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【月機】これまでの経緯


更新情報(10月12日更新)
【月機】の過去のストーリーノベルを掲載しました。
【月機】ストーリーノベル
各タイトルをクリックすると、下にノベルが展開されます。
「……仲間?」
「はいッス! 自分の仲間達の名前は『ユキウサギ』って言うんスけど……」
続くツキウサギの説明。
ユキウサギはツキウサギと違い大幻獣ではない。
その為しゃべることはできないが……二足歩行のウサギ型幻獣で、小さいながらも人間のような生活を送っている。
昔はツキウサギを始めとする仲間と共に住んでいたものの、歪虚の侵攻によって散り散りになってしまったらしい。
長いこと眷属の行方が分からず、ずっと心配していたツキウサギにとって、今回の情報はまさに朗報だった。
「その話は誰から聞いたんだ……?」
「吾輩でありますよ!!」
錫杖を振り振りバタルトゥの足元から現れたのは、でっかいハムスター……自称幻獣王チューダ(kz0173)で。
いつからそこにいたのか、胸を張って口を開く。
「はいッス。ちょっと距離があるッスね」
「ふむ……。この辺りは大分減ってはいるが、歪虚が出ることもある。俺が送って行こう……」
「幻獣王である吾輩もついて行ってあげるのであります!」
「えっ! 本当ッスか!? 一緒に来てくれたら、ユキウサギ達が喜ぶッス! 仲間達、すごくフレンドリーッスよ!」
便乗したチューダにうんざりした目線を送るバタルトゥに気付かず、口角を上げるツキウサギ。
愛用のハンマーを手にすると、バタルトゥとチューダを振り返る。
「自分もナーランギ様に挨拶してから出かけるッス。2人共一緒にナーランギ様のところに行くッスよ!」
ツキウサギの脳裏に蘇る懐かしい記憶。
共に暮らしていた時も、のんびりした楽しい毎日だった。
仲間達も会えない間に、きっと色々なことがあったに違いない。
それもすべて聞かなくちゃ――。
足取り軽く歩き出すツキウサギ。
――この旅で思わぬ事件に巻き込まれるとも知らずに。
蛇の窟の中はシバのおもちゃ箱をひっくり返したようなトラップの数々。
「……あのクソジジイ」
危うく蛇の穴へ落ちかけたところでテトは毒を吐く。
そして広間を見たテトは火をカンテラの中に入れて足元を照らす。
様々な本や品物が所狭しと置いてあり、テトはよく集めたものだと感心してしまうが、あのジジイは珍しいもの、新しい物好きだったなと思い出す。
整理をしていた所、本の山の一番上を見たとき、テトは動きをとめた。
奥義に関する事の内容と察したからだ。
ファリフ達はこの本を読んだのだろう。
自分はファリフのようにたどり着けることができるのだろうかとテトは思う。
他に何かないかとテトが探しはじめた所、肘が本の山にぶつかって雪崩が起きた。
「あにゃ……」
テトが一冊の手帳を拾い上げたとき、本の間から紙切れがひらりと落ちる。
拾うと、それはシバの手書きのメモだ。
『テトがこの場所を見つけたとき、如何にするかはお前に任せよう。
お前が奥義を身につける時が来る時を楽しみにしている』
いつ書いたかは分からなかったが、テトはメモを手放すことなく、握りしめる。
「シバ……」
辺境において、人の命は死は隣り合わせにあるものとある。
常に歪虚の攻撃の危機に警戒している。
この地の者にとって、死は当たり前にあるものだ。
テトの瞳からはらはらと涙が落ちる。
自分はこのような生き方ができるのだろうか……しかし、自分も進まないとならないのはわかっている。
ぶつかっても転んでも前を進みたい。
テトはゆっくり立ち上がって、蛇の窟を後にした。
●
テトが向かった先は魂の道。
そこの入り口には、一匹の猫がいた。切り落とされたように平らな岩の上で丸くなって寝ている。
