※本商品は「ファナティックブラッド」の本編とは異なるアナザーノベルであり、「ファナティックブラッド」ならびに他ゲームコンテンツでプレイングやキャラクター設定の参照元にすることはできませんのでご注意ください。
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ワーカーホリックの休日?
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特段依頼もなく、特別何かをする予定もなく。
残念ながら友人は少し用事で家を空けている様子。
「うーん。どうしようか」
鞍馬真は首を捻って空を見上げる。
愛龍と一緒に空を駆けるのもいいだろうが、つい先日戦場で酷使してしまったのを考えると気が引けてしまう。
こういう時、普通の人はどうしているのだろう。
自他共に認めるワーカーホリックの真に、完全オフという巨大なハードルが立ち塞がったのだった。
これは、そんな一日のお話。
まずは買い物にでも行ってみようかと街に繰り出してみる。
ウインドウショッピング、と言うやつでもやってみようと思った矢先。
眼前に重い荷物を持ってよろよろやっとの思いで歩いているおばあさんがいた。
「大丈夫ですか?よければ行先までお持ちしますよ」
「おやまぁ、すまないねぇ」
咄嗟に駆け寄り柔らかく声をかければ、おばあさんは嬉しそうに笑う。
聞けば、今日は孫たちが家にやって来るから、腕によりをかけた料理を食べさせてあげるのだと食材を買い込んだのだという。
「よかったら貴方も一緒に食べないかい?」
「有難いお言葉ですが、どうぞ団らんを楽しんでください」
結構な距離のあった家まで荷物を持って行ったお礼にと、良く冷えたお茶を一杯と飴玉を貰っておばあさんの家を後にした。
さて、気を取り直してウインドウショッピング、と思った次の瞬間。
「うわああああん!おかーさあああん!!」
今度は迷子の少年を発見した。
真はポケットから飴玉を取り出しつつ、身を屈めて少年と視線を合わせる。
「どうしたんだい?お母さんとはぐれたのかな」
泣きながら頷く少年の手を取って飴玉を乗せると、少年はしゃくりあげつつ掌の飴に釘付けになった。
まず、泣き止ますことに成功だ。
子供の話をうまく繋ぎ合わせると、どうやら格好いい車のおもちゃを見つけて、そのお店の前でずっと眺めていたらしい。
そして気が付くと、母親とはぐれていた、という次第だった。
「それじゃあ、お兄さんが一緒に探してあげるよ」
「?おにーさんなの?」
中性的な顔立ちに長い黒髪。優しい眼差し。確かに小さな子供からすれば、それはまるで――。
「あ、あはは……うん。おにーさんなんだ」
そっかぁ、と、少年は飴玉をさっそく口に含んでカラコロさせている。
泣いたカラスが、ってこういうことでも使っていいのかな。なんて思いつつ。
探すこと約30分後。
「本当に有難う御座いました!ほら、ちゃんとお姉さんにお礼言ったの?」
「ちがうよおかーさん、おにーさんなんだよ!おにーさん、ありがとー!」
「あ、いえ、無事に見つかってよかったです。ああお母さん大丈夫ですからよく間違われますから!気になさらないでください!」
すったもんだありつつ。二人に手を振って見送った。
「……なんだかいつも以上に疲れた気がするなぁ」
もう家に帰って来てしまった真は、椅子に座るとぺったりと頬をテーブルにくっつけた。
休日だというのに、人助け。
けれどそこが真のいいところなのだけれど、本人はそれを「ただのワーカーホリック」と言ってしまうのだ。
優しくなければ人を救おうとは思わない。
優しくなければ強くなろうなどと思わない。
真がそれに気づくのは、一体いつの日の事だろう。
小さく響く寝息。
今日も人助け、お疲れさまでした。優しい人。
(了)
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【ka5819/鞍馬 真/男性/22歳/闘狩人】