ゲスト
(ka0000)
これまでの経緯




ナディアの身体を借りなければまともに力を扱えないとは、不便なものですね……。
しかし、この身体を借りてこそあなた達ハンターひとりひとりと向き合うことができる。
あなたがこの星の救世主たる証を持つ者であれば、大いなる神の力を授けましょう。
大精霊クリムゾンウェストの契約を以て、あなたは「ガーディアン」となるのです。
大精霊クリムゾンウェスト:ナディア・ドラゴネッティ(kz0207)
更新情報(7月24日更新)
過去のストーリーノベルを掲載しました。
守護者(ガーディアン) ストーリーノベル「ガーディアンシステム誕生!?」(5月21日公開)
●「ガーディアンシステム誕生!?」(2018年5月21日更新)

ベアトリクス・アルキミア

ナディア・ドラゴネッティ

トマーゾ・アルキミア

ドナテロ・バガニーニ
「クリムゾンウェスト大精霊を通じて、“世界”そのものと契約するためのシステムよ。覚醒者を生み出すハンターシステムの応用なんだけどね」
反影作戦の後、無事にリゼリオへと帰還したナディア・ドラゴネッティ(kz0207)は、グラウンド・ゼロ調査報告書の作成に追われていた。 毎度毎度大規模作戦の後にはやっている作業で、神霊樹ライブラリに宿るパルムたちが手伝ってくれるとはいえ、中々に骨の折れる重労働だ。
ハンター達の報告とパルムによる観測、その結果をまとめて神霊樹に格納する作業である。
そんな労働中、総長室にやってきたベアトリクス・アルキミアは、当たり前のように語り出した。
「崑崙から転移してもらった追加装置を組み込めば、ガーディアンシステムが完成するの」
「え!? そんなポンっと出来上がるものなのか!?」
「覚醒者の研究は前から進んでいたでしょう? 忘れちゃったの?」
言われてみると、トマーゾ・アルキミア(kz0214)はハンターの身体やハンターシステムについて地道な調査を続けてきた。
その結果「サブクラス」が生まれ、「オートマトン」の再起動に成功し、「スキルウェポン」と呼ばれる魔法の力を付与された武器も開発された。
「元々おじいちゃんはエバーグリーンの守護者だから、守護者の契約については詳しいのよ。ハンターシステムについても、そのルーツとされるグラウンド・ゼロの調査で進展があるし」
「なんじゃおぬし、いつの間にハンターシステムの調査なんぞしておったんじゃ……!?」
「古代遺跡の発掘とか、あとはカレンデュラに聞いたりね。仇花の騎士の装備とか、ハンター向け商品として流れてたでしょ? ああいうの全部発掘品だから」
「そういえばそうじゃったが、裏でそんな地道な作業してるとか知らんかったわ……」
精霊との契約マッチングシステム、通称ハンターシステムは北方王国からナディアの手によりもたらされた。
だがハンターシステムのベースとなる契約文書は古代にルーツを持つ。カレンデュラはまさに生き証人だった。
「あとは実際に大精霊の力を借りるだけだったのよ。その大精霊の力に合わせるための装置も送られてきたからこれで完成。……あ、ドナテロ・バガニーニ (kz0213)議長からお見舞いの品が来てるけど」
可愛らしいレースのリボンでラッピングされたピンク色のプレゼントボックスを開けると、中にはドナテロの顔が焼き込まれたクッキーが入っていた。
「なんでやねん」
「彼、元々は食品系の仕事をしてたのよ。今も会社に顔を貸してるんだって」
閑話休題。
「して、そのガーディアンシステムはどこにあるのじゃ?」
「ハンターシステムにその機能を追加しただけだから、ソサエティ本部にあるわ」
ハンターズ・ソサエティ本部には「訓練場」と呼ばれる施設が存在する。
実際にハンターが肉体的な修練を積む場所というよりは、スキルや精霊との契約をインストールするための儀式場としての側面が大きい。
そこには魔導機械で強化された精霊契約システム、即ちハンターシステムも設置されている。
「で、これがハンターシステム」
渡り廊下を歩いて外に出ると、石造りの大きな建造物――即ち訓練場へと入る。
スキルの試し打ちやらインストールやらをしているハンター達の間を抜け、最奥にてハンターシステムと対面した。
外見的にはこれまでのハンターシステムとあまり変化はない。気になると言えば、ハンターシステムの前にはいくつか形の違うトランクケースが並んでいる事だ。
「なんじゃこれ?」
「これはガーディアンウェポン。ざっくり言うと、大精霊の力を“武器”の形に顕現させるための器ね」
ケースの中には純白の武具が詰め込まれている。それらはどれも見るからに地味で、強力な武器としての迫力は感じられない。
「まだこれは火入れ前なのよ。大精霊とその力を受け入れる契約者のマテリアルを受けて、初めて目覚める。文字通り、色づくのよ」
守護者とは、大精霊の力を顕現させるための器。出力するための装置であると言える。
だからこそその膨大な力に晒された守護者は人間を超越した存在となり、場合によっては破滅を迎える。
それを阻止するためにトマーゾが出した答えが「サブクラス」と「スキルウェポン」だった。
「つまり、ハンターの一つの側面として大精霊の力を引き出し、武器という器に収めることで使いこなす……二種類の形のガーディアンを作ったのか」
「そういうこと。まあ、どちらもその契約に耐えられる強靭な魂と肉体を持つハンターでなければ無理だけどね」
新たな形の守護者を生み出すための理屈は理解した。二度頷き、ナディアは肝心なところをまだ問うていないことに気付く。
「ところで、そのガーディアンを生み出す契約元になる大精霊はどうするのじゃ?」
そう。大精霊クリムゾンウェストは今、ナディアと肉体的、精神的に結びついている。
同じ肉体を共有する、二重人格のような状態で何とか存在を保っていた。
「大精霊をわらわから引き離し、新しい肉体を与えんことには契約できんじゃろう」
「どうして?」
「どうしてって……わらわの肉体が大精霊の力の行使に耐えられぬ」
「そんなことないわ。契約する瞬間だけ大精霊とチェンジすればいいのよ。まあ、あなたはその後全身筋肉痛になって何日か寝たきりになるでしょうけど」
「おぬしには良心というものがないの!?」
「あなたが寝ている間はミリアとかタルヴィーンが代わりに仕事するからいいのよ。私も手伝うし」
「そういう問題か!?」