「にゃ? お前どこから来たにゃ?」
眉をしかめつつ、テトが尋ねると、猫は閉じていた瞼を開く。
「もともとここにいたにゃ」
寝姿は変わらずに猫が人語で返す。
「にゃ!? ただの猫じゃないにゃ!?」
びくりと肩を竦めたテトは警戒する。
「あはは☆ びっくりしたぁー?」
テトの驚きように猫は楽しそうに笑う。歪虚には見えないので、用心深く見つめる。
「いきなり何の用?」
「……奥義を使えるようになるためにゃ」
「ふぅん、あなたが」
猫に覗き込まれたテトはなんだかバカにされたように思えて腹を立ててしまう。
「お前ににゃにがわかるにゃ! 何者にゃ!」
「幻獣よ。名はシャレーヌ」
あっさりと名を名乗るシャレーヌにテトは面をくらってしまい、絶句する。
「にゃんで……」
幻獣がこんな普通の猫の姿だとは思えなかった。
「まー、こんな姿だから、不審に思っちゃうわよねー。元の姿に戻るのも面倒だから、このままでいるのよ」
そういえば、大幻獣シャレーヌは人間嫌いという話を聞いた事がある。
身体中にある宝石を狙い、シャレーヌを飼おうと人間に狙われていたという話。
「でも、あなたここにいていいの?」
「え?」
シャレーヌの視線がテトの方へ向けられたと思ったら、彼女の視線はどこかを視ている。
「歪虚の動きが活発になってるみたい」
「にゃんでわかるにゃ……!?」
驚くテトを無視して話を続けるシャレーヌ。
「同じ幻獣のユキウサギが幻獣の里より北西へ向かっているようね。歪虚もまた、動き出しているわ」
そこで一度言葉を切ったシャレーヌはじっと、テトの顔を見る。
「あなたはここで奥義を得るために道を進むのであれば、それもいいけどぉ?。でも、ツキウサギをこのまま放置するのは得じゃないと思うのよね。あははははは」
シャレーヌの言葉がどういう意味を示しているのかはテトにも理解できる。
ここが壊されない限り、自分が生きている限り、またここには来れる。
今、するべき事をしなければならない。
ぎゅっと、手を握りしめたテトは踵を返して駆けだす。
「あ、待って。まだ話は終わってないんだけど」
「なんにゃ? 急がないとツキウサギが危ないにゃ」
「月天神法」
「にゃ?」
シャレーヌの言葉に、テトは足を止めた。
聞き覚えのない単語だ。
「それを使えば危機を乗り越えられるかも?。ユキウサギ達に伝わる秘術だから、彼らにきいてみるといいわよ?」
小さく頷くテト。
テトの後姿を見送ったシャレーヌはそう言って丸くなって目を閉じた。
●
「ひとまず余計なことはしないで、持ちこたえることを考えるッスよ!」
「バタルトゥとツキウサギの言う通りなのです。偉大なる幻獣王に従っていれば間違いないのであります!
さあ、ユキウサギ達よ! ここを拠点にし、救援を待つのであります!」
錫杖をふりふり胸を張るチューダに、こくこくと頷くユキウサギ達。
――そう。今自分達に出来ることは、待つことだけだ。
唇を噛むバタルトゥ。今この状況が、たまらなくもどかしい。
●
●ユキウサギの里へ(8月5日公開)
辺境の大地。その一角にある幻獣の森。 ナーランギと呼ばれる幻獣ロックイーターを守りの要とするその森では、様々な幻獣達が存在し……まさに幻獣達の天国とも言えるその地に、大幻獣であるツキウサギも仲間達と一緒に暮らしている。 人懐っこく気さくで、いつも元気で、幻獣の森にいる巫女達にも人気があるツキウサギだが、今日は何やらいそいそと走り回っていた。 真っ白い毛並みの足をブーツで覆い、リュックを背負ったところで、ハンマーを持っていないことに気付いたらしい。慌てて取りに行こうとして木の根に躓いて……。 転びかけた彼を、バタルトゥ・オイマト(kz0023)が受け止める。 「……ツキウサギ。大丈夫か……?」 「あっ。バタルトゥさん申し訳ないッス! ……って、あれ? 今日はどうしたッスか?」 