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(ka0000)
守護者(ガーディアン) イメージノベル


更新情報(7月24日更新)
特殊サブクラス「守護者」、「マスティマ」を取得した2名のハンターの「契約時の模様」を描いたノベルを掲載!
ガーディアンノベル
守護者(ガーディアン)となったハンターのアイコンをクリックすると、ノベルへジャンプします。
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フワ ハヤテ(ka0004) 種族:エルフ クラス:魔術師 「守護者」取得日:2018/06/22 「守護者武器」:[SW]星神器「キタブ・アル・アジフ」 ●「守護者」への表明 「ボクはボクの為にこの世界を護ろう」 |
●「守護者」契約(クリックすると、下にノベルが展開されます)
リゼリオのハンターズ・ソサエティ本部に用意された儀式の間で、フワ ハヤテ(ka0004)はナディア・ドラゴネッティ(kz0207)と対峙する。
「では、始めるぞ。ここから先はおぬし次第じゃ」
ナディアが覚醒すると同時に炎を纏い、その衣装と眼差しが色を変えていく。
「ふむ。これは契約するに相応しいかを見極める場と思っていいのかな?」
「その通りです。守護者の力は適切な存在でなければ扱えない。悪に染まるか、身を亡ぼすか……見極めさせていただきます」
顔はナディアと同じだが、鋭い眼光は全くの別人だ。
フワはその眼差しをじっと見つめ返す。
「大精霊相手に嘘をついても仕方がない。きっちり本音を話そうじゃないか」
これはともすれば命を賭した重要な儀式だ。しかし、フワはまるで風にたなびく木の葉のように淀みなく、軽やかに応じる。
「ボクはね、守護者なんて肩書にも、世界を護るという理念にも全く興味がないんだ」
「……ほう。それは、“守護者の理念”に同意しない……という事ですか?」
「話は最後まで聞いて欲しい。尤も、ここから先はごく個人的なものになる。何故ならばボクは、ボク自身の欲求の為に力を欲するからだ」
――フワの目的は単純だ。
守護者の力とは、即ちこの星の力。大精霊という真理に通じる力に他ならない。
「ボクは魔術というものに惚れこんでいる。魔術、ひいては真理の探究の為なら、全てを犠牲にしてもいいと思っている程だ。だがそれは、あくまで世界が在るからこそ可能なものだろう?」
結局のところ、すべてはそこに通じる。
“世界がなければ、なにもない”のだ。
歪虚は何もかもを無にしてしまう。無というのは無意味で、退屈で、如何ともしがたい状態である。
「魔術は正しく世の理を解く学問だ。世界の真理を手繰り、解明し施行する。土台そのものを破壊されてしまっては困るというわけさ」
「つまり、己の欲望を満たす為に世界を護ると」
「ああ、その通りさ。シンプルだろう? 願いは純粋であればあるほど信用に値する。ボクはそう思うけれど、きみはどうかな?」
大精霊は片手をフワの眼前にかざす。そしてその指先をぴたりと額に当てながら、すっと目を細めた。
「その言葉は確かに同意できます。ヒトは不特定多数の思念により、魂を歪めてしまう。その理論は単純であればある程、強い」
「もしかしてボクの考えを読み取ったのかい? すごいな。やっぱり大精霊というのは、興味深いよ」
笑いながらフワは白紙の本を手に取る。それはまだ、大精霊の力が籠められていない無垢の器だ。
「それに守護者武器そのものにも興味がある。この本に刻まれる言語、おそらく大精霊本来の言語……といっていいのかな。まあ精霊語のようなものなんだろう? 今は読めなくとも、研究を続ければ解読出来る日が来るかもしれない」
「なぜ、そう信じられるのですか?」
「信じているわけじゃない。“そうしたいからそうする”んだ。別に結果は約束されていなくていい。徒労に終わる事もある。でも、何かを求めるというのはそういう事だろう? 今は読めなくとも、研究を続ければ解読出来る日が来るかもしれない。魔術師というのは目の前にある知識に貪欲なのが取り柄なんだ。何時か真理の一端に触れて見せるとも」
大精霊はしばしの時、考えに耽るように腕を組んだ。
「……いいでしょう。あなたの在り方を理解しました。その魂、今一度確かめましょう」
大精霊が腕を振るうと、周囲の空間が一瞬にして書き換わる。
紅い宇宙――星の中心と同化した世界の中、大精霊がフワの手を取る。
「――星の光の名の下に、汝、フワ ハヤテに告げる。その魂の輝きを力と変え、星の救世主となる覚悟はあるか?」
「ああ。ボクはボクの願いの為に、この世界を護ろう。力が足りぬというのなら、その力を振るえるほどに強くなろう。だから――」
二人は手を繋ぎ、そして互いの間に漂う器に手を重ねる。
「――その世界の切れ端をボクに預けてくれ」
「契約を受理します。星と英雄の記憶を以て、ここに神の力の一端を授けん。目覚めよ、キタブ・アル・アジフ!」
星の記憶石が砕け、その虹色の光が器に吸い込まれていく。
真っ白の本に火が灯り、一瞬で存在感を強めていく。
無地の本にはフワの願い通り、読めない言葉が綴られていた。
「ここに誓いは結ばれた。無垢なる守護者よ、あなたの救世に期待します」
神の言葉を指先で撫で、すっと閉じる。
守護者は力を手にし、笑顔と共に頷いた。
「では、始めるぞ。ここから先はおぬし次第じゃ」
ナディアが覚醒すると同時に炎を纏い、その衣装と眼差しが色を変えていく。
「ふむ。これは契約するに相応しいかを見極める場と思っていいのかな?」
「その通りです。守護者の力は適切な存在でなければ扱えない。悪に染まるか、身を亡ぼすか……見極めさせていただきます」
顔はナディアと同じだが、鋭い眼光は全くの別人だ。
フワはその眼差しをじっと見つめ返す。
「大精霊相手に嘘をついても仕方がない。きっちり本音を話そうじゃないか」
これはともすれば命を賭した重要な儀式だ。しかし、フワはまるで風にたなびく木の葉のように淀みなく、軽やかに応じる。
「ボクはね、守護者なんて肩書にも、世界を護るという理念にも全く興味がないんだ」
「……ほう。それは、“守護者の理念”に同意しない……という事ですか?」
「話は最後まで聞いて欲しい。尤も、ここから先はごく個人的なものになる。何故ならばボクは、ボク自身の欲求の為に力を欲するからだ」
――フワの目的は単純だ。
守護者の力とは、即ちこの星の力。大精霊という真理に通じる力に他ならない。
「ボクは魔術というものに惚れこんでいる。魔術、ひいては真理の探究の為なら、全てを犠牲にしてもいいと思っている程だ。だがそれは、あくまで世界が在るからこそ可能なものだろう?」
結局のところ、すべてはそこに通じる。
“世界がなければ、なにもない”のだ。
歪虚は何もかもを無にしてしまう。無というのは無意味で、退屈で、如何ともしがたい状態である。
「魔術は正しく世の理を解く学問だ。世界の真理を手繰り、解明し施行する。土台そのものを破壊されてしまっては困るというわけさ」
「つまり、己の欲望を満たす為に世界を護ると」
「ああ、その通りさ。シンプルだろう? 願いは純粋であればあるほど信用に値する。ボクはそう思うけれど、きみはどうかな?」
大精霊は片手をフワの眼前にかざす。そしてその指先をぴたりと額に当てながら、すっと目を細めた。
「その言葉は確かに同意できます。ヒトは不特定多数の思念により、魂を歪めてしまう。その理論は単純であればある程、強い」
「もしかしてボクの考えを読み取ったのかい? すごいな。やっぱり大精霊というのは、興味深いよ」
笑いながらフワは白紙の本を手に取る。それはまだ、大精霊の力が籠められていない無垢の器だ。
「それに守護者武器そのものにも興味がある。この本に刻まれる言語、おそらく大精霊本来の言語……といっていいのかな。まあ精霊語のようなものなんだろう? 今は読めなくとも、研究を続ければ解読出来る日が来るかもしれない」
「なぜ、そう信じられるのですか?」
「信じているわけじゃない。“そうしたいからそうする”んだ。別に結果は約束されていなくていい。徒労に終わる事もある。でも、何かを求めるというのはそういう事だろう? 今は読めなくとも、研究を続ければ解読出来る日が来るかもしれない。魔術師というのは目の前にある知識に貪欲なのが取り柄なんだ。何時か真理の一端に触れて見せるとも」
大精霊はしばしの時、考えに耽るように腕を組んだ。
「……いいでしょう。あなたの在り方を理解しました。その魂、今一度確かめましょう」
大精霊が腕を振るうと、周囲の空間が一瞬にして書き換わる。
紅い宇宙――星の中心と同化した世界の中、大精霊がフワの手を取る。
「――星の光の名の下に、汝、フワ ハヤテに告げる。その魂の輝きを力と変え、星の救世主となる覚悟はあるか?」
「ああ。ボクはボクの願いの為に、この世界を護ろう。力が足りぬというのなら、その力を振るえるほどに強くなろう。だから――」
二人は手を繋ぎ、そして互いの間に漂う器に手を重ねる。
「――その世界の切れ端をボクに預けてくれ」
「契約を受理します。星と英雄の記憶を以て、ここに神の力の一端を授けん。目覚めよ、キタブ・アル・アジフ!」
星の記憶石が砕け、その虹色の光が器に吸い込まれていく。
真っ白の本に火が灯り、一瞬で存在感を強めていく。
無地の本にはフワの願い通り、読めない言葉が綴られていた。
「ここに誓いは結ばれた。無垢なる守護者よ、あなたの救世に期待します」
神の言葉を指先で撫で、すっと閉じる。
守護者は力を手にし、笑顔と共に頷いた。
(執筆:神宮寺飛鳥)
(文責:フロンティアワークス)
(文責:フロンティアワークス)
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藤堂研司(ka0569) 種族:人間(リアルブルー) クラス:猟撃士 「守護者」取得日:2018/06/22 「守護者武器」:[SW]星神器「蚩尤」 ●「守護者」への表明 「この前俺達を殺しにかかった大精霊との契約か……いい機会、だな」 |
●「守護者」契約(クリックすると、下にノベルが展開されます)
「まず、誠意の証として、偽らざる俺の想いを伝えておきたい」
藤堂研司(ka0569)は大精霊を前にそう切り出した。
「大精霊……俺は、先日の戦いで世界をリセットしようとしたことに、不信を抱いている」
大精霊クリムゾンウェストは、【反影】作戦でハンターの敵として立ちはだかった。
彼女の願いは、今の世界を失敗作と見做し、全てをリセットすること。そして、世界を再び別の形に再生することだった。
「今、こうして対話の機会を設けてくれた以上、あの時とは違うというのはわかる。だが、一度殺意を向けてきたテロリスト相手に気を許すほど、人間ができてもいない」
「それは当然でしょう。わざわざ言葉にせずとも、あなたの考えは分かります。必然的に、この対話の焦点も定まってくる」
――それは、信用に値しない、しかし莫大な力を持つ存在と、どのように付き合っていくのかという事だ。
「まずは契約について確認したい」
大精霊は特に異論を挟まない。故に研司は一つ一つを確認していく。
「“世界の秩序を守る存在として活動する契約への同意”……これは問題ない。ヒトと龍との共存を求める龍盟の戦士として当然だ」
「“終末的状況、世界存亡の危機において出動する契約への同意”」
「同意する。元々、それが黙っていられなくて軍人になったんだ。……照れくさくて、誰にも言えなかったけど」
「それを語る相手が私で良かったのですか?」
「逆にあんたはあと腐れないからな」
頬を赤らめながら、ぽりぽりと頭を掻く。
「最後に“ヒトと精霊の調停者としての契約への同意”。ここだ。ここを確認したい」
大精霊は世界をリセットしようとした。世界に生きる生命を殺そうとした。それはつまり無差別の殺戮だ。
「俺は、それを良しとしない。そういう存在と戦うために力を磨いてきた。この世界をどんな形であれ壊そうとする意思を持つ存在に、俺は従わない」
「そうですか」
あっけらかんとした答えに、研司は眉を顰める。
だが次の言葉を待たずして、大精霊は二の句を告げた。
「それは、問答する相手を間違えています。あなたが問わねばならないのは、己自身でしょう。何故ならばあなたが何をどう考えていようが、世界と契約してしまえば、あなたはもうあなただけの存在ではなくなってしまうのだから」
ぞっとするような冷たい眼差しだった。
そう、大精霊の言う通り。それは大精霊が認めるか認めないかという話ではない。
守護者の力を得る側にこそ、“理由”と“覚悟”が必要だ。
「この契約はあなたの自由意志を奪ったり、その存在を抹消できるようなものではありません。しかし、私がいつ再び世界の再生を願うとも限らない。その時あなたは、守護者となった事を後悔しませんか?」
「それは…………」
わからなかった。いや、きっと後悔する。それはわかる。
だが、わからないのは……何故わざわざ大精霊がそんなことを問うのか、だ。
「自然は俺達の源だ、精霊は俺に力をくれた、蔑ろにするつもりは一切ない。だが、他ならぬ大精霊がそれを蔑ろにするならば、俺は対立する」
「倒せますか? この私を」
無理難題だ。答えられるわけがない。だが、その上で。
「だからこそ、力が必要なのではありませんか?」
「……ああ、そうだ。この世界がこのまま在ることを認めてくれるなら、俺は全力を尽くして世界の敵を討つ。例えそれが、“世界そのもの”でも」
語るべきことは語った――そう思った。
冷静に考えてみれば、この展開で大精霊が自分を契約者に選ぶはずもない。頭の片隅ではそう思っていた。
そんな研司の手を取り、大精霊は顔を寄せる。
「ならば強くなりなさい。何物にも負けぬほど、私にも負けぬほど、強く、気高く」
「あんた……」
「はっきり言っておきましょう。私は、ただ私(クリムゾンウェスト)が存続しさえすれば構いません。その為に必要ならば、世界のリセットもするでしょう。ですが、それをさせない――世界の抑止力となるのも、守護者ではないのですか?」
大精霊の言う通りだ。結局、コレを止めるためには力が必要となる。
間違いを認めないために、世界を正しくするために、やはり力が不可欠なのだ。
「あなたの在り方を理解しました。その魂、今一度確かめましょう」
あの時と同じく、世界がすり替わっていく。
光の海の中、大精霊が研司の手を取った。
「――星の光の名の下に、汝、藤堂研司に告げる。その魂の輝きを力と変え、星の救世主となる覚悟はあるか?」
「俺は……。俺を、守護者たりえると認めるならば……! 星神器「蚩尤」、使わせていただく!」
「契約を受理します。星と英雄の記憶を以て、ここに神の力の一端を授けん。目覚めよ、蚩尤!」
星の記憶石が砕け、その虹色の光が器に吸い込まれていく。
神の弓に手を伸ばし、しっかりとその手に握りしめた。
「いざとなれば自分を撃て……そういう事かよ」
「この世界を守護する存在に求めるのは、強い覚悟です。時に冷酷に、世界さえ撃つ覚悟……あなたにそれが持てますか?」
「……わからねぇ。でも……俺、やるよ。こいつを手にするってことは、そういうことなんだろう?」
神は目を瞑り、そして背を向ける。何の迷いも警戒もない、無防備な背中だ。
「ここに誓いは結ばれた。断罪なる守護者よ、あなたの救世に期待します」
その誓いは重く、男の魂を縛ろうとしていた。
藤堂研司(ka0569)は大精霊を前にそう切り出した。
「大精霊……俺は、先日の戦いで世界をリセットしようとしたことに、不信を抱いている」
大精霊クリムゾンウェストは、【反影】作戦でハンターの敵として立ちはだかった。
彼女の願いは、今の世界を失敗作と見做し、全てをリセットすること。そして、世界を再び別の形に再生することだった。
「今、こうして対話の機会を設けてくれた以上、あの時とは違うというのはわかる。だが、一度殺意を向けてきたテロリスト相手に気を許すほど、人間ができてもいない」
「それは当然でしょう。わざわざ言葉にせずとも、あなたの考えは分かります。必然的に、この対話の焦点も定まってくる」
――それは、信用に値しない、しかし莫大な力を持つ存在と、どのように付き合っていくのかという事だ。
「まずは契約について確認したい」
大精霊は特に異論を挟まない。故に研司は一つ一つを確認していく。
「“世界の秩序を守る存在として活動する契約への同意”……これは問題ない。ヒトと龍との共存を求める龍盟の戦士として当然だ」
「“終末的状況、世界存亡の危機において出動する契約への同意”」
「同意する。元々、それが黙っていられなくて軍人になったんだ。……照れくさくて、誰にも言えなかったけど」
「それを語る相手が私で良かったのですか?」
「逆にあんたはあと腐れないからな」
頬を赤らめながら、ぽりぽりと頭を掻く。
「最後に“ヒトと精霊の調停者としての契約への同意”。ここだ。ここを確認したい」
大精霊は世界をリセットしようとした。世界に生きる生命を殺そうとした。それはつまり無差別の殺戮だ。
「俺は、それを良しとしない。そういう存在と戦うために力を磨いてきた。この世界をどんな形であれ壊そうとする意思を持つ存在に、俺は従わない」
「そうですか」
あっけらかんとした答えに、研司は眉を顰める。
だが次の言葉を待たずして、大精霊は二の句を告げた。
「それは、問答する相手を間違えています。あなたが問わねばならないのは、己自身でしょう。何故ならばあなたが何をどう考えていようが、世界と契約してしまえば、あなたはもうあなただけの存在ではなくなってしまうのだから」
ぞっとするような冷たい眼差しだった。
そう、大精霊の言う通り。それは大精霊が認めるか認めないかという話ではない。
守護者の力を得る側にこそ、“理由”と“覚悟”が必要だ。
「この契約はあなたの自由意志を奪ったり、その存在を抹消できるようなものではありません。しかし、私がいつ再び世界の再生を願うとも限らない。その時あなたは、守護者となった事を後悔しませんか?」
「それは…………」
わからなかった。いや、きっと後悔する。それはわかる。
だが、わからないのは……何故わざわざ大精霊がそんなことを問うのか、だ。
「自然は俺達の源だ、精霊は俺に力をくれた、蔑ろにするつもりは一切ない。だが、他ならぬ大精霊がそれを蔑ろにするならば、俺は対立する」
「倒せますか? この私を」
無理難題だ。答えられるわけがない。だが、その上で。
「だからこそ、力が必要なのではありませんか?」
「……ああ、そうだ。この世界がこのまま在ることを認めてくれるなら、俺は全力を尽くして世界の敵を討つ。例えそれが、“世界そのもの”でも」
語るべきことは語った――そう思った。
冷静に考えてみれば、この展開で大精霊が自分を契約者に選ぶはずもない。頭の片隅ではそう思っていた。
そんな研司の手を取り、大精霊は顔を寄せる。
「ならば強くなりなさい。何物にも負けぬほど、私にも負けぬほど、強く、気高く」
「あんた……」
「はっきり言っておきましょう。私は、ただ私(クリムゾンウェスト)が存続しさえすれば構いません。その為に必要ならば、世界のリセットもするでしょう。ですが、それをさせない――世界の抑止力となるのも、守護者ではないのですか?」
大精霊の言う通りだ。結局、コレを止めるためには力が必要となる。
間違いを認めないために、世界を正しくするために、やはり力が不可欠なのだ。
「あなたの在り方を理解しました。その魂、今一度確かめましょう」
あの時と同じく、世界がすり替わっていく。
光の海の中、大精霊が研司の手を取った。
「――星の光の名の下に、汝、藤堂研司に告げる。その魂の輝きを力と変え、星の救世主となる覚悟はあるか?」
「俺は……。俺を、守護者たりえると認めるならば……! 星神器「蚩尤」、使わせていただく!」
「契約を受理します。星と英雄の記憶を以て、ここに神の力の一端を授けん。目覚めよ、蚩尤!」
星の記憶石が砕け、その虹色の光が器に吸い込まれていく。
神の弓に手を伸ばし、しっかりとその手に握りしめた。
「いざとなれば自分を撃て……そういう事かよ」
「この世界を守護する存在に求めるのは、強い覚悟です。時に冷酷に、世界さえ撃つ覚悟……あなたにそれが持てますか?」
「……わからねぇ。でも……俺、やるよ。こいつを手にするってことは、そういうことなんだろう?」
神は目を瞑り、そして背を向ける。何の迷いも警戒もない、無防備な背中だ。
「ここに誓いは結ばれた。断罪なる守護者よ、あなたの救世に期待します」
その誓いは重く、男の魂を縛ろうとしていた。
(執筆:神宮寺飛鳥)
(文責:フロンティアワークス)
(文責:フロンティアワークス)
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アルヴィン = オールドリッチ(ka2378) 種族:エルフ クラス:聖導士 「守護者」取得日:2018/06/22 「守護者武器」:[SW]星神器「クラヴィクラ・サロモニス」 ●「守護者」への表明 「星の守護者…ソレもまた面白い選択肢カモネ?(ふふーふ」 |
●「守護者」契約(クリックすると、下にノベルが展開されます)
「ヤァ、君が噂の大精霊カイ? 本当に見た目は総長のママなのダネ、面白いナ?」
ぐいっと顔を近づけ、しげしげと眺めるアルヴィン = オールドリッチ(ka2378)を前にしても、大精霊は表情を変えない。
「見た目がナディアであることは私としては不満ですが、今はどうでもよいでしょう」
「失敬! ソウソウ、守護者の話ダヨネ。ウン、折角機会を得た事ダシ、守護者になってミルのも面白そうダカラ、受けてみようと思うヨ」
にこにこと笑顔を絶やさないアルヴィンの様子を、大精霊はじっと見つめている。
「イヤイヤ、大丈夫ダヨ。ノリは軽いケレド、例の条件を守るツモリはアルシ。エート……なんダッケ?」
「ヒトと精霊の調停者となること」
「同意ダヨ! ヒトと精霊、仲良くやれるナラその方が良いカラネ。僕の力の及ぶ限りは、求めに応ジヨウ」
「世界の秩序を守ること」
「今までとアンマリ変わらないヨネ。世界存亡の危機にはせ参ジヨってイウノモ同じ。マァ君の言う世界の定義と僕の世界の定義はチョット違うかも知れないケレド、結果とシテ同じ事ナラ問題は無いヨネ?」
大精霊は腕を組み、小さく頷く。
「自分で言うのもナンだケド、君、ドッシリしてるネェ」
「それはあなたの方こそ、でしょう。神なのですから、それなりに桁外れの圧があるはずですが」
確かに、大精霊からは膨大な正のマテリアルを感じる。ともすれば、“バケモノ”と言っていい。
アルヴィンも一角の覚醒者。当然ながらその事実には気づいていた。
「僕はタダ、君を観ているだけダカラネェ」
その言葉には僅かな寂しさが滲んでいた。しかしだからこそ、努めて明るく。まるで歌うように、恭しく一礼する。
「僕の世界の定義は小さくテネ。今、僕の周りに居てくれる友人達が僕の世界を構築する人達で、僕は彼らが、健やかに生を全うシテいく姿を、彼らの魂の煌めきを見届けタイ。ダカラいまココに在るンダ」
「あなたの在り方は、人間ではありませんね」
とても真っすぐな、そしてどこか憐れむような言葉だった。
「確かにあなたは守護者に相応しいのかもしれない。けれど、それはきっと、ヒトとして喜ばしいことではないでしょう」
今一度、二人は向き合った。大精霊はそっと男の手を取る。
「この力を得る事で、きっとあなたはあなたの本当の願いから遠ざかってしまう。その覚悟はありますか?」
「僕のホントウの願い、かぁ」
苦笑しながら目を瞑る。だが、答えは決まっている。
「そうカモしれないし、ソウデハないカモしれない。本当の願いとイウのは、無責任で、無自覚で、定義デキナイものジャないかな」
「その通りですね。あなたの事をよく知らぬまま、失礼な物言いでした。であれば、ここからは私の独り言です」
そう前置きし、大精霊は儀式の間をぐるりと見渡す。
「あなたが観ているその世界は、なるほど、確かに尊いのでしょう。そしてあなたが得ようとしている力は、それを守るに値するのかもしれない。けれど……アルヴィン、“あなたはそこにいない”のですか?」
笑顔は消えない。だが、少しだけ困った様子だった。
「ヤァ……ドウかなぁ」
ちょっとそれは意地悪ではないか。
だって、まだ知らない。まだ答えは得ていない。それでもやっぱり、“答え”は決まっていて。
「それでも僕は、世界を護りたいんダヨ」
彼らのいる世界。そして、彼らを育んでくれた世界。
「その彼らの周りの世界にはまたソレを取り巻く世界があり、世界とはそうして繋がり、流れ、広がってイル。トッテモ大きな流れの中に、僕ラハいる」
胸に手を当て、深呼吸してみる。
瑞々しい酸素が胸に染みわたるのを感じる。自分は今、確かにここにいる。
「キット、ソレデいいんダヨ」
大精霊はそれ以上、彼に問う事はしなかった。既に答えは得た。ならば。
「あなたの在り方を理解しました。その魂、今一度確かめましょう」
瞬間、世界が色を変える。神の空間に置換された空の中、大精霊がアルヴィンの手を取る。
「――星の光の名の下に、汝、アルヴィン・オールドリッチに告げる。その魂の輝きを力と変え、星の救世主となる覚悟はあるか?」
「流れゆく世界を守り、観測し続ける……その為に、“流転”を司ると言うクラヴィクラ・サロモニスの力。借り受けたく、願い奉るヨ」
二人は手を繋ぎ、そして互いの間に漂う器に手を重ねる。
星の記憶石が砕け、その虹色の光が器に吸い込まれていく。
「ここに誓いは結ばれた。傍観なる守護者よ、あなたの救世に期待します」
ぺらぺらと風にめくれるページをそっと閉じ、アルヴィンは自らの胸にそれを押し当てた。
「あなたを想う人たちは、それをよしとするでしょうか」
「ふふーふ……ソウだネェ。その時は――ミンナに“ゴメン”するヨォ☆」
アルヴィンは笑う。
それはきっと消去法の“楽”ではなく、必然たる想いだった。
ぐいっと顔を近づけ、しげしげと眺めるアルヴィン = オールドリッチ(ka2378)を前にしても、大精霊は表情を変えない。
「見た目がナディアであることは私としては不満ですが、今はどうでもよいでしょう」
「失敬! ソウソウ、守護者の話ダヨネ。ウン、折角機会を得た事ダシ、守護者になってミルのも面白そうダカラ、受けてみようと思うヨ」
にこにこと笑顔を絶やさないアルヴィンの様子を、大精霊はじっと見つめている。
「イヤイヤ、大丈夫ダヨ。ノリは軽いケレド、例の条件を守るツモリはアルシ。エート……なんダッケ?」
「ヒトと精霊の調停者となること」
「同意ダヨ! ヒトと精霊、仲良くやれるナラその方が良いカラネ。僕の力の及ぶ限りは、求めに応ジヨウ」
「世界の秩序を守ること」
「今までとアンマリ変わらないヨネ。世界存亡の危機にはせ参ジヨってイウノモ同じ。マァ君の言う世界の定義と僕の世界の定義はチョット違うかも知れないケレド、結果とシテ同じ事ナラ問題は無いヨネ?」
大精霊は腕を組み、小さく頷く。
「自分で言うのもナンだケド、君、ドッシリしてるネェ」
「それはあなたの方こそ、でしょう。神なのですから、それなりに桁外れの圧があるはずですが」
確かに、大精霊からは膨大な正のマテリアルを感じる。ともすれば、“バケモノ”と言っていい。
アルヴィンも一角の覚醒者。当然ながらその事実には気づいていた。
「僕はタダ、君を観ているだけダカラネェ」
その言葉には僅かな寂しさが滲んでいた。しかしだからこそ、努めて明るく。まるで歌うように、恭しく一礼する。
「僕の世界の定義は小さくテネ。今、僕の周りに居てくれる友人達が僕の世界を構築する人達で、僕は彼らが、健やかに生を全うシテいく姿を、彼らの魂の煌めきを見届けタイ。ダカラいまココに在るンダ」
「あなたの在り方は、人間ではありませんね」
とても真っすぐな、そしてどこか憐れむような言葉だった。
「確かにあなたは守護者に相応しいのかもしれない。けれど、それはきっと、ヒトとして喜ばしいことではないでしょう」
今一度、二人は向き合った。大精霊はそっと男の手を取る。
「この力を得る事で、きっとあなたはあなたの本当の願いから遠ざかってしまう。その覚悟はありますか?」
「僕のホントウの願い、かぁ」
苦笑しながら目を瞑る。だが、答えは決まっている。
「そうカモしれないし、ソウデハないカモしれない。本当の願いとイウのは、無責任で、無自覚で、定義デキナイものジャないかな」
「その通りですね。あなたの事をよく知らぬまま、失礼な物言いでした。であれば、ここからは私の独り言です」
そう前置きし、大精霊は儀式の間をぐるりと見渡す。
「あなたが観ているその世界は、なるほど、確かに尊いのでしょう。そしてあなたが得ようとしている力は、それを守るに値するのかもしれない。けれど……アルヴィン、“あなたはそこにいない”のですか?」
笑顔は消えない。だが、少しだけ困った様子だった。
「ヤァ……ドウかなぁ」
ちょっとそれは意地悪ではないか。
だって、まだ知らない。まだ答えは得ていない。それでもやっぱり、“答え”は決まっていて。
「それでも僕は、世界を護りたいんダヨ」
彼らのいる世界。そして、彼らを育んでくれた世界。
「その彼らの周りの世界にはまたソレを取り巻く世界があり、世界とはそうして繋がり、流れ、広がってイル。トッテモ大きな流れの中に、僕ラハいる」
胸に手を当て、深呼吸してみる。
瑞々しい酸素が胸に染みわたるのを感じる。自分は今、確かにここにいる。
「キット、ソレデいいんダヨ」
大精霊はそれ以上、彼に問う事はしなかった。既に答えは得た。ならば。
「あなたの在り方を理解しました。その魂、今一度確かめましょう」
瞬間、世界が色を変える。神の空間に置換された空の中、大精霊がアルヴィンの手を取る。
「――星の光の名の下に、汝、アルヴィン・オールドリッチに告げる。その魂の輝きを力と変え、星の救世主となる覚悟はあるか?」
「流れゆく世界を守り、観測し続ける……その為に、“流転”を司ると言うクラヴィクラ・サロモニスの力。借り受けたく、願い奉るヨ」
二人は手を繋ぎ、そして互いの間に漂う器に手を重ねる。
星の記憶石が砕け、その虹色の光が器に吸い込まれていく。
「ここに誓いは結ばれた。傍観なる守護者よ、あなたの救世に期待します」
ぺらぺらと風にめくれるページをそっと閉じ、アルヴィンは自らの胸にそれを押し当てた。
「あなたを想う人たちは、それをよしとするでしょうか」
「ふふーふ……ソウだネェ。その時は――ミンナに“ゴメン”するヨォ☆」
アルヴィンは笑う。
それはきっと消去法の“楽”ではなく、必然たる想いだった。
(執筆:神宮寺飛鳥)
(文責:フロンティアワークス)
(文責:フロンティアワークス)
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ソフィア =リリィホルム(ka2383) 種族:ドワーフ クラス: 機導師 「守護者」取得日:2018/06/22 「守護者武器」:[SW]星神器「ブリューナク」 ●「守護者」への表明 「わたしが護るのは『創造』、人と世界の未来を創ろうとする意思だ!」 |
●「守護者」契約(クリックすると、下にノベルが展開されます)
「こうやって改まって顔を合わせるのは初めてになりますかね? わたしはソフィア=リリィホルムっていいます。よろしくお願いしますね」
顕現した大精霊と向き合いながらも、ソフィア=リリィホルム(ka2383)の視線は既にアタッシュケースから解放された星神器に向けられている。
「これが星神器……誰の所有物にもなっていない状態だと、真っ白なんですね」
「星神器とは、神とヒトとを結ぶための鍵。契約を結び、所有者を定める事で初めてパスがつながるのです」
挨拶代わりの説明に続き、大精霊は改めて問う。
「問いましょう。あなたはなぜ、守護者の力を求めるのですか?」
「一人の鍛冶師兼機導師として星神器とやらの構造とか仕組み、素材とか色々気になって。近くで見たい、あわよくば一ついただけたらなー、なんて!」
身体をくねらせながらおどけて言ってみるが、大精霊の表情はぴくりとも動かない。
これはこれでやりづらいな……と感じたが、同時に流石は大精霊、見ているのはもっと深い部分かと理解もする。
「正直、大精霊の代弁者とか星の守護者……防衛装置とか言われてもピンとこないんですよね。わたしはわたしでしかないし、それ以上になる気もないですし」
それがソフィアの正直な感想だった。しかしそれを聞いても、大精霊は何の反応も示さない。これを暗に「続けろ」と言われているものと判断する。
「ただ、まぁ。わたしもこの世界に住む一員ですし。何より、『物を創る』生業をしてますからね。世界の断絶とか無に帰すっていうのはそれに真っ向から敵対してくるワケですよ」
「なるほど。歪虚とは相容れないと、そういう事ですか」
しかし。そう、言葉を挟み。
「であるならば、この私もあなたにとっては不都合な存在ではありませんか?」
確かに、大精霊は一度この世界を無に帰そうとしたことがある。
あの【反影】作戦ではハンターの力により押しとどめられたが、大精霊がいつ気まぐれを起こすとも限らなかった。
「人間が新たに生み出すものが、星にとって良いとは限らない。それはあなたならば理解できる筈です」
「まあ……そりゃそうですね。技術の進歩は、いつもヒト本意で行われますから」
ヒトにとって都合のいい形を求めて技術は生み出される。そしてそれは時に自然に牙を剥き、星を傷つける。
大精霊が今の世界を失敗だと判断した要因のひとつだろう。人類は時に、星に向けられた剣足りえるのだ。
「私は変化より維持を求めています。変革と守護は相反する要素。あなたには無理な宿業ではありませんか?」
「――無理っていうのは、技術屋の考え方じゃねぇな」
腕を組み、思わず苦笑する。
「第一、今の人類が本当に完成系だと言えますか? 私はこう思うんです。未だこの世界は、人類は過渡期に過ぎないと」
実際、間違った力が間違った使い方をされる例など、これまで何度も見てきた。
だがそのすべてがそのまま放置されたわけではない。ヒトは学習し、繰り返さぬように努力する性質だって持っている。
「『より良い物を』。それこそが人を……世界を存続し創造させうるのに大事な気持ち。物だけじゃありません。人と精霊との間の絆。人と世界の有り方。それらもこれから『創造』していくべきものです」
「それはいつ訪れるのです?」
「そんなの私にだってわかりませんよ! だから時間が必要なんじゃないですか?」
もしかしたら、自分たちの世代では不可能なのかもしれない。
それでも、ひとまず世界が続くことで見えてくる未来もあるだろう。
「何かを創り、造り、作りっていう意思は何よりも尊い。その願いがある限り、結論を出すには早すぎます」
「それまでは、あなたがこの世界を護ると?」
「平たく言えば、そうなりますかね?」
ふっと笑みを浮かべ、大精霊は頷く。
「……いいでしょう。あなたの在り方を理解しました。その魂、今一度確かめましょう」
大精霊の言葉と共に世界が塗り替わる。星の中心に渦巻く宇宙の中で、二人はしっかりと手を重ねる。
「――星の光の名の下に、汝、ソフィア=リリィホルムに告げる。その魂の輝きを力と変え、星の救世主となる覚悟はあるか?」
「『世界を創る』意思を護るためならば。わたしは貴方との契約の証を望みます」
二人の間に浮かぶ純白の力に手を伸ばす。ソフィアが触れた瞬間、炎のようなオーラが溢れ出した。
「契約を受理します。星と英雄の記憶を以て、ここに神の力の一端を授けん。目覚めよ、ブリューナク!」
星の記憶石が砕け、その虹色の光が器に吸い込まれていく。
ブリューナクは命を吹き込まれたかのように、ソフィアの手の中で輝いていた。
「これが星神器の覚醒……! もうナマで拝める機会はないかもしれませんね!!」
「まあ、滅多に得られるものではありませんからね。せいぜい大事にしてください」
「それはそれは、もちろんですよ?♪ こんな面白……貴重な物、大事にするに決まってます?♪」
両手でぎゅっとブリューナクを抱きしめるソフィアの姿に、大精霊は目を瞑る。
「……ここに誓いは結ばれた。創造なる守護者よ、あなたの救世に期待します」
顕現した大精霊と向き合いながらも、ソフィア=リリィホルム(ka2383)の視線は既にアタッシュケースから解放された星神器に向けられている。
「これが星神器……誰の所有物にもなっていない状態だと、真っ白なんですね」
「星神器とは、神とヒトとを結ぶための鍵。契約を結び、所有者を定める事で初めてパスがつながるのです」
挨拶代わりの説明に続き、大精霊は改めて問う。
「問いましょう。あなたはなぜ、守護者の力を求めるのですか?」
「一人の鍛冶師兼機導師として星神器とやらの構造とか仕組み、素材とか色々気になって。近くで見たい、あわよくば一ついただけたらなー、なんて!」
身体をくねらせながらおどけて言ってみるが、大精霊の表情はぴくりとも動かない。
これはこれでやりづらいな……と感じたが、同時に流石は大精霊、見ているのはもっと深い部分かと理解もする。
「正直、大精霊の代弁者とか星の守護者……防衛装置とか言われてもピンとこないんですよね。わたしはわたしでしかないし、それ以上になる気もないですし」
それがソフィアの正直な感想だった。しかしそれを聞いても、大精霊は何の反応も示さない。これを暗に「続けろ」と言われているものと判断する。
「ただ、まぁ。わたしもこの世界に住む一員ですし。何より、『物を創る』生業をしてますからね。世界の断絶とか無に帰すっていうのはそれに真っ向から敵対してくるワケですよ」
「なるほど。歪虚とは相容れないと、そういう事ですか」
しかし。そう、言葉を挟み。
「であるならば、この私もあなたにとっては不都合な存在ではありませんか?」
確かに、大精霊は一度この世界を無に帰そうとしたことがある。
あの【反影】作戦ではハンターの力により押しとどめられたが、大精霊がいつ気まぐれを起こすとも限らなかった。
「人間が新たに生み出すものが、星にとって良いとは限らない。それはあなたならば理解できる筈です」
「まあ……そりゃそうですね。技術の進歩は、いつもヒト本意で行われますから」
ヒトにとって都合のいい形を求めて技術は生み出される。そしてそれは時に自然に牙を剥き、星を傷つける。
大精霊が今の世界を失敗だと判断した要因のひとつだろう。人類は時に、星に向けられた剣足りえるのだ。
「私は変化より維持を求めています。変革と守護は相反する要素。あなたには無理な宿業ではありませんか?」
「――無理っていうのは、技術屋の考え方じゃねぇな」
腕を組み、思わず苦笑する。
「第一、今の人類が本当に完成系だと言えますか? 私はこう思うんです。未だこの世界は、人類は過渡期に過ぎないと」
実際、間違った力が間違った使い方をされる例など、これまで何度も見てきた。
だがそのすべてがそのまま放置されたわけではない。ヒトは学習し、繰り返さぬように努力する性質だって持っている。
「『より良い物を』。それこそが人を……世界を存続し創造させうるのに大事な気持ち。物だけじゃありません。人と精霊との間の絆。人と世界の有り方。それらもこれから『創造』していくべきものです」
「それはいつ訪れるのです?」
「そんなの私にだってわかりませんよ! だから時間が必要なんじゃないですか?」
もしかしたら、自分たちの世代では不可能なのかもしれない。
それでも、ひとまず世界が続くことで見えてくる未来もあるだろう。
「何かを創り、造り、作りっていう意思は何よりも尊い。その願いがある限り、結論を出すには早すぎます」
「それまでは、あなたがこの世界を護ると?」
「平たく言えば、そうなりますかね?」
ふっと笑みを浮かべ、大精霊は頷く。
「……いいでしょう。あなたの在り方を理解しました。その魂、今一度確かめましょう」
大精霊の言葉と共に世界が塗り替わる。星の中心に渦巻く宇宙の中で、二人はしっかりと手を重ねる。
「――星の光の名の下に、汝、ソフィア=リリィホルムに告げる。その魂の輝きを力と変え、星の救世主となる覚悟はあるか?」
「『世界を創る』意思を護るためならば。わたしは貴方との契約の証を望みます」
二人の間に浮かぶ純白の力に手を伸ばす。ソフィアが触れた瞬間、炎のようなオーラが溢れ出した。
「契約を受理します。星と英雄の記憶を以て、ここに神の力の一端を授けん。目覚めよ、ブリューナク!」
星の記憶石が砕け、その虹色の光が器に吸い込まれていく。
ブリューナクは命を吹き込まれたかのように、ソフィアの手の中で輝いていた。
「これが星神器の覚醒……! もうナマで拝める機会はないかもしれませんね!!」
「まあ、滅多に得られるものではありませんからね。せいぜい大事にしてください」
「それはそれは、もちろんですよ?♪ こんな面白……貴重な物、大事にするに決まってます?♪」
両手でぎゅっとブリューナクを抱きしめるソフィアの姿に、大精霊は目を瞑る。
「……ここに誓いは結ばれた。創造なる守護者よ、あなたの救世に期待します」
(執筆:神宮寺飛鳥)
(文責:フロンティアワークス)
(文責:フロンティアワークス)
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リュー・グランフェスト(ka2419) 種族:人間(クリムゾンウェスト) クラス:闘狩人 「守護者」取得日:2018/06/22 「守護者武器」:[SW]星神器「エクスカリバー」 ●「守護者」への表明 「俺は剣。あらゆる理不尽より世界を守り、敵を倒す刃となろう」 |
●「守護者」契約(クリックすると、下にノベルが展開されます)
「それに手を伸ばす事の意味を、あなたは理解していますか?」
拍子抜けするほど当たり前の質問だった。
リュー・グランフェスト(ka2419)は目を閉じ、想いに耽る。
今更だ。もう何度も何度も考えてきた。これまでに何度も、失ってきたのだから。
「俺はもう、ずっと前に決めていたんだよ。この願いも、その為の覚悟も」
子供の時から、何かを守りたいという願いに突き動かされてきた。
ハンターとなり、誰かを救いながらも、その願いが満たされる事はなかった。
そしてあの強欲王メイルストロムを倒した時から、願いは致命的となってしまった。
「守護者たる彼に後を託された。そう、あの時から決めている」
どこか、大精霊の眼差しは悲し気だった。
“世界の秩序を守る存在として活動する契約への同意”……イエスだ。ハンターになると決めた時から、その覚悟はできている。
“ヒトと精霊の調停者としての契約への同意”……決まっている、イエスだ。彼の望む未来は、人と精霊が手を取り合い切り開いていく世界である。
“終末的状況、世界存亡の危機において出動する契約への同意”……むしろ歓迎だ。そんな危機があるならば、自分の全てで抗おう。
「あなたは確かに、守護者らしすぎるほどに守護者ですね」
大精霊の言葉には含みがあった、剣に伸ばした指が、ぴくりと動く。
「そいつはどういう意味だい?」
「言葉の通りです。あなたはまるで“龍”のようです。生まれつき定められた願いに向かって生きて、その力を賭して散りゆく炎のようだと」
「そいつは光栄だ。俺はいつだって、そう在りたいと願ってる」
「私は、それだけでは守護者として不十分であると言っているのです」
予想外の言葉に目を丸くする。
だって、言ったじゃないか。“守護者らしい”と。
それは、自分が資格を持つ者であるという意味ではなかったのか?
「よくわからないんだが、説明してもらってもいいか?」
「それは……私にもよくわからないのですが……」
「ええ……!?」
「今一度問いましょう。あなたは何故、力を求めるのですか?」
そう言われても、すぐに言葉は浮かばなかった。だって、そんなのは当たり前だから。
「うまく言えないかもしれないが……俺は……この世界が好きだ。この世界の関係が」
「関係?」
「色々あったんだ。本当に色々、説明しきれないくらいさ。それは多分、理不尽な事も含めて……俺は、これでよかったんだと思ってる」
そうでなければ、きっとリューはここにいない。
ここに自分を立たせる為には、きっと幾つかの悲劇が必要だった。
「でも同時に、それじゃダメだって思うんだ。自分の中にある想いが、力を求めている。ああ、そうだ……だから、俺の……俺の願いは」
救えないのは嫌だ。
負けるのは嫌だ。
守れないのは嫌だ。
「理不尽を跳ねのける力が欲しい……! この手ですべてを守れるように……!」
大精霊は目を瞑り、そしてリューの手を取る。
その瞬間、空間が書き換わる。紅い光の海の中、大精霊は息を吐く。
「――星の光の名の下に、汝、リュー・グランフェストに告げる。その魂の輝きを力と変え、星の救世主となる覚悟はあるか?」
「ああ、約束だ。俺はリュー。リュー・グランフェストだ。約束は必ず守る。俺は剣。あらゆる理不尽より世界を守り、敵を倒す刃となろう!」
二人は手を繋ぎ、そして互いの間に漂う器に手を重ねる。
「契約を受理します。星と英雄の記憶を以て、ここに神の力の一端を授けん。目覚めよ、エクスカリバー!」
星の記憶石が砕け、その虹色の光が器に吸い込まれていく。
その輝きをしっかりと握りしめ、リューは頭上に掲げた。
「よろしくな、エクスカリバー」
「ここに誓いは結ばれた。渇望なる守護者よ、あなたの救世に期待します」
「……そんなに心配そうな顔するなよ」
色づいた剣を鞘に納め、リューは笑う。
「決してお前を一人にはしない。だから、俺に付いて来い」
改めて差し出された掌。
少女の形をした神はその手を取り、優しく微笑んでいた。
拍子抜けするほど当たり前の質問だった。
リュー・グランフェスト(ka2419)は目を閉じ、想いに耽る。
今更だ。もう何度も何度も考えてきた。これまでに何度も、失ってきたのだから。
「俺はもう、ずっと前に決めていたんだよ。この願いも、その為の覚悟も」
子供の時から、何かを守りたいという願いに突き動かされてきた。
ハンターとなり、誰かを救いながらも、その願いが満たされる事はなかった。
そしてあの強欲王メイルストロムを倒した時から、願いは致命的となってしまった。
「守護者たる彼に後を託された。そう、あの時から決めている」
どこか、大精霊の眼差しは悲し気だった。
“世界の秩序を守る存在として活動する契約への同意”……イエスだ。ハンターになると決めた時から、その覚悟はできている。
“ヒトと精霊の調停者としての契約への同意”……決まっている、イエスだ。彼の望む未来は、人と精霊が手を取り合い切り開いていく世界である。
“終末的状況、世界存亡の危機において出動する契約への同意”……むしろ歓迎だ。そんな危機があるならば、自分の全てで抗おう。
「あなたは確かに、守護者らしすぎるほどに守護者ですね」
大精霊の言葉には含みがあった、剣に伸ばした指が、ぴくりと動く。
「そいつはどういう意味だい?」
「言葉の通りです。あなたはまるで“龍”のようです。生まれつき定められた願いに向かって生きて、その力を賭して散りゆく炎のようだと」
「そいつは光栄だ。俺はいつだって、そう在りたいと願ってる」
「私は、それだけでは守護者として不十分であると言っているのです」
予想外の言葉に目を丸くする。
だって、言ったじゃないか。“守護者らしい”と。
それは、自分が資格を持つ者であるという意味ではなかったのか?