大精霊クリムゾンウェスト
「話は聞かせて貰いました。私も新たな守護者を生み出すのは賛成です。ハンターと呼ばれる者たちであれば、私との契約にも耐えるでしょう」
大精霊が賛成であるのは、ベアトリクスからすれば当然に思えた。
彼女の望みはこの惑星の防衛。その為に必要な戦力を生み出すという行為こそ、守護者の契約。
だがそれを彼女が勝手にやると、ハンターは一方的に大精霊に使役される奴隷――古代における仇花の騎士となってしまう。
故に大精霊が勝手な行動を起こす前に、安全に守護者を生み出す準備を進めておく必要があったのだ。
「さあ、早速守護者を生み出しましょう。適性のありそうなハンターを集めてください」
「ノリノリのところ悪いけど、誰でも契約できるわけじゃないって、あなたが一番わかっているでしょう?」
大精霊の力を受け入れるためには、この惑星に連年と続く過去の守護者たちに認められる必要がある。
その結晶である「星の記憶石」を持つ者でなければ、大精霊との契約で身を滅ぼしてしまうだろう。
「人間は放っておけば勝手に増えるでしょう。それが彼らが最強の生物種たる所以です。少しくらいの犠牲がなんだというのです」
次の瞬間、ベアトリクスの手刀がけっこうミッチリと大精霊の頭部にめり込んだ。
「勝手な事言わないの。もし指示に従わず守護者を増やしたら、新しい肉体は用意してあげないわよ」
「なぜ……大精霊である私に……物理攻撃が……通用するのです……!?」
「私も大精霊だからでーす」
大精霊は絶対的なマテリアル防壁で己を守っている。
だが存在がリンクしているベアトリクスはその障壁を無効化できる。つまり、大精霊を力づくで殴れる存在だった。
「勝手をするならナディアの肉体を破壊するわ。そしたらあなたの意識は再び霧散し、眠り続けることになる」
「………………。良いでしょう。不服ではありますが、条件を受け入れます。役立たずの守護者を量産するより、その方が効率が良いことも事実ですから」
額をさすり、大精霊は佇まいを直す。そして覚醒が解除されるように、衣装が元に戻った。
「ウオオオオオオオオオオオオ!? 頭が割れるうううううっ!! 全身がっ! 燃えるようにっ! 痛むのじゃあああっ!!」
途端に地べたをのたうち回るナディア。短時間でも大精霊が出てくると苦痛と負担が伴うらしい。
「死ぬうう……! こんな生活続けたら死んでしまううううぅぅぅ……っ!!」
「あなたは死なないわ。青龍と心臓を分かち合ってるんだもの」
「えええ!? なんか色々怖いことになってきておる! ちょっとわらわしんどくなってきましたよ!?」
ナディアがその肉体に大精霊を収めている限り、彼女が暴走してしまうことはないだろう。
少し可哀そうな気もしたが、ナディアにはストッパーとして機能してもらうしかない……。
「というわけで……新たな守護者に名乗り出るハンターが現れるのを待ちましょう」
既に能力としては守護者の域に到達しているハンターもいる。
システム制御されたとはいえ、守護者は星との契約。彼らの運命を縛る事にもなりかねないだろう。
「……そうじゃな。わらわたちが強制できるものではない。だがもしも、世界を救う力を求められたなら……その時は応えよう。わらわも共に、責を負って」
結果として、ナディアは自分が契約に関われることをよかったと感じていた。
責任を感じられるし、守護者の力を求めたハンターに真意を聞くことも、彼らの運命を見届ける事も出来るからだ。
「それじゃ、最終調整を始めましょうか。ナディアも手伝ってちょうだい」
(執筆:神宮寺飛鳥)
(文責:フロンティアワークス)
(文責:フロンティアワークス)
●「世界を守護する新たな力」(2018年11月2日更新)