「……ナーランギに呼ばれたのでな。寄った……」 「あ、そーだったッスね。ナーランギ様ならいつものところにいらっしゃるッスよ」 「……そうか。今日は随分慌てているようだが、何かあったのか……?」 「自分、ちょっと出かけようと思ってて、急いでたッスよ」 「……出かける? この森を出て、か……?」 「そうッス! 自分の仲間が見つかったッス!!」 表情が変わらぬバタルトゥに、キラキラとした目を向けるツキウサギ。 ツキウサギの仲間達が、とある森に隠れ住んでいる……。そんな情報が齎されたという。 |
![]() ツキウサギ ![]() バタルトゥ・オイマト |
「はいッス! 自分の仲間達の名前は『ユキウサギ』って言うんスけど……」
続くツキウサギの説明。
ユキウサギはツキウサギと違い大幻獣ではない。
その為しゃべることはできないが……二足歩行のウサギ型幻獣で、小さいながらも人間のような生活を送っている。
昔はツキウサギを始めとする仲間と共に住んでいたものの、歪虚の侵攻によって散り散りになってしまったらしい。
長いこと眷属の行方が分からず、ずっと心配していたツキウサギにとって、今回の情報はまさに朗報だった。
「その話は誰から聞いたんだ……?」
「吾輩でありますよ!!」
錫杖を振り振りバタルトゥの足元から現れたのは、でっかいハムスター……自称幻獣王チューダ(kz0173)で。
いつからそこにいたのか、胸を張って口を開く。
「ユキウサギ達は、ここから北西の森の中にある『おばけクルミの里』にいるであります!」 「……その話は信用できるのか?」 「バタルトゥ! どういう意味です!? 失礼なのですー!!」 「……その話は本当に信用できるのか?」 「はいッス。ナーランギ様もそう仰ってたッス」 思わず二度確認するバタルトゥにプンスコ怒るチューダ。 それを気にせず、ツキウサギを見つめる。 「……そうか。ナーランギが俺を呼んだのもその話かもしれんな。……その『おばけクルミの里』はここから離れているのか……?」 |
![]() チューダ |
「ふむ……。この辺りは大分減ってはいるが、歪虚が出ることもある。俺が送って行こう……」
「幻獣王である吾輩もついて行ってあげるのであります!」
「えっ! 本当ッスか!? 一緒に来てくれたら、ユキウサギ達が喜ぶッス! 仲間達、すごくフレンドリーッスよ!」
便乗したチューダにうんざりした目線を送るバタルトゥに気付かず、口角を上げるツキウサギ。
愛用のハンマーを手にすると、バタルトゥとチューダを振り返る。
「自分もナーランギ様に挨拶してから出かけるッス。2人共一緒にナーランギ様のところに行くッスよ!」
ツキウサギの脳裏に蘇る懐かしい記憶。
共に暮らしていた時も、のんびりした楽しい毎日だった。
仲間達も会えない間に、きっと色々なことがあったに違いない。
それもすべて聞かなくちゃ――。
足取り軽く歩き出すツキウサギ。
――この旅で思わぬ事件に巻き込まれるとも知らずに。
(執筆:猫又ものと)
(文責:フロンティアワークス)
(文責:フロンティアワークス)
●月天神法(8月26日公開)
山岳猟団がテトを見つけてハンター達が救援した後、テト(kz0107)はホープにいた。 しかし、テトの様子は変わらずに落ちこんでいた。 それから暫く経った頃、テトは大巫女に呼ばれる。 シバとは古くからの盟友とも言える存在より渡された紙は、いつぞやテトがファリフ・スコール(kz0009)に渡したシバ(kz0048)からの預かりもの。 本来、テトが行く予定だったが、自信の喪失からファリフに手渡した。 ファリフには赤き大地の戦士としての素養があり、自分にはないと思ったからだ。 「行ってくれるね、テト」 動揺を隠せなかったテトだが、こくりと頷いた。 |
![]() テト |