「よくわからないんだが、説明してもらってもいいか?」
「それは……私にもよくわからないのですが……」
「ええ……!?」
「今一度問いましょう。あなたは何故、力を求めるのですか?」
そう言われても、すぐに言葉は浮かばなかった。だって、そんなのは当たり前だから。
「うまく言えないかもしれないが……俺は……この世界が好きだ。この世界の関係が」
「関係?」
「色々あったんだ。本当に色々、説明しきれないくらいさ。それは多分、理不尽な事も含めて……俺は、これでよかったんだと思ってる」
そうでなければ、きっとリューはここにいない。
ここに自分を立たせる為には、きっと幾つかの悲劇が必要だった。
「でも同時に、それじゃダメだって思うんだ。自分の中にある想いが、力を求めている。ああ、そうだ……だから、俺の……俺の願いは」
救えないのは嫌だ。
負けるのは嫌だ。
守れないのは嫌だ。
「理不尽を跳ねのける力が欲しい……! この手ですべてを守れるように……!」
大精霊は目を瞑り、そしてリューの手を取る。
その瞬間、空間が書き換わる。紅い光の海の中、大精霊は息を吐く。
「――星の光の名の下に、汝、リュー・グランフェストに告げる。その魂の輝きを力と変え、星の救世主となる覚悟はあるか?」
「ああ、約束だ。俺はリュー。リュー・グランフェストだ。約束は必ず守る。俺は剣。あらゆる理不尽より世界を守り、敵を倒す刃となろう!」
二人は手を繋ぎ、そして互いの間に漂う器に手を重ねる。
「契約を受理します。星と英雄の記憶を以て、ここに神の力の一端を授けん。目覚めよ、エクスカリバー!」
星の記憶石が砕け、その虹色の光が器に吸い込まれていく。
その輝きをしっかりと握りしめ、リューは頭上に掲げた。
「よろしくな、エクスカリバー」
「ここに誓いは結ばれた。渇望なる守護者よ、あなたの救世に期待します」
「……そんなに心配そうな顔するなよ」
色づいた剣を鞘に納め、リューは笑う。
「決してお前を一人にはしない。だから、俺に付いて来い」
改めて差し出された掌。
少女の形をした神はその手を取り、優しく微笑んでいた。
(執筆:神宮寺飛鳥)
(文責:フロンティアワークス)
(文責:フロンティアワークス)
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フィロ(ka6966) 種族:オートマトン クラス:格闘士 「守護者」取得日:2018/06/22 「守護者武器」:[SW]星神器「?力」 ●「守護者」への表明 「今度こそ世界を守り、失うことのない世界を全ての人に」 |
●「守護者」契約(クリックすると、下にノベルが展開されます)
「オートマトン……異世界の技術で作られた精霊の一側面、ですか」
背筋を伸ばし、正面で手を組みながらフィロ(ka6966)は行儀よく大精霊の視線を受け止めていた。
彼女はオートマトン――即ち厳密には生物ではなく機械の器に納められた精霊。そういった意味では、今の大精霊と同じような立場にある。
「改めて問いましょう。あなたは何故、力を欲するのですか?」
「はい。力を欲する理由、それは私が一度すべてを失っているからです」
フィロは大して表情も変えず、粛々と答える。
「仰る通り、私は異世界からやってきました。その点を鑑みれば、クリムゾンウェストという世界の守護者に相応しくないのかもしれません。しかし、異世界からやって来たからこそ、想うこともあります」
エバーグリーンは歪虚の侵攻で滅んだ世界だ。もう取り返しはつかない。
だが、そこには確かに人の営みがあり、フィロもその中に溶け込んでいた。世界の一部として機能していた――はずだ。
「世界を失って、私は御主人様も記憶も失いました。この胸に宿る想いは曖昧で……でも、私には……確かに御主人様が……ご家族がいた……ような気がするのです」
歯切れの悪い言葉だ。そう、言い切れないことが何よりも悔しかった。
お坊ちゃまやお嬢様のお世話と警護が、仕事だった――ような気がする。
それを思い出すことはもうできない。これが本当に正しい記憶なのか、確かめる術すらない。
ただ知りたい、ただ学びたいと、靄のかかった記憶は強迫観念のように胸中に巣くい、フィロを苦しめる。
「私は知りたい……けれど、もう……思い出すこともできない。それは、全てを失ってしまったから」
自分には故郷があった。家族がいて、大切な世界があった。そう、“思い込みたいだけ”なのかもしれない。
ただの願望。そうでなければ、今を生きられない壊れた回路が見せた夢なのかもしれない。
「でも、たった一つだけ、間違いようのない事実があります。私は――大事な人を守れなかった。彼らの生きた世界を、守れなかったのです」
両手をじっと見つめ、そして視線を空に浮かぶ“力”に移す。
「力があれば……失わずに済みますか? 力があれば……もう、忘れずに済みますか?」
大精霊はその問いに、静かに首を横に振る。
「……いいえ。あなたはそれでもまた、失い続けるでしょう。力があれば何かを救えるかもしれない。けれどその代償に、あなたはあなたという存在を失ってしまう。よくお考えなさい。あなたは未だ、未熟なのだから」
この力を万全に扱う為には、より強い適性が必要となる。フィロはまだそこに到達していない。
「焦らなくても、よいのではありませんか?」
この渇望が焦りだというのなら、それもそうなのだろう。
だとしても、想いは変わらない。吸い寄せられるように、フィロの手は力へと伸ばされる。
「それでも私は、誰も、何も失わないで済む世界が欲しい」
「後戻りはできませんよ」
そう最後に告げて、大精霊はフィロの手を取った。
「あなたの在り方を理解しました。その魂、今一度確かめましょう」
深紅の炎が世界を塗り替えていく。光の渦の中、純白の力に手を伸ばす。
「――星の光の名の下に、汝、フィロに告げる。その魂の輝きを力と変え、星の救世主となる覚悟はあるか?」
問いかけに頷き、そしてフィロはまだ何者にも染まらぬ新たな力に触れた。
「非才の身なれど、貴方に相応しくあるよう努力し精進し続けます。だから、私に力を貸してくれませんか? 今度こそ私は世界を守りたい。この世界を、この世界の人々全てを守りたい」
「契約を受理します。星と英雄の記憶を以て、ここに神の力の一端を授けん。目覚めよ、?力!」
星の記憶石が砕け、その虹色の光が器に吸い込まれていく。
純白の力に炎が宿り、フィロはそれを身に着け、自らの胸にそっと押し当てる。
「ここに誓いは結ばれた。悔恨なる守護者よ、あなたの救世に期待します」
「共に行きましょう……?力。今度こそ、私は世界を守る」
道は示された。フィロは何かの答えを得たかのように、安らかな笑みを浮かべていた。
背筋を伸ばし、正面で手を組みながらフィロ(ka6966)は行儀よく大精霊の視線を受け止めていた。
彼女はオートマトン――即ち厳密には生物ではなく機械の器に納められた精霊。そういった意味では、今の大精霊と同じような立場にある。
「改めて問いましょう。あなたは何故、力を欲するのですか?」
「はい。力を欲する理由、それは私が一度すべてを失っているからです」
フィロは大して表情も変えず、粛々と答える。
「仰る通り、私は異世界からやってきました。その点を鑑みれば、クリムゾンウェストという世界の守護者に相応しくないのかもしれません。しかし、異世界からやって来たからこそ、想うこともあります」
エバーグリーンは歪虚の侵攻で滅んだ世界だ。もう取り返しはつかない。
だが、そこには確かに人の営みがあり、フィロもその中に溶け込んでいた。世界の一部として機能していた――はずだ。
「世界を失って、私は御主人様も記憶も失いました。この胸に宿る想いは曖昧で……でも、私には……確かに御主人様が……ご家族がいた……ような気がするのです」
歯切れの悪い言葉だ。そう、言い切れないことが何よりも悔しかった。
お坊ちゃまやお嬢様のお世話と警護が、仕事だった――ような気がする。
それを思い出すことはもうできない。これが本当に正しい記憶なのか、確かめる術すらない。
ただ知りたい、ただ学びたいと、靄のかかった記憶は強迫観念のように胸中に巣くい、フィロを苦しめる。
「私は知りたい……けれど、もう……思い出すこともできない。それは、全てを失ってしまったから」
自分には故郷があった。家族がいて、大切な世界があった。そう、“思い込みたいだけ”なのかもしれない。
ただの願望。そうでなければ、今を生きられない壊れた回路が見せた夢なのかもしれない。
「でも、たった一つだけ、間違いようのない事実があります。私は――大事な人を守れなかった。彼らの生きた世界を、守れなかったのです」
両手をじっと見つめ、そして視線を空に浮かぶ“力”に移す。
「力があれば……失わずに済みますか? 力があれば……もう、忘れずに済みますか?」
大精霊はその問いに、静かに首を横に振る。
「……いいえ。あなたはそれでもまた、失い続けるでしょう。力があれば何かを救えるかもしれない。けれどその代償に、あなたはあなたという存在を失ってしまう。よくお考えなさい。あなたは未だ、未熟なのだから」
この力を万全に扱う為には、より強い適性が必要となる。フィロはまだそこに到達していない。
「焦らなくても、よいのではありませんか?」
この渇望が焦りだというのなら、それもそうなのだろう。
だとしても、想いは変わらない。吸い寄せられるように、フィロの手は力へと伸ばされる。
「それでも私は、誰も、何も失わないで済む世界が欲しい」
「後戻りはできませんよ」
そう最後に告げて、大精霊はフィロの手を取った。
「あなたの在り方を理解しました。その魂、今一度確かめましょう」
深紅の炎が世界を塗り替えていく。光の渦の中、純白の力に手を伸ばす。
「――星の光の名の下に、汝、フィロに告げる。その魂の輝きを力と変え、星の救世主となる覚悟はあるか?」
問いかけに頷き、そしてフィロはまだ何者にも染まらぬ新たな力に触れた。
「非才の身なれど、貴方に相応しくあるよう努力し精進し続けます。だから、私に力を貸してくれませんか? 今度こそ私は世界を守りたい。この世界を、この世界の人々全てを守りたい」
「契約を受理します。星と英雄の記憶を以て、ここに神の力の一端を授けん。目覚めよ、?力!」
星の記憶石が砕け、その虹色の光が器に吸い込まれていく。
純白の力に炎が宿り、フィロはそれを身に着け、自らの胸にそっと押し当てる。
「ここに誓いは結ばれた。悔恨なる守護者よ、あなたの救世に期待します」
「共に行きましょう……?力。今度こそ、私は世界を守る」
道は示された。フィロは何かの答えを得たかのように、安らかな笑みを浮かべていた。
(執筆:神宮寺飛鳥)
(文責:フロンティアワークス)
(文責:フロンティアワークス)
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鞍馬 真(ka5819) 種族:人間(リアルブルー) クラス:闘狩人 「守護者」取得日:2018/07/12 「守護者武器」:[SW]星神器「カ・ディンギル」 ●「守護者」への表明 「私の力が、生命が、何かの役に立つのなら。存分に使って欲しい」 |
●「守護者」契約(クリックすると、下にノベルが展開されます)
「……正直、私なんかが守護者にふさわしいのか疑問には思う」
大精霊を顕現させたナディア・ドラゴネッティ(kz0207)を前に、鞍馬 真(ka5819)はそう切り出した。
思えば今日ここに至るまで、様々な葛藤があった。しかもその多くは未だ解決の二文字に至ったとは言えない。
その上で、大精霊という存在との契約に踏み切るのであれば、ありのままの自分と向き合う必要がある。
「私は特に秀でた力も持たないし、記憶に欠けもある不完全な存在だ。他にふさわしい人はいくらでもいるんじゃないかと思ってしまう」
「では何故、この力を望むのですか?」
「それは……依頼を受けるのは好きだし、人を助けるのも好きだ。つまり、生命が好きで、その生命を内包する世界そのものが好きだから」
言葉を紡いでいる途中から、大精霊の表情が気になった。
基本的に表情らしきものは無ではあったが、その瞳にはすべてを見通すような凄みがある。
「本当に、そう思っているのですか?」
故に、そのような確認を挟まれる事も想定の範囲内であった。
「あなたは生命が好きだと言いました。それは間違いのない事実ですか?」
「……言わんとすることは分かるよ。最近、似たような指摘を受けるからね」
真には転移者としてクリムゾンウェストに降り立つ以前の記憶がない。その事実を彼は己の無責任さの表れと捉えていた。
「だってそうだろう? 本当に大切な物なら――忘れてしまえるはずがないのだから」
なぜ忘れたのか、忘れる必要があったのか、忘れて構わないものだったのか。何もわからない。
ただ、結局は自分という人間はその程度なのだと、冷めた諦めの中で生きてきた。
「きみの意図を汲んで訂正するのなら、そうだな……。私が好きな世界に、“私”はいないのかもしれない。それでも、この世界が好きだという気持ちに偽りはないんだ」
自分には大した夢も理想も大義名分もない。でも、この世界には彼らがいる。
大切な仲間、自分に居場所をくれた人たち。一度失ったからこそもう失いたくないと強く願った。
「……世界を、大切な存在を、壊されたくない、守りたい。その思いだけは、誰にも負けないと思う」
「その願いは、変わりませんか? もしこれから、あなたが本当のあなたを取り戻したとしても、もう戻れないのですよ?」
「本当の私、か……」
思わずふっと笑ってしまう。本当の自分、そんなものは言葉遊びだ。
ああ、なるほど。だとすれば――確かに。彼女の問いかけにも意味はある。
「わからない。でも、“今の私”はそれを願っているよ」
これ以上問う事はないと言わんばかりに、大精霊はその両腕を広げる。
深紅の星のカーテンが世界を覆いつくし、光の中で大精霊が真の手を取った。
「――星の光の名の下に、汝、鞍馬 真に告げる。その魂の輝きを力と変え、星の救世主となる覚悟はあるか?」
「この世界のために、私の生命が少しでも役に立てると言ってくれるのなら……何も躊躇はしない。喜んで、私の生命を預けよう」
二人は手を繋ぎ、そして互いの間に漂う器に手を重ねる。
「契約を受理します。星と英雄の記憶を以て、ここに神の力の一端を授けん。目覚めよ、カ・ディンギル!」
星の記憶石が砕け、その虹色の光が器に吸い込まれ、目覚めた星神器が時の歯車を刻み出した。
「これが星神器……ありがたい。私の生命を賭して、星を守ると誓おう」
「何かを護ろうとする時。それが困難であればあるほど……理不尽であればあるほど……何かを代償として支払わねばなりません」
契約を終えた大精霊は、繋いだままの真の手を自らの両手で優しく包み込む。
「あなたがもしもすべてを捨てる覚悟を持てるヒトならば、それこそがあなたの真実でしょう」
「……ああ。そうかもしれないな」
もし――もしも仮に、ここで彼女が自分に“すべての記憶を差し出せ”と言ったなら……自分はどうしただろう?
そうする事でしか護れない物があったのなら、或いは――。
「ここに誓いは結ばれた。泡沫なる守護者よ、あなたの救世に期待します」
星神器を胸に押し当て、真は目を瞑る。今は、これでよかったのだと思えた。
すべてを失っても守りたいものがある。それは――この上ない幸福なのだから。
大精霊を顕現させたナディア・ドラゴネッティ(kz0207)を前に、鞍馬 真(ka5819)はそう切り出した。
思えば今日ここに至るまで、様々な葛藤があった。しかもその多くは未だ解決の二文字に至ったとは言えない。
その上で、大精霊という存在との契約に踏み切るのであれば、ありのままの自分と向き合う必要がある。
「私は特に秀でた力も持たないし、記憶に欠けもある不完全な存在だ。他にふさわしい人はいくらでもいるんじゃないかと思ってしまう」
「では何故、この力を望むのですか?」
「それは……依頼を受けるのは好きだし、人を助けるのも好きだ。つまり、生命が好きで、その生命を内包する世界そのものが好きだから」
言葉を紡いでいる途中から、大精霊の表情が気になった。
基本的に表情らしきものは無ではあったが、その瞳にはすべてを見通すような凄みがある。
「本当に、そう思っているのですか?」
故に、そのような確認を挟まれる事も想定の範囲内であった。
「あなたは生命が好きだと言いました。それは間違いのない事実ですか?」
「……言わんとすることは分かるよ。最近、似たような指摘を受けるからね」
真には転移者としてクリムゾンウェストに降り立つ以前の記憶がない。その事実を彼は己の無責任さの表れと捉えていた。
「だってそうだろう? 本当に大切な物なら――忘れてしまえるはずがないのだから」
なぜ忘れたのか、忘れる必要があったのか、忘れて構わないものだったのか。何もわからない。
ただ、結局は自分という人間はその程度なのだと、冷めた諦めの中で生きてきた。
「きみの意図を汲んで訂正するのなら、そうだな……。私が好きな世界に、“私”はいないのかもしれない。それでも、この世界が好きだという気持ちに偽りはないんだ」
自分には大した夢も理想も大義名分もない。でも、この世界には彼らがいる。
大切な仲間、自分に居場所をくれた人たち。一度失ったからこそもう失いたくないと強く願った。
「……世界を、大切な存在を、壊されたくない、守りたい。その思いだけは、誰にも負けないと思う」
「その願いは、変わりませんか? もしこれから、あなたが本当のあなたを取り戻したとしても、もう戻れないのですよ?」
「本当の私、か……」
思わずふっと笑ってしまう。本当の自分、そんなものは言葉遊びだ。
ああ、なるほど。だとすれば――確かに。彼女の問いかけにも意味はある。
「わからない。でも、“今の私”はそれを願っているよ」
これ以上問う事はないと言わんばかりに、大精霊はその両腕を広げる。
深紅の星のカーテンが世界を覆いつくし、光の中で大精霊が真の手を取った。
「――星の光の名の下に、汝、鞍馬 真に告げる。その魂の輝きを力と変え、星の救世主となる覚悟はあるか?」
「この世界のために、私の生命が少しでも役に立てると言ってくれるのなら……何も躊躇はしない。喜んで、私の生命を預けよう」
二人は手を繋ぎ、そして互いの間に漂う器に手を重ねる。
「契約を受理します。星と英雄の記憶を以て、ここに神の力の一端を授けん。目覚めよ、カ・ディンギル!」
星の記憶石が砕け、その虹色の光が器に吸い込まれ、目覚めた星神器が時の歯車を刻み出した。
「これが星神器……ありがたい。私の生命を賭して、星を守ると誓おう」
「何かを護ろうとする時。それが困難であればあるほど……理不尽であればあるほど……何かを代償として支払わねばなりません」
契約を終えた大精霊は、繋いだままの真の手を自らの両手で優しく包み込む。
「あなたがもしもすべてを捨てる覚悟を持てるヒトならば、それこそがあなたの真実でしょう」
「……ああ。そうかもしれないな」
もし――もしも仮に、ここで彼女が自分に“すべての記憶を差し出せ”と言ったなら……自分はどうしただろう?
そうする事でしか護れない物があったのなら、或いは――。
「ここに誓いは結ばれた。泡沫なる守護者よ、あなたの救世に期待します」
星神器を胸に押し当て、真は目を瞑る。今は、これでよかったのだと思えた。
すべてを失っても守りたいものがある。それは――この上ない幸福なのだから。
(執筆:神宮寺飛鳥)
(文責:フロンティアワークス)
(文責:フロンティアワークス)
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岩井崎 旭(ka0234) 種族:人間(リアルブルー) クラス:霊闘士(ベルセルク) サブクラス「守護者」取得日:2018/08/31 ●「守護者」への表明 「名前も知らない誰かの明日を護る。俺は、そういうのでありたい」 |
●「守護者」契約(クリックすると、下にノベルが展開されます)
「大精霊降ろすのは大変なんだってな。というわけでケーキ買って来たぜ!」
「そうですか」
岩井崎 旭(ka0234)が持ち込んだケーキを挟み、大精霊に身体を明け渡したナディア・ドラゴネッティ(kz0207)が対峙する。
ハンターシステムの前に椅子とテーブルを置き、訓練場でスキルをぶっ放すハンターを横目に二人はお茶を楽しむ。
「大精霊ってケーキ食うんだな??」
「肉体はナディアですからね」
「これなんのお茶?」
「ソサエティで来客に出している安い紅茶です」
「あ。ナディアの分もとっておいてやってくれよな」
「善処しましょう」
閑話休題。
「言わずもがな、ここは守護者としての契約を結ぶ場です」
「そうだな。あれだろ、なんか理由とか話せばいいんだよな? でも、イチから話すと結構長くなるぜ?」
腕を組み、男は苦笑する。なにせ理由とは、彼の旅路そのものなのだ。
この世界に転移して、困っていたところを異世界人に助けてもらった。
八百屋で貰った野菜が美味かった。森で迷った時には精霊に助けられた。
「この世界を好きになるには十分な理由だ」
「では、世界が好きだからというのがあなたのモチベーションですか」
「それもある! が、それだけじゃない。俺が守護者になることを意識したのは、もうちょい後の話だ」
かつて北方王国リグ・サンガマを巡り、強欲竜と苛烈な戦いを繰り広げた【龍奏】作戦。
ハンターたちにとって、この星を守護する宿命を与えられた「龍」という存在を深く知るきっかけとなった戦いの中で、旭はある竜と出会った。
「あいつらも色々間違っちゃいたけど、この世界を守りたいって気持ちは本物だったんだよな」
彼らは過去の宿命に囚われていた。そんな彼らと刃を交える中で、旭はその願いを知った。
「呼んでくれたんだ。お前はトモダチだって……お前が新しい守護者だって。だから、俺はそれに応えたい」
「そうですか」
大精霊の声色に感情は乗っていない。カップを口につけ、そして一息。
「守護者になるという事、その本質を強欲竜から学んだあなたが、それでも守護者になるという。それは前進ですか?」
「ああ、前進だ!」
間髪入れずに返すと、大精霊が僅かに驚く。
「あんたと契約して、俺はやっとスタートラインに立つんだ。それでようやく、あいつらと肩を並べる。守護者になることは過程にすぎない。俺のゴールはずっと先だ」
「では、あなたの目指すゴールとは?」
「それはわからん!」
大精霊がジト目を向けると、旭は慌てて両手を振る。
「いやいやっ、正しくは定められないっつーか……俺の目的はカッチリ決まったもんじゃないんだよ」
「ひとつではないと?」
「そうそう。色々ありすぎてなぁ……ただ一個だけハッキリしてるのは、少しでもマシな明日にしたいってことだ」
そう言って男は頭上に手を翳す。その腕には龍鉱石で作られたリングが輝いていた。
「自分の大事なもんだけ守れればいいだなんてつまんねぇ。旅して勝手に首突っ込んで、誰かの明日まで、勝手気ままに守るのさ」
「……守りたいものは、明日になってみなければわからない、ですか」
「そう、それ!」
「なるほど。まったく大層な理由です」
ふっと、大精霊は笑う。その眼差しはどこか優しく見えた。
「いいでしょう。あなたの在り方は理解しました」
「よし、契約だな! その前に……!」
「「 テーブルを片付けよう 」」
二人で隅っこまでテーブルをどかし、大精霊は輝きで空間を塗り替えていく。
「――星の光の名の下に、汝、岩井崎 旭に告げる。その魂の輝きを力と変え、星の救世主となる覚悟はあるか?」
「迷う事なんて何もねぇ! クリムゾンウェスト! この空の下で、あんたと、あんたの世界を護らせてくれ!」
旭は差し伸べられた手をしっかりと握り返す。
「契約を受理します。星と英雄の記憶を以て、ここに神の力の一端を授けん。目覚めよ、ガーディアン!」
星の記憶石が砕け、その虹色の光が旭の身体に吸い込まれると同時、胸の奥底から溢れんばかりの力が湧いてくるのを感じた。
「これが守護者か! へへ……確かにすっげー力を感じるぜ!」
「あなたの目的は果たせそうですか?」
「ああ! 俺はまだまだこの程度じゃ終わらない! ニンゲンの快進撃を見ていやがれ!」
握り拳を高々と掲げる。星に還った者たちにも、この姿が見えるように。
「ここに誓いは結ばれた。自由なる守護者よ、あなたの救世に期待します」
「はっはっは、任せろ任せろ! 手当たり次第になんでも救ってやるぜ!」
「ところでお茶を楽しんだ分普段の契約よりも顕現した時間が長いためこの後ナディアは倒れます」
「――は?」
「あなたの最初の仕事になりますが、頑張ってください」
大精霊が目を瞑ると同時、覚醒変化が消滅。そしてナディアは直立した姿勢のまま、顔面から地面に倒れた。
「総長ォオオオオーー!? しっかりしろぉぉぉおおおおーーーーッ!!」
「ケーキ……食っとる……場合…………か…………」
「総長のもあるぞ!?」
「そういう……問題じゃ……ない…………」
めでたし、めでたし。
「そうですか」
岩井崎 旭(ka0234)が持ち込んだケーキを挟み、大精霊に身体を明け渡したナディア・ドラゴネッティ(kz0207)が対峙する。
ハンターシステムの前に椅子とテーブルを置き、訓練場でスキルをぶっ放すハンターを横目に二人はお茶を楽しむ。
「大精霊ってケーキ食うんだな??」
「肉体はナディアですからね」
「これなんのお茶?」
「ソサエティで来客に出している安い紅茶です」
「あ。ナディアの分もとっておいてやってくれよな」
「善処しましょう」
閑話休題。
「言わずもがな、ここは守護者としての契約を結ぶ場です」
「そうだな。あれだろ、なんか理由とか話せばいいんだよな? でも、イチから話すと結構長くなるぜ?」
腕を組み、男は苦笑する。なにせ理由とは、彼の旅路そのものなのだ。
この世界に転移して、困っていたところを異世界人に助けてもらった。
八百屋で貰った野菜が美味かった。森で迷った時には精霊に助けられた。
「この世界を好きになるには十分な理由だ」
「では、世界が好きだからというのがあなたのモチベーションですか」
「それもある! が、それだけじゃない。俺が守護者になることを意識したのは、もうちょい後の話だ」
かつて北方王国リグ・サンガマを巡り、強欲竜と苛烈な戦いを繰り広げた【龍奏】作戦。
ハンターたちにとって、この星を守護する宿命を与えられた「龍」という存在を深く知るきっかけとなった戦いの中で、旭はある竜と出会った。
「あいつらも色々間違っちゃいたけど、この世界を守りたいって気持ちは本物だったんだよな」
彼らは過去の宿命に囚われていた。そんな彼らと刃を交える中で、旭はその願いを知った。
「呼んでくれたんだ。お前はトモダチだって……お前が新しい守護者だって。だから、俺はそれに応えたい」
「そうですか」
大精霊の声色に感情は乗っていない。カップを口につけ、そして一息。
「守護者になるという事、その本質を強欲竜から学んだあなたが、それでも守護者になるという。それは前進ですか?」
「ああ、前進だ!」
間髪入れずに返すと、大精霊が僅かに驚く。
「あんたと契約して、俺はやっとスタートラインに立つんだ。それでようやく、あいつらと肩を並べる。守護者になることは過程にすぎない。俺のゴールはずっと先だ」
「では、あなたの目指すゴールとは?」
「それはわからん!」
大精霊がジト目を向けると、旭は慌てて両手を振る。
「いやいやっ、正しくは定められないっつーか……俺の目的はカッチリ決まったもんじゃないんだよ」
「ひとつではないと?」
「そうそう。色々ありすぎてなぁ……ただ一個だけハッキリしてるのは、少しでもマシな明日にしたいってことだ」
そう言って男は頭上に手を翳す。その腕には龍鉱石で作られたリングが輝いていた。
「自分の大事なもんだけ守れればいいだなんてつまんねぇ。旅して勝手に首突っ込んで、誰かの明日まで、勝手気ままに守るのさ」
「……守りたいものは、明日になってみなければわからない、ですか」
「そう、それ!」
「なるほど。まったく大層な理由です」
ふっと、大精霊は笑う。その眼差しはどこか優しく見えた。
「いいでしょう。あなたの在り方は理解しました」
「よし、契約だな! その前に……!」
「「 テーブルを片付けよう 」」
二人で隅っこまでテーブルをどかし、大精霊は輝きで空間を塗り替えていく。
「――星の光の名の下に、汝、岩井崎 旭に告げる。その魂の輝きを力と変え、星の救世主となる覚悟はあるか?」
「迷う事なんて何もねぇ! クリムゾンウェスト! この空の下で、あんたと、あんたの世界を護らせてくれ!」
旭は差し伸べられた手をしっかりと握り返す。
「契約を受理します。星と英雄の記憶を以て、ここに神の力の一端を授けん。目覚めよ、ガーディアン!」
星の記憶石が砕け、その虹色の光が旭の身体に吸い込まれると同時、胸の奥底から溢れんばかりの力が湧いてくるのを感じた。
「これが守護者か! へへ……確かにすっげー力を感じるぜ!」
「あなたの目的は果たせそうですか?」
「ああ! 俺はまだまだこの程度じゃ終わらない! ニンゲンの快進撃を見ていやがれ!」
握り拳を高々と掲げる。星に還った者たちにも、この姿が見えるように。
「ここに誓いは結ばれた。自由なる守護者よ、あなたの救世に期待します」
「はっはっは、任せろ任せろ! 手当たり次第になんでも救ってやるぜ!」
「ところでお茶を楽しんだ分普段の契約よりも顕現した時間が長いためこの後ナディアは倒れます」
「――は?」
「あなたの最初の仕事になりますが、頑張ってください」
大精霊が目を瞑ると同時、覚醒変化が消滅。そしてナディアは直立した姿勢のまま、顔面から地面に倒れた。
「総長ォオオオオーー!? しっかりしろぉぉぉおおおおーーーーッ!!」
「ケーキ……食っとる……場合…………か…………」
「総長のもあるぞ!?」
「そういう……問題じゃ……ない…………」
めでたし、めでたし。
(執筆:神宮寺飛鳥)
(文責:フロンティアワークス)
(文責:フロンティアワークス)
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ジャック・J・グリーヴ(ka1305) 種族:人間(クリムゾンウェスト) クラス:闘狩人(エンフォーサー) サブクラス「守護者」取得日:2018/08/31 ●「守護者」への表明 「俺様だぜ!」 |
●「守護者」契約(クリックすると、下にノベルが展開されます)
契約の間にて、ジャック・J・グリーヴ(ka1305)は大精霊を憑依させたナディア・ドラゴネッティ(kz0207)と対峙する。
じっと見つめるジャック。それを正面から見つめ返す大精霊。二人の睨み合いが5分ほど続いていた。
(俺様が守護者に相応しいかどうかってのを試す場だよなコレ。でも大精霊とは言え相手はロリ女史だしよぉ……やり辛いぜ。女子といやぁ最近サオリたんの限定フィギュアを見つけたんだけど、これが天使でマジ大天使サオリエル……)
「あなた」
「――ンおうッ!? 俺様だぜ!?」
突然声をかけられ、ジャックの意識は現実世界へ回帰する。顔の作画も戻った。
「あなたの心からは迷いを感じますが……本当に星石に導かれし勇士なのですか?」
「もちろん、俺様はちゃんと星石所持者だぜ! 迷ってるのは守護者の件ではないから安心しろ!」
大精霊にとって、ジャックの思想はあまりにも複雑すぎた。一般的な人類種にとっても難解ではあるが。
「んで、何だ? 俺がどういう奴か話しゃいいのか?」
大精霊が無言で頷くと、ジャックは咳ばらいを一つ。そして右腕で天を指さす。
「俺にゃ夢があんだ。世界をサイコーに幸せにするって夢がな!」
「ほう」
「誰もが明日の飯の心配せずに笑って暮らせる、そんな世界を夢見てんだよ。無論、この俺が夢を見ているだけで終わらせるワケねぇ。必ず実現させて見せるぜ」
腕を組み、そして胸を張る。そんなジャックの様子を大精霊は無表情に見つめている。
(……何考えてるのか全然顔に出ねぇ女だな)
「ジャック。あなたの考える幸せとはなんですか?」
「おん???」
「食についての問題が解決されることは確かに生物種にとって有利でしょう。しかし、それは幸福なのですか?」
男が目を丸くしたのには二種類の理由があった。だが、ジャックは問いから逃げずに正直に答える。
「違ぇな。ただ飯を食えるだけでは幸せとは言えねぇ。飯をちゃんと腹いっぱい食えるって事は、ただの過程だぜ」
「では、食料問題が解決するとどうなるのです?」
「“人間になる”んだよ」
ヒトはただ生きるだけではヒトに非ず。
衣食住と言った基本的人権を保持してようやく“生きる”スタートラインに立てる。
「まず腹いっぱいにならなきゃダメだ。綺麗な服を着なきゃダメだ。雨風をしのげる家に住めなきゃダメだ。それすらできない奴ぁみんな、路地裏でレンガの網目を数えて生活してやがる。俯いて、何もかも諦めてな」
幸せとは、何も裕福さや名誉だけではない。
本当の幸せを追い求める余地こそ、最大の幸福なのだ。
「皆気付いちゃいねぇんだよ、望めば世界は変えられるんだとよ。だから俺が誰よりも光り輝いて全員纏めて上向かせてやんだ。何もかもそこから始まる!」
男は上を見た。上しか見なかった。
いや、正しくは――男には、“下を向く権利”がなかった。
「俺ぁ貴族だぜ。貴族が夢見ないで誰が見れるんだ? 俺が諦めてて、一体どこのどいつが夢を叶えられる?」
故に、男は叫び続ける。
「だから大言壮語だ何だと罵られようが叫び続けんだ! 俺がてめぇら全員纏めて笑わせてやる! てめぇらの光はここにいる! 俺様だぜ! ってな……」
一通り語り切ったところで、ジャックは頬を赤らめる。
自分より幼い外見をした曲がりなりにも少女に対し、全力投球してしまった。
「……クソッタレ、自分語りとか存外恥ずいな」
「そうでしょうか。自分が何者かを理解していないよりはマシですよ」
話はもう終わったと言わんばかりに、大精霊は契約の術を発動する。
「――星の光の名の下に、汝、ジャック・J・グリーヴに告げる。その魂の輝きを力と変え、星の救世主となる覚悟はあるか?」
「おうよ。守護者ってのはタダの力にすぎねぇ。道具と一緒だ。ソレをどう扱うかは手にした奴の責任だろ? ハッ、任せとけよ。そういうのは貴族として、ノブレス・オブリージュで手馴れてるぜ」
大精霊の差し出す手を、男は迷わずに――いや、一回ちょっと躊躇って、しっかりと握り返す。
「契約を受理します。星と英雄の記憶を以て、ここに神の力の一端を授けん。目覚めよ、ガーディアン!」
星の記憶石が砕け、その虹色の光が身体に吸い込まれる。胸が熱くなるのは、少女と手を繋いでいるからではない筈だ。
「ここに誓いは結ばれた。希望なる守護者よ、あなたの救世に期待します」
こうして無事に契約は終わった。契約の為に顕現していたマグ・メルも消え去り、いつもの訓練場に二人は立っていた。
「ちょっとした疑問なんだけどよ」
ジャックの問いに、大精霊が顔をあげる。
「てめぇは俺の夢を笑わなかった。それはてめぇがそもそも幸せっつー概念を理解してねぇからだな?」
大精霊はただ、ジャックの話を聞いていた。
それは、幸福を知らないからだ。幸福を知らない者の目を、ジャックが見紛うはずもない。
「その通りです。私には人類種の幸福という概念が理解できません。逆に言えば、私にとってすべての幸福は存在し得る可能性を持つ。あなたの夢も、可能性の一つです」
「……そうか」
こういう輩に理屈を解いても意味がない。だって、彼らは幸せの実感を知らないから。
想像もできない事柄を望むことはできない。それが人間の限界。故に――絶対的な光が必要だ。
「だったら、てめぇにも見せてやるよ。人間の幸せ、生きることの意味ってやつをな!」
ニヤリと歯を見せ笑うジャックに、大精霊は静かに微笑みを返していた。
じっと見つめるジャック。それを正面から見つめ返す大精霊。二人の睨み合いが5分ほど続いていた。
(俺様が守護者に相応しいかどうかってのを試す場だよなコレ。でも大精霊とは言え相手はロリ女史だしよぉ……やり辛いぜ。女子といやぁ最近サオリたんの限定フィギュアを見つけたんだけど、これが天使でマジ大天使サオリエル……)
「あなた」
「――ンおうッ!? 俺様だぜ!?」
突然声をかけられ、ジャックの意識は現実世界へ回帰する。顔の作画も戻った。
「あなたの心からは迷いを感じますが……本当に星石に導かれし勇士なのですか?」
「もちろん、俺様はちゃんと星石所持者だぜ! 迷ってるのは守護者の件ではないから安心しろ!」
大精霊にとって、ジャックの思想はあまりにも複雑すぎた。一般的な人類種にとっても難解ではあるが。
「んで、何だ? 俺がどういう奴か話しゃいいのか?」
大精霊が無言で頷くと、ジャックは咳ばらいを一つ。そして右腕で天を指さす。
「俺にゃ夢があんだ。世界をサイコーに幸せにするって夢がな!」
「ほう」
「誰もが明日の飯の心配せずに笑って暮らせる、そんな世界を夢見てんだよ。無論、この俺が夢を見ているだけで終わらせるワケねぇ。必ず実現させて見せるぜ」
腕を組み、そして胸を張る。そんなジャックの様子を大精霊は無表情に見つめている。
(……何考えてるのか全然顔に出ねぇ女だな)
「ジャック。あなたの考える幸せとはなんですか?」
「おん???」
「食についての問題が解決されることは確かに生物種にとって有利でしょう。しかし、それは幸福なのですか?」
男が目を丸くしたのには二種類の理由があった。だが、ジャックは問いから逃げずに正直に答える。
「違ぇな。ただ飯を食えるだけでは幸せとは言えねぇ。飯をちゃんと腹いっぱい食えるって事は、ただの過程だぜ」
「では、食料問題が解決するとどうなるのです?」
「“人間になる”んだよ」
ヒトはただ生きるだけではヒトに非ず。
衣食住と言った基本的人権を保持してようやく“生きる”スタートラインに立てる。
「まず腹いっぱいにならなきゃダメだ。綺麗な服を着なきゃダメだ。雨風をしのげる家に住めなきゃダメだ。それすらできない奴ぁみんな、路地裏でレンガの網目を数えて生活してやがる。俯いて、何もかも諦めてな」
幸せとは、何も裕福さや名誉だけではない。
本当の幸せを追い求める余地こそ、最大の幸福なのだ。
「皆気付いちゃいねぇんだよ、望めば世界は変えられるんだとよ。だから俺が誰よりも光り輝いて全員纏めて上向かせてやんだ。何もかもそこから始まる!」
男は上を見た。上しか見なかった。
いや、正しくは――男には、“下を向く権利”がなかった。
「俺ぁ貴族だぜ。貴族が夢見ないで誰が見れるんだ? 俺が諦めてて、一体どこのどいつが夢を叶えられる?」
故に、男は叫び続ける。
「だから大言壮語だ何だと罵られようが叫び続けんだ! 俺がてめぇら全員纏めて笑わせてやる! てめぇらの光はここにいる! 俺様だぜ! ってな……」
一通り語り切ったところで、ジャックは頬を赤らめる。
自分より幼い外見をした曲がりなりにも少女に対し、全力投球してしまった。
「……クソッタレ、自分語りとか存外恥ずいな」
「そうでしょうか。自分が何者かを理解していないよりはマシですよ」
話はもう終わったと言わんばかりに、大精霊は契約の術を発動する。
「――星の光の名の下に、汝、ジャック・J・グリーヴに告げる。その魂の輝きを力と変え、星の救世主となる覚悟はあるか?」
「おうよ。守護者ってのはタダの力にすぎねぇ。道具と一緒だ。ソレをどう扱うかは手にした奴の責任だろ? ハッ、任せとけよ。そういうのは貴族として、ノブレス・オブリージュで手馴れてるぜ」
大精霊の差し出す手を、男は迷わずに――いや、一回ちょっと躊躇って、しっかりと握り返す。
「契約を受理します。星と英雄の記憶を以て、ここに神の力の一端を授けん。目覚めよ、ガーディアン!」
星の記憶石が砕け、その虹色の光が身体に吸い込まれる。胸が熱くなるのは、少女と手を繋いでいるからではない筈だ。
「ここに誓いは結ばれた。希望なる守護者よ、あなたの救世に期待します」
こうして無事に契約は終わった。契約の為に顕現していたマグ・メルも消え去り、いつもの訓練場に二人は立っていた。
「ちょっとした疑問なんだけどよ」
ジャックの問いに、大精霊が顔をあげる。
「てめぇは俺の夢を笑わなかった。それはてめぇがそもそも幸せっつー概念を理解してねぇからだな?」
大精霊はただ、ジャックの話を聞いていた。
それは、幸福を知らないからだ。幸福を知らない者の目を、ジャックが見紛うはずもない。
「その通りです。私には人類種の幸福という概念が理解できません。逆に言えば、私にとってすべての幸福は存在し得る可能性を持つ。あなたの夢も、可能性の一つです」
「……そうか」
こういう輩に理屈を解いても意味がない。だって、彼らは幸せの実感を知らないから。
想像もできない事柄を望むことはできない。それが人間の限界。故に――絶対的な光が必要だ。
「だったら、てめぇにも見せてやるよ。人間の幸せ、生きることの意味ってやつをな!」
ニヤリと歯を見せ笑うジャックに、大精霊は静かに微笑みを返していた。
(執筆:神宮寺飛鳥)
(文責:フロンティアワークス)
(文責:フロンティアワークス)
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アルト・ヴァレンティーニ(ka3109) 種族:人間(クリムゾンウェスト) クラス:疾影士(ストライダー) サブクラス「守護者」取得日:2018/08/31 ●「守護者」への表明 「私は、私の手の届く範囲の世界を守りたい」 |
●「守護者」契約(クリックすると、下にノベルが展開されます)
ハンターズ・ソサエティ本部、訓練場。
大精霊との契約も可能になったハンターシステムを前に、アルト・ヴァレンティーニ(ka3109)と大精霊は向かい合う。
「星の記憶に認められし勇者よ。契約の前に、あなたの存在を問いましょう」
「守護者を目指す理由について話すのだったな」
落ち着いた口ぶりでアルトは語り出す。何を話せばいいのかは、自分の中でハッキリまとまっていた。
「大精霊に対して不遜になるだろうが、守護者になりたい動機としては“力が欲しい”――これに尽きる」
「不遜ではありませんよ。守護者というのは、要するに力ある戦士のこと。力を否定するようでは話になりません」
「そう言ってもらえると助かる。事実、“力”とは“想い”の前提条件となるもの……私の理由を語る上で欠かせない要素だ」
瞼を閉じ、思い起こすのは過去の記憶。
まだアルトの両手に、今ほどの力がなかった時代。
「……かつて、覚醒者となったばかりのころに。私の目の前で歪虚の群れに飲み込まれて命を落とした少女が居た。あの時、私が今と同じ力を持っていたら助けられたと思う」
アルト・ヴァレンティーニは、ハンターズ・ソサエティという組織の中でも極めて優秀な戦士として認識されている。
生半可なハンターを超える圧倒的な力というのであれば、既にその手にあると言っていいし、実際にこれまで多くを救ってきたことだろう。後悔は力を求める意思に変わったのだ。
「私の想いはその頃からずっと一つだ。理想や願いを叶える為には力が必要であり、力なき想いはただの夢想に過ぎない」
「その通りです。強さとは所詮リソースに過ぎない。その強さを以て何を成すのか、そこに真の価値がある。では、その力を以て現実にしたい夢想とは何ですか?」
「そうだな……やはり、世界を守る事だ。尤も、私の守りたい世界とは……世界のすべてである大精霊から見れば、小さな世界かもしれないが」
当然、アルトの人生は過酷なものだった。
過酷でなければ得られない力を手にしたのだから、逆説的に運命は決まっている。
「私には家族がいて、友人がいて……一緒に暮らすペット達や幻獣は勿論、多くの人々と出会い、支えられてきた」
傭兵としての人生は自由ではあるだろう。だからこそ、寄る辺が必要だ。
完全なる孤独の中で人は生きられない。屍の山を築き上げるような人生であるからこそ、温かさの価値を知った。
「そんな人たちと共にこの世界で生きて行きたいと思っている。彼らのいる世界、私の大好きな世界こそ、この力で守りたいと願うすべてだ」
「確かに、小さな世界ですね」
「ああ。それでもこの世界の一部であることには変わりはない。その部分では私たちの利害は一致している」
「あなたの言う通りです。その考え方は、守護者として実に模範的です」
結局、一人の人間に守れる範囲など決まっている。
この世界は驚くほど広いし、人間は複数の場所に同時に存在はできないし、守護者といえども絶対無敵の強者とは言えない。だから守護者を複数用意する必要があるのだ。
「私は――自分の限界を知っている。どれだけ強くなっても、人間には限界がある。仮に守護者になったとしても、世界の全て守るとは約束できない」
「そうですね。それでよいのでしょう。あなたにも限界はある。それならば何故――更に力を求めるのです?」
大精霊の問いかけに返すべき言葉は用意している。だが――。
「どうしても、あなたでなければいけないのですか? 他のどこかの誰かに任せても同じではないのですか?」
「それは…………」
大切なものが護られる。その結果に至るための手段が力だというのなら、その在処は問題ではない。
「あなたは既に強い。この私を単身で退けたほどですからね」
「あれは……あの時の事は、お互い言いっこなしだろう」
「はい。しかし、最も明確な基準です」
苦笑を浮かべ、一息。アルトは自らの左手を見つめる。
「答えは簡単だ、大精霊。貴方は前提を間違えている。私はこの手で世界を護りたいんだ。大事なものを、人任せにはできない」
「……よいでしょう。あなたの在り方を理解しました」
大精霊が手を翳すと星石が輝き、周囲の空間が置換されていく。
「――星の光の名の下に、汝、アルト・ヴァレンティーニに告げる。その魂の輝きを力と変え、星の救世主となる覚悟はあるか?」
「ああ。この手の届く世界を守る……その為に指先一つ分であっても伸ばす力が欲しい。貴方がその力をくれるのなら、傭兵として見合った働きを見せよう」
星の記憶石が砕け散り、虹色の光が瞬く。そしてその光はアルトの身体に吸い込まれて行く。
「ここに誓いは結ばれた。最強なる守護者よ、あなたの救世に期待します」
光は散って、そして二人は再び訓練場に降り立った。
「不思議なものですね。一度は刃を交えた相手が、守護者として契約するというのは」
「望んで交えた刃ではなかったさ。いや……心から望んで剣を振ると言う事は、滅多にないのだろうが」
倒したい敵はいる。だがそれも、“倒さなければならない”だけだ。
アルト・ヴァレンティーニという女にこれだけの力が必要だったのか。他に、生きる道はなかったのか――。
「……これで私と貴方は契約関係だからな。義理は必ず果たすよ」
思い直す必要などない。だって、今の自分が――今の自分と共に生きる人たちが好きだから。
差し出した手を小さな神が握り返す。また少し、何かが前に進む音がした。
大精霊との契約も可能になったハンターシステムを前に、アルト・ヴァレンティーニ(ka3109)と大精霊は向かい合う。
「星の記憶に認められし勇者よ。契約の前に、あなたの存在を問いましょう」
「守護者を目指す理由について話すのだったな」
落ち着いた口ぶりでアルトは語り出す。何を話せばいいのかは、自分の中でハッキリまとまっていた。
「大精霊に対して不遜になるだろうが、守護者になりたい動機としては“力が欲しい”――これに尽きる」
「不遜ではありませんよ。守護者というのは、要するに力ある戦士のこと。力を否定するようでは話になりません」
「そう言ってもらえると助かる。事実、“力”とは“想い”の前提条件となるもの……私の理由を語る上で欠かせない要素だ」
瞼を閉じ、思い起こすのは過去の記憶。
まだアルトの両手に、今ほどの力がなかった時代。
「……かつて、覚醒者となったばかりのころに。私の目の前で歪虚の群れに飲み込まれて命を落とした少女が居た。あの時、私が今と同じ力を持っていたら助けられたと思う」
アルト・ヴァレンティーニは、ハンターズ・ソサエティという組織の中でも極めて優秀な戦士として認識されている。
生半可なハンターを超える圧倒的な力というのであれば、既にその手にあると言っていいし、実際にこれまで多くを救ってきたことだろう。後悔は力を求める意思に変わったのだ。
「私の想いはその頃からずっと一つだ。理想や願いを叶える為には力が必要であり、力なき想いはただの夢想に過ぎない」
「その通りです。強さとは所詮リソースに過ぎない。その強さを以て何を成すのか、そこに真の価値がある。では、その力を以て現実にしたい夢想とは何ですか?」
「そうだな……やはり、世界を守る事だ。尤も、私の守りたい世界とは……世界のすべてである大精霊から見れば、小さな世界かもしれないが」
当然、アルトの人生は過酷なものだった。
過酷でなければ得られない力を手にしたのだから、逆説的に運命は決まっている。
「私には家族がいて、友人がいて……一緒に暮らすペット達や幻獣は勿論、多くの人々と出会い、支えられてきた」
傭兵としての人生は自由ではあるだろう。だからこそ、寄る辺が必要だ。
完全なる孤独の中で人は生きられない。屍の山を築き上げるような人生であるからこそ、温かさの価値を知った。
「そんな人たちと共にこの世界で生きて行きたいと思っている。彼らのいる世界、私の大好きな世界こそ、この力で守りたいと願うすべてだ」
「確かに、小さな世界ですね」
「ああ。それでもこの世界の一部であることには変わりはない。その部分では私たちの利害は一致している」
「あなたの言う通りです。その考え方は、守護者として実に模範的です」
結局、一人の人間に守れる範囲など決まっている。
この世界は驚くほど広いし、人間は複数の場所に同時に存在はできないし、守護者といえども絶対無敵の強者とは言えない。だから守護者を複数用意する必要があるのだ。
「私は――自分の限界を知っている。どれだけ強くなっても、人間には限界がある。仮に守護者になったとしても、世界の全て守るとは約束できない」
「そうですね。それでよいのでしょう。あなたにも限界はある。それならば何故――更に力を求めるのです?」
大精霊の問いかけに返すべき言葉は用意している。だが――。
「どうしても、あなたでなければいけないのですか? 他のどこかの誰かに任せても同じではないのですか?」
「それは…………」
大切なものが護られる。その結果に至るための手段が力だというのなら、その在処は問題ではない。
「あなたは既に強い。この私を単身で退けたほどですからね」
「あれは……あの時の事は、お互い言いっこなしだろう」
「はい。しかし、最も明確な基準です」
苦笑を浮かべ、一息。アルトは自らの左手を見つめる。
「答えは簡単だ、大精霊。貴方は前提を間違えている。私はこの手で世界を護りたいんだ。大事なものを、人任せにはできない」
「……よいでしょう。あなたの在り方を理解しました」
大精霊が手を翳すと星石が輝き、周囲の空間が置換されていく。
「――星の光の名の下に、汝、アルト・ヴァレンティーニに告げる。その魂の輝きを力と変え、星の救世主となる覚悟はあるか?」
「ああ。この手の届く世界を守る……その為に指先一つ分であっても伸ばす力が欲しい。貴方がその力をくれるのなら、傭兵として見合った働きを見せよう」
星の記憶石が砕け散り、虹色の光が瞬く。そしてその光はアルトの身体に吸い込まれて行く。
「ここに誓いは結ばれた。最強なる守護者よ、あなたの救世に期待します」
光は散って、そして二人は再び訓練場に降り立った。
