 真(ka5819)をラズモネ・シャングリラのブリッジへと招き入れた。
鞍馬が依頼を一つ終えてハンターズソサエティへ報告に戻った際、緊急依頼として飛び込んできたのが恭子からの依頼であった。
「今回の依頼は新型CAMの稼働テストだそうですね」
「そうザマス。軍から早急なテスト結果提出を要望されているザマス」
恭子が困った素振りをしながら、そっと肩に手を置いた。
先程から鞍馬に対して過度がスキンシップを試みる恭子であるが、当の鞍馬は新型CAMのコンセプトと操縦方法を脳裏で反芻していた。
――新型CAM『ガルム』
対異世界支援部隊『スワローテイル』の設立と同時に研究開発が開始された機体であり、異世界での強行偵察を主軸に置いた設計を為されている。
最大の特徴は『シピン』と呼ばれる小型機の装備である。ガルムと常にデータリンクを行い、周辺情報を逐次ガルムへと送信する。
もう一つの特徴は背面に装備されたジェットブースターである。障害物回避には向かないが、直線距離での移動ならば既存機の追随を許さない。
「ガルムのジェットブースターは出力の問題から長時間の理由は難しいザマス」
「短時間の使用を連続で行ってもレッドゲージに到達する、か。現時点では敵の追跡を振り切る以外に使えそうにないですね」
渡されたタブレットで開発班からのデータをチェックする鞍馬。
武器はボルトアクション式スナイパーライフル。脱着式マガジンに最大10発まで装填可能で長距離用望遠レンズが標準で装備されている。
(ガルムは局地における強行偵察を想定している為、多種の装備を検討……今回はこのスナイパーライフルもテストしろという事か)
鞍馬は真剣な眼差しで資料に目を落とす。
この依頼が成功してガルムが一定以上の能力を発揮すれば、正式に量産されてラズモネ・シャングリラへと配備される。
今回の依頼はテストであっても重要な依頼だ。
鞍馬としても手を抜く事はできない。
「やってみます」
「ま! さすがは鞍馬さん。あたくし、期待してるザマス」
歓喜の声を上げる恭子。
その横で鞍馬は恭子を一瞥する。
「あの……喜ぶのは構いませんが、勝手に腕を絡ませるのは止めてくれませんか?」
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「鞍馬、ガルム……出る」
カタパルトから勢い良く発進するガルム。
重力装置から受ける鎖から解き放たれ、ガルムの機体は宇宙空間へと投げ出される。
自動で姿勢制御が為され、背面のブースターから勢い良く青白い光が流れ出る。
「予定ポイントである小惑星帯へ到着。これよりテストに入る」
テストで指定された場所は小さな惑星が集まった宙域。
小惑星帯の合間に破壊された軍兵器の残骸が漂っている。今回のテストではこの宙域に仕掛けられた無人タレットを発見して破壊する事だ。
「鞍馬さん、お願いするザマス」
「シピン展開」
ガルムの腰部から発射された三つの円盤――シピンは勢い良く小惑星帯へと飛び込んでいく。
その間にもシピンが集めた周辺データが次々とガルムへ流れ込んでくる。
「凄いな。瞬く間に周辺の状況が集まってくる。搭載したカメラでズームも可能か」
映し出されたモニターには次々と周辺地域の情報が表示される。
幻獣や霊闘士がファミリアズアイで似たような偵察が可能だが、こちらは三機のシピンから周辺の状況を画像データでまとめてくれる。そのまま情報をラズモネ・シャングリラへ送信可能な為、即応性が高い。
「その機体は通信の中継ポイントもできるザマス」
「これは凄いな……ん? ターゲットはこれか」
小惑星の裏側に設置された無人タレットを発見した。
しかしガルムの位置からは無人タレットが岩場に隠れてスナイパーライフルでは狙撃できない。
本来であればガルムは小惑星の裏に回り込んで狙撃する必要がある。
「シピンは単なる偵察機じゃない、か。こういう時に使うべきか」
鞍馬はガルムにスナイパーライフルをその場で構えさせる。
照準に収めるは、無人タレット近くに配備したシピン。シピンの表面は特殊加工されており、スナイパーライフルの弾丸を跳弾しやすいように工夫されている。
つまり――。
「周辺データから角度を算出……狙撃する」
スナイパーライフルに衝撃が走り、銃弾が発射される。
銃弾はシピンに目掛けて飛来。シピンに衝突した瞬間、角度が変わって強制的にタレットの方に飛んでいく。
「タレット破壊。命中を確認」
「凄いザマス! 鞍馬さんだからこその結果ザマス!」
通信に恭子の甲高い声が響き渡る。
体は疲労困憊なのだが、恭子の相手をしているだけで精神的な疲労も溜まってくる。
こういう時は、さっさと任務を終わらせるに限る。
「あ、ありがとうございます。残るターゲットも早々に片付けますから」
恭子からの世辞を聞き流し、鞍馬は再びガルムのモニターへ意識を集中させる。
鞍馬の目となったシピンは小惑星帯を飛び回り続けた。
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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【ka5819/鞍馬 真/男性/22/闘狩人(エンフォーサー)】
【kz0216/森山恭子/女性/58/一般人】
ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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近藤豊でございます。
この度はおまかせノベルの発注をありがとうございます。
今回は新型CAMの操縦テスト依頼に参加した風景を描いてみました。本編でこの機体が登場する訳ではありませんが、CAMの新たな可能性を感じ取っていただければ幸いです。
恭子がちょっといつも以上にテンションが高いのはイケメンハンターが来てくれたから、という事で……。
それではまたの機会をお待ちしております。