蛇の窟の中はシバのおもちゃ箱をひっくり返したようなトラップの数々。
「……あのクソジジイ」
危うく蛇の穴へ落ちかけたところでテトは毒を吐く。
そして広間を見たテトは火をカンテラの中に入れて足元を照らす。
様々な本や品物が所狭しと置いてあり、テトはよく集めたものだと感心してしまうが、あのジジイは珍しいもの、新しい物好きだったなと思い出す。
整理をしていた所、本の山の一番上を見たとき、テトは動きをとめた。
奥義に関する事の内容と察したからだ。
ファリフ達はこの本を読んだのだろう。
自分はファリフのようにたどり着けることができるのだろうかとテトは思う。
他に何かないかとテトが探しはじめた所、肘が本の山にぶつかって雪崩が起きた。
「あにゃ……」
テトが一冊の手帳を拾い上げたとき、本の間から紙切れがひらりと落ちる。
拾うと、それはシバの手書きのメモだ。
『テトがこの場所を見つけたとき、如何にするかはお前に任せよう。
お前が奥義を身につける時が来る時を楽しみにしている』
いつ書いたかは分からなかったが、テトはメモを手放すことなく、握りしめる。
「シバ……」
辺境において、人の命は死は隣り合わせにあるものとある。
常に歪虚の攻撃の危機に警戒している。
この地の者にとって、死は当たり前にあるものだ。
テトの瞳からはらはらと涙が落ちる。
自分はこのような生き方ができるのだろうか……しかし、自分も進まないとならないのはわかっている。
ぶつかっても転んでも前を進みたい。
テトはゆっくり立ち上がって、蛇の窟を後にした。
●
テトが向かった先は魂の道。
そこの入り口には、一匹の猫がいた。切り落とされたように平らな岩の上で丸くなって寝ている。
「にゃ? お前どこから来たにゃ?」
眉をしかめつつ、テトが尋ねると、猫は閉じていた瞼を開く。
「もともとここにいたにゃ」
寝姿は変わらずに猫が人語で返す。
「にゃ!? ただの猫じゃないにゃ!?」
びくりと肩を竦めたテトは警戒する。
「あはは☆ びっくりしたぁー?」
テトの驚きように猫は楽しそうに笑う。歪虚には見えないので、用心深く見つめる。
「いきなり何の用?」
「……奥義を使えるようになるためにゃ」
「ふぅん、あなたが」
猫に覗き込まれたテトはなんだかバカにされたように思えて腹を立ててしまう。
「お前ににゃにがわかるにゃ! 何者にゃ!」
「幻獣よ。名はシャレーヌ」
あっさりと名を名乗るシャレーヌにテトは面をくらってしまい、絶句する。
「にゃんで……」
幻獣がこんな普通の猫の姿だとは思えなかった。
「まー、こんな姿だから、不審に思っちゃうわよねー。元の姿に戻るのも面倒だから、このままでいるのよ」
そういえば、大幻獣シャレーヌは人間嫌いという話を聞いた事がある。
身体中にある宝石を狙い、シャレーヌを飼おうと人間に狙われていたという話。
「でも、あなたここにいていいの?」
「え?」
シャレーヌの視線がテトの方へ向けられたと思ったら、彼女の視線はどこかを視ている。
「歪虚の動きが活発になってるみたい」
「にゃんでわかるにゃ……!?」
驚くテトを無視して話を続けるシャレーヌ。
「同じ幻獣のユキウサギが幻獣の里より北西へ向かっているようね。歪虚もまた、動き出しているわ」
そこで一度言葉を切ったシャレーヌはじっと、テトの顔を見る。
「あなたはここで奥義を得るために道を進むのであれば、それもいいけどぉ?。でも、ツキウサギをこのまま放置するのは得じゃないと思うのよね。あははははは」
シャレーヌの言葉がどういう意味を示しているのかはテトにも理解できる。
ここが壊されない限り、自分が生きている限り、またここには来れる。
今、するべき事をしなければならない。
ぎゅっと、手を握りしめたテトは踵を返して駆けだす。
「あ、待って。まだ話は終わってないんだけど」
「なんにゃ? 急がないとツキウサギが危ないにゃ」