「不思議なものですね。一度は刃を交えた相手が、守護者として契約するというのは」
「望んで交えた刃ではなかったさ。いや……心から望んで剣を振ると言う事は、滅多にないのだろうが」
倒したい敵はいる。だがそれも、“倒さなければならない”だけだ。
アルト・ヴァレンティーニという女にこれだけの力が必要だったのか。他に、生きる道はなかったのか――。
「……これで私と貴方は契約関係だからな。義理は必ず果たすよ」
思い直す必要などない。だって、今の自分が――今の自分と共に生きる人たちが好きだから。
差し出した手を小さな神が握り返す。また少し、何かが前に進む音がした。
(執筆:神宮寺飛鳥)
(文責:フロンティアワークス)
(文責:フロンティアワークス)
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紅薔薇(ka4766) 種族:人間(クリムゾンウェスト) クラス:舞狩人(ソードダンサー) サブクラス「守護者」取得日:2018/09/11 ●「守護者」への表明 「今より妾は人ではあらず。『守護者』という名の剣(つるぎ)なり」 |
●「守護者」契約(クリックすると、下にノベルが展開されます)
ハンターズ・ソサエティ本部、契約の間。今日も一人のハンターが大精霊との契約に訪れた。
「これは急須と湯飲みと言ってな。東方に伝わる茶器なのじゃ」
紅薔薇(ka4766)が熱いお湯を注ぎながら説明する。二人は契約陣の上に設置されたテーブルについていた。
「グラウンド・ゼロの戦い以来じゃな。ささ、東方流の手土産じゃ。羊羹も切ろう」
「先日も食について説かれましたが、人間の分化は実に食と縁深いのですね」
二人は羊羹を摘みながらお茶を口に含む。甘さが緑茶の爽やかさでふわっと広がり、美味であった。
「そろそろ妾も覚悟を決めようと思ってな。元々東方に居た時から、そう長く生きられるとは思っておらんかったのじゃが……」
エトファリカ連邦国、通称東方。
この地域はリグ・サンガマ同様、長く歪虚による包囲を受け、ギリギリの生存競争を強いられてきた。
それ故に戦死率は極めて高く、短い人生の連続をか細く繋げる死に近しい文明を有している。
「妾の生は東方解放という目的の為にあった。そして現実として、妾は仲間と共に東方の解放を成し遂げた」
そうでなければ何処かの戦場で倒れる運命だったに違いない。
だが、紅薔薇は生き延びた。西方で仲間たちと出会った事で、彼女の運命は少なからず変わったのだ。
「じゃが、東方を解放した先にも世界はあり、そして戦いがあったのじゃ」
東方の人々は、自分たちが最後の人類になるかもしれないという運命に怯えていた。
絶望の中で何とか運命に抗おうと生きる人々――だがそれは、東方だけの話ではなかった。
少女は旅をした。北を目指し、様々な歪虚と刃を交え、そして大精霊の元にまでたどり着いて尚、世界が救われぬことを知った。
「戦って戦って戦い続けて……それでも世界に平和はなかった。それはきっと、大精霊殿と契約したところで変わらぬのだろうな」
古代文明における守護者――仇花の騎士でさえ、結局はその運命から逃れられなかった。
戦い。戦い。戦い……。
闇に命を脅かされる日々と、それに抗う生物の唸り。
あのカレンデュラでさえ、最後には無力さを嘆き、絶望と共に死んだのだ。
「ずっと昔……まだ邪神がこの世界に何も干渉していなかった頃。そこ時代には、確かにヒトのいう平和がありました」
光りある所に闇あり。故に、雑魔のような存在はどうしても生まれてしまう。
だが、それだけだ。強力な高位歪虚の侵攻はなく、豊富な資源に恵まれた楽園があった。
「でも私には、平和や幸せという言葉の意味が、よくわからないのです」
「わからない……?」
「だって、人間は矛盾しています。今の世界の方がずっと苦しくて危険なはずなのに――今の時代の人間の方が、私にはずっと輝いて見える」
こんなにも命の輝き……マテリアルに満ち満ちた人間が、それこそハンターの中にはゴロゴロいる。
彼らはたくさんの悲劇を経験して尚、生きる事の力強さや喜びに溢れ、その輝きで歪虚を打ち倒しているではないか。
「確かに、戦いにはそういう側面もあろうな。少なくともあの東方の環境下になければ、妾が武を志すこともなかったやもしれぬ」
そうであればきっと、当たり前の少女のような人生もあったのだろう。
普通に子供らしく幼少の時を過ごし、大きくなって女としての幸せを知り、恋なんかもして普通に結婚する……。
……いやいや。思わず苦笑する。そうはならなかったから今の自分がいる。想定するだけ退屈なIFだ。
「覚悟の問題、かもしれぬな」
「覚悟……?」
「命の力強さとは覚悟の強さと同義じゃ。ヒトの一生、その価値を決めるのは覚悟だと妾は信じておる」
何かを成そうと立ち上がり、その目的に向かって真っすぐ貫く一生は、まるで夜空にきらめく流星のようだ。
そんな東方の在り方を愛し、憧れた。
「妾の覚悟とは、人々の祈りを背負う事。数千年の長きに渡りヒトとが精霊が世界が望んで得られなかった平和のため、力足らず散って逝った幾千幾万の人々の嘆きをその身に宿す事じゃ」
「その手段が守護者の力であると?」
紅薔薇が頷き返すと、大精霊は少しの間、何かを逡巡した。
「……あなたの在り方は理解しました」
「契約じゃな。その前に……」
「「テーブルを片付けよう」」
閑話休題。
「――星の光の名の下に、汝、紅薔薇に告げる。その魂の輝きを力と変え、星の救世主となる覚悟はあるか?」
大精霊の力で置換された光の空間の中で、紅薔薇は力強く宣言する。
「妾は誓おう。『世界』を守り、調停者として人と精霊との間に立ち、名も知らぬ誰かのために破滅へと立ち向かう勇気を持つ事を」
「契約を受理します。星と英雄の記憶を以て、ここに神の力の一端を授けん。目覚めよ、ガーディアン!」
迷いなく繋がれた二人の手。
星の記憶石が砕け、その力が紅薔薇へと降り注いだ。
「ここに誓いは結ばれた。永劫なる守護者よ、あなたの救世に期待します」
契約が終わると、背景も元に戻った。紅薔薇は自らの内に沸き出す確かな力に息を吐く。
「紅薔薇。一つ質問してもよいでしょうか」
「一つなどとけちな事は言わん。幾らでも問うが良い」
「もしこの世界が真の意味で平和になった時、あなたはどうしたいですか?」
それは――想像していない未来だ。きっと辿り着けないと、どこかで諦めた結末だ。
大精霊はきっと見抜いている。それも込みで契約したのなら、求める答えは何か。
「……わからぬ。戦士には、戦争が必要じゃ。倒すべき敵が必要じゃ。それがなければ、戦士ではいられない」
「カレンデュラは、私に花の名前を教えてくれました」
訓練場の中庭には、職員たちが手入れするささやかな花壇がある。
「大精霊に花を愛でる必要性はないというのに」
「それは……」
「カレンデュラは変わり者の騎士でした。彼女は必要のない事ほど積極的に挑み、失敗したり教えたり……意味なんてないのに」
過去を懐かしむような、悔いるような横顔だ。紅薔薇は隣に並び、花を見やる。
「妾に彼女の代わりはできないだろう。じゃが――妾くらいはお主の傍で死んでやろう」
いや。それはきっと、“彼女”の願いとは異なる。
紅薔薇にも分からない。どれだけ人間離れしても結局彼女は少女であり、命の理など知る由もないが。
「そしてその時までは、お主の隣で生きてやろう」
死の覚悟とは、未来を閉ざすことではない。
いつか訪れるその時まで、懸命に命を繋げる事だ。
「あの花の名前を、あなたは知っていますか?」
すべてを拒絶するように全身を棘で覆って、血のような花を咲かせる。
「無論じゃ。だって、あの花はな――」
そんな命の在り方を、彼女は覚悟と呼んだのだから。
「これは急須と湯飲みと言ってな。東方に伝わる茶器なのじゃ」
紅薔薇(ka4766)が熱いお湯を注ぎながら説明する。二人は契約陣の上に設置されたテーブルについていた。
「グラウンド・ゼロの戦い以来じゃな。ささ、東方流の手土産じゃ。羊羹も切ろう」
「先日も食について説かれましたが、人間の分化は実に食と縁深いのですね」
二人は羊羹を摘みながらお茶を口に含む。甘さが緑茶の爽やかさでふわっと広がり、美味であった。
「そろそろ妾も覚悟を決めようと思ってな。元々東方に居た時から、そう長く生きられるとは思っておらんかったのじゃが……」
エトファリカ連邦国、通称東方。
この地域はリグ・サンガマ同様、長く歪虚による包囲を受け、ギリギリの生存競争を強いられてきた。
それ故に戦死率は極めて高く、短い人生の連続をか細く繋げる死に近しい文明を有している。
「妾の生は東方解放という目的の為にあった。そして現実として、妾は仲間と共に東方の解放を成し遂げた」
そうでなければ何処かの戦場で倒れる運命だったに違いない。
だが、紅薔薇は生き延びた。西方で仲間たちと出会った事で、彼女の運命は少なからず変わったのだ。
「じゃが、東方を解放した先にも世界はあり、そして戦いがあったのじゃ」
東方の人々は、自分たちが最後の人類になるかもしれないという運命に怯えていた。
絶望の中で何とか運命に抗おうと生きる人々――だがそれは、東方だけの話ではなかった。
少女は旅をした。北を目指し、様々な歪虚と刃を交え、そして大精霊の元にまでたどり着いて尚、世界が救われぬことを知った。
「戦って戦って戦い続けて……それでも世界に平和はなかった。それはきっと、大精霊殿と契約したところで変わらぬのだろうな」
古代文明における守護者――仇花の騎士でさえ、結局はその運命から逃れられなかった。
戦い。戦い。戦い……。
闇に命を脅かされる日々と、それに抗う生物の唸り。
あのカレンデュラでさえ、最後には無力さを嘆き、絶望と共に死んだのだ。
「ずっと昔……まだ邪神がこの世界に何も干渉していなかった頃。そこ時代には、確かにヒトのいう平和がありました」
光りある所に闇あり。故に、雑魔のような存在はどうしても生まれてしまう。
だが、それだけだ。強力な高位歪虚の侵攻はなく、豊富な資源に恵まれた楽園があった。
「でも私には、平和や幸せという言葉の意味が、よくわからないのです」
「わからない……?」
「だって、人間は矛盾しています。今の世界の方がずっと苦しくて危険なはずなのに――今の時代の人間の方が、私にはずっと輝いて見える」
こんなにも命の輝き……マテリアルに満ち満ちた人間が、それこそハンターの中にはゴロゴロいる。
彼らはたくさんの悲劇を経験して尚、生きる事の力強さや喜びに溢れ、その輝きで歪虚を打ち倒しているではないか。
「確かに、戦いにはそういう側面もあろうな。少なくともあの東方の環境下になければ、妾が武を志すこともなかったやもしれぬ」
そうであればきっと、当たり前の少女のような人生もあったのだろう。
普通に子供らしく幼少の時を過ごし、大きくなって女としての幸せを知り、恋なんかもして普通に結婚する……。
……いやいや。思わず苦笑する。そうはならなかったから今の自分がいる。想定するだけ退屈なIFだ。
「覚悟の問題、かもしれぬな」
「覚悟……?」
「命の力強さとは覚悟の強さと同義じゃ。ヒトの一生、その価値を決めるのは覚悟だと妾は信じておる」
何かを成そうと立ち上がり、その目的に向かって真っすぐ貫く一生は、まるで夜空にきらめく流星のようだ。
そんな東方の在り方を愛し、憧れた。
「妾の覚悟とは、人々の祈りを背負う事。数千年の長きに渡りヒトとが精霊が世界が望んで得られなかった平和のため、力足らず散って逝った幾千幾万の人々の嘆きをその身に宿す事じゃ」
「その手段が守護者の力であると?」
紅薔薇が頷き返すと、大精霊は少しの間、何かを逡巡した。
「……あなたの在り方は理解しました」
「契約じゃな。その前に……」
「「テーブルを片付けよう」」
閑話休題。
「――星の光の名の下に、汝、紅薔薇に告げる。その魂の輝きを力と変え、星の救世主となる覚悟はあるか?」
大精霊の力で置換された光の空間の中で、紅薔薇は力強く宣言する。
「妾は誓おう。『世界』を守り、調停者として人と精霊との間に立ち、名も知らぬ誰かのために破滅へと立ち向かう勇気を持つ事を」
「契約を受理します。星と英雄の記憶を以て、ここに神の力の一端を授けん。目覚めよ、ガーディアン!」
迷いなく繋がれた二人の手。
星の記憶石が砕け、その力が紅薔薇へと降り注いだ。
「ここに誓いは結ばれた。永劫なる守護者よ、あなたの救世に期待します」
契約が終わると、背景も元に戻った。紅薔薇は自らの内に沸き出す確かな力に息を吐く。
「紅薔薇。一つ質問してもよいでしょうか」
「一つなどとけちな事は言わん。幾らでも問うが良い」
「もしこの世界が真の意味で平和になった時、あなたはどうしたいですか?」
それは――想像していない未来だ。きっと辿り着けないと、どこかで諦めた結末だ。
大精霊はきっと見抜いている。それも込みで契約したのなら、求める答えは何か。
「……わからぬ。戦士には、戦争が必要じゃ。倒すべき敵が必要じゃ。それがなければ、戦士ではいられない」
「カレンデュラは、私に花の名前を教えてくれました」
訓練場の中庭には、職員たちが手入れするささやかな花壇がある。
「大精霊に花を愛でる必要性はないというのに」
「それは……」
「カレンデュラは変わり者の騎士でした。彼女は必要のない事ほど積極的に挑み、失敗したり教えたり……意味なんてないのに」
過去を懐かしむような、悔いるような横顔だ。紅薔薇は隣に並び、花を見やる。
「妾に彼女の代わりはできないだろう。じゃが――妾くらいはお主の傍で死んでやろう」
いや。それはきっと、“彼女”の願いとは異なる。
紅薔薇にも分からない。どれだけ人間離れしても結局彼女は少女であり、命の理など知る由もないが。
「そしてその時までは、お主の隣で生きてやろう」
死の覚悟とは、未来を閉ざすことではない。
いつか訪れるその時まで、懸命に命を繋げる事だ。
「あの花の名前を、あなたは知っていますか?」
すべてを拒絶するように全身を棘で覆って、血のような花を咲かせる。
「無論じゃ。だって、あの花はな――」
そんな命の在り方を、彼女は覚悟と呼んだのだから。
(執筆:神宮寺飛鳥)
(文責:フロンティアワークス)
(文責:フロンティアワークス)
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ボルディア・コンフラムス(ka0796) 種族:人間(クリムゾンウェスト) クラス:霊闘士(ベルセルク) サブクラス「守護者」取得日:2018/09/11 ●「守護者」への表明 「俺には世界を救うとか、邪神を倒すとか。そういう御大層な目的や意思はねぇンだよ」 |
●「守護者」契約(クリックすると、下にノベルが展開されます)
「正直に言うと、だ。俺には世界を救うとか邪神を倒すとか、そういう御大層な目的や意志はねぇンだよ」
ボルディア・コンフラム(ka0796)は腕を組みながらきっぱりと告げる。
星の記憶石に認められた者だけが得られる、守護者の力を授かる場。そこで大精霊と向き合いながら、しかし女は正直であった。
「話が違うって後から言われねぇように先に言っておくけどな。俺はこの力を、“ヒト”や“仲間”を守るために使う。世界はぶっちゃけ、二の次だ」
「そうでしょうね」
しかし、大精霊の反応はボルディアの予想とは異なっていた。
「まるで当然ってツラだな?」
「あなたの在り方は分かりやすい。それに、元々ナディアを通じてあなたの知識は持っていますから」
大精霊はナディア・ドラゴネッティ(kz0207)の肉体に憑依している。そして彼女の経験や感情を共有することでヒトの体裁を成している。
そんな憑代となるナディアの心の中には、ボルディアとの会話も含まれていた。
「私をディスってたのも知っていますよ」
「そりゃお前が世界をリセットするとか言い出すからだろーがっ!? つーかよくそういう言葉知ってるな」
「ともあれ、私はあなたの在り方を知っています。先程も言った通り、あなたは分かりやすいので」
「お前の方こそ俺をディスってんのか……?」
眉をひくつかせるボルディアであったが、大精霊は軽やかに首を横に振る。
「いいえ。命の在り方は様々ですが、あなたの輝きは私にとっても望ましい。これでも褒めているつもりですよ」
「そ……そうか。あンま他人に褒められる事ねーから、少しテレるな」
ボルディアは鼻頭を指先でこすり、訓練場の庭園に目を向ける。
「さっきも言った通り、俺は世界を護るなんて御大層なことは考えちゃいねぇンだ。つーか、そもそも俺には無理だ。だって俺は、世界どころか目の前のモンすら守れない未熟者だからな」
ボルディアは既に十分に強い。だが、彼女には彼女の夢があり、理想がある。
「俺は、誰かを守れない自分に腹が立つ。思う通りに動かない身体がもどかしくて仕方ねぇ」
何もかも、全てを救う事など不可能だ。そんなことは嫌というほどわかっている。
それでも一人でも多くの人を助けたい。守護者にはその力があるはずだ。
「だから、守護者になるのに躊躇いはねぇよ」
「本当にそうでしょうか」
大精霊の問いに視線を向ける。
「あなたは見た目よりも謙虚な人間ですね。いえ、臆病というべきでしょうか」
「あん?」
「それだけの力があり、更なる力を求めるのであれば、いくらでも願えるはず。求められるはず。では、なぜそれをしないのでしょう」
「そいつは……まあ、アレだな。守護者になることに迷いはないが、俺も人間なンでな。考えたりすることはあるンだぜ」
守護者の力は、当人たちにとっては何らかの目的、願い、答えに向かうための通過点に過ぎない。
力はただ力。それを何に用いてどんな願いを成すのか、それが守護者にとって重要なのだ。
「俺は……よくわからねぇンだ。強くなって歪虚をブッ倒し続けても、その先に何があるのか、見えない」
強さとは時に空しいものだ。並び立つ者がいない程に強くなってしまえば、それは孤独と言ってよい。
だからこそボルディアの戦いは守る戦いなのだ。維持する為の戦い。或いは――孤独を和らげる戦いだろうか。
「あなたには幸運にもあなたと並び立つ程の仲間がいる。その仲間を失ってしまえば、あなたは独りです。独りというのは、寂しいものですから」
「ゴチャゴチャ考えんのは苦手だ。でもまあ、ダチが多いのはいいことだ。実際、俺はダチを失いたくねぇしな」
ふっと笑い、ボルディアは大精霊の背中を叩く。
「その仲間ってのには当然、クリムゾンウェスト……お前も入ってるんだぜ?」
「私も仲間……ですか?」
「俺らハンターに覚醒って形で力を貸してくれてるんだ。当然だろ?」
ぐっとサムズアップしながら笑うボルディア。大精霊は少し驚き、そして僅かに微笑む。
「では、仲間として。今の私に出来ることをしましょう」
大精霊が片腕を振るうと、その指先が世界を塗り替えていく。
赤い光の星の海。マグ・メルの中心で二人は向き合う。
「――星の光の名の下に、汝、ボルディア・コンフラムスに告げる。その魂の輝きを力と変え、星の救世主となる覚悟はあるか?」
「おう! お前がピンチになったら俺は必ず助けに行く。絶対にだ!」
「契約を受理します。星と英雄の記憶を以て、ここに神の力の一端を授けん。目覚めよ、ガーディアン!」
星の記憶石が砕け、ボルディアの身体に光が吸い込まれていく。
「ここに誓いは結ばれた。餓狼なる守護者よ、あなたの救世に期待します」
契約の儀式を終えると、ボルディアは上腕二頭筋を隆起させながら爽やかに笑う。
「いや?、これがガーディアンか! 全身の筋肉が生まれ変わったみてぇな気分だぜ!」
「ある意味生物としてのランクアップですから、それはそうでしょうね」
「よくわからねぇが、清々しい気分だぜ。今ならなんでもブッ倒せそうだ!」
握り拳を平手に変え、女は少女の肩に手を置く。
「俺ぁ世界を救うことには興味がねぇが、ダチが困ってるンなら話は別だ。“ついで”でよけりゃあ――邪神もブッ飛ばしてやるぜ?」
「そうですか。それならば、期待せずに待っていますね」
もう一度平手を握り拳に変える。
少女の小さな拳が、女の大きな拳にコツンと重なった。
ボルディア・コンフラム(ka0796)は腕を組みながらきっぱりと告げる。
星の記憶石に認められた者だけが得られる、守護者の力を授かる場。そこで大精霊と向き合いながら、しかし女は正直であった。
「話が違うって後から言われねぇように先に言っておくけどな。俺はこの力を、“ヒト”や“仲間”を守るために使う。世界はぶっちゃけ、二の次だ」
「そうでしょうね」
しかし、大精霊の反応はボルディアの予想とは異なっていた。
「まるで当然ってツラだな?」
「あなたの在り方は分かりやすい。それに、元々ナディアを通じてあなたの知識は持っていますから」
大精霊はナディア・ドラゴネッティ(kz0207)の肉体に憑依している。そして彼女の経験や感情を共有することでヒトの体裁を成している。
そんな憑代となるナディアの心の中には、ボルディアとの会話も含まれていた。
「私をディスってたのも知っていますよ」
「そりゃお前が世界をリセットするとか言い出すからだろーがっ!? つーかよくそういう言葉知ってるな」
「ともあれ、私はあなたの在り方を知っています。先程も言った通り、あなたは分かりやすいので」
「お前の方こそ俺をディスってんのか……?」
眉をひくつかせるボルディアであったが、大精霊は軽やかに首を横に振る。
「いいえ。命の在り方は様々ですが、あなたの輝きは私にとっても望ましい。これでも褒めているつもりですよ」
「そ……そうか。あンま他人に褒められる事ねーから、少しテレるな」
ボルディアは鼻頭を指先でこすり、訓練場の庭園に目を向ける。
「さっきも言った通り、俺は世界を護るなんて御大層なことは考えちゃいねぇンだ。つーか、そもそも俺には無理だ。だって俺は、世界どころか目の前のモンすら守れない未熟者だからな」
ボルディアは既に十分に強い。だが、彼女には彼女の夢があり、理想がある。
「俺は、誰かを守れない自分に腹が立つ。思う通りに動かない身体がもどかしくて仕方ねぇ」
何もかも、全てを救う事など不可能だ。そんなことは嫌というほどわかっている。
それでも一人でも多くの人を助けたい。守護者にはその力があるはずだ。
「だから、守護者になるのに躊躇いはねぇよ」
「本当にそうでしょうか」
大精霊の問いに視線を向ける。
「あなたは見た目よりも謙虚な人間ですね。いえ、臆病というべきでしょうか」
「あん?」
「それだけの力があり、更なる力を求めるのであれば、いくらでも願えるはず。求められるはず。では、なぜそれをしないのでしょう」
「そいつは……まあ、アレだな。守護者になることに迷いはないが、俺も人間なンでな。考えたりすることはあるンだぜ」
守護者の力は、当人たちにとっては何らかの目的、願い、答えに向かうための通過点に過ぎない。
力はただ力。それを何に用いてどんな願いを成すのか、それが守護者にとって重要なのだ。
「俺は……よくわからねぇンだ。強くなって歪虚をブッ倒し続けても、その先に何があるのか、見えない」
強さとは時に空しいものだ。並び立つ者がいない程に強くなってしまえば、それは孤独と言ってよい。
だからこそボルディアの戦いは守る戦いなのだ。維持する為の戦い。或いは――孤独を和らげる戦いだろうか。
「あなたには幸運にもあなたと並び立つ程の仲間がいる。その仲間を失ってしまえば、あなたは独りです。独りというのは、寂しいものですから」
「ゴチャゴチャ考えんのは苦手だ。でもまあ、ダチが多いのはいいことだ。実際、俺はダチを失いたくねぇしな」
ふっと笑い、ボルディアは大精霊の背中を叩く。
「その仲間ってのには当然、クリムゾンウェスト……お前も入ってるんだぜ?」
「私も仲間……ですか?」
「俺らハンターに覚醒って形で力を貸してくれてるんだ。当然だろ?」
ぐっとサムズアップしながら笑うボルディア。大精霊は少し驚き、そして僅かに微笑む。
「では、仲間として。今の私に出来ることをしましょう」
大精霊が片腕を振るうと、その指先が世界を塗り替えていく。
赤い光の星の海。マグ・メルの中心で二人は向き合う。
「――星の光の名の下に、汝、ボルディア・コンフラムスに告げる。その魂の輝きを力と変え、星の救世主となる覚悟はあるか?」
「おう! お前がピンチになったら俺は必ず助けに行く。絶対にだ!」
「契約を受理します。星と英雄の記憶を以て、ここに神の力の一端を授けん。目覚めよ、ガーディアン!」
星の記憶石が砕け、ボルディアの身体に光が吸い込まれていく。
「ここに誓いは結ばれた。餓狼なる守護者よ、あなたの救世に期待します」
契約の儀式を終えると、ボルディアは上腕二頭筋を隆起させながら爽やかに笑う。
「いや?、これがガーディアンか! 全身の筋肉が生まれ変わったみてぇな気分だぜ!」
「ある意味生物としてのランクアップですから、それはそうでしょうね」
「よくわからねぇが、清々しい気分だぜ。今ならなんでもブッ倒せそうだ!」
握り拳を平手に変え、女は少女の肩に手を置く。
「俺ぁ世界を救うことには興味がねぇが、ダチが困ってるンなら話は別だ。“ついで”でよけりゃあ――邪神もブッ飛ばしてやるぜ?」
「そうですか。それならば、期待せずに待っていますね」
もう一度平手を握り拳に変える。
少女の小さな拳が、女の大きな拳にコツンと重なった。
(執筆:神宮寺飛鳥)
(文責:フロンティアワークス)
(文責:フロンティアワークス)
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レイア・アローネ(ka4082) 種族:人間(クリムゾンウェスト) クラス:闘狩人(エンフォーサー) 「守護者」取得日:2018/09/11 「守護者武器」:[SW]星神器「天羽羽斬」 ●「守護者」への表明 「──私はお前を担うに相応しいのか…剣よ、教えてくれ──!」 |
●「守護者」契約(クリックすると、下にノベルが展開されます)
「私はひたすらに剣を振るってきた。私にはそれしかなかったからだ」
大精霊との契約を前に、レイア・アローネ(ka4082)はそう口火を切った。
山奥の部族に生まれ、剣士――いや、戦士として戦い続けてきた。
レイアにとって剣とは己のアイデンティティそのものだ。それがなければ自分を保てない。
しかしだからこそ、剣という存在にいつも苛まれてきた。
「私にはわからなかった。自分が正しいことをしているのか、そうでないのか。未だにはっきりと答える自信がないんだ」
戦いというのは、いつも上手く行くとは限らない。
部族の中では負けを知らない豪傑だったレイアだが、世界は広く、そして歪虚との闘いは苛烈を極めた。
「いつだって私は迷っている。いつだって私は後悔している。でも、後悔は嫌だ。戦いが後悔を生むのなら、剣を捨てた方が楽になれるのではないか……そう思う」
挑まなければ、そもそも失う事はないだろう。
何かを望んで行動すれば、必ずその行動に責任が伴ってしまう。
「今も、目の前の力を手にすることが世界にとって正しいのか、不安で一杯だ」
「あなたの不安は理解できます。ではなぜ、星神器の力を望むのですか?」
「それは……憧れたからだ」
剣に生きるしかないから。それもある。大きな理由には違いない。
どうせ剣に生きるしかないのなら、それを極めるしかないだろう。
だが……そんな宿命に縛られるような想いだけでは、星神器に手を伸ばそうとは思わなかった。
「私よりも先に、星神器を手にした者がいた。私の所属するギルドのマスターだ」
自由気ままに、強く優しく剣を振るう聖剣の騎士。
彼は迷うことなく、当たり前のように守護者の道を選び、そして歩み始めた。
「私にはとてもできない。自分にはそれしかないと理解していながら、覚悟の決まらない半端ものだからな」
「そうですね。この局面でハンターから迷いを感じるのは、あなたが初めてかもしれません」
「ああ。どうやら私はそういう性分らしい。だからこれから先も、ずっと迷い続けようと思う」
正しさや覚悟とは、時に盲目的で暴力的なものだ。
正しさの光の前では、多少の犠牲など簡単に眩んでしまう。
「今の守護者がその在り方を過つとは思っていない。だが、それでも迷いは必要なのだ」
「そうですか。であれば、その迷いはやはり覚悟と呼ぶべきでしょう」
「覚悟か。そうだな。そうであれば嬉しい」
覚悟がなければ彼の隣には立てないだろう。
彼の友で居続ける為に、胸を張って戦う為に、正しさを求め続ける為に。
「正しい力が必要だ。だから、私が守護者に相応しいか、どうか試してほしい」
「……よいでしょう。あなたの在り方、存分に試しなさい」
大精霊が放つ光は空間を塗り替え、そして星神器がゆっくりと浮かび上がる。
「――星の光の名の下に、汝、レイア・アローネに告げる。その魂の輝きを力と変え、星の救世主となる覚悟はあるか?」
「私がお前に相応しいかどうか、その試練に私は全力を以て応えよう」
“待ってるぜ”――そう言われた気がした。
あの男の背中が見える。その光に向かって、レイアは手を伸ばす。
「天羽羽斬──!」
星の記憶石が砕け、虹となって星神器に吸い込まれていく。
まばゆい輝きをしっかりとつかみ取った瞬間、純白の剣に色が宿った。
「どうやら剣に認められたようですね」
「そうらしい。尤も、本当にこれでよかったのか、私にはわからないが」
軽く剣を振るうと、強いマテリアルの力を感じる。
契約の空間から帰還したレイアは剣を鞘に納め、眉をひそめた。
「だが……これから先のことは、きっとこの剣が導いてくれるだろう。天羽羽斬が見放さない限り、私は運命を共にしよう」
「ここに誓いは結ばれた。究明なる守護者よ、あなたの救世に期待します」
大精霊が微笑みかけると、レイアは剣をそっと撫でる。
女の前には新しい選択と後悔の日々が、きらきらと輝いていた。
大精霊との契約を前に、レイア・アローネ(ka4082)はそう口火を切った。
山奥の部族に生まれ、剣士――いや、戦士として戦い続けてきた。
レイアにとって剣とは己のアイデンティティそのものだ。それがなければ自分を保てない。
しかしだからこそ、剣という存在にいつも苛まれてきた。
「私にはわからなかった。自分が正しいことをしているのか、そうでないのか。未だにはっきりと答える自信がないんだ」
戦いというのは、いつも上手く行くとは限らない。
部族の中では負けを知らない豪傑だったレイアだが、世界は広く、そして歪虚との闘いは苛烈を極めた。
「いつだって私は迷っている。いつだって私は後悔している。でも、後悔は嫌だ。戦いが後悔を生むのなら、剣を捨てた方が楽になれるのではないか……そう思う」
挑まなければ、そもそも失う事はないだろう。
何かを望んで行動すれば、必ずその行動に責任が伴ってしまう。
「今も、目の前の力を手にすることが世界にとって正しいのか、不安で一杯だ」
「あなたの不安は理解できます。ではなぜ、星神器の力を望むのですか?」
「それは……憧れたからだ」
剣に生きるしかないから。それもある。大きな理由には違いない。
どうせ剣に生きるしかないのなら、それを極めるしかないだろう。
だが……そんな宿命に縛られるような想いだけでは、星神器に手を伸ばそうとは思わなかった。
「私よりも先に、星神器を手にした者がいた。私の所属するギルドのマスターだ」
自由気ままに、強く優しく剣を振るう聖剣の騎士。
彼は迷うことなく、当たり前のように守護者の道を選び、そして歩み始めた。
「私にはとてもできない。自分にはそれしかないと理解していながら、覚悟の決まらない半端ものだからな」
「そうですね。この局面でハンターから迷いを感じるのは、あなたが初めてかもしれません」
「ああ。どうやら私はそういう性分らしい。だからこれから先も、ずっと迷い続けようと思う」
正しさや覚悟とは、時に盲目的で暴力的なものだ。
正しさの光の前では、多少の犠牲など簡単に眩んでしまう。
「今の守護者がその在り方を過つとは思っていない。だが、それでも迷いは必要なのだ」
「そうですか。であれば、その迷いはやはり覚悟と呼ぶべきでしょう」
「覚悟か。そうだな。そうであれば嬉しい」
覚悟がなければ彼の隣には立てないだろう。
彼の友で居続ける為に、胸を張って戦う為に、正しさを求め続ける為に。
「正しい力が必要だ。だから、私が守護者に相応しいか、どうか試してほしい」
「……よいでしょう。あなたの在り方、存分に試しなさい」
大精霊が放つ光は空間を塗り替え、そして星神器がゆっくりと浮かび上がる。
「――星の光の名の下に、汝、レイア・アローネに告げる。その魂の輝きを力と変え、星の救世主となる覚悟はあるか?」
「私がお前に相応しいかどうか、その試練に私は全力を以て応えよう」
“待ってるぜ”――そう言われた気がした。
あの男の背中が見える。その光に向かって、レイアは手を伸ばす。
「天羽羽斬──!」
星の記憶石が砕け、虹となって星神器に吸い込まれていく。
まばゆい輝きをしっかりとつかみ取った瞬間、純白の剣に色が宿った。
「どうやら剣に認められたようですね」
「そうらしい。尤も、本当にこれでよかったのか、私にはわからないが」
軽く剣を振るうと、強いマテリアルの力を感じる。
契約の空間から帰還したレイアは剣を鞘に納め、眉をひそめた。
「だが……これから先のことは、きっとこの剣が導いてくれるだろう。天羽羽斬が見放さない限り、私は運命を共にしよう」
「ここに誓いは結ばれた。究明なる守護者よ、あなたの救世に期待します」
大精霊が微笑みかけると、レイアは剣をそっと撫でる。
女の前には新しい選択と後悔の日々が、きらきらと輝いていた。
(執筆:神宮寺飛鳥)
(文責:フロンティアワークス)
(文責:フロンティアワークス)
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キヅカ・リク(ka0038) 種族:人間(リアルブルー) クラス:機導師(アルケミスト) 「守護者」取得日:2018/10/03 ●「守護者」への表明 「叶えたい夢が、願いがある。証明したい事がある。だから、僕は…!」 |
●「守護者」契約(クリックすると、下にノベルが展開されます)
「僕みたいな凡人がここにいるのは……なんか浮いてるなぁ」
ハンターズ・ソサエティ訓練所に設置された契約陣にて、新たに大精霊と契約を結ぶ者がいる。
大精霊クリムゾンウェストを前にキヅカ・リク(ka0038)はやや緊張した様子で語る。
「昔は、さ。諦めてたんだ。どうせ大したこともできずに老いて死ぬだけなのかなって」
リアルブルーという世界は均一な世界だ。
無論、すべてではない。しかし、クリムゾンウェストに比べればずっと多様性に欠けている。
「あの世界ではみんなそうなんだ。同じように生きて、同じように死んでいく。特に努力したり悩まなくても安心して生きられるのは、それはそれでいい事なんだってこっちに来て気づいたけど」
クリムゾンウェストという異世界は教えてくれた。
生きるということは何なのか。自分はそれとどのように向き合うべきなのか。
「この世界で僕は出会ったんだ」
夢を見せてくれる人。
自分にも価値があると言ってくれる人。
共に歩み、道を照らしてくれる人に。
「そんな人達が見た夢を、願いを真実に変えたいと思ったんだ」
「真実……ですか」
大精霊は静かに口を開く。
「キヅカ・リク。あなたは自分の想いが矛盾していると自覚していますか?」
「へっ?」
「……その様子では無自覚ですか」
はあ、と珍しく溜息を吐き、大精霊は眉を顰める。
「守護者というのは、己の中に矛盾があってはいけないのです。一本筋が通っていなければ、契約に耐えられない」
「僕は守護者になれないってこと?」
大精霊は困った様子だが、その何倍もキヅカは困っていた。
せっかく星の記憶石に認められたのに守護者になれないとは……。
「あなたが真っ先に口にした言葉を覚えていますか?」
「えーと……僕みたいな凡人が……」
「そこです。当たり前ですが、凡人は守護者になれません。そもそも星の記憶石にすら認められない。あなたにも何か、偏執的な才能があるのでしょう。それを自ら否定していては、力が馴染まなくても無理はありません」
「なるほど……僕自身が守護者を拒否してるってことか」
しかしそう言われても、何がいけないのかよくわからない。
「順を追って考えなさい。何故力を求めるのか」
キヅカは思い返す。この世界で見てきたものを。
「僕が望むのは、誰もが当たり前に生きて笑っていられる世界だ」
「本当に?」
「本当だよ。この願いは嘘じゃない」
「――あなたは凡庸な世界を憎んでいるのに?」
特に目的のない、誰にも脅かされない人生。
ルーチンワークの繰り返し。与えられるだけの刺激を、分相応に受け入れる世界。
争いはない。希望もない。命がただ生まれ、終わっていくだけの世界――それが平和だ。
「あなたの願いは、あなたが虚しいと思う世界そのもの。戻りたいのですか? それとも、戻りたくないのですか?」
覚醒者(ヒーロー)でなければ、こんな想いをすることはなかった。
だからこそ、その願いは矛盾する。
「……そうか。僕の願いは……自分自身の否定に通じているのか」
ようやく腑に落ちた。そして、ひとつずつ紐解いていく。
「だったら――やっぱり僕の願いは矛盾しないんだよ、大精霊」
キヅカは見てきた。
何度も繰り返す絶望のループの中、それでも諦めない人の姿を。
自分の過去の悲劇と向き合い、立ち上がる姿を。
「僕が見たのは、ヒトの可能性だ。停滞した世界を切り開く、全く新しい未来の象徴だ。確かにこの願いは個人的なんだろう。それでも僕は諦めたくないんだ」
結局のところ、願いとは自分の為にある。
「僕は矛盾している。でもそのループは永遠じゃない。新しい答えを見つけるために、力を望む。僕は可能性を――自分を諦めない」
「捕らわれたまま戦い続けるというのは、あなたが言うほど簡単な事ではありませんよ」
「かもね。だとしても、僕は諦めない。何度つまずいてもまた立ち上がってみせる。指先だけでもいい、夢に届くその日まで」
大精霊は吟味するようにキヅカの顔をじっと覗き込む。
揺らめく水面のように輝く瞳を負けじと見つめ返すと、少女の姿をした神は頷いた。
「まあ……及第点としましょう」
大精霊が片腕を振るうと、その指先が世界を塗り替えていく。
赤い光の星の海。マグ・メルの中心で二人は向き合う。
「――星の光の名の下に、汝、キヅカ・リクに告げる。その魂の輝きを力と変え、星の救世主となる覚悟はあるか?」
「守り抜いてみせる。この世界を、ヒトを、精霊を、明日を!」
「契約を受理します。星と英雄の記憶を以て、ここに神の力の一端を授けん。目覚めよ、ガーディアン!」
星の記憶石は問題なく光に変わり、そしてキヅカの身体を包み込む。
「ここに誓いは結ばれた。矛盾なる守護者よ、あなたの救世に期待します」
契約が終了すると、周囲の景色も元に戻った。
大精霊は言う事は言ったという様子で、再び溜息を零す。
「そういうわけですから、守護者の一員として恥じぬ活躍をお願いします」
「うぅ……なんか微妙に扱いがぞんざいだぁ?……」
「目的地もよくわからぬまま只管に走り続けるような人間には相応しい扱いだと思いますが」
大精霊はすっとキヅカの胸倉を両手でつかむと、常人離れした膂力で引き寄せる。
「あなた結局、最後まで自分の可能性を見届けるつもりなんてないのでしょう?」
「いや……そんなことは……」
「だったら胸を張りなさい。ちゃんを目的地を見定めなさい。死に場所を探すような出鱈目な生き方で、可能性とは笑わせる。それは命で運試ししているだけです」
ごくりと、生唾を飲み込む。
少女の姿をしているが、目の前のコレは神そのものだ。瞳の向こうに渦巻く宇宙に思わず身震いする。
「私の守護者になった以上、勝手な死は許しません。せいぜい泣きわめき転がりながら生きなさい。……わかりましたか?」
「……ハ、ハイッ」
「まったく。世話の焼ける子です」
ぱっと両手を放し、大精霊は少年の胸をポンと叩くと、もう言う事はないと言わんばかりに立ち去っていく。
残されたキヅカは地面にしりもちをついたまま、ポカンとその背中を見送っていた。
「生きなさい、か……」
思わず苦笑する。
「――ごめん。そっちに逝くのはもうちょっとだけ待ってて。僕にもまだ、この世界でやらなきゃいけないことがあるみたいだ」
青空に投げた言葉は雲のように消えた。
地面に手をついて、ゆっくりと両足に力を入れる。
再び踏みしめた一歩は軽く、まるで誰かに背中を押されているかのようだった。
ハンターズ・ソサエティ訓練所に設置された契約陣にて、新たに大精霊と契約を結ぶ者がいる。
大精霊クリムゾンウェストを前にキヅカ・リク(ka0038)はやや緊張した様子で語る。
「昔は、さ。諦めてたんだ。どうせ大したこともできずに老いて死ぬだけなのかなって」
リアルブルーという世界は均一な世界だ。
無論、すべてではない。しかし、クリムゾンウェストに比べればずっと多様性に欠けている。
「あの世界ではみんなそうなんだ。同じように生きて、同じように死んでいく。特に努力したり悩まなくても安心して生きられるのは、それはそれでいい事なんだってこっちに来て気づいたけど」
クリムゾンウェストという異世界は教えてくれた。
生きるということは何なのか。自分はそれとどのように向き合うべきなのか。
「この世界で僕は出会ったんだ」
夢を見せてくれる人。
自分にも価値があると言ってくれる人。
共に歩み、道を照らしてくれる人に。
「そんな人達が見た夢を、願いを真実に変えたいと思ったんだ」
「真実……ですか」
大精霊は静かに口を開く。
「キヅカ・リク。あなたは自分の想いが矛盾していると自覚していますか?」
「へっ?」
「……その様子では無自覚ですか」
はあ、と珍しく溜息を吐き、大精霊は眉を顰める。
「守護者というのは、己の中に矛盾があってはいけないのです。一本筋が通っていなければ、契約に耐えられない」
「僕は守護者になれないってこと?」
大精霊は困った様子だが、その何倍もキヅカは困っていた。
せっかく星の記憶石に認められたのに守護者になれないとは……。
「あなたが真っ先に口にした言葉を覚えていますか?」
「えーと……僕みたいな凡人が……」
「そこです。当たり前ですが、凡人は守護者になれません。そもそも星の記憶石にすら認められない。あなたにも何か、偏執的な才能があるのでしょう。それを自ら否定していては、力が馴染まなくても無理はありません」
「なるほど……僕自身が守護者を拒否してるってことか」
しかしそう言われても、何がいけないのかよくわからない。
「順を追って考えなさい。何故力を求めるのか」
キヅカは思い返す。この世界で見てきたものを。
「僕が望むのは、誰もが当たり前に生きて笑っていられる世界だ」
「本当に?」
「本当だよ。この願いは嘘じゃない」
「――あなたは凡庸な世界を憎んでいるのに?」
特に目的のない、誰にも脅かされない人生。
ルーチンワークの繰り返し。与えられるだけの刺激を、分相応に受け入れる世界。
争いはない。希望もない。命がただ生まれ、終わっていくだけの世界――それが平和だ。
「あなたの願いは、あなたが虚しいと思う世界そのもの。戻りたいのですか? それとも、戻りたくないのですか?」
覚醒者(ヒーロー)でなければ、こんな想いをすることはなかった。
だからこそ、その願いは矛盾する。
「……そうか。僕の願いは……自分自身の否定に通じているのか」
ようやく腑に落ちた。そして、ひとつずつ紐解いていく。
「だったら――やっぱり僕の願いは矛盾しないんだよ、大精霊」
キヅカは見てきた。
何度も繰り返す絶望のループの中、それでも諦めない人の姿を。
自分の過去の悲劇と向き合い、立ち上がる姿を。
「僕が見たのは、ヒトの可能性だ。停滞した世界を切り開く、全く新しい未来の象徴だ。確かにこの願いは個人的なんだろう。それでも僕は諦めたくないんだ」
結局のところ、願いとは自分の為にある。
「僕は矛盾している。でもそのループは永遠じゃない。新しい答えを見つけるために、力を望む。僕は可能性を――自分を諦めない」
「捕らわれたまま戦い続けるというのは、あなたが言うほど簡単な事ではありませんよ」
「かもね。だとしても、僕は諦めない。何度つまずいてもまた立ち上がってみせる。指先だけでもいい、夢に届くその日まで」
大精霊は吟味するようにキヅカの顔をじっと覗き込む。
揺らめく水面のように輝く瞳を負けじと見つめ返すと、少女の姿をした神は頷いた。
「まあ……及第点としましょう」
大精霊が片腕を振るうと、その指先が世界を塗り替えていく。
赤い光の星の海。マグ・メルの中心で二人は向き合う。
「――星の光の名の下に、汝、キヅカ・リクに告げる。その魂の輝きを力と変え、星の救世主となる覚悟はあるか?」
「守り抜いてみせる。この世界を、ヒトを、精霊を、明日を!」
「契約を受理します。星と英雄の記憶を以て、ここに神の力の一端を授けん。目覚めよ、ガーディアン!」
星の記憶石は問題なく光に変わり、そしてキヅカの身体を包み込む。
「ここに誓いは結ばれた。矛盾なる守護者よ、あなたの救世に期待します」
契約が終了すると、周囲の景色も元に戻った。
大精霊は言う事は言ったという様子で、再び溜息を零す。
「そういうわけですから、守護者の一員として恥じぬ活躍をお願いします」
「うぅ……なんか微妙に扱いがぞんざいだぁ?……」
「目的地もよくわからぬまま只管に走り続けるような人間には相応しい扱いだと思いますが」
大精霊はすっとキヅカの胸倉を両手でつかむと、常人離れした膂力で引き寄せる。
「あなた結局、最後まで自分の可能性を見届けるつもりなんてないのでしょう?」
「いや……そんなことは……」
「だったら胸を張りなさい。ちゃんを目的地を見定めなさい。死に場所を探すような出鱈目な生き方で、可能性とは笑わせる。それは命で運試ししているだけです」
ごくりと、生唾を飲み込む。
少女の姿をしているが、目の前のコレは神そのものだ。瞳の向こうに渦巻く宇宙に思わず身震いする。
「私の守護者になった以上、勝手な死は許しません。せいぜい泣きわめき転がりながら生きなさい。……わかりましたか?」
「……ハ、ハイッ」
「まったく。世話の焼ける子です」
ぱっと両手を放し、大精霊は少年の胸をポンと叩くと、もう言う事はないと言わんばかりに立ち去っていく。
残されたキヅカは地面にしりもちをついたまま、ポカンとその背中を見送っていた。
「生きなさい、か……」
思わず苦笑する。
「――ごめん。そっちに逝くのはもうちょっとだけ待ってて。僕にもまだ、この世界でやらなきゃいけないことがあるみたいだ」
青空に投げた言葉は雲のように消えた。
地面に手をついて、ゆっくりと両足に力を入れる。
再び踏みしめた一歩は軽く、まるで誰かに背中を押されているかのようだった。
(執筆:神宮寺飛鳥)
(文責:フロンティアワークス)
(文責:フロンティアワークス)
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星野 ハナ(ka5852) 種族:人間(リアルブルー) クラス:符術師(カードマスター) 「守護者」取得日:2018/10/03 ●「守護者」への表明 「最初はただの正義が嫌い、から始まってるんですよねぇ」 |
●「守護者」契約(クリックすると、下にノベルが展開されます)
「L・O・V・E、らぶりぃ深紅ちゃん、きゃー!」
元々大精霊の目はまあまあ死んでいるが、よりいっそうハイライトが消えていた。
契約の儀式にやってきた星野 ハナ(ka5852)が両手のポンポンを振りながらジャンプするが、反応が芳しくないと気づくと首を傾げる。 「あれぇ? もしかしてスベっちゃってますぅ?」
「単純に何がなんだか理解できないだけです」
「深紅ちゃんっていうのは、貴女の愛称のつもりですけどぉ? クリムゾンウェスト大精霊さまってお名前長すぎませんかぁ? 舌噛んじゃいそうですぅ」
特に気にする様子もなくぽいっとポンポンを投げ捨て、ハナは大精霊との距離を詰める。
「もし会う機会があったら絶対プレゼントしようと思ってたんですよぉ。孤高を気取るなんて妄執の次に始末が悪い、敬愛する友人たる大精霊さまを2度とそんな所に置くもんかっていう決意と親愛の表れですぅ」
「圧がスゴい」
「あっ、ごめんなさい?なんか自分の都合ばっかりぃ?。でも私、自分が人として傲慢だって自覚はありますからぁ」
大精霊は溜息を一つ。片目を閉じ、ゆったりと語る。
「人間のペースは人それぞれですから特に問題にはしませんが、焦らなくても十分な時間を設けてありますから」
「そうですよねぇ、つい?……。そういえばこれってぇ、守護者を志望する人の面接みたいな感じなんですよねぇ?」
「そんなところですが、い――」
「私ぃ、正義って言葉が嫌いで虫唾が走るんですぅっ!!」
笑顔をずいっと近づけるハナに、大精霊が眉を顰める。
「1番恣意的でどんな悪行のお題目にも使えるじゃないですかぁ。だから自分が善だと感じてぇ、依頼人さんも幸せになる依頼を受けたいなってぇ。0より2は必ず多い、相対的な善ならあるだろうってぇ。でもこれも真面目に考えると袋小路なんですよねぇ。瀉血みたいに常識が180度変わるなんてざらですしぃ……それで思ったんですけどぉ、愛だろうが殺意だろうが考えるだけなら構いませんけどぉ、死の間際にそれを妄執として固定されるのだけは駄目だなってぇ。だから死ぬ時を歪虚に利用されない、死ぬ場所に歪虚が居ない、そういうのを目指したいって思ったんですぅ!」
キラキラとした笑顔で言い切ったハナを前に、大精霊は腕を組む。
「要約すると、歪虚を根絶したいということですか」
「ざっくりきっぱり言っちゃうとそんな感じですぅー。まあ、難しいとは思いますけどぉ」
「歪虚は命と密接な関係がありますからね」
今は邪神ファナティックブラッドが異世界から送り込んでくる敵戦力が多いが、そもそも世界には歪虚という負の存在が生じる。
それはちょうど人間という光に対する影のように、必ず付きまとうだろう。
「そうですねぇ……だから、完全な根絶は無理だと思うんですぅ。でもさっき言った通り、“死ぬ場所に歪虚がいない”という状況は、努力次第で作れると思うんですよねぇ」
「それで、孤高は妄執の次に始末が悪い、と」
「孤高って結局見た目の問題でぇ、本質的にはただのぼっちじゃないですかぁ。正義とかもそうなんですけどぉ、生物って、絶対的……この場合は主観的、ですかねぇ? そういう考え方に囚われちゃうと、良くないと思うんですぅ」
そこでハっとして、ハナは両手を振る。
「あ、違うんですよぉ!? 別に私はぁ、大精霊さまをぼっちだって言いたいわけじゃなくてぇ?!」
「まあ、ぼっちではあったと思いますが」
「それも過去の話じゃないですかぁ! 今は私達ハンターがいるんですからぁ……L・O・V・E、らぶりぃ深紅ちゃん!!」
放り投げたポンポンを拾ってきてもう一度踊るハナに、大精霊は思わず笑みを零す。
「ありがとう、ハナ。あなたは優しいのですね」
「優しい……ですかぁ? あんまりそういう風には言われないですけどぉ、褒められてるなら受け取っておきますぅ。キャハ♪」
「それはそれとして、あなたの判断基準は結局のところ自分にとっての正義に過ぎないと言うことですね」
ハナは笑顔のままだったが、どこか凍り付いたような気配だった。
「0より2は必ず多い……というのも、結局はあなたから見た主観的正義に過ぎないでしょう。それに結局その考え方の先にあるのは、“マイナスよりはゼロの方がマシ”ではないのですか?」
ゼロをプラスにできるのならばよいだろう。
だが、ひとりを殺さなければ10人が死ぬといった場合は?