大精霊クリムゾンウェスト

ナディア・ドラゴネッティ

トマーゾ・アルキミア

ベアトリクス・アルキミア

大精霊リアルブルー

マスティマ
彼女が眠り続けている以上はガーディアンシステムを起動したとしても新たな守護者契約は結べない。
いや、そもそも既に彼女のキャパシティは限界を迎えている。どちらにせよこれ以上の守護者契約は困難だったはずだ。
「じゃが、これからも新たな守護者の力は必要となるじゃろう。故に、ガーディアンシステムには改良が必要じゃ」
リゼリオにやってきたトマーゾ・アルキミア(kz0214)は、二人の大精霊――ベアトリクス・アルキミア(kz0261)とリアルブルーを前に告げる。
しかし、ソサエティ本部にある訓練場は、今やリアルブルーから転移してきた新米ハンターでごった返していた。
精霊との契約魔法陣――ハンターシステムを転用したものであるガーディアンシステムは、必然的に改造のタイミングが限られる。
「ハンターシステム、最近は毎日稼働しっぱなしだものね?。いつ改造するの?」
「深夜とかにちょっとずつやるしかないと思うが……一度ガーディアンシステムを取り外して改良し、後で合体させるかのう」
「強化人間の救済は急がなければならないだろうし、まあ、優先順位は低くなるだろうね」
ウンウンと頷き、リアルブルーは腕を組む。
「地球凍結結界にも限度はあるけど、まだ当分は時間を稼げる。守護者は邪神との決戦までになるべく増やせれば御の字だ」
「どうでもいいけど、元々崑崙にいたはずの私達が揃ってここにいるの、なんだか違和感がすごいわねぇ」
「「わかる」」
そしてここに本来いるべきナディアがいないというのも、やるせない話だ。
「当然ながらナディアはあの状態では守護者契約を結べない。よって……リアルブルーとベアトリクスによる代理契約が必要じゃ」
クリムゾンウェストは、「自分の世界に召喚したモノは全て自分自身のモノになる」という極めて強引な道理を有している。
その意味では既にリアルブルーもエバーグリーンも、クリムゾンウェストの一部と定義されているはずだ。
「クリムゾンウェストもナディアの中にいるのだけがすべてではない。あれは表層化した疑似人格じゃから、力のコントロールさえ中継してやれば新たな守護者を生み出せるはずじゃ。無論、大精霊クラスの補佐は必要になるだろうが」
「儀式の代行をするだけなら、僕らでも可能と言うことだね」
「うむ。それと、実はリアルブルー凍結の際に各地よりマスティマフレームの残骸を回収してある。ガーディアンシステムと合わせれば、乗り込み型のガーディアンウェポン――星神機として運用できるじゃろう」
マスティマは大精霊の力を動力源とする前提で作られたCAM……正しくはその祖先である。
ガーディアンウェポンと同じく、ガーディアンシステムで契約すればその力の一端を再現できる器となるだろう。
「マスティマフレームは全部で何機あるの?」
「ほぼ壊れとるが、とりあえず4機くらいならニコイチで組み立てられそうじゃな」
元々、ガーディアンウェポンという考え方自体がこのマスティマに由来するものだ。
かつてエバーグリーンで生み出された、神の力を運用する為の兵器。その実力はリアルブルーでの戦いで十分に証明されている。