「月天神法」
「にゃ?」
シャレーヌの言葉に、テトは足を止めた。
聞き覚えのない単語だ。
「それを使えば危機を乗り越えられるかも?。ユキウサギ達に伝わる秘術だから、彼らにきいてみるといいわよ?」
小さく頷くテト。
テトの後姿を見送ったシャレーヌはそう言って丸くなって目を閉じた。
●
幻獣の森から北西の森内にあるユキウサギの里。 森の中で一際大きなおばけクルミの木の下にある為、『おばけクルミの里』と呼ばれている。 そのおばけクルミの木の下で、沢山のユキウサギ達が頭を突き合わせていた。 ドタバタしているもの、ソワソワしているもの、ハンマーを持って振り回しているもの……。 ――ユキウサギ同士で話し合っているのは確かなようだが、何を言っているのかサッパリ分からない。 が、とにかく喧しい。 バタルトゥ・オイマト(kz0023)は小さくため息をつくと、隣のツキウサギとチューダ(kz0173)をちらりと見る。 「……ツキウサギ。チューダ。ユキウサギ達は何を話し合っているんだ?」 「里の外側に歪虚が沢山いるッスよね。それをどうするか考えてるみたいッス」 「吾輩が通訳するでありますよ! えーと……」 大幻獣達の通訳によると、ユキウサギ達の会話の内容はこうだ。 「里の周りを歪虚が囲んでるッス!」 「一体何がどうなってこんなことになってるッスか!?」 「良く分からないッスけど大変ッス!!」 「この数を自分達だけで追い払うのは無理ッス!」 「どうするッスか!」 「どうするッスか!?」 「どうするッスか!!?」 ……要するに結論が出ていないということらしい。 バタルトゥはもう一度ため息をつくと、騒いでいるユキウサギ達に向き直る。 「……ユキウサギ達。ここで騒いでいても何も変わらない。落ち着いて話を聞いてくれ……。 これだけの歪虚が来ているとなれば、ハンター達も気付いているはずだ。いずれ救援も来よう……」 |
![]() バタルトゥ・オイマト ![]() ツキウサギ ![]() チューダ |
「バタルトゥとツキウサギの言う通りなのです。偉大なる幻獣王に従っていれば間違いないのであります!
さあ、ユキウサギ達よ! ここを拠点にし、救援を待つのであります!」
錫杖をふりふり胸を張るチューダに、こくこくと頷くユキウサギ達。
――そう。今自分達に出来ることは、待つことだけだ。
唇を噛むバタルトゥ。今この状況が、たまらなくもどかしい。
●
「決戦は凡そ3週間後。僕はこの間、錬金術を運用してはならない……か。うん。 なかなかいいルールだよね」 「ご主人。その話、本当に乗る気なのですかな」 「勿論さ。ルールはきちんと守らないとゲームにならないだろう?」 黒い布に身を包んだ男に、笑みを返すコーリアス。 主がこういう顔をしている時は、何かを企んでいる時だ。 コーリアスは金の髪を揺らして続ける。 「……事前に作っておいたものを使うのは、禁止されていないよね」 指をパチンと鳴らす彼。それを合図に不思議な形をした歪虚兵器が起動し――森を、白い霧が覆っていく。 「さあ、お前達。頼んだよ」 仮面の奥の目を細めて、コーリアスは楽しげに笑った。 |
![]() コーリアス |
●決戦へ(9月16日公開)
「わあ……。本当におっきなクルミの実やね」 目の前に聳え立つ大樹を見上げて呟くりり子(ka6114)。 苦難を乗り越え、おばけクルミの里へと到達したハンター達。 里の中心に、村を覆うように枝を伸ばしているおばけクルミの実は、その名に違わず大きい。 そしてその大樹に沿うように板が渡され、樹の幹に沢山の小屋が張り付くように建てられていて……大樹そのものがユキウサギ達の集合住宅のようになっていた。 「わっ。くすぐったいったら! ちょっとまって……!」 聞こえるアイラ(ka3941) の笑い声。 見ると、彼女がユキウサギ達に取り囲まれている。 