「殺されるひとりにとっては、その行いは悪でしょう。場合によっては他の見る者にとっても。このような状況でも、あなたは優先順位による正義を実行すると」
「うぅん……正義って表現は適切ではないかもしれませんけどぉ……でもたぶん、そうする他ないのならそうすると思いますぅ。正義と悪の違いって、結局主義主張の問題ですからぁ」
眉尻を下げ、ハナは思い悩む。だがそれは長く続かない。
「でもだからこそ、私はハンターなんですよぉ」
ハンターは正義の味方ではない。
ハンターは自らが救う命を、自らで選択する権利がある。
「私は私が納得できる戦いに、納得できる形で介入するんですぅ。だからぁ、マイナスをゼロにするという前提はそもそも当てはまりません。私の優先事項は、“依頼人”ですからぁ」
故に、ハナは依頼を選ばない。
子供でも老人でも、男でも女でも、なんでも良い。ただ自分が納得し、手を差し伸べることに誇りを持てるのなら。
「ハンターとして、相対的正義に従事するだけですぅ」
「あなたの在り方を理解しました。その魂、今一度確かめましょう」
大精霊が呟くと同時、周囲の空間が塗り替えられていく。
「――星の光の名の下に、汝、星野 ハナに告げる。その魂の輝きを力と変え、星の救世主となる覚悟はあるか?」
「私ひとりじゃできない目的ですからぁ。守護者として、目指したいって思いますぅ」
「契約を受理します。星と英雄の記憶を以て、ここに神の力の一端を授けん。目覚めよ、ガーディアン!」
星の記憶石の輝きがハナの身体に吸い込まれ渦巻く。
そして赤い宇宙の輝きは消え去り、ハナの中に力だけが残った。
「ここに誓いは結ばれた。顧慮なる守護者よ、あなたの救世に期待します」
「これで私も守護者ですからぁ、大精霊さまもお友達ですねぇー♪」
「しかし、守護者となった以上はあなたはあなたの自由には生きられないのでは」
「それなら問題ないですぅ」
ハナは大精霊の手を取り、笑いかける。
「あなたという依頼人のために、頑張るだけですからぁ♪」
元々大精霊の目はまあまあ死んでいるが、よりいっそうハイライトが消えていた。
契約の儀式にやってきた星野 ハナ(ka5852)が両手のポンポンを振りながらジャンプするが、反応が芳しくないと気づくと首を傾げる。 「あれぇ? もしかしてスベっちゃってますぅ?」
「単純に何がなんだか理解できないだけです」
「深紅ちゃんっていうのは、貴女の愛称のつもりですけどぉ? クリムゾンウェスト大精霊さまってお名前長すぎませんかぁ? 舌噛んじゃいそうですぅ」
特に気にする様子もなくぽいっとポンポンを投げ捨て、ハナは大精霊との距離を詰める。
「もし会う機会があったら絶対プレゼントしようと思ってたんですよぉ。孤高を気取るなんて妄執の次に始末が悪い、敬愛する友人たる大精霊さまを2度とそんな所に置くもんかっていう決意と親愛の表れですぅ」
「圧がスゴい」
「あっ、ごめんなさい?なんか自分の都合ばっかりぃ?。でも私、自分が人として傲慢だって自覚はありますからぁ」
大精霊は溜息を一つ。片目を閉じ、ゆったりと語る。
「人間のペースは人それぞれですから特に問題にはしませんが、焦らなくても十分な時間を設けてありますから」
「そうですよねぇ、つい?……。そういえばこれってぇ、守護者を志望する人の面接みたいな感じなんですよねぇ?」
「そんなところですが、い――」
「私ぃ、正義って言葉が嫌いで虫唾が走るんですぅっ!!」
笑顔をずいっと近づけるハナに、大精霊が眉を顰める。
「1番恣意的でどんな悪行のお題目にも使えるじゃないですかぁ。だから自分が善だと感じてぇ、依頼人さんも幸せになる依頼を受けたいなってぇ。0より2は必ず多い、相対的な善ならあるだろうってぇ。でもこれも真面目に考えると袋小路なんですよねぇ。瀉血みたいに常識が180度変わるなんてざらですしぃ……それで思ったんですけどぉ、愛だろうが殺意だろうが考えるだけなら構いませんけどぉ、死の間際にそれを妄執として固定されるのだけは駄目だなってぇ。だから死ぬ時を歪虚に利用されない、死ぬ場所に歪虚が居ない、そういうのを目指したいって思ったんですぅ!」
キラキラとした笑顔で言い切ったハナを前に、大精霊は腕を組む。
「要約すると、歪虚を根絶したいということですか」
「ざっくりきっぱり言っちゃうとそんな感じですぅー。まあ、難しいとは思いますけどぉ」
「歪虚は命と密接な関係がありますからね」
今は邪神ファナティックブラッドが異世界から送り込んでくる敵戦力が多いが、そもそも世界には歪虚という負の存在が生じる。
それはちょうど人間という光に対する影のように、必ず付きまとうだろう。
「そうですねぇ……だから、完全な根絶は無理だと思うんですぅ。でもさっき言った通り、“死ぬ場所に歪虚がいない”という状況は、努力次第で作れると思うんですよねぇ」
「それで、孤高は妄執の次に始末が悪い、と」
「孤高って結局見た目の問題でぇ、本質的にはただのぼっちじゃないですかぁ。正義とかもそうなんですけどぉ、生物って、絶対的……この場合は主観的、ですかねぇ? そういう考え方に囚われちゃうと、良くないと思うんですぅ」
そこでハっとして、ハナは両手を振る。
「あ、違うんですよぉ!? 別に私はぁ、大精霊さまをぼっちだって言いたいわけじゃなくてぇ?!」
「まあ、ぼっちではあったと思いますが」
「それも過去の話じゃないですかぁ! 今は私達ハンターがいるんですからぁ……L・O・V・E、らぶりぃ深紅ちゃん!!」
放り投げたポンポンを拾ってきてもう一度踊るハナに、大精霊は思わず笑みを零す。
「ありがとう、ハナ。あなたは優しいのですね」
「優しい……ですかぁ? あんまりそういう風には言われないですけどぉ、褒められてるなら受け取っておきますぅ。キャハ♪」
「それはそれとして、あなたの判断基準は結局のところ自分にとっての正義に過ぎないと言うことですね」
ハナは笑顔のままだったが、どこか凍り付いたような気配だった。
「0より2は必ず多い……というのも、結局はあなたから見た主観的正義に過ぎないでしょう。それに結局その考え方の先にあるのは、“マイナスよりはゼロの方がマシ”ではないのですか?」
ゼロをプラスにできるのならばよいだろう。
だが、ひとりを殺さなければ10人が死ぬといった場合は?
「殺されるひとりにとっては、その行いは悪でしょう。場合によっては他の見る者にとっても。このような状況でも、あなたは優先順位による正義を実行すると」
「うぅん……正義って表現は適切ではないかもしれませんけどぉ……でもたぶん、そうする他ないのならそうすると思いますぅ。正義と悪の違いって、結局主義主張の問題ですからぁ」
眉尻を下げ、ハナは思い悩む。だがそれは長く続かない。
「でもだからこそ、私はハンターなんですよぉ」
ハンターは正義の味方ではない。
ハンターは自らが救う命を、自らで選択する権利がある。
「私は私が納得できる戦いに、納得できる形で介入するんですぅ。だからぁ、マイナスをゼロにするという前提はそもそも当てはまりません。私の優先事項は、“依頼人”ですからぁ」
故に、ハナは依頼を選ばない。
子供でも老人でも、男でも女でも、なんでも良い。ただ自分が納得し、手を差し伸べることに誇りを持てるのなら。
「ハンターとして、相対的正義に従事するだけですぅ」
「あなたの在り方を理解しました。その魂、今一度確かめましょう」
大精霊が呟くと同時、周囲の空間が塗り替えられていく。
「――星の光の名の下に、汝、星野 ハナに告げる。その魂の輝きを力と変え、星の救世主となる覚悟はあるか?」
「私ひとりじゃできない目的ですからぁ。守護者として、目指したいって思いますぅ」
「契約を受理します。星と英雄の記憶を以て、ここに神の力の一端を授けん。目覚めよ、ガーディアン!」
星の記憶石の輝きがハナの身体に吸い込まれ渦巻く。
そして赤い宇宙の輝きは消え去り、ハナの中に力だけが残った。
「ここに誓いは結ばれた。顧慮なる守護者よ、あなたの救世に期待します」
「これで私も守護者ですからぁ、大精霊さまもお友達ですねぇー♪」
「しかし、守護者となった以上はあなたはあなたの自由には生きられないのでは」
「それなら問題ないですぅ」
ハナは大精霊の手を取り、笑いかける。
「あなたという依頼人のために、頑張るだけですからぁ♪」
(執筆:神宮寺飛鳥)
(文責:フロンティアワークス)
(文責:フロンティアワークス)
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ディーナ・フェルミ(ka5843) 種族:人間(クリムゾンウェスト) クラス:聖導士(クルセイダー) 「守護者」取得日:2018/10/03 「守護者武器」:[SW]星神器「ウコンバサラ」 ●「守護者」への表明 「ナディア総長には会えるけど、神に会う機会はなかなかないの」 |
●「守護者」契約(クリックすると、下にノベルが展開されます)
「創世の神と語り合えるなんて、こんな機会めったにないの! ああ?、よ、喜びでこのまま昇天しそうなの?」
ディーナ・フェルミ(ka5843)は感激していた。
実際のところ大精霊クリムゾンウェストと二人で語り合う機会を得られるのは、全人類の中でも一握りである。
「色々な守護者を見てきましたが、昇天しそうなのは初めてです」
「お見苦しいものをお見せして申し訳ありませんなの。私、神ヲタクなもので……!」
星の記憶石に認められ、ついにこの場所まで昇りつめた。
あとは大精霊との対話を終え、契約を結べば彼女も晴れてガーディアンとなるだろう。
「その前に、この世界の大精霊にして創世の神、二度と言葉を交わす事すら叶わぬかもしれない至高の御方に、ただ1つの問いの答えを教えていただきたく存じます」
「どうやらその問いは、守護者になる上で避けられぬ物のようですね」
「はい。私が守護者になろうと思った理由でもありますの」
「良いでしょう。私が守護者を見定めるように、あなたにも私に問う権利はありますから」
「寛大なご配慮、痛み入りますの」
ディーナは大精霊の前に跪き、両手を胸の前で組む。
「どんなお答えでも構いません。ここでお伺いしたことは、生涯漏らしません。大精霊様……我が神エクラは、大精霊様にとってどのような存在でありましょうや」
ついに――言ってしまった。
ディーナの胸は期待と不安でいっぱいだった。
それはおよそ信仰に相応しい問いではないとわかっていたから。
エクラ教とは、クリムゾンウェスト最大規模を誇る「光の宗教」である。
それは大精霊の一側面でもあるとされており、要するにエクサ教の信者らは、目の前の大精霊に敬虔に祈りを捧げてきたとも言えるだろう。
(でも……この方は世界を滅ぼそうとなされた……)
大精霊が光の神エクラと同一の存在であると定義するのであれば、それは神による信心の否定と言って差し支えない。少なくともディーナはそう考えていた。
目をぎゅっと瞑り、神の言葉を待つその様は、まさに祈りに似ていた。
「難しい質問ですが……それはただの呼び方の問題でしょう」
「呼び方……ですの? それでは、大精霊様はやはりエクラ神でもあると?」
「それが天への祈りであれば、最終的には全て私に通じるはずです」
「ではどうして……? なぜ大精霊様は、この世界を……」
「それは……そうですね。知らなかったから……としか言いようがありません」
今、ディーナの目の前にいる大精霊は、あくまでも大精霊そのものではなく、その一側面に過ぎない。
神という人類に知覚できない巨大な規模のマテリアルを、ナディアというヒトの形に押し込めているだけだ。
「神とは唯一。しかし、総体でもあるのです。例えば四大精霊なども私の一部ですが、あれらは別個の個性を有しています。それは与えられている権能と役割の違いによるものです」
こうして話している言葉も、考え方も、ナディアに依存している。
ナディアがいなければ大精霊はヒトと同じスケールに存在できなくなり、言葉も記憶さえも失ってしまうだろう。
「そうなれば私はまた、今とは違う審判をこの世界に下すのかもしれません」
「では……我らの信仰は、無意味なのでしょうか……」
「どうでしょうか。今の私は意味があると思っていますが、私の総体としての判断が同じとは限りません。結局信仰とは、祈る側も祈られる側も同じなんですよ」
意味が分からずに首を傾げると、大精霊は両腕を広げ、微笑みをかける。
「今の私はグラウンド・ゼロで戦った時と同じでしょうか?」
「……いえ。その……少し印象が違いますの」
「それは人間が“こうあってほしい”と願う心に私が依存しているからです。故に私は対峙する人間の性質にも影響を受けています。あなたの問いに答えるのも、“あなたの影響”と言えるでしょう」
ヒトは神にこうあってほしいと祈る。その影響を受け、大なり小なり神はそのようになる。
つまり、神は人に祈られていなければその在り方を定義できない。信仰されなければ存在できない。それは、マテリアルと精霊の関係からも明らかだ。
「この世界には様々な祈り方がありますが、そのすべてが私にとっては力です。そういう意味であなたは私を光の神エクラと呼ぶこともできますが……人間というのはもっと個人的にものを見る生き物ですからね」
さすがにこの少女が筋骨隆々の節制の四大精霊と同じには思えないが、それもただ人間の感じ方の問題だ。
「そもそも、エクラ教って……昔からありましたの?」
「いえ、どうでしょう。紀元前にはありませんでしたね。一応、その頃にも同じような考えはありましたが」
その言葉を聞いてディーナはむしろ安心していた。
エクラ教は千年以上の歴史を持つだろうが、星の記憶に比べればごく短い期間の話だ。
当たり前じゃないか。エクラ教を作ったのは――人間なのだから。
「お答えありがとうございます。守護者として生きて死ぬには十分な答えをいただきました」
エクラは存在するのだろう。そしてそれは、与えられている権能と役割による違いにすぎない。
光の神エクラとは、人のためにある神だ。人のために――人がそうあれかしと祈った神の形。
そしてその祈りの記憶は、大精霊という総体にとって無意味ではないと悟った。
ならば何も問題はない。これまでと何も変わらない。すべての祈りは、祈る者にとって価値ある行いなのだから。
「――星の光の名の下に、汝、ディーナ・フェルミに告げる。その魂の輝きを力と変え、星の救世主となる覚悟はあるか?」
大精霊の作る光の結界の中で、ディーナは星神器に手を伸ばす。
「エクラ教徒は人の使徒、エクラの司祭は人の守護者。人と世界を守るため、私は守護者の力を求めます」
「契約を受理します。星と英雄の記憶を以て、ここに神の力の一端を授けん。目覚めよ、ウコンバサラ!」
星の記憶石の輝きを浴びて、星神器が色づいていく。
「ここに誓いは結ばれた。切実なる守護者よ、あなたの救世に期待します」
これは力であり、答えでもある。
ディーナは安堵と覚悟を胸に、もう一度神の前に跪いた。
ディーナ・フェルミ(ka5843)は感激していた。
実際のところ大精霊クリムゾンウェストと二人で語り合う機会を得られるのは、全人類の中でも一握りである。
「色々な守護者を見てきましたが、昇天しそうなのは初めてです」
「お見苦しいものをお見せして申し訳ありませんなの。私、神ヲタクなもので……!」
星の記憶石に認められ、ついにこの場所まで昇りつめた。
あとは大精霊との対話を終え、契約を結べば彼女も晴れてガーディアンとなるだろう。
「その前に、この世界の大精霊にして創世の神、二度と言葉を交わす事すら叶わぬかもしれない至高の御方に、ただ1つの問いの答えを教えていただきたく存じます」
「どうやらその問いは、守護者になる上で避けられぬ物のようですね」
「はい。私が守護者になろうと思った理由でもありますの」
「良いでしょう。私が守護者を見定めるように、あなたにも私に問う権利はありますから」
「寛大なご配慮、痛み入りますの」
ディーナは大精霊の前に跪き、両手を胸の前で組む。
「どんなお答えでも構いません。ここでお伺いしたことは、生涯漏らしません。大精霊様……我が神エクラは、大精霊様にとってどのような存在でありましょうや」
ついに――言ってしまった。
ディーナの胸は期待と不安でいっぱいだった。
それはおよそ信仰に相応しい問いではないとわかっていたから。
エクラ教とは、クリムゾンウェスト最大規模を誇る「光の宗教」である。
それは大精霊の一側面でもあるとされており、要するにエクサ教の信者らは、目の前の大精霊に敬虔に祈りを捧げてきたとも言えるだろう。
(でも……この方は世界を滅ぼそうとなされた……)
大精霊が光の神エクラと同一の存在であると定義するのであれば、それは神による信心の否定と言って差し支えない。少なくともディーナはそう考えていた。
目をぎゅっと瞑り、神の言葉を待つその様は、まさに祈りに似ていた。
「難しい質問ですが……それはただの呼び方の問題でしょう」
「呼び方……ですの? それでは、大精霊様はやはりエクラ神でもあると?」
「それが天への祈りであれば、最終的には全て私に通じるはずです」
「ではどうして……? なぜ大精霊様は、この世界を……」
「それは……そうですね。知らなかったから……としか言いようがありません」
今、ディーナの目の前にいる大精霊は、あくまでも大精霊そのものではなく、その一側面に過ぎない。
神という人類に知覚できない巨大な規模のマテリアルを、ナディアというヒトの形に押し込めているだけだ。
「神とは唯一。しかし、総体でもあるのです。例えば四大精霊なども私の一部ですが、あれらは別個の個性を有しています。それは与えられている権能と役割の違いによるものです」
こうして話している言葉も、考え方も、ナディアに依存している。
ナディアがいなければ大精霊はヒトと同じスケールに存在できなくなり、言葉も記憶さえも失ってしまうだろう。
「そうなれば私はまた、今とは違う審判をこの世界に下すのかもしれません」
「では……我らの信仰は、無意味なのでしょうか……」
「どうでしょうか。今の私は意味があると思っていますが、私の総体としての判断が同じとは限りません。結局信仰とは、祈る側も祈られる側も同じなんですよ」
意味が分からずに首を傾げると、大精霊は両腕を広げ、微笑みをかける。
「今の私はグラウンド・ゼロで戦った時と同じでしょうか?」
「……いえ。その……少し印象が違いますの」
「それは人間が“こうあってほしい”と願う心に私が依存しているからです。故に私は対峙する人間の性質にも影響を受けています。あなたの問いに答えるのも、“あなたの影響”と言えるでしょう」
ヒトは神にこうあってほしいと祈る。その影響を受け、大なり小なり神はそのようになる。
つまり、神は人に祈られていなければその在り方を定義できない。信仰されなければ存在できない。それは、マテリアルと精霊の関係からも明らかだ。
「この世界には様々な祈り方がありますが、そのすべてが私にとっては力です。そういう意味であなたは私を光の神エクラと呼ぶこともできますが……人間というのはもっと個人的にものを見る生き物ですからね」
さすがにこの少女が筋骨隆々の節制の四大精霊と同じには思えないが、それもただ人間の感じ方の問題だ。
「そもそも、エクラ教って……昔からありましたの?」
「いえ、どうでしょう。紀元前にはありませんでしたね。一応、その頃にも同じような考えはありましたが」
その言葉を聞いてディーナはむしろ安心していた。
エクラ教は千年以上の歴史を持つだろうが、星の記憶に比べればごく短い期間の話だ。
当たり前じゃないか。エクラ教を作ったのは――人間なのだから。
「お答えありがとうございます。守護者として生きて死ぬには十分な答えをいただきました」
エクラは存在するのだろう。そしてそれは、与えられている権能と役割による違いにすぎない。
光の神エクラとは、人のためにある神だ。人のために――人がそうあれかしと祈った神の形。
そしてその祈りの記憶は、大精霊という総体にとって無意味ではないと悟った。
ならば何も問題はない。これまでと何も変わらない。すべての祈りは、祈る者にとって価値ある行いなのだから。
「――星の光の名の下に、汝、ディーナ・フェルミに告げる。その魂の輝きを力と変え、星の救世主となる覚悟はあるか?」
大精霊の作る光の結界の中で、ディーナは星神器に手を伸ばす。
「エクラ教徒は人の使徒、エクラの司祭は人の守護者。人と世界を守るため、私は守護者の力を求めます」
「契約を受理します。星と英雄の記憶を以て、ここに神の力の一端を授けん。目覚めよ、ウコンバサラ!」
星の記憶石の輝きを浴びて、星神器が色づいていく。
「ここに誓いは結ばれた。切実なる守護者よ、あなたの救世に期待します」
これは力であり、答えでもある。
ディーナは安堵と覚悟を胸に、もう一度神の前に跪いた。
(執筆:神宮寺飛鳥)
(文責:フロンティアワークス)
(文責:フロンティアワークス)
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アリア・セリウス(ka6424) 種族:人間(クリムゾンウェスト) クラス:闘狩人(エンフォーサー) 「守護者」取得日:2018/10/03 「守護者武器」:[SW]星神器「ロンギヌス」 ●「守護者」への表明 「必滅は世の理。だからこそ、終焉の先へ、新しい理想へと導く為に」 |
●「守護者」契約(クリックすると、下にノベルが展開されます)
「それでは始めましょうか、契約を」
ハンターズ・ソサエティ訓練場に設置された契約の間に、今日も一人のハンターが訪れた。
大精霊クリムゾンウェストを前に、アリア・セリウス(ka6424)は静かに頷く。
「私が望むのは“必滅”の理を秘めた星神器……ロンギヌスよ」
今はまだ何の色も持たない、純白の槍。
それはあらゆるものを滅ぼすという伝承より再現されたものだという。
「明日が来るとは限らない。明けない夜だってあるかもしれない。命は太陽のように何時だって限られていて、どんなものもいずれは滅びて消えてしまう」
閉ざされた瞼の裏側に映るのは、一度は滅び去ったというクリムゾンウェストの歴史。
世界は邪神によって破壊された。そこには今と変わらない……いや、今以上の高度な文明が存在したはずだ。
神霊樹ライブラリの中で戦ったハンター達の中に、アリアもいた。そしてそこで、圧倒的な滅びに打ちのめされた。
「夢の中とはいえ、仲間を喪った恐怖と……あの返り血を浴びた感触は忘れられないわ」
「邪神ファナティックブラッドとはそういうものです」
「そうね……。避けられない滅び、必ず訪れる別れ。邪神との闘いは、そういうものの連続だと思うの。今を生きる私たちの命さえ……ああなっても何も不思議はないわ」
まさに今、世界は邪神との闘いに挑もうとしている。
そしてそうなれば、神霊樹に刻まれた記憶と同じように――いや。この歴史そのものが、ただの記憶に変わってしまうのだろうか。
「儚い夢のようなものよね――でも、だからこそ、終わってしまった命が賭した想いを受け継ぎたいの」
アリアの言葉を大精霊はじっと押し黙って聞いていた。
「私には、消えていった者たちを理解することはできません」
そしてぽつりぽつりと、呟くように語り始める。
「もうなくなってしまったものを受け継ぐことは難しい。ヒトは結局、忘れてしまいますからね」
人類の時間単位は極めて短い。
古代に何があったかなんて簡単に忘れてしまった。
どんな苦しみがあり、どんな喜びがあっったのか……。
そんな終焉の中で、誰がどのように生きようとしたのか……。
「アリア。あなたは忘れてしまったものを受け継げるというのですか?」
少女は思案する。難しい問いかけだ。
「正直に言うと……わからないわ。私にその資格があるのかさえ、誰にも証明できないもの」
少なくとも、何かを受け継ぐということについて今のアリアは答えを有していない。
「けれどね、しなければいけないことはわかるわ。それは、終焉の先へと進むこと」
世界は一度滅んでいる。今もその傷は言えず、星の大半は闇に覆われたままだ。
結論は既に出ている。人類は敗北した。世界は敗北した。それもわかっている。
「それでも、私達は生きているわ。そして生きているからには、理想を求める義務があると思うの」
終わらない夢などない。
滅びの痕跡に僅かに残された今生という夢も、いつかは終わるかもしれない。
それでもこの「今」は、ずっと昔の誰かが心から欲し、手に入れられなかった「今」なのだ。
「……重いわよね。でも、繰り返してはいけないのよ……もう」
「その為に力を欲すると?」
「すべての命に終わりがあるというのなら、私は必滅を携えましょう。終わりを否定する力こそ、我が願い。この槍のもたらす必滅の先はあるのだと、魂を継承して、想いを繋いでみせる」
胸に手を当て、少女が微笑む。
大精霊はその答えに頷きを返した。
「いいでしょう。あなたの在り方を理解しました。その魂、今一度確かめましょう」
大精霊が契約の陣を展開し、世界が赤い光に包まれていく。
「――星の光の名の下に、汝、アリア・セリウスに告げる。その魂の輝きを力と変え、星の救世主となる覚悟はあるか?」
「明日を求めるが為に、絶望の闇夜を滅す月光として――全てが終焉を迎えても、明日への憧憬の象徴となること、ここに誓うわ」
大精霊の差し伸べる手を自らの手を重ね、星神器に指先が触れる。
「契約を受理します。星と英雄の記憶を以て、ここに神の力の一端を授けん。目覚めよ、ロンギヌス!」
星の記憶石の輝きが星神器を目覚めさせる。
眩く、そして暖かい光を掴み取った瞬間、滅びの槍は少女の色に染まった。
「ここに誓いは結ばれた。月光なる守護者よ、あなたの救世に期待します」
神槍の切っ先に移り込む自らの瞳に、アリアは遠い過去を見た。
「この夢を続けましょう。祈り、誇り、憧れ……語り継がれる未来のために」
滅びから逃れる術など誰にもわからない。
それでも生きるしかない。
生き続けること、そして走り続けること。
それが忘れられてしまった何かに手向けられる、たったひとつの歌なのだから。
ハンターズ・ソサエティ訓練場に設置された契約の間に、今日も一人のハンターが訪れた。
大精霊クリムゾンウェストを前に、アリア・セリウス(ka6424)は静かに頷く。
「私が望むのは“必滅”の理を秘めた星神器……ロンギヌスよ」
今はまだ何の色も持たない、純白の槍。
それはあらゆるものを滅ぼすという伝承より再現されたものだという。
「明日が来るとは限らない。明けない夜だってあるかもしれない。命は太陽のように何時だって限られていて、どんなものもいずれは滅びて消えてしまう」
閉ざされた瞼の裏側に映るのは、一度は滅び去ったというクリムゾンウェストの歴史。
世界は邪神によって破壊された。そこには今と変わらない……いや、今以上の高度な文明が存在したはずだ。
神霊樹ライブラリの中で戦ったハンター達の中に、アリアもいた。そしてそこで、圧倒的な滅びに打ちのめされた。
「夢の中とはいえ、仲間を喪った恐怖と……あの返り血を浴びた感触は忘れられないわ」
「邪神ファナティックブラッドとはそういうものです」
「そうね……。避けられない滅び、必ず訪れる別れ。邪神との闘いは、そういうものの連続だと思うの。今を生きる私たちの命さえ……ああなっても何も不思議はないわ」
まさに今、世界は邪神との闘いに挑もうとしている。
そしてそうなれば、神霊樹に刻まれた記憶と同じように――いや。この歴史そのものが、ただの記憶に変わってしまうのだろうか。
「儚い夢のようなものよね――でも、だからこそ、終わってしまった命が賭した想いを受け継ぎたいの」
アリアの言葉を大精霊はじっと押し黙って聞いていた。
「私には、消えていった者たちを理解することはできません」
そしてぽつりぽつりと、呟くように語り始める。
「もうなくなってしまったものを受け継ぐことは難しい。ヒトは結局、忘れてしまいますからね」
人類の時間単位は極めて短い。
古代に何があったかなんて簡単に忘れてしまった。
どんな苦しみがあり、どんな喜びがあっったのか……。
そんな終焉の中で、誰がどのように生きようとしたのか……。
「アリア。あなたは忘れてしまったものを受け継げるというのですか?」
少女は思案する。難しい問いかけだ。
「正直に言うと……わからないわ。私にその資格があるのかさえ、誰にも証明できないもの」
少なくとも、何かを受け継ぐということについて今のアリアは答えを有していない。
「けれどね、しなければいけないことはわかるわ。それは、終焉の先へと進むこと」
世界は一度滅んでいる。今もその傷は言えず、星の大半は闇に覆われたままだ。
結論は既に出ている。人類は敗北した。世界は敗北した。それもわかっている。
「それでも、私達は生きているわ。そして生きているからには、理想を求める義務があると思うの」
終わらない夢などない。
滅びの痕跡に僅かに残された今生という夢も、いつかは終わるかもしれない。
それでもこの「今」は、ずっと昔の誰かが心から欲し、手に入れられなかった「今」なのだ。
「……重いわよね。でも、繰り返してはいけないのよ……もう」
「その為に力を欲すると?」
「すべての命に終わりがあるというのなら、私は必滅を携えましょう。終わりを否定する力こそ、我が願い。この槍のもたらす必滅の先はあるのだと、魂を継承して、想いを繋いでみせる」
胸に手を当て、少女が微笑む。
大精霊はその答えに頷きを返した。
「いいでしょう。あなたの在り方を理解しました。その魂、今一度確かめましょう」
大精霊が契約の陣を展開し、世界が赤い光に包まれていく。
「――星の光の名の下に、汝、アリア・セリウスに告げる。その魂の輝きを力と変え、星の救世主となる覚悟はあるか?」
「明日を求めるが為に、絶望の闇夜を滅す月光として――全てが終焉を迎えても、明日への憧憬の象徴となること、ここに誓うわ」
大精霊の差し伸べる手を自らの手を重ね、星神器に指先が触れる。
「契約を受理します。星と英雄の記憶を以て、ここに神の力の一端を授けん。目覚めよ、ロンギヌス!」
星の記憶石の輝きが星神器を目覚めさせる。
眩く、そして暖かい光を掴み取った瞬間、滅びの槍は少女の色に染まった。
「ここに誓いは結ばれた。月光なる守護者よ、あなたの救世に期待します」
神槍の切っ先に移り込む自らの瞳に、アリアは遠い過去を見た。
「この夢を続けましょう。祈り、誇り、憧れ……語り継がれる未来のために」
滅びから逃れる術など誰にもわからない。
それでも生きるしかない。
生き続けること、そして走り続けること。
それが忘れられてしまった何かに手向けられる、たったひとつの歌なのだから。
(執筆:神宮寺飛鳥)
(文責:フロンティアワークス)
(文責:フロンティアワークス)
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夢路 まよい(ka1328) 種族:人間(リアルブルー) クラス:魔術師(マギステル) マギステル「守護者」取得日:2019/01/24 ●「守護者」への表明 「何かを護るのに、それを好きっていう以外の理由は要らないよ」 |
●「守護者」契約(クリックすると、下にノベルが展開されます)
「なぜ、大精霊との契約を前にお茶を飲む風習があるんだ?」
リアルブルー大精霊の疑問は尤もである。
夢路 まよい(ka1328)は契約の前にお茶会を希望した。
そういうこともあるという話になっているので、契約の間にはいつの間にか折り畳み式に椅子やテーブルが配備されるようになっていた。希望すれば茶菓子も出るらしい。
ここを利用するのは英雄と呼ぶべき連中なので、お茶菓子出して満足してくれるのならばソサエティ的にもそれでいいのだろうが。
「やっぱりお話をする時には、ゆっくりできた方がいいかなって。お口に合わなかったかな?」
「いや。まあ、僕も今更神様扱いされるのもアレだし、構わないよ」
「よかった。そういえば以前ナディアとこうやってお茶した時、ナディアは邪神と戦い続けたらハンターに犠牲が出続けることを心配してくれたっけ」
ついこの間のような気も、とても古く懐かしい記憶のような気もする。
実際問題、間に色々な戦いがあったので、懐かしむのが正解だろうか。
「その時、私は答えたわ。正しい道を選ぼうっていうんじゃなくて、自分がこれだって思う道こそ正しいんだって。そもそも何で私がこの道だって思ったのかって話になるけど、答えは簡単だよ。私がこの世界を好きだから」
「君はリアルブルー人なのにかい?」
「あら、わかるの? ……って、大精霊だものね、当然か。あなたの言う通り、私はリアルブルーからクリムゾンウェストに転移してきたんだ。リアルブルーに居た頃、私は狭い世界で生きていたけど、クリムゾンウェストに出てきて世界の広がりを知って……それから、この世界のことが大好きになったんだ」
まよいは世間知らずだった。文字通りの意味で、そもそも見聞きをしたことがなく、世間を知らなかった。
クリムゾンウェストに転移した時も、絵本の世界に入り込むことができたのだとあっさり受け入れたほとだ。
自分を取り巻く環境に、良くも悪くも無頓着だった。そんなまよいを、仲間との出会いや冒険が少しずつ変えていった。
「転移でリアルブルーにも戦いに赴くようになって、リアルブルーの世界の外にも広がりがあって、クリムゾンウェストと続いた先にある世界であることを知ったから……勿論、リアルブルーのことだって好きだからね。そこは安心してね?」
「生憎、人に嫌われることを気にするような性分じゃないからね。安心してもらっていい」
「うわ?ひねくれ屋さんなんだね?」
「その通りさ。でも、君の話には共感するところもある。僕も狭い見識に囚われていた者だからね」
「大精霊って、世界のすべてを観測する存在なのよね? それなのに、見識が狭いなんてことあるのかしら?」
「ついこの間まで何でもわかっているつもりになっていた身なので解説するのは恥ずかしいんだけど……そうだな。僕と君の共通項は、これかな」
少年が取り出したのは、一冊の文庫本だ。古本なのか表紙は薄汚れており、180円という値札が張られている。
「僕はすべてを観測する存在だ。ただ、その観測は目で見ただけに過ぎない」
「わかるわ。知識と体験って、全然別物だものね。現実は絵本ほど甘くも残酷でもないし、もっとずっと広がっているもの!」
まよいの言葉に、少年は穏やかな笑みを返す。
「理解しなければ、憎むことも好きになることもできないからね」
「そうだね。私は世界を知って、好きになった。好きなものを自らの手で護りたい……それって、不自然な気持ちかな?」
「いいや、適切だよ。僕はそもそも、君との契約に不満はないんだ。君の行動理念は実に真っすぐだからね」
「それは嬉しいけど、ならどうして対話の時間を? もしかしてお茶会を楽しみにしてくれたのかしら?」
「半分正解かな。もしもナディアなら、こうしただろうなって思ったんだ」
カップの中に揺らめくお茶を飲み干し、少年は席を立つ。
「君は本当は僕ではなく、ナディアと契約を結ぶべきだった。代理契約で申し訳ない」
「そんなこと気にしてたの? さっきも言ったけど、私はあなたの事も好きよ。それに、ナディアはきっと目を覚ますから。それまで一緒に頑張りましょう」
席を立ったまよいが手を差し伸べると、少年がその掌を握り返す。
「――星の光の名の下に、汝、夢路 まよいに告げる。その魂の輝きを力と変え、星の救世主となる覚悟はあるか?」
「もちろん! 私は私の好きを裏切らない、それだけは確かだよ」
「契約を受理する。星と英雄の記憶を以て、ここに神の力の一端を授けん。目覚めよ、ガーディアン!」
星の記憶石が砕け、青い光が儀式の間を飲み込んでいく。
そしてその光は迷いの身体に吸い込まれるように消えていった。
「ここに誓いは結ばれた。晴天なる守護者よ、君の救世に期待しよう」
「もう契約終了? ピカ?っとして驚いたけど、けっこうあっけないんだね?」
「いやまあ、一応並の生物では耐えられない大儀式なんだけどね……」
少年が苦笑を、そして少女が満面の笑みを浮かべる。
「まよい。僕はナディアに借りがある。僕を生かしてくれた彼女には、もう一度笑ってほしいんだ」
「いいよ。その願いなら、私がちゃんと叶えてあげる♪」
繋いだ手を両手で包むように握り締め、少女は少年の顔を覗き込む。
「何かを護るのに、それを好きっていう以外の理由は要らないよ。あなただって、そうなんだからね?」
澄み切った空のような青い瞳に、少年の眼差しが映り込む。
契約の間を、爽やかな風が吹き抜けていった。
リアルブルー大精霊の疑問は尤もである。
夢路 まよい(ka1328)は契約の前にお茶会を希望した。
そういうこともあるという話になっているので、契約の間にはいつの間にか折り畳み式に椅子やテーブルが配備されるようになっていた。希望すれば茶菓子も出るらしい。
ここを利用するのは英雄と呼ぶべき連中なので、お茶菓子出して満足してくれるのならばソサエティ的にもそれでいいのだろうが。
「やっぱりお話をする時には、ゆっくりできた方がいいかなって。お口に合わなかったかな?」
「いや。まあ、僕も今更神様扱いされるのもアレだし、構わないよ」
「よかった。そういえば以前ナディアとこうやってお茶した時、ナディアは邪神と戦い続けたらハンターに犠牲が出続けることを心配してくれたっけ」
ついこの間のような気も、とても古く懐かしい記憶のような気もする。
実際問題、間に色々な戦いがあったので、懐かしむのが正解だろうか。
「その時、私は答えたわ。正しい道を選ぼうっていうんじゃなくて、自分がこれだって思う道こそ正しいんだって。そもそも何で私がこの道だって思ったのかって話になるけど、答えは簡単だよ。私がこの世界を好きだから」
「君はリアルブルー人なのにかい?」
「あら、わかるの? ……って、大精霊だものね、当然か。あなたの言う通り、私はリアルブルーからクリムゾンウェストに転移してきたんだ。リアルブルーに居た頃、私は狭い世界で生きていたけど、クリムゾンウェストに出てきて世界の広がりを知って……それから、この世界のことが大好きになったんだ」
まよいは世間知らずだった。文字通りの意味で、そもそも見聞きをしたことがなく、世間を知らなかった。
クリムゾンウェストに転移した時も、絵本の世界に入り込むことができたのだとあっさり受け入れたほとだ。
自分を取り巻く環境に、良くも悪くも無頓着だった。そんなまよいを、仲間との出会いや冒険が少しずつ変えていった。
「転移でリアルブルーにも戦いに赴くようになって、リアルブルーの世界の外にも広がりがあって、クリムゾンウェストと続いた先にある世界であることを知ったから……勿論、リアルブルーのことだって好きだからね。そこは安心してね?」
「生憎、人に嫌われることを気にするような性分じゃないからね。安心してもらっていい」
「うわ?ひねくれ屋さんなんだね?」
「その通りさ。でも、君の話には共感するところもある。僕も狭い見識に囚われていた者だからね」
「大精霊って、世界のすべてを観測する存在なのよね? それなのに、見識が狭いなんてことあるのかしら?」
「ついこの間まで何でもわかっているつもりになっていた身なので解説するのは恥ずかしいんだけど……そうだな。僕と君の共通項は、これかな」
少年が取り出したのは、一冊の文庫本だ。古本なのか表紙は薄汚れており、180円という値札が張られている。
「僕はすべてを観測する存在だ。ただ、その観測は目で見ただけに過ぎない」
「わかるわ。知識と体験って、全然別物だものね。現実は絵本ほど甘くも残酷でもないし、もっとずっと広がっているもの!」
まよいの言葉に、少年は穏やかな笑みを返す。
「理解しなければ、憎むことも好きになることもできないからね」
「そうだね。私は世界を知って、好きになった。好きなものを自らの手で護りたい……それって、不自然な気持ちかな?」
「いいや、適切だよ。僕はそもそも、君との契約に不満はないんだ。君の行動理念は実に真っすぐだからね」
「それは嬉しいけど、ならどうして対話の時間を? もしかしてお茶会を楽しみにしてくれたのかしら?」
「半分正解かな。もしもナディアなら、こうしただろうなって思ったんだ」
カップの中に揺らめくお茶を飲み干し、少年は席を立つ。
「君は本当は僕ではなく、ナディアと契約を結ぶべきだった。代理契約で申し訳ない」
「そんなこと気にしてたの? さっきも言ったけど、私はあなたの事も好きよ。それに、ナディアはきっと目を覚ますから。それまで一緒に頑張りましょう」
席を立ったまよいが手を差し伸べると、少年がその掌を握り返す。
「――星の光の名の下に、汝、夢路 まよいに告げる。その魂の輝きを力と変え、星の救世主となる覚悟はあるか?」
「もちろん! 私は私の好きを裏切らない、それだけは確かだよ」
「契約を受理する。星と英雄の記憶を以て、ここに神の力の一端を授けん。目覚めよ、ガーディアン!」
星の記憶石が砕け、青い光が儀式の間を飲み込んでいく。
そしてその光は迷いの身体に吸い込まれるように消えていった。
「ここに誓いは結ばれた。晴天なる守護者よ、君の救世に期待しよう」
「もう契約終了? ピカ?っとして驚いたけど、けっこうあっけないんだね?」
「いやまあ、一応並の生物では耐えられない大儀式なんだけどね……」
少年が苦笑を、そして少女が満面の笑みを浮かべる。
「まよい。僕はナディアに借りがある。僕を生かしてくれた彼女には、もう一度笑ってほしいんだ」
「いいよ。その願いなら、私がちゃんと叶えてあげる♪」
繋いだ手を両手で包むように握り締め、少女は少年の顔を覗き込む。
「何かを護るのに、それを好きっていう以外の理由は要らないよ。あなただって、そうなんだからね?」
澄み切った空のような青い瞳に、少年の眼差しが映り込む。
契約の間を、爽やかな風が吹き抜けていった。
(執筆:神宮寺飛鳥)
(文責:フロンティアワークス)
(文責:フロンティアワークス)
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Uisca Amhran(ka0754) 種族:エルフ クラス:聖導士(クルセイダー) サブクラス「守護者」取得日:2019/01/24 ●「守護者」への表明 「最初から相手を否定したくはないから…慈愛の心を忘れずにいたい」 |
●「守護者」契約(クリックすると、下にノベルが展開されます)
「私は、歪虚が本当はどういう存在のものなのか分からないまま、ただすべて滅ぼすことに懐疑の想いを抱いてきたのです」
Uisca Amhran(ka0754)は歴戦の勇士だ。
これまでに数多くの戦場を駆け抜け、その中で多くの仲間を救い、そして歪虚を滅ぼしてきた。
そんなUiscaがいざ星の守護者として契約を結ばんとした時に選んだ、迷いの言葉。
「弱者の想いに寄り添おうとしたクリピクロウズさんや、ノゾミちゃんを命がけで守ったネル・ベルさん、歪虚でありながら私たちと共に人類の為に戦ったカレンデュラさん。そして、元狂気王でありながら今こうして力を貸してくれるベアトリクスさん……これまで会った多くの歪虚さんたちが、歪虚すべてが単純な悪ではないと証明してくれました」
実際に、そういったケースは歴史上にも稀に存在した。
王道ではないだろう。特に、実際に歪虚の被害により大切な何かを失った者にとっては、認知しがたい歴史だ。
ともすれば、「巫女」であり「エルフ」でもあるUiscaにとっては、この上なく矛盾した言葉かもしれない。
「人類にもよい人もいれば悪い人もいる……いえ、誰しもよい事もすれば悪い事もする。歪虚だって「歪虚」だから滅ぼすと決めつけるのではなく個々の行動から相手を見極めなくてはならないんです」
「難しい話ねぇ。だって、別に歪虚は絶対悪ではないもの」
「ベアトリクスさんも、そのようにお考えなのですか?」
「ええ。だって善悪とは主観的なもの、人間にとっての都合だものね。ただ――歪虚とヒトは、単に相容れないというだけで」
「それも……良くわかります」
Uiscaが目にしてきた現実は、どれもそんなに生易しくはなかった。
歪虚という存在は、生命に反するものだ。死によって生まれ、負を以て生を呪う。
別に彼らがそれと望まなくても、本能的に生物とは相容れない設計だ。
だから、彼女らの願いが正しくとも、その祈りが実を結ぶことはなかった。
「頭ではわかっているのよね。……でも、悪と断じられないものを討つのは、やっぱり苦しいかしら?」
「そう……ですね。どこかで答えを求めていたのだと思います。でもやはり、簡単ではありませんでした」
過去の世界、神霊樹の記憶に答えを求めた事もあった。
世界の成り立ち、古の掟に通じる六大龍でさえ、Uiscaの迷いに明確な答えを出すことはできなかった。
「しかし、そこで白龍さまはおっしゃったのです。ヒトの存続を願い、深く愛し、常にヒトと寄り添うと」
歪虚と生物の対立は根深い。それは、自然の掟に似ている。
肉食動物が草食動物を喰らう事に理由はない。単にそのようにできているからで、それをどうにかするのは神様の領域のお話だ。
世界に生きる、自然界に在るものの一つに過ぎないUiscaにとって、そも事象そのものを解き明かし、答えを得るということはおこがましいのではないか。
「だから私は歪虚を滅ぼすのではなく、白龍さまと同じようにヒトを愛しヒトを守る為に守護者の力を使いたいと思っているのです」
「明瞭ね。答えの得られぬ敵を倒すためではなく、明確に守るべきものを守るために戦う……でも、その迷いにはいつか決着が必要になるはずよ」
予感はしているはずだ。その信念は諸刃で出来ていると。
「善悪を見極めた結果、それがもしも善であるとあなたの信念が認めた時、あなたはその歪虚をどうするの?」
「それは…………」
まだ答えが出ていない。
結局、クリピクロウズは倒すしかなかった。倒すことが、彼女を救う事にもなっていたから、それはいい。
だが……倒さなくても済む可能性があったら?