「でも、流石にリアルブルーが乗った時と同じ性能を発揮するのは無理よねぇ」
「部分的に能力は再現できるさ。マスティマの最終調整をしたのは僕だから、ハンター向けの調整も手伝えると思うよ」
「助かる。今は二人とも大精霊としての力をほとんど失っておるが、いずれはそれを取り戻す方法についても考えなばならぬな」
三つの世界の大精霊が本来の力を発揮すれば、邪神をどうにかできるかもしれない。
ナディアに代わって守護者との契約を取り次ぐというのは、本来の力を取り戻すための訓練にもなるだろう。
「それって、僕らが守護者を増やせば増やすほど、僕らの力も使えるようになるってことかい?」
「そういう解釈もあるじゃろうな。守護者の増加は大精霊の強化にもつながる。先の戦い、ナディアがあれだけ戦えたのも守護者を増やしておったからじゃろう」
「……早く力を取り戻さないと」
焦るリアルブルーの呟きに、ベアトリクスはその肩を叩いて応じる。
「まずは身体を直さなきゃね。無茶をしたのはあなたも同じなんだから」
「うむ。結局貴様らの準備が整わなければ契約はできぬからな。わしもマッハでマスティマを組むが、実物が組みあがらんと契約は出来ぬし、今は養生することじゃ」
「わかってるよ……だから、子供扱いはやめてくれないか」
口ではそう言いながらもベアトリクスの手を振りほどかない所を見るに、ある程度は性格も丸くなったようだ。
「そうそう。大精霊の性格と言えば……クリムゾンウェストちゃんの性格がかなり変わってきてるのよ?」
「そのようじゃな。器に同居するナディアの精神性に影響を受けているのもあるだろうが、守護者との契約も理由の一つじゃろう」
世界は本来無機質なものだ。感情のような無駄なものは介さない。
あらゆる命に、歴史に、惑星規模の生命が紡ぐ戦術に成否を下し、判断し続けるだけのシステム。そこに人の心など非合理的。
大精霊クリムゾンウェストも、そのような存在であったはずだが……。
「進化……と言ってよいのかのう?」
「クリムゾンウェストは元々精霊とヒトの距離感が近い世界なのよ。古代文明からしてそうだったし、今はもっとそれが進んでいるわ。上手く言えないんだけど?……それが何か意味を成すような気がして」
「ふーむ……ベアトリクスが言うのならば、そうなのだろうな」
実は、ベアトリクスには予知能力としか表現できない“勘の鋭さ”がある。
これはエバーグリーンのセントラルに累積した世界の記憶から無自覚に情報を取捨選択、目の前の状況と照らし合わせて導き出す立派な計算なのだが、発狂しているベアトリクスはそれを言葉に上手く変換できなかったりする。
狙って使う事も出来ず、事象そのものを観測しなければ発揮できないのできわめて不便だが、その勘の鋭さが反影作戦や空蒼作戦で役立ったのも事実だ。
「だから、ナディアとクリムゾンウェストの歩みは止めちゃいけない。彼女のやろうとしたことを、私たちがきちんと引き継ぎましょう」
「わかってるさ。もう一度、彼女が目覚めるその日まで……ね」
こうしてガーディアンシステムの改修と、星神機マスティマの修理がはじまった。
ハンターが新しい守護者の力を手にする日は、目前にまで迫っている。
(執筆:神宮寺飛鳥)
(文責:フロンティアワークス)
(文責:フロンティアワークス)