気付けばアイラの足元にも、目をキラキラとさせたユキウサギ達が集まってきており、他のハンター達も同様にユキウサギ達に囲まれていた。 「あー。申し訳ないッス。ユキウサギ達、フレンドリーなんスよ。自分たちを助けに来てくれた皆を大歓迎してるッス」 「そうみたいやね」 「ツキウサギもバタルトゥも無事で良かっ……だからくすぐったいったらー!」 ハイテンションなユキウサギ達に微笑を浮かべるりり子。 モフモフ攻撃を食らったアイラの声は最後まで続かず、バタルトゥ・オイマト(kz0023)が苦笑する。 「心配かけてすまなかったな……」 「吾輩もいるでありますよ!!」 存在をまるっとスルーされて抗議するチューダ(kz0173) 。それをやっぱりスルーして、バタルトゥは続ける。 「お前達も無事で良かったが……まもなくコーリアスの侵攻が始まる……。……喜んでばかりもいられぬ状況だな」 「反撃開始、と行きたいところやけど……この里を守りながらじゃ色々厳しいやね」 「そのことなんスけど……」 おずおずと切り出すユキウサギ。それに、どうした? とハンター達は首を傾げる。 ● 「月天神法は里に伝わる結界術で発動すれば、歪虚も里に手を出せない……って言ってるっス」 おばけクルミの里でユキウサギの通訳をする大幻獣のツキウサギ。 コーリアスの包囲網を突破したテトがもたらした『月天神法』という単語を里で調べるうち、ユキウサギが何か知っていることに気付いたのだ。 「やっぱり、結界術だったのね。でも、何故この里に月天神法を使わなかったのかしら? 使えば隠れ住む必要もなかったのに」 遠藤・恵(ka3940) は当然の疑問を口にする。 歪虚も手を出せない結界があるなら、幻獣の森のようにユキウサギ達は歪虚から身を守る事ができる。 だが、現実にはおばけクルミの里に月天神法は張られていない。何か事情があるのだろう。 早速ツキウサギがユキウサギ達へ話を聞く。 「ふんふん……なるほどっス」 「何て言ってるの?」 興味津々とばかりに時音 ざくろ(ka1250) がツキウサギへ熱い眼差しを向ける。 ツキウサギは咳払いをした後、ゆっくりと語り出した。 「月天神法を発動するには必要な物があるっス。 月天神法は、ユキウサギの中で希に誕生する特殊なマテリアルを持つ個体の力を増幅させて結界を張るっス。だけど、この里にはそんな特殊な個体はいなかったっス。 それに月天神法を張る間、ユキウサギ達は結界の外で特殊な舞を踊るっス。その踊っている間は無防備っス。 これじゃあ、結界は無理っスね」 ツキウサギによれば、問題点は二つ。 月天神法を発動している間、ユキウサギ達は結界の外で特殊な舞を踊らなければならない事。 月天神法を発動するには特殊なマテリアルを保有する個体が必要な事。 何れにしても、ユキウサギ達だけで月天神法を発動するのは無理難題であった。 「一時でも月天神法で結界を晴れれば、コーリアスと戦う時間は稼げる。 だが、ハンターでユキウサギ達を守ることはできてももう一つの条件は……」 ロニ・カルディス(ka0551) は被りを振って現状を嘆く。 確かに月天神法で結界を晴れれば、攻める歪虚防ぎつつ、コーリアスへ戦力を差し向ける時間を稼げる。 しかし、月天神法を発動するためには特殊なマテリアルを保有するユキウサギの個体が必要となる。おばけクルミの里にいないとなれば、月天神法発動は絶望的だ。 悲壮感が漂う一同。 ここで、黙ってやり取りを聞いていたテト(kz0107) が口を開く。 「……ちょっと待つにゃ。ツキウサギはユキウサギの眷属で大幻獣だよにゃ?」 「そうっスね」 「という事は、大幻獣の時点で『特別な個体』って事になるのではにゃい?」 「……あ」 テトが口にしたのは、実に当たり前の事であった。 ツキウサギは大幻獣であると同時にユキウサギの眷属である。