「少し言い方を変えましょう。あなたがあなた自身の行いを正しいと思えない時、あなたはそれでも人類を守れるのかしら?」
唇を開き――そして結んだ。
そこまでは、答えを持ち込めていない。
「私はただ……最初から相手を否定したくないんです。その為に、慈愛の心を忘れたくないって……」
「少し意地悪な話になるんだけどね。私は、愛という感情をあまり信じていないの。だって私は一度、世界を愛する責務を投げ出した女だもの」
ベアトリクスは眉を顰め、苦笑する。
「どうしてか分かる? 私はね、自分を愛せなかったのよ。自分の行いを、正しいと信じられなくなった。それが結局はトドメだったと思うわ」
だから思うのだ。愛とはあまりにも鋭い。他人も、自分も、容易に殺傷せしめるほどに。
「もしも自分を正しいと思えなくなった時は、それでも自分を愛せる理由を探しなさい。あなたを愛してくれる人を求めなさい。おばあちゃんからのお小言として、覚えておいてね」
優しくUiscaの肩を叩き、指先で金色の髪を梳く。
確信があるのだ。この子はきっと――真実を前に、試練を受ける定めだと。
「――星の光の名の下に、汝、Uisca Amhranに告げる。その魂の輝きを力と変え、星の救世主となる覚悟はあるか?」
「はい。ヒトの存続を願い、守護すると誓います」
「契約を受理します。星と英雄の記憶を以て、ここに神の力の一端を授けん。目覚めよ、ガーディアン!」
緑色の輝きが世界を眩く照らし出す。
そして星の記憶石は光の粒となり、Uiscaの身体へと吸い込まれていった。
「ここに誓いは結ばれた。慈愛なる守護者よ、あなたの救世に期待します」
そう言って、ベアトリクスは優しくUiscaの身体を抱きしめた。
「忘れないで。何かを愛するためには、自分を赦すことも必要なのだと」
迷いと覚悟がどのような答えを導き出すのか。
その時はきっと、そう遠くない未来に――。
Uisca Amhran(ka0754)は歴戦の勇士だ。
これまでに数多くの戦場を駆け抜け、その中で多くの仲間を救い、そして歪虚を滅ぼしてきた。
そんなUiscaがいざ星の守護者として契約を結ばんとした時に選んだ、迷いの言葉。
「弱者の想いに寄り添おうとしたクリピクロウズさんや、ノゾミちゃんを命がけで守ったネル・ベルさん、歪虚でありながら私たちと共に人類の為に戦ったカレンデュラさん。そして、元狂気王でありながら今こうして力を貸してくれるベアトリクスさん……これまで会った多くの歪虚さんたちが、歪虚すべてが単純な悪ではないと証明してくれました」
実際に、そういったケースは歴史上にも稀に存在した。
王道ではないだろう。特に、実際に歪虚の被害により大切な何かを失った者にとっては、認知しがたい歴史だ。
ともすれば、「巫女」であり「エルフ」でもあるUiscaにとっては、この上なく矛盾した言葉かもしれない。
「人類にもよい人もいれば悪い人もいる……いえ、誰しもよい事もすれば悪い事もする。歪虚だって「歪虚」だから滅ぼすと決めつけるのではなく個々の行動から相手を見極めなくてはならないんです」
「難しい話ねぇ。だって、別に歪虚は絶対悪ではないもの」
「ベアトリクスさんも、そのようにお考えなのですか?」
「ええ。だって善悪とは主観的なもの、人間にとっての都合だものね。ただ――歪虚とヒトは、単に相容れないというだけで」
「それも……良くわかります」
Uiscaが目にしてきた現実は、どれもそんなに生易しくはなかった。
歪虚という存在は、生命に反するものだ。死によって生まれ、負を以て生を呪う。
別に彼らがそれと望まなくても、本能的に生物とは相容れない設計だ。
だから、彼女らの願いが正しくとも、その祈りが実を結ぶことはなかった。
「頭ではわかっているのよね。……でも、悪と断じられないものを討つのは、やっぱり苦しいかしら?」
「そう……ですね。どこかで答えを求めていたのだと思います。でもやはり、簡単ではありませんでした」
過去の世界、神霊樹の記憶に答えを求めた事もあった。
世界の成り立ち、古の掟に通じる六大龍でさえ、Uiscaの迷いに明確な答えを出すことはできなかった。
「しかし、そこで白龍さまはおっしゃったのです。ヒトの存続を願い、深く愛し、常にヒトと寄り添うと」
歪虚と生物の対立は根深い。それは、自然の掟に似ている。
肉食動物が草食動物を喰らう事に理由はない。単にそのようにできているからで、それをどうにかするのは神様の領域のお話だ。
世界に生きる、自然界に在るものの一つに過ぎないUiscaにとって、そも事象そのものを解き明かし、答えを得るということはおこがましいのではないか。
「だから私は歪虚を滅ぼすのではなく、白龍さまと同じようにヒトを愛しヒトを守る為に守護者の力を使いたいと思っているのです」
「明瞭ね。答えの得られぬ敵を倒すためではなく、明確に守るべきものを守るために戦う……でも、その迷いにはいつか決着が必要になるはずよ」
予感はしているはずだ。その信念は諸刃で出来ていると。
「善悪を見極めた結果、それがもしも善であるとあなたの信念が認めた時、あなたはその歪虚をどうするの?」
「それは…………」
まだ答えが出ていない。
結局、クリピクロウズは倒すしかなかった。倒すことが、彼女を救う事にもなっていたから、それはいい。
だが……倒さなくても済む可能性があったら?
「少し言い方を変えましょう。あなたがあなた自身の行いを正しいと思えない時、あなたはそれでも人類を守れるのかしら?」
唇を開き――そして結んだ。
そこまでは、答えを持ち込めていない。
「私はただ……最初から相手を否定したくないんです。その為に、慈愛の心を忘れたくないって……」
「少し意地悪な話になるんだけどね。私は、愛という感情をあまり信じていないの。だって私は一度、世界を愛する責務を投げ出した女だもの」
ベアトリクスは眉を顰め、苦笑する。
「どうしてか分かる? 私はね、自分を愛せなかったのよ。自分の行いを、正しいと信じられなくなった。それが結局はトドメだったと思うわ」
だから思うのだ。愛とはあまりにも鋭い。他人も、自分も、容易に殺傷せしめるほどに。
「もしも自分を正しいと思えなくなった時は、それでも自分を愛せる理由を探しなさい。あなたを愛してくれる人を求めなさい。おばあちゃんからのお小言として、覚えておいてね」
優しくUiscaの肩を叩き、指先で金色の髪を梳く。
確信があるのだ。この子はきっと――真実を前に、試練を受ける定めだと。
「――星の光の名の下に、汝、Uisca Amhranに告げる。その魂の輝きを力と変え、星の救世主となる覚悟はあるか?」
「はい。ヒトの存続を願い、守護すると誓います」
「契約を受理します。星と英雄の記憶を以て、ここに神の力の一端を授けん。目覚めよ、ガーディアン!」
緑色の輝きが世界を眩く照らし出す。
そして星の記憶石は光の粒となり、Uiscaの身体へと吸い込まれていった。
「ここに誓いは結ばれた。慈愛なる守護者よ、あなたの救世に期待します」
そう言って、ベアトリクスは優しくUiscaの身体を抱きしめた。
「忘れないで。何かを愛するためには、自分を赦すことも必要なのだと」
迷いと覚悟がどのような答えを導き出すのか。
その時はきっと、そう遠くない未来に――。
(執筆:神宮寺飛鳥)
(文責:フロンティアワークス)
(文責:フロンティアワークス)
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アウレール・V・ブラオラント(ka2531) 種族:人間(クリムゾンウェスト) クラス:闘狩人(エンフォーサー) サブクラス「守護者」取得日:2019/01/24 ●「守護者」への表明 「素朴な願いほど、最後まで叶えるためには力が必要なんだ」 |
●「守護者」契約(クリックすると、下にノベルが展開されます)
「ケーキ持ってきたんだ。紅の奴も貰ってただろ。タルトとシュトレン、お茶にはリスペルン。こっちのものはあまり食べたことがないだろう、帝国土産だ」
アウレール・V・ブラオラント(ka2531)はそう言ってテーブルに手際よくカップを並べていく。
大精霊との契約でちょくちょく用いられるので、テーブルと椅子は契約の間に既に配備されており、それを利用する形だ。
「一応これも大儀式なんだけど、ハンターというのは実にカジュアルだな。それにしても量が多くないか?」
「だろう。一人じゃ食べ切れないから手伝ってくれ」
切り分けたシュトレンを更に乗せながら大精霊リアルブルーと向き合う。
「……私は、皆がこうして過ごせればそれでいい。美味いものを食べて、笑って、眠れば必ず明日が来る――そんな当たり前の日々を享受できるようにしたい」
椅子に腰かけ、少年はテーブルの上で両手を組む。
「力を求める理由を語る前に、少し話をしよう。私と、私を取り巻く世界の話だ」
全てを守りたいというのは大それた望みだろうか?
誰でも少しくらいは願った事があるだろう。人間には皆、そういう側面がある。理想や善意、そういった類の……。
だが、世界を知る度に少しずつ「皆」の範囲が広がっていく。
「家族、領民、国民、人類――思えば遠くへ来たものだ。今はこうして星の守護者として契約のテーブルについている。何とも大仰じゃあないか。精々、帝国の守護者くらいに落ち着くと思っていたが」
人間は所詮、既知の範疇でしか理想を語れない。
知らぬ存ぜぬ領域は、当人の主観では世界に存在しないも同然だ。
小さな願いを追いかけて旅を始めれば、地図はどんどん広がってしまう。
仲間との出会い。倒すべき敵との闘い。その手で救ったもの、確かに掴んだもの――壊したもの、握れなかった手。
「何度も思い知らされたよ。素朴な願いほど、最後まで叶えるためには力が必要なんだ」
「当然だ。その願いは、実際のところ荒唐無稽だ。人間には……いや、星の守護者であっても成立しない」
「無論、理解しているさ。この夢はきっとヒトの身に過ぎたものだと」
皆は守れない。それを願った子供たちが大人になるにつれて気づくべき、単純明快な真実だ。でも……。
「力不足を理由に切り捨てるのは容易い。だが一度それを許せば、行きつく先は何処だ? 百人の為に一人、千人の為に十人、万人の為に百人、十万億土へ至る頃には骸の山だ」
「しかし、結果的に多数は生存し、種の歴史は続く。クリムゾンウェスト人は一度そうやって生き方を決めているし、殆どの生物種にとって当たり前の判断と言えるだろう」
叱責するような意図ではない。大精霊はティーカップを傾けながら、吟味しているのだ。
「その理想は僕にとっても好ましい。だが、同じ想いを掲げ、しかし成し遂げられずに討たれた救世主を何人も知っている。人間にはそういう悪性もあるんだ」
「ああ……そこはなんというか、実に悩ましい。白状すると、私も答えを出せていない」
皆を守りたいというのは――なるほど、美しい願いだろう。
だが、人の総意がその美しさに応えられるとは限らない。
「これから僕たちは邪神ファナティックブラッドと戦う。恐らくその中で、君は答えを出さねばならない局面に至るだろう」
「その時になって都合よく答えが出せると断言はできないな。だがそれは、理想を捨てる理由にはならないよ」
絶対に辿り着けると保証されているから旅をするわけじゃない。
辿り着きたい場所があるから旅をするのだ。約束された到達点は、その時点で既に動機ではない。
「私には力が要る。誰も取りこぼさない為に。だがこの理想は一人で背負うには過ぎたもの、それも理解している。勘違いをするな、大精霊。私は何も一人でやろうってわけじゃない。ただ、その一翼でありたいと願うだけだ」
だからこそ、ガーディアンは複数名必要だ。
「それはお前にとっても同じ筈だ。要は分担してカバーできれば良いのだろう? クリムゾンウェストとリアルブルー、両方救うにはそれしかない。困難は分割せよ、とはそっちの言葉だったな」
「結局は人の善性を信じるんだね、君は」
「さてね。まさか、人類の総意を今すぐ変えて見せるなんてことは不可能だ。だが、そうさな……理想を分け合えると、そう思える友くらいは私にもいるのだ」
「なら、せいぜいやってみるといい。君は既にスタートラインに立っている」
お茶会は終わりだ。二人は契約陣の上に立ち、向き合う。
「契約前に一つ。私が守るのは“人”だ。か弱くも豊かに栄える、霊長と全ての命だ。星無くして人は生きられない。だがもし、星が人を害するならば世界の為に討つ」
「なるほど。星と世界は別か」
つまり、彼にとっての世界とは、人と、人が観測する範疇に存在する事象というわけだ。
大精霊が天を指さすと、瞬間、青い光が世界を塗り替えていく。
「――星の光の名の下に、汝、アウレール・V・ブラオラントに告げる。その魂の輝きを力と変え、星の救世主となる覚悟はあるか?」
「いつか星と人とが道を違える時、それまでは共に戦おう。誰も泣かない世界の為に」
「契約を受理する。星と英雄の記憶を以て、ここに神の力の一端を授けん。目覚めよ、ガーディアン!」
星の記憶石は砕け、光の粒となってアウレールの胸に吸い込まれていく。
そして儀式が終了すると、光のレイヤーをはがす様に契約の間は元通りになった。
「ここに誓いは結ばれた。白翼なる守護者よ、君の救世に期待する」
「これが守護者か……確かに力強いが、まだまだ人間の範疇じゃないか」
「そうだ。力はただ力、所詮は有限のもの。限界を超え、世界に轍を残すのは、想いとその在り方だろう」
そしてそれこそが、人という種族が有する力の源泉。
「気付いていないかもしれないので言っておくけど、君の願いには重大な欠陥がある」
「ほう」
「君は、君自身が“人間なんてもう守りたくない”と思ってしまうことを想定しているかい?」
願いを通すには、その願いそのものが真っすぐでなけらばならない。
己の胸の内から出ずるものが願いなら、それを捻じ曲げるのも自分自身だ。
「君は人間を守ることを、諦めないことを当然と考えすぎている。それは“悪”に対し、脆い。君自身のではなく、守るべき人々の“悪”に」
英雄も、救世主も、みんな同じ弱点に討たれた。
「君の守りたい世界(みんな)に、“悪”は含まれるのかい?」
美しければ美しいほど、血に染まった羽は醜く歪む。
今美しきものが、永遠にそうであるとは限らないように――。
潔白なものほど漆黒への答えが必要なのだと、神は言った。
アウレール・V・ブラオラント(ka2531)はそう言ってテーブルに手際よくカップを並べていく。
大精霊との契約でちょくちょく用いられるので、テーブルと椅子は契約の間に既に配備されており、それを利用する形だ。
「一応これも大儀式なんだけど、ハンターというのは実にカジュアルだな。それにしても量が多くないか?」
「だろう。一人じゃ食べ切れないから手伝ってくれ」
切り分けたシュトレンを更に乗せながら大精霊リアルブルーと向き合う。
「……私は、皆がこうして過ごせればそれでいい。美味いものを食べて、笑って、眠れば必ず明日が来る――そんな当たり前の日々を享受できるようにしたい」
椅子に腰かけ、少年はテーブルの上で両手を組む。
「力を求める理由を語る前に、少し話をしよう。私と、私を取り巻く世界の話だ」
全てを守りたいというのは大それた望みだろうか?
誰でも少しくらいは願った事があるだろう。人間には皆、そういう側面がある。理想や善意、そういった類の……。
だが、世界を知る度に少しずつ「皆」の範囲が広がっていく。
「家族、領民、国民、人類――思えば遠くへ来たものだ。今はこうして星の守護者として契約のテーブルについている。何とも大仰じゃあないか。精々、帝国の守護者くらいに落ち着くと思っていたが」
人間は所詮、既知の範疇でしか理想を語れない。
知らぬ存ぜぬ領域は、当人の主観では世界に存在しないも同然だ。
小さな願いを追いかけて旅を始めれば、地図はどんどん広がってしまう。
仲間との出会い。倒すべき敵との闘い。その手で救ったもの、確かに掴んだもの――壊したもの、握れなかった手。
「何度も思い知らされたよ。素朴な願いほど、最後まで叶えるためには力が必要なんだ」
「当然だ。その願いは、実際のところ荒唐無稽だ。人間には……いや、星の守護者であっても成立しない」
「無論、理解しているさ。この夢はきっとヒトの身に過ぎたものだと」
皆は守れない。それを願った子供たちが大人になるにつれて気づくべき、単純明快な真実だ。でも……。
「力不足を理由に切り捨てるのは容易い。だが一度それを許せば、行きつく先は何処だ? 百人の為に一人、千人の為に十人、万人の為に百人、十万億土へ至る頃には骸の山だ」
「しかし、結果的に多数は生存し、種の歴史は続く。クリムゾンウェスト人は一度そうやって生き方を決めているし、殆どの生物種にとって当たり前の判断と言えるだろう」
叱責するような意図ではない。大精霊はティーカップを傾けながら、吟味しているのだ。
「その理想は僕にとっても好ましい。だが、同じ想いを掲げ、しかし成し遂げられずに討たれた救世主を何人も知っている。人間にはそういう悪性もあるんだ」
「ああ……そこはなんというか、実に悩ましい。白状すると、私も答えを出せていない」
皆を守りたいというのは――なるほど、美しい願いだろう。
だが、人の総意がその美しさに応えられるとは限らない。
「これから僕たちは邪神ファナティックブラッドと戦う。恐らくその中で、君は答えを出さねばならない局面に至るだろう」
「その時になって都合よく答えが出せると断言はできないな。だがそれは、理想を捨てる理由にはならないよ」
絶対に辿り着けると保証されているから旅をするわけじゃない。
辿り着きたい場所があるから旅をするのだ。約束された到達点は、その時点で既に動機ではない。
「私には力が要る。誰も取りこぼさない為に。だがこの理想は一人で背負うには過ぎたもの、それも理解している。勘違いをするな、大精霊。私は何も一人でやろうってわけじゃない。ただ、その一翼でありたいと願うだけだ」
だからこそ、ガーディアンは複数名必要だ。
「それはお前にとっても同じ筈だ。要は分担してカバーできれば良いのだろう? クリムゾンウェストとリアルブルー、両方救うにはそれしかない。困難は分割せよ、とはそっちの言葉だったな」
「結局は人の善性を信じるんだね、君は」
「さてね。まさか、人類の総意を今すぐ変えて見せるなんてことは不可能だ。だが、そうさな……理想を分け合えると、そう思える友くらいは私にもいるのだ」
「なら、せいぜいやってみるといい。君は既にスタートラインに立っている」
お茶会は終わりだ。二人は契約陣の上に立ち、向き合う。
「契約前に一つ。私が守るのは“人”だ。か弱くも豊かに栄える、霊長と全ての命だ。星無くして人は生きられない。だがもし、星が人を害するならば世界の為に討つ」
「なるほど。星と世界は別か」
つまり、彼にとっての世界とは、人と、人が観測する範疇に存在する事象というわけだ。
大精霊が天を指さすと、瞬間、青い光が世界を塗り替えていく。
「――星の光の名の下に、汝、アウレール・V・ブラオラントに告げる。その魂の輝きを力と変え、星の救世主となる覚悟はあるか?」
「いつか星と人とが道を違える時、それまでは共に戦おう。誰も泣かない世界の為に」
「契約を受理する。星と英雄の記憶を以て、ここに神の力の一端を授けん。目覚めよ、ガーディアン!」
星の記憶石は砕け、光の粒となってアウレールの胸に吸い込まれていく。
そして儀式が終了すると、光のレイヤーをはがす様に契約の間は元通りになった。
「ここに誓いは結ばれた。白翼なる守護者よ、君の救世に期待する」
「これが守護者か……確かに力強いが、まだまだ人間の範疇じゃないか」
「そうだ。力はただ力、所詮は有限のもの。限界を超え、世界に轍を残すのは、想いとその在り方だろう」
そしてそれこそが、人という種族が有する力の源泉。
「気付いていないかもしれないので言っておくけど、君の願いには重大な欠陥がある」
「ほう」
「君は、君自身が“人間なんてもう守りたくない”と思ってしまうことを想定しているかい?」
願いを通すには、その願いそのものが真っすぐでなけらばならない。
己の胸の内から出ずるものが願いなら、それを捻じ曲げるのも自分自身だ。
「君は人間を守ることを、諦めないことを当然と考えすぎている。それは“悪”に対し、脆い。君自身のではなく、守るべき人々の“悪”に」
英雄も、救世主も、みんな同じ弱点に討たれた。
「君の守りたい世界(みんな)に、“悪”は含まれるのかい?」
美しければ美しいほど、血に染まった羽は醜く歪む。
今美しきものが、永遠にそうであるとは限らないように――。
潔白なものほど漆黒への答えが必要なのだと、神は言った。
(執筆:神宮寺飛鳥)
(文責:フロンティアワークス)
(文責:フロンティアワークス)
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狐中・小鳥(ka5484) 種族:人間(クリムゾンウェスト) クラス:舞刀士(ソードダンサー) 「守護者」取得日:2019/01/24 「守護者武器」:[SW]星神器「草薙剣」 ●「守護者」への表明 「ん、我、剣と共に行くもの、この剣と共に世界を…!」 |
●「守護者」契約(クリックすると、下にノベルが展開されます)
静かに狐中・小鳥(ka5484)を見つめてくる大精霊の視線に含まれるものが、何も読み取れないことに不安が湧き上がってきている。
しかし、それを考えたって仕方がないのだと、努めて意識を切り替える。
(ここはわたしの覚悟を示す場所なんだから)
契約前の大精霊、その意思や、力に左右されるモノであってはならない。
考えていた言葉を伝えるために、跳ねる鼓動を落ち着かせるために。小鳥は深く息を吸った。
「特に指定がないということで、契約は僕が担当するよ。さて、気持ちが定まったのなら話を聞こうか」
奥深くまで覗き込まれていたのだろうか、小さく息をのむ小鳥に向けられる、リアルブルー大精霊の無垢にもとれる視線。
気圧されそうな己を鼓舞して、小鳥は想いを紡ぐ。
「わたし……わたしは。アイドルとしてもハンターとしても、皆の役に立ちたい」
「アイドル……そいうのは、奏唱士のことかい? それならもうなってるわけだし、今のままでも叶うんじゃないのか?」
「それは違うよっ!」
無機質にも取れるほど感情が何も含まれていない、ただ事実を告げる大精霊の声音。その言葉に突き放されているようにも感じた小鳥は即座に否定の声をあげた。
「それはクラスとしての奏唱士だよ! わたしの考えるアイドルは、そんなものじゃないっ!」
大精霊の気分を害したらどうしようとか、契約が出来なかったらとか、そんな不安は全く頭をよぎらなかった。
「アイドルはね、皆を笑顔にする存在なんだよ!」
誰かが嬉しい時や楽しい時には、心が弾むような曲で周囲さえも巻き込んで盛り上げて。よりたくさんの笑顔をもたらす。
誰かが怒っている時や悲しい時には、心に寄り添えるような静かな曲で落ち着く空間を作り上げて。前を向き、笑顔に近づく切欠をつくる。
「歌も踊りも。それが上手ならもっといいと思うし、わたしももっと上手になるように頑張ってるけど」
上手く伝えるために言葉を選ぶ余裕なんてない。ただ、想いのたけをぶつけなきゃいけないと本能で感じとっていた。心に浮かぶままの言葉を声にしていく。
「皆を笑顔にする為の力を手に入れたい! 今よりもっと!」
「……それは君が、君の為に手に入れたいものだろう?」
対峙する大精霊の声はやはり平坦なもの。熱くなっていたことに気付いた小鳥は短く呼吸を挟んだ。声量は小さくなったけれど、その茶色の瞳に籠もる熱は変わらない。
「自分よりも。自分の手の届く範囲の皆の幸せの為。自分にできる最大限の事をする為」
想いをなぞるように声に出して、小鳥は小さく息をのむ。
「そうだね……皆を幸せにできるなら。わたしもきっと、それで幸せになると思う。そういう意味なら、わたしの為かもしれないね」
大精霊からの返事はない。続きを待たれている気がして、小鳥は笑顔を向けた。
「でも、それっていいことだよね? 笑顔が広がることも、幸せを感じる人が増えることも!」
だから胸を張れるよ!
「皆の為に、そしてわたしの為に! その為に契約を望む!」
そう言いきってはじめて、小鳥は大精霊の表情に変化を見つけた。
ゆっくりと、けれど確実に微笑みが形作られていく。
「勘違いしないでくれ。別にそれが悪いと言ってるわけじゃないんだ」
守護者とは、星の瞬きにも似ている。
その光は多くを照らし、暗澹とした世界で希望の光にもなるだろう。
「それをアイドルというのなら……なるほど、そうなのかもしれないね」
ハンターというのは面白い。誰もが同じ、“守護者”の話をしているのに。まるでフリガナが違うみたいだ。
「――星の光の名の下に、汝、狐中・小鳥に告げる。その魂の輝きを力と変え、星の救世主となる覚悟はあるか?」
「む、難しいことはわからないけどね?」
けれど、大精霊の微笑みが消えることはない。
「歌も、踊りも。勿論ハンターとして戦うことだって。出来ることは何でもするんだよっ」
「……契約を受理します。星と英雄の記憶を以て、ここに神の力の一端を授けん。目覚めよ、草薙剣!」
目の前に浮かぶ剣に触れ、小鳥は静かに剣を抜いた。光を反射するその純白の刃は、次第に温かな光を纏い始める。
「どうやら剣も君と共に踊りたいみたいだね。……ここに誓いは結ばれた。舞華なる守護者よ、君の救世に期待するよ」
大精霊の言葉を胸に刻むように目礼をした小鳥。
光の変化を見つめ続けてしばらく……もう一度、大精霊へと向き直る。
「この剣との最初の舞を、大精霊、あなたに捧げてもいい?」
「光栄だね。少し待ってくれないか? 今、お茶を用意する。何だか知らないけど、ここではそれが許されるらしい」
草薙剣を構える小鳥に、大精霊は笑いながら答えた。
しかし、それを考えたって仕方がないのだと、努めて意識を切り替える。
(ここはわたしの覚悟を示す場所なんだから)
契約前の大精霊、その意思や、力に左右されるモノであってはならない。
考えていた言葉を伝えるために、跳ねる鼓動を落ち着かせるために。小鳥は深く息を吸った。
「特に指定がないということで、契約は僕が担当するよ。さて、気持ちが定まったのなら話を聞こうか」
奥深くまで覗き込まれていたのだろうか、小さく息をのむ小鳥に向けられる、リアルブルー大精霊の無垢にもとれる視線。
気圧されそうな己を鼓舞して、小鳥は想いを紡ぐ。
「わたし……わたしは。アイドルとしてもハンターとしても、皆の役に立ちたい」
「アイドル……そいうのは、奏唱士のことかい? それならもうなってるわけだし、今のままでも叶うんじゃないのか?」
「それは違うよっ!」
無機質にも取れるほど感情が何も含まれていない、ただ事実を告げる大精霊の声音。その言葉に突き放されているようにも感じた小鳥は即座に否定の声をあげた。
「それはクラスとしての奏唱士だよ! わたしの考えるアイドルは、そんなものじゃないっ!」
大精霊の気分を害したらどうしようとか、契約が出来なかったらとか、そんな不安は全く頭をよぎらなかった。
「アイドルはね、皆を笑顔にする存在なんだよ!」
誰かが嬉しい時や楽しい時には、心が弾むような曲で周囲さえも巻き込んで盛り上げて。よりたくさんの笑顔をもたらす。
誰かが怒っている時や悲しい時には、心に寄り添えるような静かな曲で落ち着く空間を作り上げて。前を向き、笑顔に近づく切欠をつくる。
「歌も踊りも。それが上手ならもっといいと思うし、わたしももっと上手になるように頑張ってるけど」
上手く伝えるために言葉を選ぶ余裕なんてない。ただ、想いのたけをぶつけなきゃいけないと本能で感じとっていた。心に浮かぶままの言葉を声にしていく。
「皆を笑顔にする為の力を手に入れたい! 今よりもっと!」
「……それは君が、君の為に手に入れたいものだろう?」
対峙する大精霊の声はやはり平坦なもの。熱くなっていたことに気付いた小鳥は短く呼吸を挟んだ。声量は小さくなったけれど、その茶色の瞳に籠もる熱は変わらない。
「自分よりも。自分の手の届く範囲の皆の幸せの為。自分にできる最大限の事をする為」
想いをなぞるように声に出して、小鳥は小さく息をのむ。
「そうだね……皆を幸せにできるなら。わたしもきっと、それで幸せになると思う。そういう意味なら、わたしの為かもしれないね」
大精霊からの返事はない。続きを待たれている気がして、小鳥は笑顔を向けた。
「でも、それっていいことだよね? 笑顔が広がることも、幸せを感じる人が増えることも!」
だから胸を張れるよ!