ユキウサギ達から見れば、ツキウサギは『特別な個体』と言ってもおかしくはなかった。 早速ツキウサギがその事をユキウサギ達へ伝えると、ユキウサギ達はしばらく話し合った後で大急ぎで動き始めた。 「確かにその通り。仲間に伝えて月天神法の準備をする、と言っているっス。 ……まさか、特殊なマテリアルの持ち主が自分だとは思わなかったっス」 「その事にコーリアスが気付いた。だからツキウサギを狙った……おそらくそんなところじゃないかな」 まだ事態を飲み込めないツキウサギに対して、ステラ=ライムライト(ka5122) は後ろから声をかける。 月天神法が発動できれば、コーリアスは必ず動き出す。 そこを攻撃できれば――おばけクルミの里は、決戦前に慌ただしさに包まれる。 ● 「そうか。ハンター達も気付いたようだね。ツキウサギが特別だと」 おばけクルミを監視していた部下からの報告を受け、コーリアスは事態を察した。 ツキウサギの特別なマテリアルは、研究材料として興味深い。単なる正のマテリアルではない、新たなる可能性を秘めたマテリアル。是非、研究して創作欲求を満たしたい。 「こうでなくてはゲームは面白くない。必死で抗ってこそ、ゲームは一層盛り上がる。 ……彼らの準備が間に合ってくれると事を祈るよ」 コーリアスは全部隊へ進軍の合図を送る。 ――約束の三週間を経過。 コーリアスの無情なる侵攻が開始された。 ● 「これが、月天神法か」 ラミア・マクトゥーム(ka1720) の前で広げられる光景は、異様と称しても差し支えなかった。 里の中心でツキウサギは待機。その里を取り囲むように沢山のユキウサギ達が北、北東、北西、南東、南西へ布陣する。 布陣と言っても何か防衛設備を持ち込むのでは無い。 円形となって祭壇を取り囲み、踊りながら前に進んでいくのだ。 「リアルブルーの『盆踊り』に似ているな」 ユキウサギ達を見ていた鞍馬 真(ka5819) が、適確な表現をする。 ユキウサギの達の行動は盆踊りの動きと変わらない。だが、これも月天神法には必要なものだ。 リムネラの儀式もあってマテリアルは満ちあふれている。通常よりも良い状態で月天神法が発動できるという。 「はい。ですが、一見光景はほのぼのでもユキウサギ達は必死です。その証拠に私達と一緒にコーリアスと戦うつもりのようです」 夜桜 奏音(ka5754)は視線を下に降ろす。 そこには杵を持ったユキウサギが居た。ハンター達の支援をするべく、戦闘可能なユキウサギ達は行動を共にするそうだ。ツキウサギによれば杵による攻撃だけではなく、簡単な結界術を使う事ができるらしい。うまく立ち回って貰えれば、心強いパートナーとなってくれるだろう。 「……始まったな」 空を見上げていたバタルトゥ・オイマト(kz0023) の一言に、ハンター達も顔を上げる。 そこには里を白い膜のような光が覆っていく。幻獣の森のような存在を隠す結界ではないものの、感覚的に正マテリアルが満ちていくのが分かる。 「うまくいったみたいだね。じゃあ、今度はボク達の番。絶対に里を守らないとね」 大幻獣トリシュヴァーナと共にファリフ・スコール(kz0009) は予定されていた場所へ向かって歩き始める。 おばけクルミの里を舞台にした人類と歪虚の戦いは、いよいよ決戦の時を迎える。 |
![]() アイラ ![]() ツキウサギ ![]() チューダ ![]() 遠藤・恵 ![]() 時音 ざくろ ![]() ロニ・カルディス ![]() テト ![]() ステラ=ライムライト ![]() コーリアス ![]() ラミア・マクトゥーム ![]() 鞍馬 真 ![]() 夜桜 奏音 ![]() バタルトゥ・オイマト ![]() ファリフ・スコール |
(執筆:近藤豊)
(文責:フロンティアワークス)
(文責:フロンティアワークス)