「皆の為に、そしてわたしの為に! その為に契約を望む!」
そう言いきってはじめて、小鳥は大精霊の表情に変化を見つけた。
ゆっくりと、けれど確実に微笑みが形作られていく。
「勘違いしないでくれ。別にそれが悪いと言ってるわけじゃないんだ」
守護者とは、星の瞬きにも似ている。
その光は多くを照らし、暗澹とした世界で希望の光にもなるだろう。
「それをアイドルというのなら……なるほど、そうなのかもしれないね」
ハンターというのは面白い。誰もが同じ、“守護者”の話をしているのに。まるでフリガナが違うみたいだ。
「――星の光の名の下に、汝、狐中・小鳥に告げる。その魂の輝きを力と変え、星の救世主となる覚悟はあるか?」
「む、難しいことはわからないけどね?」
けれど、大精霊の微笑みが消えることはない。
「歌も、踊りも。勿論ハンターとして戦うことだって。出来ることは何でもするんだよっ」
「……契約を受理します。星と英雄の記憶を以て、ここに神の力の一端を授けん。目覚めよ、草薙剣!」
目の前に浮かぶ剣に触れ、小鳥は静かに剣を抜いた。光を反射するその純白の刃は、次第に温かな光を纏い始める。
「どうやら剣も君と共に踊りたいみたいだね。……ここに誓いは結ばれた。舞華なる守護者よ、君の救世に期待するよ」
大精霊の言葉を胸に刻むように目礼をした小鳥。
光の変化を見つめ続けてしばらく……もう一度、大精霊へと向き直る。
「この剣との最初の舞を、大精霊、あなたに捧げてもいい?」
「光栄だね。少し待ってくれないか? 今、お茶を用意する。何だか知らないけど、ここではそれが許されるらしい」
草薙剣を構える小鳥に、大精霊は笑いながら答えた。
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アーサー・ホーガン(ka0471) 種族:人間(リアルブルー) クラス:闘狩人(エンフォーサー) 「守護者」取得日:2019/01/24 「守護者武器」:[SW]星神器「アンティオキア」 ●「守護者」への表明 「なあ、リアルブルー。今のお前の中に『揺るがぬ柱』はあるか」 |
●「守護者」契約(クリックすると、下にノベルが展開されます)
「なあ、リアルブルー。今のお前の中に『揺るがぬ柱』はあるか?」
アーサー・ホーガン(ka0471)は契約の間にて向き合う大精霊リアルブルーに問いかける。
守護者契約の為に設けられたこの場は、ハンターの資質を見極めるためにある。
だが同時に、それが“契約”である以上、ハンターが大精霊を見定める場所でもあるのだ。
「俺の帰属先は、一貫してRBのままだ。だからこそ、CWでしがらみを作らねぇようにしてきたし、その最たる物である守護者契約を行うつもりもなかったわけだな。だが、根本的にはクリムゾンウェストとの契約になるにせよ、契約する大精霊がリアルブルーなら話は別だぜ」
アーサーの言葉選びからは思慮深さが感じられた。
厳めしい男ではあるが、理路整然とした会話の脈絡は粗暴さではなく教育者のような知性を感じさせる。
「RBはまさに滅びの危機に瀕していて、世界を救うには邪神の脅威を取り除かなきゃならねぇが、その危機に立ち向かうのは守護者になろうがなるまいが関係なくすることだ。守護者契約なんて言ったところで、やることは何も変わらねぇさ。『民間人を守り、仲間と助け合って、敵を倒す』。今までそうして来たように、これからもそうするだけだぜ」
男はゆっくりと言い聞かせるようにして言葉を紡ぎ、腕を組む。
「それが、俺が『己の中に据えた揺るがぬ柱』であって、邪神との戦いはその延長上にあると言えるな」
「なるほど。僕の中にそれがあるのかと君は言いたいわけだ」
少年は眉を顰める。見るからして、気弱な表情だ。
「残念ながら、僕にそういったものはないと思う。それがあると胸を張って言えるほど、恥知らずではないからね」
「まあ、そうだろうな。少なくとも先のリアルブルーでの戦いにおいて、お前の行動に一貫性はなかった」
単なる事実として、アーサーは認識を口にする。
リアルブルー大精霊は空蒼作戦で最終的にはハンターとの共闘を選択し、その関係性は現在も続いている。
だが最初からそうであったわけではないし、そうであったのなら空蒼作戦の過程にも変化があったはずだ。
「俺は神様の事情には詳しくないが、少なくとも人間の尺度において、覚悟ってのは重要だ。つまり、何かを決めてそれを守り通す。自分自身との契約、と言ってもいい」
己の在り方は定まっている。すべきことも決まっている。後はそれを実行すればいい。
「人間ってのはブレやすい。弱いからな。俺もその例外じゃねぇから、しがらみを避けてきた。そうしねぇと、どこかで自分に嘘を吐くことになっちまいそうでな」
「難しいな。僕は君よりずっと長く生きているけど、自分でこうと決めて最後まで守れたことは一度もない。中途半端なことばかりだ」
「別に俺は、お前を叱責したいわけじゃないんだぜ。これまでなかったなら、別にそれもいいだろう。何でも完璧にできるやつは――どうやら神様にもいないらしいからな。大事なのは、これから自分に何を誓うかだ」
アーサーは契約陣の中心にあるアタッシュケースへ歩み寄る。
「邪神を相手に望む結果を掴み取るには力が足りてねぇ。幸いにして、その力の当てが目の前にある。だから、手を伸ばす。それが、俺が守護者の力を求める理由だぜ」
「守護者の力を求める理由、か。それならば明確だ。僕は守護者を増やして邪神に勝ちたい」
「どうしてだ?」
「リアルブルーという世界を取り戻し、クリムゾンウェストへの借りを返したいんだ。僕は……ここでは与えられてばかりで、与えられるものが殆どないからね」
「そうか。俺にとっては新たな力の使い方を磨くことが今後の課題になるだろうな。ただ振り回すだけじゃ、力を得た意味がねぇ。それはお前も同じことだ。守護者を増やせばいいってもんじゃねぇだろ。要はその先に何を目指すかだ。そこがきちんと決まってるんなら、それでいい」
納得したように頷き、少年はアタッシュケースから星神器を取り出す。
「――星の光の名の下に、汝、アーサー・ホーガンに告げる。その魂の輝きを力と変え、星の救世主となる覚悟はあるか?」
「覚悟ならとうに決まってる。何もかも、これまで通りだ」
「契約を受理する。星と英雄の記憶を以て、ここに神の力の一端を授けん。目覚めよ、アンティオキア!」
星の記憶石は砕け、その光は星神器を目覚めさせる。
「ここに誓いは結ばれた。誓約なる守護者よ、君の救世に期待する」
掴んだ星神器を軽く振るって確かめたアーサーは、背中越しに問う。
「俺からも聞いておきてぇな。次は、揺らがずにいられるか?」
「わからない。自信はない。ただ……やらなきゃいけない事はわかってるつもりだ」
「そうか」
背を向けたまま、男は小さく笑みを浮かべた。
アーサー・ホーガン(ka0471)は契約の間にて向き合う大精霊リアルブルーに問いかける。
守護者契約の為に設けられたこの場は、ハンターの資質を見極めるためにある。
だが同時に、それが“契約”である以上、ハンターが大精霊を見定める場所でもあるのだ。
「俺の帰属先は、一貫してRBのままだ。だからこそ、CWでしがらみを作らねぇようにしてきたし、その最たる物である守護者契約を行うつもりもなかったわけだな。だが、根本的にはクリムゾンウェストとの契約になるにせよ、契約する大精霊がリアルブルーなら話は別だぜ」
アーサーの言葉選びからは思慮深さが感じられた。
厳めしい男ではあるが、理路整然とした会話の脈絡は粗暴さではなく教育者のような知性を感じさせる。
「RBはまさに滅びの危機に瀕していて、世界を救うには邪神の脅威を取り除かなきゃならねぇが、その危機に立ち向かうのは守護者になろうがなるまいが関係なくすることだ。守護者契約なんて言ったところで、やることは何も変わらねぇさ。『民間人を守り、仲間と助け合って、敵を倒す』。今までそうして来たように、これからもそうするだけだぜ」
男はゆっくりと言い聞かせるようにして言葉を紡ぎ、腕を組む。
「それが、俺が『己の中に据えた揺るがぬ柱』であって、邪神との戦いはその延長上にあると言えるな」
「なるほど。僕の中にそれがあるのかと君は言いたいわけだ」
少年は眉を顰める。見るからして、気弱な表情だ。
「残念ながら、僕にそういったものはないと思う。それがあると胸を張って言えるほど、恥知らずではないからね」
「まあ、そうだろうな。少なくとも先のリアルブルーでの戦いにおいて、お前の行動に一貫性はなかった」
単なる事実として、アーサーは認識を口にする。
リアルブルー大精霊は空蒼作戦で最終的にはハンターとの共闘を選択し、その関係性は現在も続いている。
だが最初からそうであったわけではないし、そうであったのなら空蒼作戦の過程にも変化があったはずだ。
「俺は神様の事情には詳しくないが、少なくとも人間の尺度において、覚悟ってのは重要だ。つまり、何かを決めてそれを守り通す。自分自身との契約、と言ってもいい」
己の在り方は定まっている。すべきことも決まっている。後はそれを実行すればいい。
「人間ってのはブレやすい。弱いからな。俺もその例外じゃねぇから、しがらみを避けてきた。そうしねぇと、どこかで自分に嘘を吐くことになっちまいそうでな」
「難しいな。僕は君よりずっと長く生きているけど、自分でこうと決めて最後まで守れたことは一度もない。中途半端なことばかりだ」
「別に俺は、お前を叱責したいわけじゃないんだぜ。これまでなかったなら、別にそれもいいだろう。何でも完璧にできるやつは――どうやら神様にもいないらしいからな。大事なのは、これから自分に何を誓うかだ」
アーサーは契約陣の中心にあるアタッシュケースへ歩み寄る。
「邪神を相手に望む結果を掴み取るには力が足りてねぇ。幸いにして、その力の当てが目の前にある。だから、手を伸ばす。それが、俺が守護者の力を求める理由だぜ」
「守護者の力を求める理由、か。それならば明確だ。僕は守護者を増やして邪神に勝ちたい」
「どうしてだ?」
「リアルブルーという世界を取り戻し、クリムゾンウェストへの借りを返したいんだ。僕は……ここでは与えられてばかりで、与えられるものが殆どないからね」
「そうか。俺にとっては新たな力の使い方を磨くことが今後の課題になるだろうな。ただ振り回すだけじゃ、力を得た意味がねぇ。それはお前も同じことだ。守護者を増やせばいいってもんじゃねぇだろ。要はその先に何を目指すかだ。そこがきちんと決まってるんなら、それでいい」
納得したように頷き、少年はアタッシュケースから星神器を取り出す。
「――星の光の名の下に、汝、アーサー・ホーガンに告げる。その魂の輝きを力と変え、星の救世主となる覚悟はあるか?」
「覚悟ならとうに決まってる。何もかも、これまで通りだ」
「契約を受理する。星と英雄の記憶を以て、ここに神の力の一端を授けん。目覚めよ、アンティオキア!」
星の記憶石は砕け、その光は星神器を目覚めさせる。
「ここに誓いは結ばれた。誓約なる守護者よ、君の救世に期待する」
掴んだ星神器を軽く振るって確かめたアーサーは、背中越しに問う。
「俺からも聞いておきてぇな。次は、揺らがずにいられるか?」
「わからない。自信はない。ただ……やらなきゃいけない事はわかってるつもりだ」
「そうか」
背を向けたまま、男は小さく笑みを浮かべた。
(執筆:神宮寺飛鳥)
(文責:フロンティアワークス)
(文責:フロンティアワークス)
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ボルディア・コンフラムス(ka0796) 種族:人間(クリムゾンウェスト) クラス:霊闘士(ベルセルク) 「守護者」取得日:2019/01/24 「守護者武器」:[SW]星神器「ペルナクス」 ●「守護者」への表明 「誰も死なせない為の力。俺が求めるのはただそれだけだ」 |
●「守護者」契約(クリックすると、下にノベルが展開されます)
「あらあら、すでに守護者のあなたが再び力を求めるのね?」
エバーグリーンの大精霊、ベアトリクス・アルキミア(kz0261)が、星神器「ペルナクス」と契約するためにやってきたボルディア・コンフラムス(ka0796)を、そんな言葉で出迎えた。
「クリムゾンウェストの時にも言ったがな、もう一度、改めて宣言しておくぜ」
ボルディアは、ベアトリクスに向き合う。
「まあな。俺は世界を救う為じゃなく、目の前の奴等を助けるために、力を求める……というのは、前の契約の時に話したンだが」
ボルディアにはわからなかった。歪虚を倒し続けた先に何があるのかが。だからなのだろう、目の前の者を助けるという、シンプルかつ途方もない目的にたどり着いたのは。
「あのさ、俺、守護者として契約するときに、クリムゾンウェストに言われたんだよ。“テメェは臆病”だってな」
「ふうん?」
ベアトリクスは肯定するでも否定するでもなく、ボルディアに話の続きを促した。
「正直ちょっとビックリしたぜ? ンなこと面と向かって言われたことなんざなかったからよ」
「まあそうよね。“臆病”なんて言葉は、そうそう人に言えないわ。でも、この契約においては、そんな虚飾は許されない。あなたが星の守護にふさわしいかどうか、それを見極めるのがこの場ですもの」
にっこり、ベアトリクスは笑う。どこか超然とした表情だ。
「あー、やっぱそういうところを見ると、お前も大精霊なんだなって思うぜ……」
「ウフフッ、どういう意味かしら??」
が、ボルディアにそうつっこまれると、ベアトリクスいつも通りのヘラヘラした笑顔に戻った。
「ともかく、だ。ま。実際、腑に落ちたところはあった。……テメェが死ぬのが怖ぇから分厚い鎧を着る。仲間が死ぬのが怖ぇから前に立つ。俺の戦い方って、そう考えると、しっくり来る気がしたんだ」
自分の死も、仲間の死も恐ろしい。だからこそ鎧を鍛え上げ、前線で戦う。
「結局、邪神に立ち向かうのもその延長なんだろう」
ボルディアは、仲間の顔を思うかべる。
「俺のダチにゃあ、自分の命なんざ平気で投げ捨てて世界を救っちまいかねねぇヤツが何人もいるからな。そいつらが死ぬのなんざ俺は見たくねぇンだよ」
「なるほどね?。アレとか、アレとか……」
「あいつとかそいつとかだ……」
ふむふむ、とベアトリクスは頷いたが、ちょっとだけ、笑顔を意地悪なものに変えた。
「あなたの仲間は何人かいるようだけど……もし、仲間のひとりを犠牲にすることで、他の仲間全員を助けられるとしたら、あなたはどうするのかしら? その、命を平気で投げ捨てるお友達が、犠牲になることを望んだとしたら?」
邪神との対決を控える今、それはありえる未来なのだろう。その選択の前で、さらなる力を求めるボルディアはどうするのか。ベアトリクスは赤い瞳を不思議に光らせて問いかける。
「ハッ」
しかし、ボルディアはその問いを鼻で笑った。
「愚問だぜ、大精霊。俺は──、そんな最悪の選択を叩き壊す為にここにいるンだ!」
ボルディアはベアトリクスに向けて腕を突き出した。筋肉のついた逞しい腕、そして仲間を思う優しい手を。
「だから俺は、そいつ等を護るための力が欲しい。『天雷』の理でもって、仲間の盾となる為に」
「それは守護者の力が二つも必要になるわけねぇ」
「だろ? 今でも無茶は効くぜ。けどな、他人の無茶を捻じ曲げるほどじゃねぇからな」
ボルディアの手に、ベアトリクスが自分の手を重ねる。
「――星の光の名の下に、汝、ボルディア・コンフラムスに告げる。その魂の輝きを力と変え、星の救世主となる覚悟はあるか?」
「誰も死なせない為の力。俺が求めるのはただそれだけだ」
「契約を受理します。星と英雄の記憶を以て、ここに神の力の一端を授けん。目覚めよ、星神器「ペルナクス」!」
星の記憶石が輝き、星神器と契約者を結びつけた。
ペルナクスがボルディアの手に握られる。
「ここに誓いは結ばれた。救命なる守護者よ、あなたの救世に期待します」
ボルディアは早速ペルナクスを一振りし、身体に馴染ませる。それから改めてベアトリクスをしげしげと見た。
「な?に?」
「人生ってのは分からねぇモンだな。一時は本気で命のやり取りまでしたヤツと契約するなんて、夢にも思ってなかったぜ」
「そ?ね?。良くも、悪くも、かしら??」
「悪いなんてことはねぇさ。リアルブルーにはこういう言葉があるらしいぜ? “昨日の敵は今日の友”ってな」
そして、ボルディアはいつか大精霊クリムゾンウェストにしたように、ベアトリクスの肩に手を置いた。
「困ったらいつでも頼ってくれよ。今度はお前の事、キッチリ守ってみせっからよ!」
白い歯を見せて快活に笑うボルディア。
「じゃ、期待しちゃおうかしら。私もね、アレとかソレとかが死ぬのは見たくないのよねぇ」
「だよなぁ?」
苦笑を浮かべボルディアとベアトリクスはお互いの拳をコツンと重ねた。
エバーグリーンの大精霊、ベアトリクス・アルキミア(kz0261)が、星神器「ペルナクス」と契約するためにやってきたボルディア・コンフラムス(ka0796)を、そんな言葉で出迎えた。
「クリムゾンウェストの時にも言ったがな、もう一度、改めて宣言しておくぜ」
ボルディアは、ベアトリクスに向き合う。
「まあな。俺は世界を救う為じゃなく、目の前の奴等を助けるために、力を求める……というのは、前の契約の時に話したンだが」
ボルディアにはわからなかった。歪虚を倒し続けた先に何があるのかが。だからなのだろう、目の前の者を助けるという、シンプルかつ途方もない目的にたどり着いたのは。
「あのさ、俺、守護者として契約するときに、クリムゾンウェストに言われたんだよ。“テメェは臆病”だってな」
「ふうん?」
ベアトリクスは肯定するでも否定するでもなく、ボルディアに話の続きを促した。
「正直ちょっとビックリしたぜ? ンなこと面と向かって言われたことなんざなかったからよ」
「まあそうよね。“臆病”なんて言葉は、そうそう人に言えないわ。でも、この契約においては、そんな虚飾は許されない。あなたが星の守護にふさわしいかどうか、それを見極めるのがこの場ですもの」
にっこり、ベアトリクスは笑う。どこか超然とした表情だ。
「あー、やっぱそういうところを見ると、お前も大精霊なんだなって思うぜ……」
「ウフフッ、どういう意味かしら??」
が、ボルディアにそうつっこまれると、ベアトリクスいつも通りのヘラヘラした笑顔に戻った。
「ともかく、だ。ま。実際、腑に落ちたところはあった。……テメェが死ぬのが怖ぇから分厚い鎧を着る。仲間が死ぬのが怖ぇから前に立つ。俺の戦い方って、そう考えると、しっくり来る気がしたんだ」
自分の死も、仲間の死も恐ろしい。だからこそ鎧を鍛え上げ、前線で戦う。
「結局、邪神に立ち向かうのもその延長なんだろう」
ボルディアは、仲間の顔を思うかべる。
「俺のダチにゃあ、自分の命なんざ平気で投げ捨てて世界を救っちまいかねねぇヤツが何人もいるからな。そいつらが死ぬのなんざ俺は見たくねぇンだよ」
「なるほどね?。アレとか、アレとか……」
「あいつとかそいつとかだ……」
ふむふむ、とベアトリクスは頷いたが、ちょっとだけ、笑顔を意地悪なものに変えた。
「あなたの仲間は何人かいるようだけど……もし、仲間のひとりを犠牲にすることで、他の仲間全員を助けられるとしたら、あなたはどうするのかしら? その、命を平気で投げ捨てるお友達が、犠牲になることを望んだとしたら?」
邪神との対決を控える今、それはありえる未来なのだろう。その選択の前で、さらなる力を求めるボルディアはどうするのか。ベアトリクスは赤い瞳を不思議に光らせて問いかける。
「ハッ」
しかし、ボルディアはその問いを鼻で笑った。
「愚問だぜ、大精霊。俺は──、そんな最悪の選択を叩き壊す為にここにいるンだ!」
ボルディアはベアトリクスに向けて腕を突き出した。筋肉のついた逞しい腕、そして仲間を思う優しい手を。
「だから俺は、そいつ等を護るための力が欲しい。『天雷』の理でもって、仲間の盾となる為に」
「それは守護者の力が二つも必要になるわけねぇ」
「だろ? 今でも無茶は効くぜ。けどな、他人の無茶を捻じ曲げるほどじゃねぇからな」
ボルディアの手に、ベアトリクスが自分の手を重ねる。
「――星の光の名の下に、汝、ボルディア・コンフラムスに告げる。その魂の輝きを力と変え、星の救世主となる覚悟はあるか?」
「誰も死なせない為の力。俺が求めるのはただそれだけだ」
「契約を受理します。星と英雄の記憶を以て、ここに神の力の一端を授けん。目覚めよ、星神器「ペルナクス」!」
星の記憶石が輝き、星神器と契約者を結びつけた。
ペルナクスがボルディアの手に握られる。
「ここに誓いは結ばれた。救命なる守護者よ、あなたの救世に期待します」
ボルディアは早速ペルナクスを一振りし、身体に馴染ませる。それから改めてベアトリクスをしげしげと見た。
「な?に?」
「人生ってのは分からねぇモンだな。一時は本気で命のやり取りまでしたヤツと契約するなんて、夢にも思ってなかったぜ」
「そ?ね?。良くも、悪くも、かしら??」
「悪いなんてことはねぇさ。リアルブルーにはこういう言葉があるらしいぜ? “昨日の敵は今日の友”ってな」
そして、ボルディアはいつか大精霊クリムゾンウェストにしたように、ベアトリクスの肩に手を置いた。
「困ったらいつでも頼ってくれよ。今度はお前の事、キッチリ守ってみせっからよ!」
白い歯を見せて快活に笑うボルディア。
「じゃ、期待しちゃおうかしら。私もね、アレとかソレとかが死ぬのは見たくないのよねぇ」
「だよなぁ?」
苦笑を浮かべボルディアとベアトリクスはお互いの拳をコツンと重ねた。
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シレークス(ka0752) 種族:ドワーフ クラス:闘狩人(エンフォーサー) 「守護者」取得日:2019/01/24 「守護者武器」:[SW]星神器「布津御魂剣」 ●「守護者」への表明 「わたくしの信仰に、この『武』を捧ぐ。そう、あれかし」 |
●「守護者」契約(クリックすると、下にノベルが展開されます)
儀式の間には一種独特の気配が満ち、シレークス(ka0752)は懐かしさを覚えた。
「……ああ。聖堂の感じに似てやがるわけです」
「来た来た?。契約を希望する人かしら??」
大精霊ベアトリクス・アルキミア(kz0261)が姿を現した。
おっとりとした口調と、どこを見ているのか今ひとつわからない目。白衣をひっかけた若い女性の姿は、皆が思い浮かべる大精霊のイメージからは少々外れているかもしれない。
「じゃあまずは、お名前と、力が欲しい理由を教えてもらえるかな」
言葉こそ柔らかいが、部屋に満ちる荘厳な気配はこの大精霊ゆえのこと。
正面に立つシレークスは全身でそれを感じていた。
「シレークスってぇエクラ教のシスターです。世界を守りたい、それが理由ですが、ついでにちょっと話を聞いてもらっていいでしょーか」
これは自分の決意と、そこに至る心の旅路を再確認する儀式でもあった。
「それがお仕事だからね?。どうぞ聞かせて」
ベアトリクスは穏やかに微笑んだ。
「わたくしが聖堂教会に身を置いて、エクラ教を信仰するハンターとして活動を始めてから、もう何年かが経ったわけですが」
覚醒者となったのは、家出同然に故郷を飛び出して身を寄せた教会でのこと。
揺るがぬ信仰心を持つ信者たちには聖導士を選ぶ者が多かったが、シレークスは敢えてそうしなかった。
「わたくしは学がねぇ上に、破天荒な性格してやがります。向いてねぇと思ったんです」
「正直なのね」
ベアトリクスが笑った。嘲る笑いではなく、暖かく寄り添うような笑いだ。
「はい、そこを気取ってもしょうがねぇです。でも、行く当てもないわたくしを受け入れてくれた教会には、何か別の方法で報いたいと思ったわけです」
シレークスが無骨な機甲拳鎚で覆われた右腕を曲げて、胸の前に掲げる。
白く輝き、マテリアル鉱石に彩られた巨大な拳は、機能性重視ながらも優美さを感じさせた。
「聖職者はやっぱり余計な血を流すもんじゃねぇです。だから刃物は封じると決めたんです」
戦えば相手を傷つけることは同じでも、刃は相手にだけ一方的な痛みを与える。
拳は相手に与えた痛みの分だけ、自らも痛みを受け取る。
エクラ教の信徒として、忘れてはならないことがあると思ったのだ。
「そうやって『枷』を嵌めて鍛えていれば、信仰心も磨かれるんじゃねーかと」
「なるほどね?。あら、だったらこれで良かったの?」
ベアトリクスが淡い白光を放つ布津御魂剣――戦いの際には、炎のようなマテリアルオーラを発する光の刃となる星神器を手にする。
シレークスの目に、強い光が宿った。
「長くなりやがりましたが、ここからが本題です。この世界の危機に、今こそ確固たる信仰を示す機会が来やがったと気付いたんです」
「どういうことなのかしら?」
「何よりも大事なのは、自分の信仰の在り方です。武器の違いで心が揺れるのは、自分の信仰心に自信がねぇからです」
守るべきものを守る力を恐れるのは、自分の心が弱いから。
神の御心に背くことはないと、自らを信じる強さが足りないから。
「世界の危機……ね。大精霊クリムゾンウェストこそ、あなたの契約相手となるべきだったわね。代役でごめんね?」
「『代役』? そんなことはねぇです。ええ、わたくしにとっては」
ベアトリクスの言う通り、この星の大精霊と契約を結ぶべきなのかもしれない。目覚めを待つという選択肢もなくはない。
だが、シレークスはそうしなかった。
一番大事なのは、何を信じ、何のために戦うのかという点だ。
その為には契約神の違いなど些細なことではないか。
「だから大精霊ベアトリクスよ、わたくしに力を!」
ベアトリクスが微笑んだ。次の瞬間、大精霊は純白のドレス姿に変じる。
「――星の光の名の下に、汝、シレークスに告げる。その魂の輝きを力と変え、星の救世主となる覚悟はあるか?」
「この信仰に、一切の曇りなし! 世界の秩序を守り、ヒトと精霊の調停者となり、世界存亡の危機に出動せん!」
ベアトリクスは星神器を差し出す。
「契約を受理します。星と英雄の記憶を以て、ここに神の力の一端を授けん。目覚めよ、布津御魂剣!」
その言葉と共に、布津御魂剣の帯びる光が強くなる。
シレークスが祈りを捧げる。
「光よ、我らを導きたまえ。光よ、憐れみたまえ。今こそ、この拳に剣をとらん!」
心は一点の曇りもなく澄み渡っていた。シレークスは布津御魂剣に左手を伸ばす。
「星神器『布津御魂剣』! シスター・シレークスが願い乞う! 今こそ、この左腕と共に在らんことを!」
その言葉に応えるように、シレークスの手の中で布津御魂剣は一瞬、激しい光を発した。
「ここに誓いは結ばれた。敬虔なる守護者よ、あなたの救世に期待します」
ふと、思い出したようにベアトリクスは笑う。
「そうそう。あなたは武器の違いで心が揺れるのは信仰心に自信がないからだと言ったけど、私も同感だわ」
指さしたのは、シレークスが手にした“剣”。
「あなたが願うなら――それはもうあなたの一部。あなたの“拳”なんだもの」
ベアトリクスの言葉に、シレークスは恭しく頭を垂れる。
左手には新たな力が宿っていた。それは遥かな高みへと彼女を導くだろう。
「……ああ。聖堂の感じに似てやがるわけです」
「来た来た?。契約を希望する人かしら??」
大精霊ベアトリクス・アルキミア(kz0261)が姿を現した。
おっとりとした口調と、どこを見ているのか今ひとつわからない目。白衣をひっかけた若い女性の姿は、皆が思い浮かべる大精霊のイメージからは少々外れているかもしれない。
「じゃあまずは、お名前と、力が欲しい理由を教えてもらえるかな」
言葉こそ柔らかいが、部屋に満ちる荘厳な気配はこの大精霊ゆえのこと。
正面に立つシレークスは全身でそれを感じていた。
「シレークスってぇエクラ教のシスターです。世界を守りたい、それが理由ですが、ついでにちょっと話を聞いてもらっていいでしょーか」
これは自分の決意と、そこに至る心の旅路を再確認する儀式でもあった。
「それがお仕事だからね?。どうぞ聞かせて」
ベアトリクスは穏やかに微笑んだ。
「わたくしが聖堂教会に身を置いて、エクラ教を信仰するハンターとして活動を始めてから、もう何年かが経ったわけですが」
覚醒者となったのは、家出同然に故郷を飛び出して身を寄せた教会でのこと。
揺るがぬ信仰心を持つ信者たちには聖導士を選ぶ者が多かったが、シレークスは敢えてそうしなかった。
「わたくしは学がねぇ上に、破天荒な性格してやがります。向いてねぇと思ったんです」
「正直なのね」
ベアトリクスが笑った。嘲る笑いではなく、暖かく寄り添うような笑いだ。
「はい、そこを気取ってもしょうがねぇです。でも、行く当てもないわたくしを受け入れてくれた教会には、何か別の方法で報いたいと思ったわけです」
シレークスが無骨な機甲拳鎚で覆われた右腕を曲げて、胸の前に掲げる。
白く輝き、マテリアル鉱石に彩られた巨大な拳は、機能性重視ながらも優美さを感じさせた。
「聖職者はやっぱり余計な血を流すもんじゃねぇです。だから刃物は封じると決めたんです」
戦えば相手を傷つけることは同じでも、刃は相手にだけ一方的な痛みを与える。
拳は相手に与えた痛みの分だけ、自らも痛みを受け取る。
エクラ教の信徒として、忘れてはならないことがあると思ったのだ。
「そうやって『枷』を嵌めて鍛えていれば、信仰心も磨かれるんじゃねーかと」
「なるほどね?。あら、だったらこれで良かったの?」
ベアトリクスが淡い白光を放つ布津御魂剣――戦いの際には、炎のようなマテリアルオーラを発する光の刃となる星神器を手にする。
シレークスの目に、強い光が宿った。
「長くなりやがりましたが、ここからが本題です。この世界の危機に、今こそ確固たる信仰を示す機会が来やがったと気付いたんです」
「どういうことなのかしら?」
「何よりも大事なのは、自分の信仰の在り方です。武器の違いで心が揺れるのは、自分の信仰心に自信がねぇからです」
守るべきものを守る力を恐れるのは、自分の心が弱いから。
神の御心に背くことはないと、自らを信じる強さが足りないから。
「世界の危機……ね。大精霊クリムゾンウェストこそ、あなたの契約相手となるべきだったわね。代役でごめんね?」
「『代役』? そんなことはねぇです。ええ、わたくしにとっては」
ベアトリクスの言う通り、この星の大精霊と契約を結ぶべきなのかもしれない。目覚めを待つという選択肢もなくはない。
だが、シレークスはそうしなかった。
一番大事なのは、何を信じ、何のために戦うのかという点だ。
その為には契約神の違いなど些細なことではないか。
「だから大精霊ベアトリクスよ、わたくしに力を!」
ベアトリクスが微笑んだ。次の瞬間、大精霊は純白のドレス姿に変じる。
「――星の光の名の下に、汝、シレークスに告げる。その魂の輝きを力と変え、星の救世主となる覚悟はあるか?」
「この信仰に、一切の曇りなし! 世界の秩序を守り、ヒトと精霊の調停者となり、世界存亡の危機に出動せん!」
ベアトリクスは星神器を差し出す。
「契約を受理します。星と英雄の記憶を以て、ここに神の力の一端を授けん。目覚めよ、布津御魂剣!」
その言葉と共に、布津御魂剣の帯びる光が強くなる。
シレークスが祈りを捧げる。
「光よ、我らを導きたまえ。光よ、憐れみたまえ。今こそ、この拳に剣をとらん!」
心は一点の曇りもなく澄み渡っていた。シレークスは布津御魂剣に左手を伸ばす。
「星神器『布津御魂剣』! シスター・シレークスが願い乞う! 今こそ、この左腕と共に在らんことを!」
その言葉に応えるように、シレークスの手の中で布津御魂剣は一瞬、激しい光を発した。
「ここに誓いは結ばれた。敬虔なる守護者よ、あなたの救世に期待します」
ふと、思い出したようにベアトリクスは笑う。
「そうそう。あなたは武器の違いで心が揺れるのは信仰心に自信がないからだと言ったけど、私も同感だわ」
指さしたのは、シレークスが手にした“剣”。
「あなたが願うなら――それはもうあなたの一部。あなたの“拳”なんだもの」
ベアトリクスの言葉に、シレークスは恭しく頭を垂れる。
左手には新たな力が宿っていた。それは遥かな高みへと彼女を導くだろう。
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レイオス・アクアウォーカー(ka1990) 種族:人間(リアルブルー) クラス:闘狩人(エンフォーサー) 「守護者」取得日:2019/01/24 「守護者武器」:[SW]星神器「ヴァサヴィ・シャクティ」 ●「守護者」への表明 「あの時の言葉を貫く為に。今この時から、オレは星の守護者だ」 |
●「守護者」契約(クリックすると、下にノベルが展開されます)
「地球の神様と話をするなんて、不思議な気分だな」
嘘偽りない感想ではあるが、レイオス・アクアウォーカー(ka1990)がリアルブルー大精霊と対峙するのは初めてではない。
空蒼作戦の中で、彼は何度か大精霊と接近している。しかし……。
「戦場で語りかけたことはあったが、こうして会話をするのは始めてか」
「そうだね。あの時は無視してたから」
「なんだ、聞こえてはいたのか。なんで無視するんだよ、あれ結構大変だったんだぞ?」
「いや?、君は特にうるさかったから……」
「必死だったと言ってくれ!」
思わずがくっと両足から力が抜けた。
「ま、その分君のことは結構印象に残ってるよ」
「結果オーライ、だな……。そういや無神論者ではないけど、信仰心が篤くもなかったな。契約が上手く行くように拝んどくか……?」
「いや、信仰心はあんまり関係ないから……拝めば上手く行くってもんでもないし」
両手を合わせるレイオスを片手で「しっし」と追い払うのであった。
閑話休題。
「オレが守護者になる理由は、この世界が気に入ってるからだ。だからこの世界を護りたい」
ドンと胸に拳を当て、レイオスは単刀直入に語る。
「別に地球が嫌いってワケじゃないぜ。こっちのが性に合ったってだけだ。それに大精霊クリムゾンウェストに一撃入れた時に言ったんだ。見捨てない、傷を負うなら共に負い。共に生きるって。今振り返るとあれが守護者になる決め手だったな」
「ほぼ求婚だねそれ」
「ハハハ……返ってきたのは強烈な蹴りだったけどな」
レイオスもまた、これまで長い間戦い続けたハンターの一人だ。
サルヴァトーレ・ロッソのクルーからはじまり、ハンターとして戦い、王国騎士団“黒の騎士”として認められた実力者でもある。
しかし、彼の魂は軽やかだった。良い意味で単純明快な生き方を良しとしてきた。
「色々あったけど、結局はそれでよかったっていうか……その時その時踏ん張ったことには意味があると思うんだよ。空蒼作戦でリアルブルーと話した事も無駄じゃなかった」
「確かにね。だから既に僕は君の人となりを知っているわけだ」
「同時に、過去を無意味なものにしないためには、自分が信じられる道を進まなきゃいけないと思う。前に言ったことを覆すのは、男らしくないだろ?」
「君は単に、善人だなあ」
「そりゃどういう意味だ?」
「そのままの意味だよ。性根が正直というか、身軽というか」
「褒められているのかけなされているのか、判断が難しい評価だぜ……」
「一応褒めてる部類だよ。守護者には向いてると思う」
「なら、“守護者の理念”に同意するぜ。否定したらあの時の自分の言葉が嘘になる。今も想いは同じだ。だからこの星と、大精霊と共に生きる力、星神器の力を与えてくれ」
レイオスの言葉に大精霊は頷いた。
「――星の光の名の下に、汝、レイオス・アクアウォーカーに告げる。その魂の輝きを力と変え、星の救世主となる覚悟はあるか?」
「あの時の言葉を貫く為に。今この時から、オレは星の守護者だ!」
青い光に包まれた空間の中で、レイオスの星の記憶石が砕け散る。
降り注ぐ燐光は星神器へと降り注ぎ、その力を目覚めさせた。
「契約を受理する。星と英雄の記憶を以て、ここに神の力の一端を授けん。目覚めよ、ヴァサヴィ・シャクティ!」
レイオスが星神器をその手に掴むと、眩い輝きはすっと収まっていった。
「ここに誓いは結ばれた。風来なる守護者よ、君の救世に期待する」
「確かに、拝まなくてもうまく行ったみたいだな」
快活に笑い、そしてレイオスは手を差し伸べる。
「これでオレも守護者の一員だ。よろしく頼むぜ、大精霊」
少年は差し出された手をしっかりと握り返す。
こうして世界にまた新たな守護者が生まれたのだった。
嘘偽りない感想ではあるが、レイオス・アクアウォーカー(ka1990)がリアルブルー大精霊と対峙するのは初めてではない。
空蒼作戦の中で、彼は何度か大精霊と接近している。しかし……。
「戦場で語りかけたことはあったが、こうして会話をするのは始めてか」
「そうだね。あの時は無視してたから」
「なんだ、聞こえてはいたのか。なんで無視するんだよ、あれ結構大変だったんだぞ?」
「いや?、君は特にうるさかったから……」
「必死だったと言ってくれ!」
思わずがくっと両足から力が抜けた。
「ま、その分君のことは結構印象に残ってるよ」
「結果オーライ、だな……。そういや無神論者ではないけど、信仰心が篤くもなかったな。契約が上手く行くように拝んどくか……?」
「いや、信仰心はあんまり関係ないから……拝めば上手く行くってもんでもないし」
両手を合わせるレイオスを片手で「しっし」と追い払うのであった。
閑話休題。
「オレが守護者になる理由は、この世界が気に入ってるからだ。だからこの世界を護りたい」
ドンと胸に拳を当て、レイオスは単刀直入に語る。
「別に地球が嫌いってワケじゃないぜ。こっちのが性に合ったってだけだ。それに大精霊クリムゾンウェストに一撃入れた時に言ったんだ。見捨てない、傷を負うなら共に負い。共に生きるって。今振り返るとあれが守護者になる決め手だったな」
「ほぼ求婚だねそれ」
「ハハハ……返ってきたのは強烈な蹴りだったけどな」
レイオスもまた、これまで長い間戦い続けたハンターの一人だ。
サルヴァトーレ・ロッソのクルーからはじまり、ハンターとして戦い、王国騎士団“黒の騎士”として認められた実力者でもある。
しかし、彼の魂は軽やかだった。良い意味で単純明快な生き方を良しとしてきた。
「色々あったけど、結局はそれでよかったっていうか……その時その時踏ん張ったことには意味があると思うんだよ。空蒼作戦でリアルブルーと話した事も無駄じゃなかった」
「確かにね。だから既に僕は君の人となりを知っているわけだ」
「同時に、過去を無意味なものにしないためには、自分が信じられる道を進まなきゃいけないと思う。前に言ったことを覆すのは、男らしくないだろ?」
「君は単に、善人だなあ」
「そりゃどういう意味だ?」
「そのままの意味だよ。性根が正直というか、身軽というか」
「褒められているのかけなされているのか、判断が難しい評価だぜ……」
「一応褒めてる部類だよ。守護者には向いてると思う」
「なら、“守護者の理念”に同意するぜ。否定したらあの時の自分の言葉が嘘になる。今も想いは同じだ。だからこの星と、大精霊と共に生きる力、星神器の力を与えてくれ」
レイオスの言葉に大精霊は頷いた。
「――星の光の名の下に、汝、レイオス・アクアウォーカーに告げる。その魂の輝きを力と変え、星の救世主となる覚悟はあるか?」
「あの時の言葉を貫く為に。今この時から、オレは星の守護者だ!」
青い光に包まれた空間の中で、レイオスの星の記憶石が砕け散る。
降り注ぐ燐光は星神器へと降り注ぎ、その力を目覚めさせた。
「契約を受理する。星と英雄の記憶を以て、ここに神の力の一端を授けん。目覚めよ、ヴァサヴィ・シャクティ!」
レイオスが星神器をその手に掴むと、眩い輝きはすっと収まっていった。
「ここに誓いは結ばれた。風来なる守護者よ、君の救世に期待する」
「確かに、拝まなくてもうまく行ったみたいだな」
快活に笑い、そしてレイオスは手を差し伸べる。
「これでオレも守護者の一員だ。よろしく頼むぜ、大精霊」
少年は差し出された手をしっかりと握り返す。
こうして世界にまた新たな守護者が生まれたのだった。
(執筆:神宮寺飛鳥)
(文責:フロンティアワークス)
(文責:フロンティアワークス)
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デスドクロ・ザ・ブラックホール(ka0013) 種族:人間(リアルブルー) クラス:機導師(アルケミスト) 「守護者」取得日:2019/01/24 「守護者武器」:[SW]星神器「フラガラッハ」 ●「守護者」への表明 「任せておきな。暗黒皇帝の名にかけて、全部まとめて救ってやるぜ」 |
●「守護者」契約(クリックすると、下にノベルが展開されます)
「君が僕を指名するなんて、意外だったな」
リアルブルー大精霊が、デスドクロ・ザ・ブラックホール(ka0013)を見上げる。
「生まれながらにして、大宇宙の守護者たるこのデスドクロ・ザ・ブラックホール様が、だ。この世界の危機に対し、あえて宣言してやるぜ」
「生まれながら……? まあ、いいや。君の想い、聞かせてよ」
リアルブルー大精霊は、ふと目を細め、尋ねる。デスドクロが不敵な笑みを浮かべた。
「暗黒皇帝としての俺様の願いはただひとつ。万民が穏やかに過ごす世界に他ならねぇ。惑星も、そこに生きる連中も、大精霊も、ジャイアントパンダも。一切合切まとめて守護(まも)ってやるってな。大精霊がそこを踏み外さねぇ存在だっつーことを、確信したからこその宣言だ」
「……踏み外さない、か。僕はかつて、自分の力を制御できなくて、君達を困らせたのに?」
溜息をつくリアルブルー大精霊……自分自身が未熟であることは、彼自身もハンターたちとの関わりで痛感していた。
デスドクロが、リアルブルー大精霊の肩を叩く。
「そんな過ぎたこと、まだ気にしてたのか? 力を貸してもらうんじゃねぇ。俺様の生き様を認めてもらうわけでもねぇ。他の連中がリアルブルー大精霊を否定しても、他でも無い、この俺様が。一兆個の暗黒スキルを有する暗黒皇帝が。共に戦っても良いと、心の底から思ったが故の契約っつーワケだ」
「なんだか、立場が逆転しているようにも感じるけど……それが、君の強さなのかな」
リアルブルー大精霊にとって、デスドクロという存在には、何故か心惹かれるモノがあった。
超世界パーフェクトブラックからやって来た暗黒皇帝(シュヴァルツカイザー)だと自称する誇大妄想狂……ここまでくると、いぶし銀だ。いや、そのような言葉では終わらない男でもあった。
この男は底抜けだ。だからこそ、なんでも受け入れてしまうような懐の深さがある。
何事も理屈っぽく考えがちなリアルブルー大精霊だからこそ、相性はいいように思えた。
「貰うもんは貰うが、一方的じゃあつまらねぇ。俺様からもガーディアンウェポンに匹敵する超神器を授けるぜ。コレだ……俺様デザインのカイザーチェーン!」
どこにどうやって装着するのが適切なのだろうか。そのチェーンは。
「どうだ、カッケーだろ?」
しばらく沈黙が続いた。そして。
「そういえば人間からプレゼントを貰うの、初めてだ。ありがとう」
リアルブルー大精霊が、微笑んで、カイザーチェーンを受け取った。
この反応には、デスドクロも驚いた。拒否されると思っていたからだ。
「そうかい。そうかい。気に入ってもらえたか?」
「それとこれとは話は別だよ。君が僕に『贈る』という行為が面白くてさ」
デスドクロが、頬を掻いた。
「はあ? なんじゃそりゃあ? ま、そいつの価値がわからねぇならとりあえず持っとくんだな。今に凄まじいプレミアがつくんだからよ」
「古本好きとしては、言わんとすることも理解出来るけど……そういうことなら受け取っておこう」
「おう。腕とかに巻いとけ巻いとけ」
閑話休題。
「君の宣言は、確かに受け取ったよ。後戻りはできないからね」
「覚悟はできてるぜ。じゃなきゃ、わざわざ、指名する訳ないだろうが」
「では、改めて聞こう」
リアルブルー大精霊が、左手を掲げる。
「――星の光の名の下に、汝、デスドクロ・ザ・ブラックホールに告げる。その魂の輝きを力と変え、星の救世主となる覚悟はあるか?」
「あるぜ」
当然だとばかりに即答するデスドクロ。
「契約を受理する。星と英雄の記憶を以て、ここに神の力の一端を授けん。目覚めよ、星神器「フラガラッハ」!」
デスドクロの手元で、星神器が輝く。
「ここに誓いは結ばれた。完璧魔黒暗黒皇帝なる守護者よ、君の救世に期待するよ」
「今日から俺様が、星神器「フラガラッハ」で、ただひとつの願いのために生きてやるぜ」
星神器を掲げながら、ふと思い至る。
「なんか俺だけ、称号っぽいやつが長くねぇか?」
「まあ、いいんじゃない? 特に決まりとかないし」
大精霊がしれっと答えると、「そういうもんか!」と笑い飛ばすデスドクロであった。
リアルブルー大精霊が、デスドクロ・ザ・ブラックホール(ka0013)を見上げる。
「生まれながらにして、大宇宙の守護者たるこのデスドクロ・ザ・ブラックホール様が、だ。この世界の危機に対し、あえて宣言してやるぜ」
「生まれながら……? まあ、いいや。君の想い、聞かせてよ」
リアルブルー大精霊は、ふと目を細め、尋ねる。デスドクロが不敵な笑みを浮かべた。
「暗黒皇帝としての俺様の願いはただひとつ。万民が穏やかに過ごす世界に他ならねぇ。惑星も、そこに生きる連中も、大精霊も、ジャイアントパンダも。一切合切まとめて守護(まも)ってやるってな。大精霊がそこを踏み外さねぇ存在だっつーことを、確信したからこその宣言だ」
「……踏み外さない、か。僕はかつて、自分の力を制御できなくて、君達を困らせたのに?」
溜息をつくリアルブルー大精霊……自分自身が未熟であることは、彼自身もハンターたちとの関わりで痛感していた。
デスドクロが、リアルブルー大精霊の肩を叩く。
「そんな過ぎたこと、まだ気にしてたのか? 力を貸してもらうんじゃねぇ。俺様の生き様を認めてもらうわけでもねぇ。他の連中がリアルブルー大精霊を否定しても、他でも無い、この俺様が。一兆個の暗黒スキルを有する暗黒皇帝が。共に戦っても良いと、心の底から思ったが故の契約っつーワケだ」
「なんだか、立場が逆転しているようにも感じるけど……それが、君の強さなのかな」
リアルブルー大精霊にとって、デスドクロという存在には、何故か心惹かれるモノがあった。
超世界パーフェクトブラックからやって来た暗黒皇帝(シュヴァルツカイザー)だと自称する誇大妄想狂……ここまでくると、いぶし銀だ。いや、そのような言葉では終わらない男でもあった。
この男は底抜けだ。だからこそ、なんでも受け入れてしまうような懐の深さがある。
何事も理屈っぽく考えがちなリアルブルー大精霊だからこそ、相性はいいように思えた。
「貰うもんは貰うが、一方的じゃあつまらねぇ。俺様からもガーディアンウェポンに匹敵する超神器を授けるぜ。コレだ……俺様デザインのカイザーチェーン!」
どこにどうやって装着するのが適切なのだろうか。そのチェーンは。
「どうだ、カッケーだろ?」
しばらく沈黙が続いた。そして。
「そういえば人間からプレゼントを貰うの、初めてだ。ありがとう」
リアルブルー大精霊が、微笑んで、カイザーチェーンを受け取った。
この反応には、デスドクロも驚いた。拒否されると思っていたからだ。
「そうかい。そうかい。気に入ってもらえたか?」
「それとこれとは話は別だよ。君が僕に『贈る』という行為が面白くてさ」
デスドクロが、頬を掻いた。
「はあ? なんじゃそりゃあ? ま、そいつの価値がわからねぇならとりあえず持っとくんだな。今に凄まじいプレミアがつくんだからよ」
「古本好きとしては、言わんとすることも理解出来るけど……そういうことなら受け取っておこう」
「おう。腕とかに巻いとけ巻いとけ」
閑話休題。
「君の宣言は、確かに受け取ったよ。後戻りはできないからね」
「覚悟はできてるぜ。じゃなきゃ、わざわざ、指名する訳ないだろうが」
「では、改めて聞こう」
リアルブルー大精霊が、左手を掲げる。
「――星の光の名の下に、汝、デスドクロ・ザ・ブラックホールに告げる。その魂の輝きを力と変え、星の救世主となる覚悟はあるか?」
「あるぜ」
当然だとばかりに即答するデスドクロ。
「契約を受理する。星と英雄の記憶を以て、ここに神の力の一端を授けん。目覚めよ、星神器「フラガラッハ」!」
デスドクロの手元で、星神器が輝く。
「ここに誓いは結ばれた。完璧魔黒暗黒皇帝なる守護者よ、君の救世に期待するよ」
「今日から俺様が、星神器「フラガラッハ」で、ただひとつの願いのために生きてやるぜ」
星神器を掲げながら、ふと思い至る。
「なんか俺だけ、称号っぽいやつが長くねぇか?」
「まあ、いいんじゃない? 特に決まりとかないし」
大精霊がしれっと答えると、「そういうもんか!」と笑い飛ばすデスドクロであった。
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仙堂 紫苑(ka5953) 種族:人間(クリムゾンウェスト) クラス:機導師(アルケミスト) 「守護者」取得日:2019/01/24 「守護者武器」:[SW]星神器「アヌビス」 ●「守護者」への表明 「一人で出来る事なんか高が知れてる、仲間を助けれる力をくれ」 |
●「守護者」契約(クリックすると、下にノベルが展開されます)
「せっかくの機会ですし、こちらの方があなたとしても良いでしょう」
守護者契約の為にソサエティ本部にやってきた仙堂 紫苑(ka5953)は、あくまでも自然体で儀式に臨むと決めていた。
エバーグリーンの大精霊、そして今はクリムゾンウェストの代弁者であるベアトリクスと顔を合わせてみると、やはりその判断は正しかったのだと悟る。
「改めてはじめましてベアトリクス。こういう機会をくれた事、素直に感謝する。教授は元気か?」
「こちらこそはじめましてよろしくね♪ おじいちゃんは見た目はアレだけど身体は健康だから今日も元気よぉ」
ベアトリクス本人が、よく言えば気さくな人柄……なので、砕けた方が話しやすい。
「それに、感謝するのはこちらの方ね。守護者の力を持つ英雄は何人いても足りないから、契約を選んでくれて嬉しいわ」
「あの邪神と戦おうってんだから当然だな。でも俺はあまり自分を強いとは思ってはいない。……つうか最近他が強すぎるんだよ。どうなってんだ本当に」
「ウフフ……そうねぇ。でも、守護者に必要なのは単なる腕っぷしの強さではないわぁ。あなたの評価だってそうでしょう?」
紫苑はこれまで何度も大きな戦いに参加してきたが、その多くを志を共にする仲間と歩んできた。
そしてその中で結果を出してきたのだから、この場に立っているのは自分一人の力ではないのだと、そう自負している。
「一人で大事をどうにかできるほどの力は俺にはない。ここに来れたのも仲間の助力あってこそだ。だから俺は……あいつらを助けてやれる力が欲しい」
「じゃあ、あなたは仲間を守るための力を望むのね」
「まあな。俺が助けれるのは、この手が届く範囲までだ。もしかしたら手の届く範囲でも取りこぼすかもしれない……。分不相応な願いに手を出して足元を疎かにするやり口は好みじゃないからな」
どちらかと言えば、紫苑は堅実な人間だ。
そういう面を仲間に頼られているし、実際にそのように成果を出してきた。
だが、彼の内面はそれだけでは語れない。
「さっきも言ったように、俺は自分一人で大事を成せるなんて考えちゃいない。だが、世界になんらかの波紋を起こす事はできるかもしれないと思ってる」
「波紋……?」
「ベアトリクスは、バタフライエフェクトって知ってるか?」
「ええ。カオス理論ね」
「俺はあの考え方が好きだ。俺の行動が、遠い場所で多大な影響を及ぼすかもしれない」
実際紫苑の言う通り、広いこの世界に直接的な影響を齎すのは難しいだろう。
だが、ハンターがこれまでそうしてきたように、一つ一つの戦果を重ねてより良い未来を作ることは出来るかもしれない。
「無力は承知だが、だからって何もかも諦めたり期待しない程枯れちゃいない。すべての行動にはきっと意味がある……俺はそう思うんだ」
「そうね。そして波紋は一つではなく多ければ多いほどいい。その為にも仲間は必要だわ」
「ハハッ! “智者の慮は必ず利害に雑う”。リアルブルーの世界的策士の言葉だ。俺もこれを持つという事を良く考えておこう」
魔法陣の中心にはアタッシュケースに格納された星神器が鎮座している。
星神器はどれも未完成の状態だ。星の記憶石と選ばれし守護者の意思に染めることで、初めて機能する。
「これが純白の星神器か。さて、天秤はどう傾くかな? 情熱の赤か? 冷静さの青か? それとも入り混じった紫かな?」
「それはあなた次第ね。あなた自身が、自分のどの側面を最も強く信頼するかよ」
「なら、俺も知らない俺自身をこいつに教えてもらうとしよう」
ベアトリクスが星石を手に取ると、儀式の間が緑色の光に包まれていく。
「――星の光の名の下に、汝、仙堂 紫苑に告げる。その魂の輝きを力と変え、星の救世主となる覚悟はあるか?」
「ああ。一人で出来る事なんか高が知れてる。仲間を助けれる力をくれ」
「契約を受理します。星と英雄の記憶を以て、ここに神の力の一端を授けん。目覚めよ、アヌビス!」
砕けた星の記憶石が光の粒となって星神器に吸い込まれていく。
自身のマテリアルによって染め上げられたアヌビスを、紫苑は確かに手に取った。
「星神器アヌビス、確かに受け取った。ありがたい……これで俺は更に強くなれる」
紫苑は純粋にその事実を喜んだ。
他人の上を行くためではなく、大切な者を守るために――躊躇う理由などありはしないのだから。
「ここに誓いは結ばれた。波濤なる守護者よ、あなたの救世に期待します」
守護者契約の為にソサエティ本部にやってきた仙堂 紫苑(ka5953)は、あくまでも自然体で儀式に臨むと決めていた。
エバーグリーンの大精霊、そして今はクリムゾンウェストの代弁者であるベアトリクスと顔を合わせてみると、やはりその判断は正しかったのだと悟る。
「改めてはじめましてベアトリクス。こういう機会をくれた事、素直に感謝する。教授は元気か?」
「こちらこそはじめましてよろしくね♪ おじいちゃんは見た目はアレだけど身体は健康だから今日も元気よぉ」
ベアトリクス本人が、よく言えば気さくな人柄……なので、砕けた方が話しやすい。
「それに、感謝するのはこちらの方ね。守護者の力を持つ英雄は何人いても足りないから、契約を選んでくれて嬉しいわ」
「あの邪神と戦おうってんだから当然だな。でも俺はあまり自分を強いとは思ってはいない。……つうか最近他が強すぎるんだよ。どうなってんだ本当に」
「ウフフ……そうねぇ。でも、守護者に必要なのは単なる腕っぷしの強さではないわぁ。あなたの評価だってそうでしょう?」
紫苑はこれまで何度も大きな戦いに参加してきたが、その多くを志を共にする仲間と歩んできた。
そしてその中で結果を出してきたのだから、この場に立っているのは自分一人の力ではないのだと、そう自負している。
「一人で大事をどうにかできるほどの力は俺にはない。ここに来れたのも仲間の助力あってこそだ。だから俺は……あいつらを助けてやれる力が欲しい」
「じゃあ、あなたは仲間を守るための力を望むのね」
「まあな。俺が助けれるのは、この手が届く範囲までだ。もしかしたら手の届く範囲でも取りこぼすかもしれない……。分不相応な願いに手を出して足元を疎かにするやり口は好みじゃないからな」
どちらかと言えば、紫苑は堅実な人間だ。
そういう面を仲間に頼られているし、実際にそのように成果を出してきた。
だが、彼の内面はそれだけでは語れない。
「さっきも言ったように、俺は自分一人で大事を成せるなんて考えちゃいない。だが、世界になんらかの波紋を起こす事はできるかもしれないと思ってる」
「波紋……?」
「ベアトリクスは、バタフライエフェクトって知ってるか?」
「ええ。カオス理論ね」
「俺はあの考え方が好きだ。俺の行動が、遠い場所で多大な影響を及ぼすかもしれない」
実際紫苑の言う通り、広いこの世界に直接的な影響を齎すのは難しいだろう。
だが、ハンターがこれまでそうしてきたように、一つ一つの戦果を重ねてより良い未来を作ることは出来るかもしれない。
「無力は承知だが、だからって何もかも諦めたり期待しない程枯れちゃいない。すべての行動にはきっと意味がある……俺はそう思うんだ」
「そうね。そして波紋は一つではなく多ければ多いほどいい。その為にも仲間は必要だわ」
「ハハッ! “智者の慮は必ず利害に雑う”。リアルブルーの世界的策士の言葉だ。俺もこれを持つという事を良く考えておこう」
魔法陣の中心にはアタッシュケースに格納された星神器が鎮座している。
星神器はどれも未完成の状態だ。星の記憶石と選ばれし守護者の意思に染めることで、初めて機能する。
「これが純白の星神器か。さて、天秤はどう傾くかな? 情熱の赤か? 冷静さの青か? それとも入り混じった紫かな?」
「それはあなた次第ね。あなた自身が、自分のどの側面を最も強く信頼するかよ」
「なら、俺も知らない俺自身をこいつに教えてもらうとしよう」
ベアトリクスが星石を手に取ると、儀式の間が緑色の光に包まれていく。
「――星の光の名の下に、汝、仙堂 紫苑に告げる。その魂の輝きを力と変え、星の救世主となる覚悟はあるか?」
「ああ。一人で出来る事なんか高が知れてる。仲間を助けれる力をくれ」
「契約を受理します。星と英雄の記憶を以て、ここに神の力の一端を授けん。目覚めよ、アヌビス!」
砕けた星の記憶石が光の粒となって星神器に吸い込まれていく。
自身のマテリアルによって染め上げられたアヌビスを、紫苑は確かに手に取った。
「星神器アヌビス、確かに受け取った。ありがたい……これで俺は更に強くなれる」
紫苑は純粋にその事実を喜んだ。
他人の上を行くためではなく、大切な者を守るために――躊躇う理由などありはしないのだから。
「ここに誓いは結ばれた。波濤なる守護者よ、あなたの救世に期待します」
(執筆:神宮寺飛鳥)
(文責:フロンティアワークス)
(文責:フロンティアワークス)
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エステル・ソル(ka3983) 種族:人間(クリムゾンウェスト) クラス:魔術師(マギステル) 「守護者」取得日:2019/01/24 「守護者武器」:[SW]星神器「レメゲトン」 ●「守護者」への表明 「大好きな人たちと生きる明日を、わたくしは守っていきたいのです」 |
●「守護者」契約(クリックすると、下にノベルが展開されます)
エステル・ソル(ka3983)は、神聖な雰囲気に息を潜ませ、リアルブルー大精霊と対面した。
「君が今回の契約者か。じゃあ早速だけど、君にも契約について問わせてもらおう」
感情のない声にも聞こえたが、無機質ではない。
リアルブルー大精霊と会うことができて、エステルは温和な微笑みをしていた。
「わたくし、お友達になりに来ました!」
「……オトモダチ?」
いやまあ、そういうハンターがいるのも理解はしているが、豪速球だなとは思う。
「オーケー。君は守護者になるために、来たんだろう?」
不思議そうな面持ちのリアルブルー大精霊に、エステルが首を傾げた。
「ふにゃ? 守護者とお友達はべつ……?」
「同一かと言われると怪しいね。必要なら守護者契約がどういったものなのか、説明するのも吝かではないけど」
というわけで、大精霊はエステルに簡単に守護者についての説明を始めた。
尤も、最初から最後まで懇切丁寧に話すことはなかった。途中で何か閃いたのか、エステルは慌てながらも、さらに話を続けた。
「えとえと、……わかりました! わたくし守護者なお友達になります! 星を守るのも、大切な人たちを守るのも、大好きな人たちと一緒に未来を歩いて行くにはとても大切なのです」
「ほう。前向きな姿勢だね」
リアルブルー大精霊が、顔色を変えない。ただ聞いているだけのように見えた。
それでも、エステルは懸命に話しかけた。
「わたくし、ちゃんと伝えられてなかったのです。リアルブルーさんはもう一人ではないです」
エステルは少年の姿をした神の手を取り、微笑みかける。
「寂しかったり悩んだりしたら、助けてくれる沢山の人たちがいるのです。わたくしもお友達としてお手伝いするのです」
「……君にとって、守護者という概念はオトモダチと同意義だということかい? 知っていると思うけど、僕君たちが居る世界に混乱を招いてしまった……それでも、その想いを貫ける?」
リアルブルー大精霊に問われて、エステルは考え込んでいたが、やがて自分の想いを素直に告げた。
「……。……ガイネンとか、そういうのじゃないのです。わたくし、大切な人たちに悲しい顔をして欲しくありません。悲しいこと全てを無くすことは出来ないとわかっています。でも、昨日より一つでも良いことを増やしたいです。明日を笑顔で過ごせるように、今できることを精一杯したいです」
すると、リアルブルー大精霊が小さく微笑む。エステルの純粋な心は、リアルブルー大精霊にとって、この世界に光を導く燈火のようにも思えた。
「一人ではない、か……」
瞼を閉じ、少年は笑う。
いつだったか、そんな言葉を求めていた気がする。いや、今もきっとそうだ。だからこそ、こう答えよう。
「ああ、僕は一人じゃない。それはもう、わかっているつもりだよ」
「じゃあ……?」
「そうだな。お友達になってみるのもいいだろう」
そんな答えにエステルが満面の笑みを浮かべると、エステルの手を握り返す。
「君の清らかな想い、確かに受け取ったよ。では、契約の儀式を始める」
左手を掲げたリアルブルー大精霊。
「――星の光の名の下に、汝、エステル・ソルに告げる。その魂の輝きを力と変え、星の救世主となる覚悟はあるか?」
「生前の正しく優しい願いが堕落者となり歪虚になって歪んで行くのを見ました。悲しみが、悲しみを呼ぶのを見ました。わたくしに止める機会が与えられているのなら、迷わず手を伸ばします」
「契約を受理する。星と英雄の記憶を以て、ここに神の力の一端を授けん。目覚めよ、星神器「レメゲトン」!」
エステルの目の前で、星神器が淡く強く、躍動するように輝いていた。
「ここに誓いは結ばれた。悲しみを知る、勇敢なる守護者よ、君の救世に期待します」
「リアルブルーさんとの約束、改めて誓うのです。歪虚の怒りと悲しみに安らかな眠りを、今を生きる人たちへ明日への希望を、です!」
真っ直ぐに見据えるエステル。
希望の光が、世界を照らすことを願ってやまなかった。
「君が今回の契約者か。じゃあ早速だけど、君にも契約について問わせてもらおう」
感情のない声にも聞こえたが、無機質ではない。
リアルブルー大精霊と会うことができて、エステルは温和な微笑みをしていた。
「わたくし、お友達になりに来ました!」
「……オトモダチ?」
いやまあ、そういうハンターがいるのも理解はしているが、豪速球だなとは思う。
「オーケー。君は守護者になるために、来たんだろう?」
不思議そうな面持ちのリアルブルー大精霊に、エステルが首を傾げた。
「ふにゃ? 守護者とお友達はべつ……?」
「同一かと言われると怪しいね。必要なら守護者契約がどういったものなのか、説明するのも吝かではないけど」
というわけで、大精霊はエステルに簡単に守護者についての説明を始めた。
尤も、最初から最後まで懇切丁寧に話すことはなかった。途中で何か閃いたのか、エステルは慌てながらも、さらに話を続けた。
「えとえと、……わかりました! わたくし守護者なお友達になります! 星を守るのも、大切な人たちを守るのも、大好きな人たちと一緒に未来を歩いて行くにはとても大切なのです」
「ほう。前向きな姿勢だね」
リアルブルー大精霊が、顔色を変えない。ただ聞いているだけのように見えた。
それでも、エステルは懸命に話しかけた。
「わたくし、ちゃんと伝えられてなかったのです。リアルブルーさんはもう一人ではないです」
エステルは少年の姿をした神の手を取り、微笑みかける。
「寂しかったり悩んだりしたら、助けてくれる沢山の人たちがいるのです。わたくしもお友達としてお手伝いするのです」
「……君にとって、守護者という概念はオトモダチと同意義だということかい? 知っていると思うけど、僕君たちが居る世界に混乱を招いてしまった……それでも、その想いを貫ける?」
リアルブルー大精霊に問われて、エステルは考え込んでいたが、やがて自分の想いを素直に告げた。
「……。……ガイネンとか、そういうのじゃないのです。わたくし、大切な人たちに悲しい顔をして欲しくありません。悲しいこと全てを無くすことは出来ないとわかっています。でも、昨日より一つでも良いことを増やしたいです。明日を笑顔で過ごせるように、今できることを精一杯したいです」
すると、リアルブルー大精霊が小さく微笑む。エステルの純粋な心は、リアルブルー大精霊にとって、この世界に光を導く燈火のようにも思えた。
「一人ではない、か……」
瞼を閉じ、少年は笑う。
いつだったか、そんな言葉を求めていた気がする。いや、今もきっとそうだ。だからこそ、こう答えよう。
「ああ、僕は一人じゃない。それはもう、わかっているつもりだよ」
「じゃあ……?」
「そうだな。お友達になってみるのもいいだろう」
そんな答えにエステルが満面の笑みを浮かべると、エステルの手を握り返す。
「君の清らかな想い、確かに受け取ったよ。では、契約の儀式を始める」
左手を掲げたリアルブルー大精霊。
「――星の光の名の下に、汝、エステル・ソルに告げる。その魂の輝きを力と変え、星の救世主となる覚悟はあるか?」
「生前の正しく優しい願いが堕落者となり歪虚になって歪んで行くのを見ました。悲しみが、悲しみを呼ぶのを見ました。わたくしに止める機会が与えられているのなら、迷わず手を伸ばします」
「契約を受理する。星と英雄の記憶を以て、ここに神の力の一端を授けん。目覚めよ、星神器「レメゲトン」!」
エステルの目の前で、星神器が淡く強く、躍動するように輝いていた。
「ここに誓いは結ばれた。悲しみを知る、勇敢なる守護者よ、君の救世に期待します」
「リアルブルーさんとの約束、改めて誓うのです。歪虚の怒りと悲しみに安らかな眠りを、今を生きる人たちへ明日への希望を、です!」
真っ直ぐに見据えるエステル。
希望の光が、世界を照らすことを願ってやまなかった。
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七夜・真夕(ka3977) 種族:人間(リアルブルー) クラス: 魔術師(マギステル) 「守護者」取得日:2019/01/24 「守護者武器」:[SW]星神器「ディマイオス」 ●「守護者」への表明 「みんなを愛してる。だから何だって出来るわ」 |
●「守護者」契約(クリックすると、下にノベルが展開されます)
「こうやって会うのは、初めまして、かな?」
七夜・真夕(ka3977)が儀式の間に入ると、大精霊リアルブルーはそう言って微笑み掛けた。
「そうね。だって、大精霊と儀式の間に二人っきりって、そう頻繁にあることじゃないもの」
「その通りだ。最近はけっこう忙しいんだけどね。では、聞かせてもらおうかな。君が守護者になろうとする理由を」
「ええ。あのね、私は今いるこの世界が好きよ。だって、この世界で私は一番大事と言える人に会えた。沢山の友達ができた」
転移してきてからのことを、彼女は思い出す。色んな事があったし、色んな出会いがあったし、色んな人と繋がった。
紅の世界に思いを馳せながらも、真夕は目の前の少年をまっすぐに見る。自分の故郷たる世界の大精霊を。
「その上で、私はリアルブルーをも守りたいの。良い思い出ばかりではないけれど、あそこで私は生まれ育ったの。私を生み育ててくれた、愛してくれた人達がいた場所」
今、クリムゾンウェストに生活の基盤を置いているにしても、彼女がリアルブルーで過ごした時間は変わらない、変えられない。そうでなくては、今の七夜真夕という人間は存在しないのだから。
「喜びも、悲しみも、良いことも、悪いこともあった。たくさんの思い出を有する世界」
今は凍結している青い惑星。ベールを被った花嫁の様、と形容された、美しい星。そこに、彼女の生まれ育った場所がある。
「歪虚だろうと、邪神だろうと、壊させていいものじゃ決してない。だから、このままにしておくなんて出来ない。自分達さえ良ければいい、なんて私の流儀じゃないわ」
真夕の瞳には強い意思が湛えられている。大精霊は、その目を見て、青いまつげをわずかに伏せた。「自分たちさえ良ければいい」ができなくて、ナディアは──。
「リアルブルー」
その様子に気付いた真夕が一歩前に出る。
「私は友達が大事。未だ見ぬ、いずれ会うだろう人達に期待する」
励ますように彼女は言った。
「そして、彼女の事が一番大好き。みんなを、世界を、愛してる」
特別な人を思い起こしているのだろう。その一瞬だけ、真夕は年相応の少女の顔に見えた。
「人も、精霊も、笑いあって、手を取り合い歩める世界が私の理想。そんな世界を大事な人と歩みたい。その為には、全部……全部!」
胸の前で、手を握りしめた。
「何一つ溢さずに守りたい。その為の力を、私に預けて」
固く握った手を開き、大精霊に差し伸べる。
「損はさせないわ。この私、『七夜真夕』の名前にかけて」
彼女は胸を張る。この二つの世界の平和を願い、守護者として立つのに相応しい、堂々たる振る舞いだった。
「これは約束。いえ、契約よ」
「そうか。僕は約束と言ってくれても構わないよ。僕らはそこまで、遠い存在ではないはずだからね」
大精霊はふっと笑った。差し伸べられた真夕の手を取り、少し引き締まった表情を作る。
「――星の光の名の下に、汝、七夜真夕に告げる。その魂の輝きを力と変え、星の救世主となる覚悟はあるか?」
「はい。七夜真夕、守護者として、全てを守ります」
「契約を受理する。星と英雄の記憶を以て、ここに神の力の一端を授けん。目覚めよ、ディマイオス!」
星の記憶石が砕け、虹となって星神器に吸い込まれていく。真夕が手にしたのは純白の本。触れた途端に、その色が、真夕に応じた色に変わる。
「素敵な色だ──ここに誓いは結ばれた。博愛なる守護者よ、君の救世に期待します」
「ええ、期待してくれて構わない」
真夕は頷いた。
「僕とも笑いあってくれるんだろう? その日を楽しみにしているよ」
「約束するわ」
リアルブルーは微笑む。
その姿は、ベールを上げた花嫁の様であった。
七夜・真夕(ka3977)が儀式の間に入ると、大精霊リアルブルーはそう言って微笑み掛けた。
「そうね。だって、大精霊と儀式の間に二人っきりって、そう頻繁にあることじゃないもの」
「その通りだ。最近はけっこう忙しいんだけどね。では、聞かせてもらおうかな。君が守護者になろうとする理由を」
「ええ。あのね、私は今いるこの世界が好きよ。だって、この世界で私は一番大事と言える人に会えた。沢山の友達ができた」
転移してきてからのことを、彼女は思い出す。色んな事があったし、色んな出会いがあったし、色んな人と繋がった。
紅の世界に思いを馳せながらも、真夕は目の前の少年をまっすぐに見る。自分の故郷たる世界の大精霊を。
「その上で、私はリアルブルーをも守りたいの。良い思い出ばかりではないけれど、あそこで私は生まれ育ったの。私を生み育ててくれた、愛してくれた人達がいた場所」
今、クリムゾンウェストに生活の基盤を置いているにしても、彼女がリアルブルーで過ごした時間は変わらない、変えられない。そうでなくては、今の七夜真夕という人間は存在しないのだから。
「喜びも、悲しみも、良いことも、悪いこともあった。たくさんの思い出を有する世界」
今は凍結している青い惑星。ベールを被った花嫁の様、と形容された、美しい星。そこに、彼女の生まれ育った場所がある。
「歪虚だろうと、邪神だろうと、壊させていいものじゃ決してない。だから、このままにしておくなんて出来ない。自分達さえ良ければいい、なんて私の流儀じゃないわ」
真夕の瞳には強い意思が湛えられている。大精霊は、その目を見て、青いまつげをわずかに伏せた。「自分たちさえ良ければいい」ができなくて、ナディアは──。
「リアルブルー」
その様子に気付いた真夕が一歩前に出る。
「私は友達が大事。未だ見ぬ、いずれ会うだろう人達に期待する」
励ますように彼女は言った。
「そして、彼女の事が一番大好き。みんなを、世界を、愛してる」
特別な人を思い起こしているのだろう。その一瞬だけ、真夕は年相応の少女の顔に見えた。
「人も、精霊も、笑いあって、手を取り合い歩める世界が私の理想。そんな世界を大事な人と歩みたい。その為には、全部……全部!」
胸の前で、手を握りしめた。
「何一つ溢さずに守りたい。その為の力を、私に預けて」
固く握った手を開き、大精霊に差し伸べる。
「損はさせないわ。この私、『七夜真夕』の名前にかけて」
彼女は胸を張る。この二つの世界の平和を願い、守護者として立つのに相応しい、堂々たる振る舞いだった。
「これは約束。いえ、契約よ」
「そうか。僕は約束と言ってくれても構わないよ。僕らはそこまで、遠い存在ではないはずだからね」
大精霊はふっと笑った。差し伸べられた真夕の手を取り、少し引き締まった表情を作る。
「――星の光の名の下に、汝、七夜真夕に告げる。その魂の輝きを力と変え、星の救世主となる覚悟はあるか?」
「はい。七夜真夕、守護者として、全てを守ります」
「契約を受理する。星と英雄の記憶を以て、ここに神の力の一端を授けん。目覚めよ、ディマイオス!」
星の記憶石が砕け、虹となって星神器に吸い込まれていく。真夕が手にしたのは純白の本。触れた途端に、その色が、真夕に応じた色に変わる。
「素敵な色だ──ここに誓いは結ばれた。博愛なる守護者よ、君の救世に期待します」
「ええ、期待してくれて構わない」
真夕は頷いた。
「僕とも笑いあってくれるんだろう? その日を楽しみにしているよ」
「約束するわ」
リアルブルーは微笑む。
その姿は、ベールを上げた花嫁の様であった。
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ロニ・カルディス(ka0551) 種族:ドワーフ クラス:聖導士(クルセイダー) 「マスティマ」取得日:2019/01/24 ●「マスティマ」への表明 「これ以上、俺の様なものを生まない為に」 |
●「マスティマ」取得(クリックすると、下にノベルが展開されます)
「本当は俺がこれを使っても良いのかどうか、少し悩んでいた……」
ロニ・カルディス(ka0551)が呟く言葉。それは懺悔にも似た感情が滲み出ていた。
しかし、その言葉は大精霊に向けたものではなかった。
「ここの来る人は多かれ少なかれ葛藤を抱えている。せっかくなんだ、聞かせてくれるかい?」
大精霊は、言葉をかけた。
ロニが抱える悩みに耳を傾ける牧師は、感情を露わにせず視線を宙に泳がす。
ロニは背後にあった――『それ』を一瞥する。
「元々、歪虚への恨みが俺の始まりだった。誰彼構わず襲ってくる歪虚を前に、俺は必死で戦ってきた。ドワーフ社会からも放逐され、様々な国を渡り歩いてきた」
ロニの脳裏に浮かぶ様々な光景。
今でも歪虚に対する恨みは消えていない。
いや、どんなに歪虚と戦ってもこの恨みが晴れる事はないかもしれない。
それでもロニは戦い続ける以外の道を知らない。
「なら、力を求めるのは歪虚への復讐が理由なのかい?」
「どうだろうな。始まりは歪虚だが、今もそうなのかは分からない」
「分からない?」
「俺は歪虚を恨み、嫌っているから戦っていると思っていた。信仰を忘れ、自分の感情に忠実に従った。この行く先はロクなもんじゃない。そう決めつけていたんだ」
――決めつけていた。
その言葉から、語っている感情はロニがかつて抱いていたものだと気付いた。
「俺が本当に嫌っていたのは……歪虚によって誰かが不幸になるという事実の方だった」
思い返してみれば、ロニが戦っている傍には歪虚に苦しめられている人々がいた。
彼らは歪虚と戦う術も持たず、苦しみと悲しみに耐える他なかった。
彼らの表情は自身が抱いていた歪虚の恨みを塗り替えていった。
「俺は……これ以上不幸になる誰かが現れない世界にしたい」
「不幸になる誰かが現れない世界、か。だけど、人が生きる事は誰かに影響を与える事。誰も不幸にならない世界など、本当にできるかな?」
「俺にできる事はささやかな事だ。すべての人間を救う事は難しいかもしれない。それでも……」
ロニは、そこで息を溜めた。
これから口にする言葉を、覚悟と共に吐き出した。
「俺のような、恨みから戦いに出る者が現れなくなる世界を……」
密かに願っていたのだ。
もう、自分のような生き様をしなければならない者が、これ以上出ないように。
断言できる。恨みによる感情で戦い続けても、その先にあるのは後悔と苦悩だけだ。
その真実に気づいたのなら、これは復讐ではない。自分自身を救うための物語なのだ。
「マスティマに乗れば、その理想は遂げられるのかな」
「……約束はできない。だが、せめて自分の前だけでもその理想を貫く。その為に……どうか、俺に力を貸して欲しい。あの、『マスティマ』の力を……」
ロニは再び振り返る。
そこにはただ黙するマスティマの姿があった。
これがあれば、ロニが抱く理想の世界の為に戦える。
そうだ、約束はできない。それでも――その未来を目指す権利を手に入れる。
「良いだろう。――星の光の名の下に、汝、ロニ・カルディスに告げる。その魂の輝きを力と変え、星の救世主となる覚悟はあるか?」
「ああ。俺は戦う。理想の世界の為に」
「契約を受理する。星と英雄の記憶を以て、ここに神の力の一端を授けん。目覚めよ、マスティマ!」
大精霊の声を受け、マスティマからマテリアルが漏れる。
ロニにも分かる。命が吹き込まれるように、マスティマが目覚める瞬間が。
「ここに誓いは結ばれた。冀求なる守護者よ、あなたの救世に期待します」
契約は終わった。
もう目の前にあるマスティマは空の器ではなく、ロニの愛機となった。
「しかし、まさかマスティマに乗れるようになる日が来るとは……」
足元から見上げる。
それは他のCAMとは違う雰囲気を漂わせている。
これからこのマスティマは、ロニと共に戦っていく事になる。
「この掌でどれだけの人を救えるかは、俺次第という事か。世界全てとは言えないが……この手の届く範囲で、一人でも多く救えれば本望だ」
ロニ・カルディス(ka0551)が呟く言葉。それは懺悔にも似た感情が滲み出ていた。
しかし、その言葉は大精霊に向けたものではなかった。
「ここの来る人は多かれ少なかれ葛藤を抱えている。せっかくなんだ、聞かせてくれるかい?」
大精霊は、言葉をかけた。
ロニが抱える悩みに耳を傾ける牧師は、感情を露わにせず視線を宙に泳がす。
ロニは背後にあった――『それ』を一瞥する。
「元々、歪虚への恨みが俺の始まりだった。誰彼構わず襲ってくる歪虚を前に、俺は必死で戦ってきた。ドワーフ社会からも放逐され、様々な国を渡り歩いてきた」
ロニの脳裏に浮かぶ様々な光景。
今でも歪虚に対する恨みは消えていない。
いや、どんなに歪虚と戦ってもこの恨みが晴れる事はないかもしれない。
それでもロニは戦い続ける以外の道を知らない。
「なら、力を求めるのは歪虚への復讐が理由なのかい?」
「どうだろうな。始まりは歪虚だが、今もそうなのかは分からない」
「分からない?」
「俺は歪虚を恨み、嫌っているから戦っていると思っていた。信仰を忘れ、自分の感情に忠実に従った。この行く先はロクなもんじゃない。そう決めつけていたんだ」
――決めつけていた。
その言葉から、語っている感情はロニがかつて抱いていたものだと気付いた。
「俺が本当に嫌っていたのは……歪虚によって誰かが不幸になるという事実の方だった」
思い返してみれば、ロニが戦っている傍には歪虚に苦しめられている人々がいた。
彼らは歪虚と戦う術も持たず、苦しみと悲しみに耐える他なかった。
彼らの表情は自身が抱いていた歪虚の恨みを塗り替えていった。
「俺は……これ以上不幸になる誰かが現れない世界にしたい」
「不幸になる誰かが現れない世界、か。だけど、人が生きる事は誰かに影響を与える事。誰も不幸にならない世界など、本当にできるかな?」
「俺にできる事はささやかな事だ。すべての人間を救う事は難しいかもしれない。それでも……」
ロニは、そこで息を溜めた。
これから口にする言葉を、覚悟と共に吐き出した。
「俺のような、恨みから戦いに出る者が現れなくなる世界を……」
密かに願っていたのだ。
もう、自分のような生き様をしなければならない者が、これ以上出ないように。
断言できる。恨みによる感情で戦い続けても、その先にあるのは後悔と苦悩だけだ。
その真実に気づいたのなら、これは復讐ではない。自分自身を救うための物語なのだ。
「マスティマに乗れば、その理想は遂げられるのかな」
「……約束はできない。だが、せめて自分の前だけでもその理想を貫く。その為に……どうか、俺に力を貸して欲しい。あの、『マスティマ』の力を……」
ロニは再び振り返る。
そこにはただ黙するマスティマの姿があった。
これがあれば、ロニが抱く理想の世界の為に戦える。
そうだ、約束はできない。それでも――その未来を目指す権利を手に入れる。
「良いだろう。――星の光の名の下に、汝、ロニ・カルディスに告げる。その魂の輝きを力と変え、星の救世主となる覚悟はあるか?」
「ああ。俺は戦う。理想の世界の為に」
「契約を受理する。星と英雄の記憶を以て、ここに神の力の一端を授けん。目覚めよ、マスティマ!」
大精霊の声を受け、マスティマからマテリアルが漏れる。
ロニにも分かる。命が吹き込まれるように、マスティマが目覚める瞬間が。
「ここに誓いは結ばれた。冀求なる守護者よ、あなたの救世に期待します」
契約は終わった。
もう目の前にあるマスティマは空の器ではなく、ロニの愛機となった。
「しかし、まさかマスティマに乗れるようになる日が来るとは……」
足元から見上げる。
それは他のCAMとは違う雰囲気を漂わせている。
これからこのマスティマは、ロニと共に戦っていく事になる。
「この掌でどれだけの人を救えるかは、俺次第という事か。世界全てとは言えないが……この手の届く範囲で、一人でも多く救えれば本望だ」
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ユーリ・ヴァレンティヌス(ka0239) 種族:エルフ クラス:闘狩人(エンフォーサー) 「守護者」取得日:2019/02/15 「守護者武器」:[SW]星神器「アリマタヤ」 ●「守護者」への表明 「明日を斬り拓く為に、共に歩む為に」 |
●「守護者」契約(クリックすると、下にノベルが展開されます)
ハンターズ・ソサエティ訓練場に設置された契約の間。
そこで、ユーリ・ヴァレンティヌス(ka0239)はひとりの少年と対面する。
「リアルブルー大精霊……」
「ようこそ、さらなる力を求める者。その理由を聞かせてくれるかな」
姿こそ優しげな少年としか見えないが、この静かな空間で対峙していると、強大な力の気配に圧倒されそうになる。
ユーリは長く細い息を吐き、丹田に力を籠めた。
研鑽を積んで身につけた剣術は、ユーリの人生そのものだ。
「私は剣そのもの。大切なものを守る為の『道具』であればいい、その為に自分がどれだけ犠牲になろうと構わない……そう思っていた」
「つまり、今はそうではないということ?」
ユーリが軽く目を伏せる。
まだあどけない少女のような白い横顔に、歳月の積み重ねの陰りがよぎる。
「ある人が、それでは駄目だと言ってくれたんです」
大精霊は穏やかな笑みを浮かべ、僅かに首をかしげて先を促す。
「私を私として、ひとりの命ある存在として受け入れてくれる人……」
ユーリは自分の身体を抱くように、腕を交差させる。
「……あの時。過去のクリムゾンウェストでの戦いで『死んだ』時。私は自分の無力さを思い知った」
自分を大切だと言ってくれた人達。
自分が大事に思う人達。
その人達を遺して死ぬこと、その無念さ、苦しさ。
共に生き、未来を共に作り上げる事が出来なくなることの恐怖。
「道具であればそんなことはきっと感じない。人として生きることが私の望みだと知った。だから、大切な人達と共に明日を歩む為に、力を求めたんだ」
「生物としてのプリミティブな願望だね。それは『正しい』と思うよ」
大精霊の言葉に、ユーリは真っ直ぐ顔を上げた。
「勿論、これは偽りの無い私自身の想い。だけど、私が力を求めたのはそれだけではないんです」
自分の為に、自分の手が届く人々の為に、使う力。
ユーリはこれからも研鑽し、自らその力を得ることもできるだろう。
だが――。
ユーリが交差していた腕をほどき、両手を胸の前で何かをすくい上げようとする形に開いた。
「あの戦いの折、共に戦った精霊達が、私に感謝と謝罪の言葉を投げかけてくれた」
正しくは『言葉』ではなかったかもしれない。
聴覚ではなく、もっと深いところに響いた『言葉』は余りにも悲しく響き、どこまでも優しく寄り添った。
今でも忘れることはできない。
思い返すたびに胸の奥に鋭い痛みが奔り、熱い血が噴き出すようだ。
「あれが過去の記録だったのだとしても、その言葉は唯の記録なんかじゃない……。彼等の心からの言葉なんだって信じてる」
自分自身、そして自分の大切なものを失う悲しみは、精霊も同じ。
共に戦う仲間を思う気持ちも同じ。
そして精霊達もまた、ユーリを同じ気持ちを持つ存在だと認めてくれた。
あの世界での『死』の間際に感じた美しい光は、ユーリにとって『真実』だ。
だが胸が震えるような共感は、戦火の中であっという間に失われてしまったのだ。
「私は精霊達のその想いに対して、まだ何も返してない。彼等のその想いに応えたいと思っているの」
ユーリは大精霊に向かって、手を差し伸べた。
「斬り拓く刃は手に入れた。なら今度は守る為の力を手に入れる。それが理由です」
リアルブルー大精霊は、やはり穏やかに微笑んでいた。
だが唇だけを震わせて囁く言葉は、どこか悲しげに響いた。
「どんなに力を尽くしても守れないものはある。力を尽くせば尽くすほど、無力さに打ちのめされるよ。そのときはどうする?」
リアルブルー大精霊がその言葉に籠めた想いは、ユーリにも痛いほど理解できた。
だからこそ自分の想いを籠めた言葉を返す。
「起き上がって、もっともっと強くなる」
特別なことじゃない。これまでずっとそうしてきたのだ。
「何度倒れても立ち上がる。そういうのは得意なんです。気絶しても倒れなかった女なので……」
苦笑を浮かべながら、過去を想う。これが旅路の果てに得た答え。だからきっと、間違いじゃない。
大精霊は静かに頷き、傍に立てかけてあった盾を手にした。
「――星の光の名の下に、汝、ユーリ・ヴァレンティヌスに告げる。その魂の輝きを力と変え、星の救世主となる覚悟はあるか?」
純白の盾に、ユーリの揺るぎない意志を宿す顔が映り込む。
「この命の続く限り。いえ、命尽きて魂となっても、全てを守り抜くと誓約します」
その瞬間、ユーリは自分の身体が何か暖かなものに包まれたように感じた。
(――いるの? ああ、そうなんだ――)
大精霊が盾を目の高さに掲げる。
「契約を受理する。星と英雄の記憶を以て、ここに神の力の一端を授けん。目覚めよ、アリマタヤ!」
大精霊の声が凛と響く。
眩い白銀の光が盾からあふれ出し、目を開けているのが辛いほどだ。
そして突然、ユーリは腕にかかる重みを感じる。
「ここに誓いは結ばれた。愛憐なる守護者よ、君の救世に期待する」
いつの間にかアリマタヤはユーリの手に移っていた。
ユーリは盾を構え、居ずまいを正す。
「やり遂げて見せるよ。皆の想いが力をくれるから」
初めて手にしたアリマタヤはしっくりと手に馴染み、ユーリの心に寄り添うかのように淡い光を放っていた。
そこで、ユーリ・ヴァレンティヌス(ka0239)はひとりの少年と対面する。
「リアルブルー大精霊……」
「ようこそ、さらなる力を求める者。その理由を聞かせてくれるかな」
姿こそ優しげな少年としか見えないが、この静かな空間で対峙していると、強大な力の気配に圧倒されそうになる。
ユーリは長く細い息を吐き、丹田に力を籠めた。
研鑽を積んで身につけた剣術は、ユーリの人生そのものだ。
「私は剣そのもの。大切なものを守る為の『道具』であればいい、その為に自分がどれだけ犠牲になろうと構わない……そう思っていた」
「つまり、今はそうではないということ?」
ユーリが軽く目を伏せる。
まだあどけない少女のような白い横顔に、歳月の積み重ねの陰りがよぎる。
「ある人が、それでは駄目だと言ってくれたんです」
大精霊は穏やかな笑みを浮かべ、僅かに首をかしげて先を促す。
「私を私として、ひとりの命ある存在として受け入れてくれる人……」
ユーリは自分の身体を抱くように、腕を交差させる。
「……あの時。過去のクリムゾンウェストでの戦いで『死んだ』時。私は自分の無力さを思い知った」
自分を大切だと言ってくれた人達。
自分が大事に思う人達。
その人達を遺して死ぬこと、その無念さ、苦しさ。
共に生き、未来を共に作り上げる事が出来なくなることの恐怖。
「道具であればそんなことはきっと感じない。人として生きることが私の望みだと知った。だから、大切な人達と共に明日を歩む為に、力を求めたんだ」
「生物としてのプリミティブな願望だね。それは『正しい』と思うよ」
大精霊の言葉に、ユーリは真っ直ぐ顔を上げた。
「勿論、これは偽りの無い私自身の想い。だけど、私が力を求めたのはそれだけではないんです」
自分の為に、自分の手が届く人々の為に、使う力。
ユーリはこれからも研鑽し、自らその力を得ることもできるだろう。
だが――。
ユーリが交差していた腕をほどき、両手を胸の前で何かをすくい上げようとする形に開いた。
「あの戦いの折、共に戦った精霊達が、私に感謝と謝罪の言葉を投げかけてくれた」
正しくは『言葉』ではなかったかもしれない。
聴覚ではなく、もっと深いところに響いた『言葉』は余りにも悲しく響き、どこまでも優しく寄り添った。
今でも忘れることはできない。
思い返すたびに胸の奥に鋭い痛みが奔り、熱い血が噴き出すようだ。
「あれが過去の記録だったのだとしても、その言葉は唯の記録なんかじゃない……。彼等の心からの言葉なんだって信じてる」
自分自身、そして自分の大切なものを失う悲しみは、精霊も同じ。
共に戦う仲間を思う気持ちも同じ。
そして精霊達もまた、ユーリを同じ気持ちを持つ存在だと認めてくれた。
あの世界での『死』の間際に感じた美しい光は、ユーリにとって『真実』だ。
だが胸が震えるような共感は、戦火の中であっという間に失われてしまったのだ。
「私は精霊達のその想いに対して、まだ何も返してない。彼等のその想いに応えたいと思っているの」
ユーリは大精霊に向かって、手を差し伸べた。
「斬り拓く刃は手に入れた。なら今度は守る為の力を手に入れる。それが理由です」
リアルブルー大精霊は、やはり穏やかに微笑んでいた。
だが唇だけを震わせて囁く言葉は、どこか悲しげに響いた。
「どんなに力を尽くしても守れないものはある。力を尽くせば尽くすほど、無力さに打ちのめされるよ。そのときはどうする?」
リアルブルー大精霊がその言葉に籠めた想いは、ユーリにも痛いほど理解できた。
だからこそ自分の想いを籠めた言葉を返す。
「起き上がって、もっともっと強くなる」
特別なことじゃない。これまでずっとそうしてきたのだ。
「何度倒れても立ち上がる。そういうのは得意なんです。気絶しても倒れなかった女なので……」
苦笑を浮かべながら、過去を想う。これが旅路の果てに得た答え。だからきっと、間違いじゃない。
大精霊は静かに頷き、傍に立てかけてあった盾を手にした。
「――星の光の名の下に、汝、ユーリ・ヴァレンティヌスに告げる。その魂の輝きを力と変え、星の救世主となる覚悟はあるか?」
純白の盾に、ユーリの揺るぎない意志を宿す顔が映り込む。
「この命の続く限り。いえ、命尽きて魂となっても、全てを守り抜くと誓約します」
その瞬間、ユーリは自分の身体が何か暖かなものに包まれたように感じた。
(――いるの? ああ、そうなんだ――)
大精霊が盾を目の高さに掲げる。
「契約を受理する。星と英雄の記憶を以て、ここに神の力の一端を授けん。目覚めよ、アリマタヤ!」
大精霊の声が凛と響く。
眩い白銀の光が盾からあふれ出し、目を開けているのが辛いほどだ。
そして突然、ユーリは腕にかかる重みを感じる。
「ここに誓いは結ばれた。愛憐なる守護者よ、君の救世に期待する」
いつの間にかアリマタヤはユーリの手に移っていた。
ユーリは盾を構え、居ずまいを正す。
「やり遂げて見せるよ。皆の想いが力をくれるから」
初めて手にしたアリマタヤはしっくりと手に馴染み、ユーリの心に寄り添うかのように淡い光を放っていた。
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ユウ(ka6891) 種族:ドラグーン クラス:疾影士(ストライダー) サブクラス「守護者」取得日:2019/02/15 ●「守護者」への表明 「ヒトも精霊も皆が手を紡ぎ歩める未来を作りたい」 |
●「守護者」契約(クリックすると、下にノベルが展開されます)
「どうして君は、守護者になるんだい?」
契約の場に現れたユウ(ka6891)に大精霊リアルブルーは問いかける。
腕や肩に生えた蒼白の美しい鱗を見れば、ユウがドラグーンであることがわかった。
「自分がまだ子供で多くの事が未熟なことは分かっています」
ドラグーンであるユウは、見た目より実年齢は若い。それでも、品行方正な態度は、彼女が若くても愚かではないことの証左だった。
「それでも、龍園から外に出てハンターとして活動した1年半程の歳月で今まで知らなかった世界の大きさと美しさ楽しさと幸せ……そして悲しさと様々な事を見て感じ知りました」
「なぜ、龍園の外に出ようと?」
「龍騎士である両親の希望です。でも、それは切っ掛けであって……今となっては自分の意思です」
狭い世界にあれば、見なくて済んだものもあったろうに、とリアルブルーは考える。けれど、ユウはそれでもなお、星の守護者たる道を選んだのだ。
「歪虚の脅威がある中で、ヒトとヒトが争い合う、他種族への排他的思想や迫害、精霊達への無関心……でもそれと同じくらいにヒトとヒト、精霊とヒト、そしてヒトと歪虚の繋がりを信じ求め努力するヒト達を見てきました」
世界にありふれた喜劇と悲劇。リアルブルーも星の意志として、地球人の姿を見てきた。悪意の中で、時折輝く善性を、知っている。
「私は精霊もヒト……そして歪虚に堕ちてしまったヒト達も皆さんが手を紡ぎ歩める未来を創る手助けをしたい」
「歪虚も……?」
「はい、私は彼らだって、守りたいんです」
ユウの瞳に濁りはない。
その心は、偽善でも非常識気取りでもなんでもない。
本当に、彼らだって守りたいと思っているのだ。
「……未来、か」
未来は、まだここにないから、いくらでも希望を詰め込めるもの。或いは、徹底的に悲観できるもの。
それでも、ユウは未来を信じて、戦うことに決めた。
「その為に青龍様、精霊様、龍園の皆、クリムゾンウエスト、リアルブルーの皆さんが住まう世界を守る力が欲しい。紡ぎ繋がれ私の願う未来がきっと創られるから……その為に世界を守る力が」
「たまにそういうハンターがいるけど、僕は同じ言葉を語ろう。“それは簡単な道ではない”と」
狩人は獣に同情してはいけない。獣は狩人に同情するとは限らないのだから、討てねば討たれるのは狩人の方だし、そうではなくとも食い扶持は稼げない。
狩る者と狩られる者の間には絶対的な明暗があるのだ。
「カレンデュラのようなケースは例外だよ?」
「だとしても……いざその例外と出会った時のために、選択肢は作っておきたいんです。力がなければ、願う事すらできませんから」
「いいだろう。それも星が認めた力だというのなら、君の想いに、力を」
リアルブルーがユウの手を取った。そして、厳かに契約の言葉を紡ぐ。
「――星の光の名の下に、汝、ユウに告げる。その魂の輝きを力と変え、星の救世主となる覚悟はあるか?」
「ヒトも精霊も皆が手を紡ぎ歩める未来を作りたい。大精霊様、これが私の想いです」
「契約を受理する。星と英雄の記憶を以て、ここに神の力の一端を授けん。目覚めよ、ガーディアン!」
星の記憶石が砕け、煌めく破片がユウの体に吸い込まれていく。
「ここに誓いは結ばれた。純真なる守護者よ、君の救世に期待します」
ユウは身に湧き上がる力を温かく受け入れた。
その表情は、この場にやって来た時と変わらず、清らかなものであった。
契約の場に現れたユウ(ka6891)に大精霊リアルブルーは問いかける。
腕や肩に生えた蒼白の美しい鱗を見れば、ユウがドラグーンであることがわかった。
「自分がまだ子供で多くの事が未熟なことは分かっています」
ドラグーンであるユウは、見た目より実年齢は若い。それでも、品行方正な態度は、彼女が若くても愚かではないことの証左だった。
「それでも、龍園から外に出てハンターとして活動した1年半程の歳月で今まで知らなかった世界の大きさと美しさ楽しさと幸せ……そして悲しさと様々な事を見て感じ知りました」
「なぜ、龍園の外に出ようと?」
「龍騎士である両親の希望です。でも、それは切っ掛けであって……今となっては自分の意思です」
狭い世界にあれば、見なくて済んだものもあったろうに、とリアルブルーは考える。けれど、ユウはそれでもなお、星の守護者たる道を選んだのだ。
「歪虚の脅威がある中で、ヒトとヒトが争い合う、他種族への排他的思想や迫害、精霊達への無関心……でもそれと同じくらいにヒトとヒト、精霊とヒト、そしてヒトと歪虚の繋がりを信じ求め努力するヒト達を見てきました」
世界にありふれた喜劇と悲劇。リアルブルーも星の意志として、地球人の姿を見てきた。悪意の中で、時折輝く善性を、知っている。
「私は精霊もヒト……そして歪虚に堕ちてしまったヒト達も皆さんが手を紡ぎ歩める未来を創る手助けをしたい」
「歪虚も……?」
「はい、私は彼らだって、守りたいんです」
ユウの瞳に濁りはない。
その心は、偽善でも非常識気取りでもなんでもない。
本当に、彼らだって守りたいと思っているのだ。
「……未来、か」
未来は、まだここにないから、いくらでも希望を詰め込めるもの。或いは、徹底的に悲観できるもの。
それでも、ユウは未来を信じて、戦うことに決めた。
「その為に青龍様、精霊様、龍園の皆、クリムゾンウエスト、リアルブルーの皆さんが住まう世界を守る力が欲しい。紡ぎ繋がれ私の願う未来がきっと創られるから……その為に世界を守る力が」
「たまにそういうハンターがいるけど、僕は同じ言葉を語ろう。“それは簡単な道ではない”と」
狩人は獣に同情してはいけない。獣は狩人に同情するとは限らないのだから、討てねば討たれるのは狩人の方だし、そうではなくとも食い扶持は稼げない。
狩る者と狩られる者の間には絶対的な明暗があるのだ。
「カレンデュラのようなケースは例外だよ?」
「だとしても……いざその例外と出会った時のために、選択肢は作っておきたいんです。力がなければ、願う事すらできませんから」
「いいだろう。それも星が認めた力だというのなら、君の想いに、力を」
リアルブルーがユウの手を取った。そして、厳かに契約の言葉を紡ぐ。
「――星の光の名の下に、汝、ユウに告げる。その魂の輝きを力と変え、星の救世主となる覚悟はあるか?」
「ヒトも精霊も皆が手を紡ぎ歩める未来を作りたい。大精霊様、これが私の想いです」
「契約を受理する。星と英雄の記憶を以て、ここに神の力の一端を授けん。目覚めよ、ガーディアン!」
星の記憶石が砕け、煌めく破片がユウの体に吸い込まれていく。
「ここに誓いは結ばれた。純真なる守護者よ、君の救世に期待します」
ユウは身に湧き上がる力を温かく受け入れた。
その表情は、この場にやって来た時と変わらず、清らかなものであった。
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マリィア・バルデス(ka5848) 種族:人間(リアルブルー) クラス:猟撃士(イェーガー) 「マスティマ」取得日:2019/02/15 ●「マスティマ」への表明 「自分が出来る最大限のことをしたいと思ったからよ」 |
●「マスティマ」取得(クリックすると、下にノベルが展開されます)
「将官であれば戦略的な対応もできるかもしれない」
大精霊を前にしたマリィア・バルデス(ka5848)が最初に呟いたのは、その一言だった。
自分は決して優秀な人材ではない。
大学出の凡庸な尉官に過ぎず、戦術レベルも手に余るただのCAMパイロットだった。
「君は星に認められてこの場に立っている。それでも自分は凡庸だと言うんだね」
「……そう」
リアルブルー大精霊の問いかけにも、マリィアはそう答える。
「『現場』で戦う軍人なんてみんなそう。リアルブルーが凍結されて崑崙がクリムゾンウェストへ召喚されたというのに、自分が世界の為にできる事なんて……左程多くはないわ」
マリィア自身にも分かっている。
三つの世界を巡る邪神との戦いも、終幕が近づいている事を。
それが激しい戦いになり、世界の行く末がかかった戦いだとも理解している。
だが、その時に自分に何ができるのか――。
「ならば敢えて問おう。自らを凡庸と評する君はその時、何ができる? そして……何を欲する?」
大精霊は再び問いかける。
マリィアの抱く答えに対して、純粋な興味があったからだ。
「そうね。私は武器なら迷わず銃器を選ぶ。確かに幻獣も好きだけど、騎乗するなら機械。道具は整備した分だけ必ず応えてくれるから」
「では、銃器を持って戦う事を望むのかい?」
「いいえ。少し違うわ。如何なる戦場であっても、戦いの中で命を散らすなら私は他の命を巻き込まずに我が身一つで逝きたい。銃を握って戦うだけでは駄目」
マリィアは、おそらく最期の瞬間までリアルブルーの『軍人』だ。
どんな理由を付けようとも、自分は戦場を動かす歯車に過ぎない。それも交換可能で安価な歯車――。
不特定多数の中の“一”。それ以上の生き方はできないし、しようとも思わない。
「戦い抜いた上、最期は孤独の死を迎える。それがリアルブルーの軍人ということか」
「…………」
「君には、守りたい物や大切な者はいないのかい? 最期の瞬間、その者の傍らで安らかに終わることもできるはずだ。守護者なんて非凡な力を求めなければね」
大精霊の言葉に、マリィアは一瞬揺らぐ。
軍人と断言しているが、小さい子を猫かわいがりするのは好きだし、好意を持つ相手もいる。好き好んで死にたいなんて思うはずがない。
――それでも。
マリィアには『これしかない』。体一つで覚えたこの芸だけが、過去の自分を形成してきた物だ。傍らにあの人がいるなら良いけれど、そんな贅沢は許されない。
だから……。
「ええ。私は軍人。骨の髄まで軍人よ。でも、命を賭けるべき時にはそれを最高値で吹っ掛けたい。たとえ、戦場の歯車でも私の命は絶対に安売りしない。私は……この身が砕け散ろうとも、マスティマと共に最期まで戦い続けたい」
マリィアは断言した。
それは、一種の覚悟と呼べる代物だ。
「だろう。その覚悟、見届けた。――星の光の名の下に、汝、マリィア・バルデスに告げる。その魂の輝きを力に変え、星の救世主となる覚悟はあるか?」
「星を守護する契約に同意します。リアルブルーを解放し、ファナティックブラッドを退け、命をあるがままの命として守るために……私はマスティマの力を求めます」
大精霊の前に傅くマリィア。
マスティマならば、マリィアの願いを必ず叶えてくれるはずだ。
「契約を受理する。星と英雄の記憶を以て、ここに神の力の一端を授けん。目覚めよ、マスティマ!」
結ばれる契約。
魂の器は炎を宿し、鮮やかな翠色に染め上げられていく。
それはマリィアが最期を共にする兵器を手にした瞬間だった。
「ここに誓いは結ばれた。歯車なる守護者よ、あなたの救世に期待する」
もうマリィアは選んでしまった。
数多ある可能性から、マリィアは『軍人』の生き様を。
戦場で歯車として戦う運命を。
そして――戦いの中で死を迎えるの宿命を。
「“歯車”は、本当に凡庸で替えの効く存在なのかな」
マスティマを見上げながら、大精霊は呟く。
「この世界は無限に連なっている。どんなピースも……なるほど、きっと替えは効く。でも、替えが効くということは、“価値が低い”ということじゃない」
契約の間の外に広がる青空。大精霊の指先に吸い込まれるように、マリィアの瞳も青を宿した。
「歯車がハマる場所は、きっと一つじゃないよ。マスティマは自由だ。どんな世界にも飛んでいける力だ。君の望む通り、どこにでも連れて行ってくれるから」
今はどんな言葉を返せばいいのかわからない。
大精霊の前で頭を垂れたマリィアの髪を、吹き込む風がなびかせていた。
大精霊を前にしたマリィア・バルデス(ka5848)が最初に呟いたのは、その一言だった。
自分は決して優秀な人材ではない。
大学出の凡庸な尉官に過ぎず、戦術レベルも手に余るただのCAMパイロットだった。
「君は星に認められてこの場に立っている。それでも自分は凡庸だと言うんだね」
「……そう」
リアルブルー大精霊の問いかけにも、マリィアはそう答える。
「『現場』で戦う軍人なんてみんなそう。リアルブルーが凍結されて崑崙がクリムゾンウェストへ召喚されたというのに、自分が世界の為にできる事なんて……左程多くはないわ」
マリィア自身にも分かっている。
三つの世界を巡る邪神との戦いも、終幕が近づいている事を。
それが激しい戦いになり、世界の行く末がかかった戦いだとも理解している。
だが、その時に自分に何ができるのか――。
「ならば敢えて問おう。自らを凡庸と評する君はその時、何ができる? そして……何を欲する?」
大精霊は再び問いかける。
マリィアの抱く答えに対して、純粋な興味があったからだ。
「そうね。私は武器なら迷わず銃器を選ぶ。確かに幻獣も好きだけど、騎乗するなら機械。道具は整備した分だけ必ず応えてくれるから」
「では、銃器を持って戦う事を望むのかい?」
「いいえ。少し違うわ。如何なる戦場であっても、戦いの中で命を散らすなら私は他の命を巻き込まずに我が身一つで逝きたい。銃を握って戦うだけでは駄目」
マリィアは、おそらく最期の瞬間までリアルブルーの『軍人』だ。
どんな理由を付けようとも、自分は戦場を動かす歯車に過ぎない。それも交換可能で安価な歯車――。
不特定多数の中の“一”。それ以上の生き方はできないし、しようとも思わない。
「戦い抜いた上、最期は孤独の死を迎える。それがリアルブルーの軍人ということか」
「…………」
「君には、守りたい物や大切な者はいないのかい? 最期の瞬間、その者の傍らで安らかに終わることもできるはずだ。守護者なんて非凡な力を求めなければね」
大精霊の言葉に、マリィアは一瞬揺らぐ。
軍人と断言しているが、小さい子を猫かわいがりするのは好きだし、好意を持つ相手もいる。好き好んで死にたいなんて思うはずがない。
――それでも。
マリィアには『これしかない』。体一つで覚えたこの芸だけが、過去の自分を形成してきた物だ。傍らにあの人がいるなら良いけれど、そんな贅沢は許されない。
だから……。
「ええ。私は軍人。骨の髄まで軍人よ。でも、命を賭けるべき時にはそれを最高値で吹っ掛けたい。たとえ、戦場の歯車でも私の命は絶対に安売りしない。私は……この身が砕け散ろうとも、マスティマと共に最期まで戦い続けたい」
マリィアは断言した。
それは、一種の覚悟と呼べる代物だ。
「だろう。その覚悟、見届けた。――星の光の名の下に、汝、マリィア・バルデスに告げる。その魂の輝きを力に変え、星の救世主となる覚悟はあるか?」
「星を守護する契約に同意します。リアルブルーを解放し、ファナティックブラッドを退け、命をあるがままの命として守るために……私はマスティマの力を求めます」
大精霊の前に傅くマリィア。
マスティマならば、マリィアの願いを必ず叶えてくれるはずだ。
「契約を受理する。星と英雄の記憶を以て、ここに神の力の一端を授けん。目覚めよ、マスティマ!」
結ばれる契約。
魂の器は炎を宿し、鮮やかな翠色に染め上げられていく。
それはマリィアが最期を共にする兵器を手にした瞬間だった。
「ここに誓いは結ばれた。歯車なる守護者よ、あなたの救世に期待する」
もうマリィアは選んでしまった。
数多ある可能性から、マリィアは『軍人』の生き様を。
戦場で歯車として戦う運命を。
そして――戦いの中で死を迎えるの宿命を。
「“歯車”は、本当に凡庸で替えの効く存在なのかな」
マスティマを見上げながら、大精霊は呟く。
「この世界は無限に連なっている。どんなピースも……なるほど、きっと替えは効く。でも、替えが効くということは、“価値が低い”ということじゃない」
契約の間の外に広がる青空。大精霊の指先に吸い込まれるように、マリィアの瞳も青を宿した。
「歯車がハマる場所は、きっと一つじゃないよ。マスティマは自由だ。どんな世界にも飛んでいける力だ。君の望む通り、どこにでも連れて行ってくれるから」
今はどんな言葉を返せばいいのかわからない。
大精霊の前で頭を垂れたマリィアの髪を、吹き込む風がなびかせていた。
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キヅカ・リク(ka0038) 種族:人間(リアルブルー) クラス:機導師(アルケミスト) 「マスティマ」取得日:2019/03/20 ●「マスティマ」への表明 「あの日の答えを見つけたんだ。それを叶える為に……変わろうと思う」 |
●「マスティマ」取得(クリックすると、下にノベルが展開されます)
ある一人の男がいた。
その男は凡庸だと自己評価しながらも、守護者としての力を渇望した。
それを大精霊から矛盾と指摘された男は、自らの中で葛藤する。
自分が望む事は何か。
力とは何か。
男は、様々な経験を通して一つの答えへと辿り着く。
「聞かせてくれるかな? 再びこの場に足を踏み入れた理由を」
大精霊リアルブルーを前に、キヅカ・リク(ka0038)は息を呑んだ。
椅子に腰掛けた青年が、リアルブルーを司る大精霊だと言われても俄には信じられない。
「あの日の答えを見つけたんだ。それを叶える為に……変わろうと思う」
あの日。
キヅカは、ハッキリとそう口にした。
リアルブルーにはその日がいつなのかは分からない。
だが、この期に及んで口にした言葉だ。相応の覚悟がある事は分かる。
「……それで?」
「本当は変わる事が怖かったんだ。あの日の事を過去にしてしまいそうで……この胸の痛みが消えてしまいそうで……」
自分に言い聞かせるように、言葉をゆっくりと吐き出すキヅカ。
「僕が守護者になった時……僕は、『明日』を語れなかった。漠然とした未来はあっても、霞が掛かったように前が見えない。他の守護者のような夢や希望を口にはできなかった。だから、大精霊に言われてから考えたんだ。大精霊が身を挺して作ってくれた今を生きながら」
守護者となったあの日から、キヅカは悩み続けた。
救おうとして、救えなかった。
変えようとして変えられなかった。
あの時も、今も、そしてこれからも、きっと悲しい現実が訪れる。
――それでも。
キヅカは手を伸ばし続ける。
クリムゾンウェストの大精霊は、ナディアと共にリアルブルーを守ろうと戦い抜いた。
最後まで諦めずに戦い抜こうというその姿は、キヅカの迷いにひとつの答えを与えたのだ。
「随分と大きく出たね。すべてを救うつもりなの?」
「理想だとは分かってる。でも、何かを変えるって理想がすべての始まりじゃないか」
あの日、キヅカを信じた人は確実にいる。
そして、それから信じた人は増えている。
だから、キヅカは前へ歩み続ける事を選んだ。
今もその理想が、情熱がキヅカの心で輝き続ける。
「護りたいものを守れる強さ。それを信じられなくなる弱さ。そうした物を全部受け入れて……僕は、手を伸ばすんだ」
「…………」
「変える事を、変わる事をもう恐れたりしない。それがあの日の祈りの、願いの……そして僕自身を救う答えだと思うから」
「変われる事を示す為に力を求めるのかい?」
「ああ。誰だって変われる。今のリアルブルーを覆う絶望も、その前にあった日常も。きっと望めば変えられる。誰もが持っている“可能性”なんだから」
未来は先が見えない。
だが、見えないからこそ人々は理想を追い求める。
それはかつて大精霊が彼をそう称したように、矛盾なのだろうか?
そうではない。不確定であると知りながら、手段も目的も狂っているかもしれないと知りながら、理想に向かって手を伸ばす。
その為に力を――星神機「マスティマ」を望んだ。
「一つ、言っておきたい事があるんだ」
リアルブルーは、足を組んでキヅカを見据える。
突然の改まった態度にキヅカは思わず警戒する。
「話を聞く限り、まるで君は理想を追い求める事がすべてのように思えるんだ。変わる事を決意したのはいい。だが、それは一歩踏み出した理由に過ぎず、相変わらず先の見えない未来で君は藻掻いている」
キヅカの決意は変わる事。変われば理想に近付ける。それを実現する為にマスティマを求めた。
しかし、リアルブルーは前に進む事を決意したばかりで未来に不安を抱えていると考えたようだ。
「僕では、未来が変えられないと?」
「いや、そうじゃないんだ。何と言えばいいかな……。君は他の守護者よりも不安定な気がする。脆く繊細で、触れれば壊れそうな心を持っている」
キヅカの話からリアルブルーはそのように評価したようだ。
まだ歩み始めたばかりで壮大な理想を掲げた。
しかし、キヅカは未だ心の何処かで迷いがあると見られたのだろうか。
「それはとても人間らしいんだ。迷い傷付き、その中で理想を求める。ちょっと守護者らしくないけど、そういう存在は嫌いじゃない。だから、見せてくれないかな? 無様でも藻掻き苦しいながら勝ち取る未来を」
「けっこうきついこと言うね……大精霊ってみんなそうなの?」
「さてね。ただ、それも未来への可能性なんだろう。邪神との闘いはきっと、そういうものになる。ひとつの正義だけでは勝てない、矛盾でなければ貫けないものにね」
少年が何を言っているのか、キヅカには理解できなかった。
だからこの話はこれで終わりだ。少なくとも――今この時においては。
「――星の光の名の下に、汝、キヅカ・リクに告げる。その魂の輝きを力と変え、星の救世主となる覚悟はあるか?」
「ああ」
「契約を受理する。星と英雄の記憶を以て、ここに神の力の一端を授けん。目覚めよ、マスティマ!」
リアルブルーの声に応じて、マスティマの機体に力が宿る。
マテリアルの流れをキヅカは感じ取った。
「ここに誓いは結ばれた。矛盾なる守護者よ、君の救世に期待しよう」
「僕の称号はけっきょく矛盾なの?」
「ちょうどいいじゃないか。絶対に貫けないものを貫いてみせればいい」
頑張れよと言わんばかりにひらひらと手を振って、大精霊は去って行った。
リアルブルーとの謁見を終えた後、キヅカはマスティマを見上げた。
「……随分と時間がかかっちゃったけど、それでも見つけたよ。君がくれた、大切な物。どこまでいけるか分からないけど……君が何処にいても誇って貰えるように」
キヅカはマスティマより更に上に広がる青空に目を向ける。
いつもと変わらない空と雲。
だが、世界は間違いなく変わり始めている。
キヅカは、声にならない小声でそっと呟いた。
――行ってきます。
その男は凡庸だと自己評価しながらも、守護者としての力を渇望した。
それを大精霊から矛盾と指摘された男は、自らの中で葛藤する。
自分が望む事は何か。
力とは何か。
男は、様々な経験を通して一つの答えへと辿り着く。
「聞かせてくれるかな? 再びこの場に足を踏み入れた理由を」
大精霊リアルブルーを前に、キヅカ・リク(ka0038)は息を呑んだ。
椅子に腰掛けた青年が、リアルブルーを司る大精霊だと言われても俄には信じられない。
「あの日の答えを見つけたんだ。それを叶える為に……変わろうと思う」
あの日。
キヅカは、ハッキリとそう口にした。
リアルブルーにはその日がいつなのかは分からない。
だが、この期に及んで口にした言葉だ。相応の覚悟がある事は分かる。
「……それで?」
「本当は変わる事が怖かったんだ。あの日の事を過去にしてしまいそうで……この胸の痛みが消えてしまいそうで……」
自分に言い聞かせるように、言葉をゆっくりと吐き出すキヅカ。
「僕が守護者になった時……僕は、『明日』を語れなかった。漠然とした未来はあっても、霞が掛かったように前が見えない。他の守護者のような夢や希望を口にはできなかった。だから、大精霊に言われてから考えたんだ。大精霊が身を挺して作ってくれた今を生きながら」
守護者となったあの日から、キヅカは悩み続けた。
救おうとして、救えなかった。
変えようとして変えられなかった。
あの時も、今も、そしてこれからも、きっと悲しい現実が訪れる。
――それでも。
キヅカは手を伸ばし続ける。
クリムゾンウェストの大精霊は、ナディアと共にリアルブルーを守ろうと戦い抜いた。
最後まで諦めずに戦い抜こうというその姿は、キヅカの迷いにひとつの答えを与えたのだ。
「随分と大きく出たね。すべてを救うつもりなの?」
「理想だとは分かってる。でも、何かを変えるって理想がすべての始まりじゃないか」
あの日、キヅカを信じた人は確実にいる。
そして、それから信じた人は増えている。
だから、キヅカは前へ歩み続ける事を選んだ。
今もその理想が、情熱がキヅカの心で輝き続ける。
「護りたいものを守れる強さ。それを信じられなくなる弱さ。そうした物を全部受け入れて……僕は、手を伸ばすんだ」
「…………」
「変える事を、変わる事をもう恐れたりしない。それがあの日の祈りの、願いの……そして僕自身を救う答えだと思うから」
「変われる事を示す為に力を求めるのかい?」
「ああ。誰だって変われる。今のリアルブルーを覆う絶望も、その前にあった日常も。きっと望めば変えられる。誰もが持っている“可能性”なんだから」
未来は先が見えない。
だが、見えないからこそ人々は理想を追い求める。
それはかつて大精霊が彼をそう称したように、矛盾なのだろうか?
そうではない。不確定であると知りながら、手段も目的も狂っているかもしれないと知りながら、理想に向かって手を伸ばす。
その為に力を――星神機「マスティマ」を望んだ。
「一つ、言っておきたい事があるんだ」
リアルブルーは、足を組んでキヅカを見据える。
突然の改まった態度にキヅカは思わず警戒する。
「話を聞く限り、まるで君は理想を追い求める事がすべてのように思えるんだ。変わる事を決意したのはいい。だが、それは一歩踏み出した理由に過ぎず、相変わらず先の見えない未来で君は藻掻いている」
キヅカの決意は変わる事。変われば理想に近付ける。それを実現する為にマスティマを求めた。
しかし、リアルブルーは前に進む事を決意したばかりで未来に不安を抱えていると考えたようだ。
「僕では、未来が変えられないと?」
「いや、そうじゃないんだ。何と言えばいいかな……。君は他の守護者よりも不安定な気がする。脆く繊細で、触れれば壊れそうな心を持っている」
キヅカの話からリアルブルーはそのように評価したようだ。
まだ歩み始めたばかりで壮大な理想を掲げた。
しかし、キヅカは未だ心の何処かで迷いがあると見られたのだろうか。
「それはとても人間らしいんだ。迷い傷付き、その中で理想を求める。ちょっと守護者らしくないけど、そういう存在は嫌いじゃない。だから、見せてくれないかな? 無様でも藻掻き苦しいながら勝ち取る未来を」
「けっこうきついこと言うね……大精霊ってみんなそうなの?」
「さてね。ただ、それも未来への可能性なんだろう。邪神との闘いはきっと、そういうものになる。ひとつの正義だけでは勝てない、矛盾でなければ貫けないものにね」
少年が何を言っているのか、キヅカには理解できなかった。
だからこの話はこれで終わりだ。少なくとも――今この時においては。
「――星の光の名の下に、汝、キヅカ・リクに告げる。その魂の輝きを力と変え、星の救世主となる覚悟はあるか?」
「ああ」
「契約を受理する。星と英雄の記憶を以て、ここに神の力の一端を授けん。目覚めよ、マスティマ!」
リアルブルーの声に応じて、マスティマの機体に力が宿る。
マテリアルの流れをキヅカは感じ取った。
「ここに誓いは結ばれた。矛盾なる守護者よ、君の救世に期待しよう」
「僕の称号はけっきょく矛盾なの?」
「ちょうどいいじゃないか。絶対に貫けないものを貫いてみせればいい」
頑張れよと言わんばかりにひらひらと手を振って、大精霊は去って行った。
リアルブルーとの謁見を終えた後、キヅカはマスティマを見上げた。
「……随分と時間がかかっちゃったけど、それでも見つけたよ。君がくれた、大切な物。どこまでいけるか分からないけど……君が何処にいても誇って貰えるように」
キヅカはマスティマより更に上に広がる青空に目を向ける。
いつもと変わらない空と雲。
だが、世界は間違いなく変わり始めている。
キヅカは、声にならない小声でそっと呟いた。
――行ってきます。
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エルバッハ・リオン(ka2434) 種族:エルフ クラス:魔術師(マギステル) 「マスティマ」取得日:2019/03/20 ●「マスティマ」への表明 「大切なものを守るために力が必要なのです」 |
●「マスティマ」取得(クリックすると、下にノベルが展開されます)
「あら、いらっしゃ?い。貴方が、今回の契約者ね」
ベアトリクスは白衣を纏っていたが、ラフな格好をしていた。
エルバッハ・リオン(ka2434)は、少し首を傾げていた。
「もっと緊張感があると思っていましたが、なんだか和やかですね」
エバーグリーンに興味があったエルバッハは、その世界の神であるベアトリクスと話がしてみたかったのだ。
「リラックスするのも、時には大事なことよ?。ハンターたちは依頼とかで緊張している時間が多いみたいだから、心配になることもあるのよね」
「ベアトリクスさんは、お優しいんですね」
微笑みを浮かべるエルバッハ。
「ふふ、そう言われて、悪い気はしないわね。それじゃ、早速だけど、契約を結ぶに辺り、その心構えとか聞かせてくれる?」
ベアトリクスの問いに、エルバッハは正面を向き、真摯な面持ちで話し始めた。
「恥ずかしながら、ハンターになった頃は、有名になって、ちやほやされたいくらいしか考えていなかったです」
「ふーん、私もちっちゃい頃は、おじいちゃんに我儘言って困らせたことがあったわ」
「でも、今は守りたい人や場所がたくさんできました。だから、邪神や歪虚王との戦いが激化している今、大切なものを守るための力を私は必要としています」
エルバッハがそこまで言うと、ベアトリクスが真剣な眼差しを向けた。
「力を得ることで、失うものが増えてしまうこともあるけれど、それでも、今の想いを……信念を、保ち続けることができるのかしら?」
「それは……正直、そこまでまだ、答えが見つかっていません。ただ、『今』の私は、守りたい人や場所がたくさんあります。『過去』の私は、何も知らない……『今』の私が望んでいることを……きっと、『未来』の私なら、答えに辿り着けることができると信じています」
エルバッハは、怯むことなく、そう告げた。
「それが、貴方の『今』の信念ね。分かったわ。儀式を始めましょうか」
ベアトリクスは、エルバッハの手を取り、互いに向かい合った。
「――星の光の名の下に、汝、エルバッハ・リオンに告げる。その魂の輝きを力と変え、星の救世主となる覚悟はあるか?」
「私には守りたいものがあります。そのために、『力』を得る覚悟はできています」
エルバッハは、ベアトリクスと目を合わせた。
「契約を受理します。星と英雄の記憶を以て、ここに神の力の一端を授けん。目覚めよ、マスティマ!」
淡い光に包まれた機体が、どこからともなく出現した。
美しいフォルムは、まるで世界さえも包み込むような、それでいて、世界を凝縮したような輝きを放っていた。
「ここに誓いは結ばれた。礼節なる守護者よ、あなたの救世に期待します」
「はい。ベアトリクスさんの期待に応えられるように、全力を尽くします。そして、今まで出会った全ての人や大切な居場所を守るために、最善の努力をします」
胸が熱くなった。
なんだろう……この感覚は。
エルバッハの新たな物語が始まろうとしていた。
ベアトリクスは白衣を纏っていたが、ラフな格好をしていた。
エルバッハ・リオン(ka2434)は、少し首を傾げていた。
「もっと緊張感があると思っていましたが、なんだか和やかですね」
エバーグリーンに興味があったエルバッハは、その世界の神であるベアトリクスと話がしてみたかったのだ。
「リラックスするのも、時には大事なことよ?。ハンターたちは依頼とかで緊張している時間が多いみたいだから、心配になることもあるのよね」
「ベアトリクスさんは、お優しいんですね」
微笑みを浮かべるエルバッハ。
「ふふ、そう言われて、悪い気はしないわね。それじゃ、早速だけど、契約を結ぶに辺り、その心構えとか聞かせてくれる?」
ベアトリクスの問いに、エルバッハは正面を向き、真摯な面持ちで話し始めた。
「恥ずかしながら、ハンターになった頃は、有名になって、ちやほやされたいくらいしか考えていなかったです」
「ふーん、私もちっちゃい頃は、おじいちゃんに我儘言って困らせたことがあったわ」
「でも、今は守りたい人や場所がたくさんできました。だから、邪神や歪虚王との戦いが激化している今、大切なものを守るための力を私は必要としています」
エルバッハがそこまで言うと、ベアトリクスが真剣な眼差しを向けた。
「力を得ることで、失うものが増えてしまうこともあるけれど、それでも、今の想いを……信念を、保ち続けることができるのかしら?」
「それは……正直、そこまでまだ、答えが見つかっていません。ただ、『今』の私は、守りたい人や場所がたくさんあります。『過去』の私は、何も知らない……『今』の私が望んでいることを……きっと、『未来』の私なら、答えに辿り着けることができると信じています」
エルバッハは、怯むことなく、そう告げた。
「それが、貴方の『今』の信念ね。分かったわ。儀式を始めましょうか」
ベアトリクスは、エルバッハの手を取り、互いに向かい合った。
「――星の光の名の下に、汝、エルバッハ・リオンに告げる。その魂の輝きを力と変え、星の救世主となる覚悟はあるか?」
「私には守りたいものがあります。そのために、『力』を得る覚悟はできています」
エルバッハは、ベアトリクスと目を合わせた。
「契約を受理します。星と英雄の記憶を以て、ここに神の力の一端を授けん。目覚めよ、マスティマ!」
淡い光に包まれた機体が、どこからともなく出現した。
美しいフォルムは、まるで世界さえも包み込むような、それでいて、世界を凝縮したような輝きを放っていた。
「ここに誓いは結ばれた。礼節なる守護者よ、あなたの救世に期待します」
「はい。ベアトリクスさんの期待に応えられるように、全力を尽くします。そして、今まで出会った全ての人や大切な居場所を守るために、最善の努力をします」
胸が熱くなった。
なんだろう……この感覚は。
エルバッハの新たな物語が始まろうとしていた。
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高瀬 未悠(ka3199) 種族:人間(リアルブルー) クラス:霊闘士(ベルセルク) 「守護者」取得日:2019/03/20 ●「守護者」への表明 「胸を張って言えるわ。私は守り戦う為に生きているって」 |
●「守護者」取得(クリックすると、下にノベルが展開されます)
青い双眸は吸い込まれそうなほど澄んでいて、それは遥かな自分の故郷であるリアルブルーの思わせた。目の前にたたずむのはそのリアルブルーを司る大精霊なのだから、そう思ったのも当然のことかもしれない。
緊張は、した。したけれども、高瀬 未悠(ka3199)は畏れることはしなかった。
「強い心意気を感じさせる目だ」
「ありがとう。昔は……リアルブルーにいた時はこんなじゃなかったのよ」
リアルブルーにいた時の人形のような自分の姿が浮かんでは消えた。
存在感などそこにあったのだろうか。父の三歩後ろを影のように付き従い、高級な化粧品と飾りばかりのドレスで着飾らされるだけ。世辞以外は喋ることすら許されない毎日。
笑顔は薄く能面を付けたように張り付かせたままでいて、歌も心がこもっていない、料理の方がまだ心意気が感じられる分だけマシだと烙印を押される程に心は凍てついて。
自分の命すら、どこか遠い存在で。
己の人生すら、どこか他人事で。
「転移して、強くなったんだね」
「ええ……でもね。本当に強くなれたのは大切な人達に出会えたからだわ」
転移した後はどんなに嬉しかったことか。呪縛から逃れたことを目いっぱい笑って祝った。
今までできなかった危険をどんどん冒して、今だからできるスリルを感じることを追い求めた。
「そうでもなければ『死にたがり』は変わらなかったと思うわ」
自分が命を賭して、誰かの胸に遺るなら最高じゃない。
私は誰かの中で生き続けられるなら、満足じゃない。
「人は経験した範囲、得た知識の範囲でしか動けない。唯々諾々とした人間は、反動で無鉄砲になる。結局、経験を反面教師にしただけで、何も変われないことは多い。人とはそういうものだ」
リアルブルーが少しだけ目を細めたことに、未悠もまた同じようにした。
全力を尽くし、魂を燃やして。それでもなお世の中は依然として混迷する。そしてそれを利用するものもいるのだから。
それが元で消えていった命の多さと、非業の嘆きを、未悠もリアルブルーもよく、よく、知っていた。
「でもね、ある人に言われたの。『君はきっと目の前の一人を大切にするんだろうね。でもね。一方で増え続ける死を、君は力を使い切った体でそれを見てどうするんだい? だから大切にしなきゃならない』って。私が持っていた自己嫌悪と言い逃れと弱さを全部ひっくるめて、貫かれた気分だったわ」
吹っ切るようにしてそう言って顔を上げた未悠の顔はとても清々としていた。
「でも、自分の執着を壊されたみたら、案外色々見えてくるものね。それからかしら。たくさんの人達と出会えた。様々な愛の形と優しさと絆に触れることができたわ」
愛され咲き誇る向日葵。 温かさに人々が集まり、
繊細で優しい青翠の星。 優しい涼香に癒され、
一途で愛らしい紫の月。 ふくよかな音色に情を刺激され、
博い愛を歌う儚き蒼光。 穏やかの中にも確かな絆を感じ、
靭やかに生きる月影の姫。 負けない強さを教えてくれて
約束の為に命を燃やす弟分。 可能性と一途さに、自分も励まされて
私を変えてくれた最愛の人。 ……私は。
「世界も、そこに済む人々も。大切な人達も共に戦う仲間も守る。私の全てを懸けて戦って、守って……生きていく。ふふふ、少し欲張りかしら」
「いいや。それでいい。その貪欲さが虚無から可能性を引き出すのは、人類の歴史が証明して見せてきたことだ」
ガーネット色の凛とした瞳でリアルブルーの瞳を見やる未悠には、もう最初に向き合った時のような微かな不安や緊張は欠片もなかった。
それを見て取ったリアルブルーは未悠にそっと手を差し伸べた。
「――星の光の名の下に、汝、高瀬未悠に告げる。その魂の輝きを力と変え、星の救世主となる覚悟はあるか?」
「誓うわ。最期まで彼の傍にいるために」
「契約を受理する。星と英雄の記憶を以て、ここに神の力の一端を授けん。目覚めよ、ガーディアン!」
星の記憶石がその言葉と同時に高熱を帯びたかのように光り輝き、はじけ飛んだ。さすがの光量に未悠もぐっと目を閉じてその衝撃を堪えた。
網膜のちらつく幻像を押し鎮めながら、ゆっくりと未悠は目を開いた。
星の記憶石は光の粒子となって、しばらくフラワーシャワーのごとく、未悠の頭から降りそそぐように舞っていた。
彼女のことを祝福するように、またたくさんの想いが彼女を慕うように。
「うん……みんなの想いが世界を変えるんだって。私が証明するから」
胸の前で盃を作る掌に、光の粒子はゆっくりと未悠の手のひらに集まると、守護者の証として形を成した。
「ここに誓いは結ばれた。転輪なる守護者よ、あなたの救世に期待します」
緊張は、した。したけれども、高瀬 未悠(ka3199)は畏れることはしなかった。
「強い心意気を感じさせる目だ」
「ありがとう。昔は……リアルブルーにいた時はこんなじゃなかったのよ」
リアルブルーにいた時の人形のような自分の姿が浮かんでは消えた。
存在感などそこにあったのだろうか。父の三歩後ろを影のように付き従い、高級な化粧品と飾りばかりのドレスで着飾らされるだけ。世辞以外は喋ることすら許されない毎日。
笑顔は薄く能面を付けたように張り付かせたままでいて、歌も心がこもっていない、料理の方がまだ心意気が感じられる分だけマシだと烙印を押される程に心は凍てついて。
自分の命すら、どこか遠い存在で。
己の人生すら、どこか他人事で。
「転移して、強くなったんだね」
「ええ……でもね。本当に強くなれたのは大切な人達に出会えたからだわ」
転移した後はどんなに嬉しかったことか。呪縛から逃れたことを目いっぱい笑って祝った。
今までできなかった危険をどんどん冒して、今だからできるスリルを感じることを追い求めた。
「そうでもなければ『死にたがり』は変わらなかったと思うわ」
自分が命を賭して、誰かの胸に遺るなら最高じゃない。
私は誰かの中で生き続けられるなら、満足じゃない。
「人は経験した範囲、得た知識の範囲でしか動けない。唯々諾々とした人間は、反動で無鉄砲になる。結局、経験を反面教師にしただけで、何も変われないことは多い。人とはそういうものだ」
リアルブルーが少しだけ目を細めたことに、未悠もまた同じようにした。
全力を尽くし、魂を燃やして。それでもなお世の中は依然として混迷する。そしてそれを利用するものもいるのだから。
それが元で消えていった命の多さと、非業の嘆きを、未悠もリアルブルーもよく、よく、知っていた。
「でもね、ある人に言われたの。『君はきっと目の前の一人を大切にするんだろうね。でもね。一方で増え続ける死を、君は力を使い切った体でそれを見てどうするんだい? だから大切にしなきゃならない』って。私が持っていた自己嫌悪と言い逃れと弱さを全部ひっくるめて、貫かれた気分だったわ」
吹っ切るようにしてそう言って顔を上げた未悠の顔はとても清々としていた。
「でも、自分の執着を壊されたみたら、案外色々見えてくるものね。それからかしら。たくさんの人達と出会えた。様々な愛の形と優しさと絆に触れることができたわ」
愛され咲き誇る向日葵。 温かさに人々が集まり、
繊細で優しい青翠の星。 優しい涼香に癒され、
一途で愛らしい紫の月。 ふくよかな音色に情を刺激され、
博い愛を歌う儚き蒼光。 穏やかの中にも確かな絆を感じ、
靭やかに生きる月影の姫。 負けない強さを教えてくれて
約束の為に命を燃やす弟分。 可能性と一途さに、自分も励まされて
私を変えてくれた最愛の人。 ……私は。
「世界も、そこに済む人々も。大切な人達も共に戦う仲間も守る。私の全てを懸けて戦って、守って……生きていく。ふふふ、少し欲張りかしら」
「いいや。それでいい。その貪欲さが虚無から可能性を引き出すのは、人類の歴史が証明して見せてきたことだ」
ガーネット色の凛とした瞳でリアルブルーの瞳を見やる未悠には、もう最初に向き合った時のような微かな不安や緊張は欠片もなかった。
それを見て取ったリアルブルーは未悠にそっと手を差し伸べた。
「――星の光の名の下に、汝、高瀬未悠に告げる。その魂の輝きを力と変え、星の救世主となる覚悟はあるか?」
「誓うわ。最期まで彼の傍にいるために」
「契約を受理する。星と英雄の記憶を以て、ここに神の力の一端を授けん。目覚めよ、ガーディアン!」
星の記憶石がその言葉と同時に高熱を帯びたかのように光り輝き、はじけ飛んだ。さすがの光量に未悠もぐっと目を閉じてその衝撃を堪えた。
網膜のちらつく幻像を押し鎮めながら、ゆっくりと未悠は目を開いた。
星の記憶石は光の粒子となって、しばらくフラワーシャワーのごとく、未悠の頭から降りそそぐように舞っていた。
彼女のことを祝福するように、またたくさんの想いが彼女を慕うように。
「うん……みんなの想いが世界を変えるんだって。私が証明するから」
胸の前で盃を作る掌に、光の粒子はゆっくりと未悠の手のひらに集まると、守護者の証として形を成した。
「ここに誓いは結ばれた。転輪なる守護者よ、あなたの救世に期待します」
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リュー・グランフェスト(ka2419) 種族:人間(クリムゾンウェスト) クラス:闘狩人(エンフォーサー) 「守護者」取得日:2019/04/23 ●「守護者」への表明 「好きだから、守りたい。そんだけさ」 |
●「守護者」取得(クリックすると、下にノベルが展開されます)
「この世界、そこに暮らしてる誰もが好きだからだ」
儀式の間にやってきたリュー・グランフェスト(ka2419)は、大精霊リアルブルーを前にそう言い放った。
「再度の契約に際して色々自分なりに考えてみたけど、結局この言葉が一番しっくりくるんだよな」
彼は既に星神器エクスカリバーを受領する際に大精霊との対話を終えている。
「その時、クリムゾンウェストの大精霊に言われたんだよなあ。今のままでは不十分だって」
「へぇ?? じゃあなんで契約してもらえたの?」
「それが俺にもわからないんだが……とにかく、もう一度自分の気持ちを考え直してみたんだよ」
背中の鞘からエクスカリバーを引き抜き、刀身をじっと見つめる。
「これまでもコイツにはけっこう世話になっちまったな」
今やリューにとっては共に戦う相棒であり、彼の象徴にも等しい剣。
エクスカリバーと共に、数々の強敵と戦ってきた。その戦場には、いつも仲間たちがいた。
「俺はきっと強欲なんだ。目につく大事なものだけ、なんて選べない。これから先生きていく場所、思い出となるかもしれない場所。友達と、その更に友達と……それらを全部護りたい。だって、俺にとっては全部大事なんだ」
「確かにそれは強欲だねぇ」
「だよな……でも他に考えられないんだよ。俺にとっては、それが当たり前すぎてさ……」
苦笑を浮かべ、剣を鞘に戻す。
「大変だからと、絵空ごとだと、判ったような事を考えてる暇があるなら俺は走って行きたい。人が好きで、その為に動く自分が、何より俺らしいってそう思うから」
「そうか。君はそういう自分を好きでいるんだね」
「自分らしく生きられないと思うと、そっちの方が苦しいぜ。だから俺は、英雄ってやつになろうと思う」
名声や肩書が欲しいわけじゃない。
騎士としての名誉は、勲章の数ではなく助けた人の数で決まる。
「英雄になったら、その名前で泣いている人を救えると思うんだ。伝説に憧れた、昔の俺みたいにさ」
その気持ちを覚えている。忘れることは、きっとない。
英雄という存在に、どれだけ勇気づけられただろう。
「だから今度は、俺がそれを与える側になろうと思う。そしたら、もっと広い範囲の誰かを救えるだろ?」
「君は本当にそれっきりしか考えてないんだなあ……」
「ぐっ……だ、だめか……?」
「英雄ってのは悲劇的なもんで、みんなに必要とされるかなんてわからないぞ。大抵いいかんじに使い倒されて、飽きたらポイされるんだ。みじめだぞぉ」
「そうか? 俺は飽きなかったし、忘れた事もなかったぞ?」
心底そう思っているのだろう。不思議そうにリューは目を丸くする。
「俺みたいなガキが、この世界のどっかにいてくれるかもしれない。俺はただそれだけでいいんだよ」
「大多数に見捨てられても?」
「一人でもいればいいだろ」
リアルブルーは額に手を当て、冷や汗を流す。
「駄目だコイツ……クリムゾンウェストの気持ちがわかってきたぞ……!」
「ええっ!? やっぱダメなのか、俺!?」
「人類全体にとって君の存在が都合よすぎるんだよ……人類ダメにするマンじゃん……」
「そうなのか……でもそしたら俺はどうすれば……うおおお……っ!!」
頭を抱えて悩むリューだったが、やがてリアルブルーは溜息をひとつ。
「君、どーせ最後には弱者に後ろから刺されて死ぬぞ。それでもいいのかい?」
「そんなことにはならないぞ?」
「いや絶対なるからね!?」
「理想論かもしれないけど、やってみなきゃわからないだろ」
「その結果そうなったらどうするんだって」
「はははは! だから、ならないって。心配性だなあ?、おまえ。なっちまったらそん時はそん時だ!」
思わずズッコケる。
だが、リューは本当にそう思っている。それだけはヒシヒシと伝わってしまった。
「わかったよもう。好きにしなさいよ。はい目覚めよガーディアン」
「あれ? いつものアレ、やらないのか? 星の光のなんちゃらっていう……」
「君は覚悟を問うまでもないからな……まあいい、やるか。いちおうルールだしな」
リアルブルーが指をパチンと慣らすと、周囲の空間が青い宇宙に変貌する。
「――星の光の名の下に、汝、リュー・グランフェストに告げる。その魂の輝きを力と変え、星の救世主となる覚悟はあるか?」
「無論だ! 俺を信じてついてこい!」
「契約を受理する。星と英雄の記憶を以て、ここに神の力の一端を授けん。目覚めよ、ガーディアン!」
星の記憶石はリューの身体に吸い込まれ、まばゆい光を放った。
そして儀式はあっさり終わり、二人はすぐに通常空間へと戻る。
「ここに誓いは結ばれた。善光なる守護者よ、君の救世に期待するよ」
「おう、ありがとな! いや?、なんか困らせたみたいで悪かったな」
「いやいいんですよ、もう。君はもうそのまま、何処へなりとも走っていきなさい」
「おう! おまえも何か困ったらいつでも俺を呼んでくれよな!」
ひらひらと追い払うように手を振るリアルブルーに、リューは満面の笑顔を返す。
礼を言って走り去っていく青年の背中を、リアルブルーは苦笑と共に見送った。
儀式の間にやってきたリュー・グランフェスト(ka2419)は、大精霊リアルブルーを前にそう言い放った。
「再度の契約に際して色々自分なりに考えてみたけど、結局この言葉が一番しっくりくるんだよな」
彼は既に星神器エクスカリバーを受領する際に大精霊との対話を終えている。
「その時、クリムゾンウェストの大精霊に言われたんだよなあ。今のままでは不十分だって」
「へぇ?? じゃあなんで契約してもらえたの?」
「それが俺にもわからないんだが……とにかく、もう一度自分の気持ちを考え直してみたんだよ」
背中の鞘からエクスカリバーを引き抜き、刀身をじっと見つめる。
「これまでもコイツにはけっこう世話になっちまったな」
今やリューにとっては共に戦う相棒であり、彼の象徴にも等しい剣。
エクスカリバーと共に、数々の強敵と戦ってきた。その戦場には、いつも仲間たちがいた。
「俺はきっと強欲なんだ。目につく大事なものだけ、なんて選べない。これから先生きていく場所、思い出となるかもしれない場所。友達と、その更に友達と……それらを全部護りたい。だって、俺にとっては全部大事なんだ」
「確かにそれは強欲だねぇ」
「だよな……でも他に考えられないんだよ。俺にとっては、それが当たり前すぎてさ……」
苦笑を浮かべ、剣を鞘に戻す。
「大変だからと、絵空ごとだと、判ったような事を考えてる暇があるなら俺は走って行きたい。人が好きで、その為に動く自分が、何より俺らしいってそう思うから」
「そうか。君はそういう自分を好きでいるんだね」
「自分らしく生きられないと思うと、そっちの方が苦しいぜ。だから俺は、英雄ってやつになろうと思う」
名声や肩書が欲しいわけじゃない。
騎士としての名誉は、勲章の数ではなく助けた人の数で決まる。
「英雄になったら、その名前で泣いている人を救えると思うんだ。伝説に憧れた、昔の俺みたいにさ」
その気持ちを覚えている。忘れることは、きっとない。
英雄という存在に、どれだけ勇気づけられただろう。
「だから今度は、俺がそれを与える側になろうと思う。そしたら、もっと広い範囲の誰かを救えるだろ?」
「君は本当にそれっきりしか考えてないんだなあ……」
「ぐっ……だ、だめか……?」
「英雄ってのは悲劇的なもんで、みんなに必要とされるかなんてわからないぞ。大抵いいかんじに使い倒されて、飽きたらポイされるんだ。みじめだぞぉ」
「そうか? 俺は飽きなかったし、忘れた事もなかったぞ?」
心底そう思っているのだろう。不思議そうにリューは目を丸くする。
「俺みたいなガキが、この世界のどっかにいてくれるかもしれない。俺はただそれだけでいいんだよ」
「大多数に見捨てられても?」
「一人でもいればいいだろ」
リアルブルーは額に手を当て、冷や汗を流す。
「駄目だコイツ……クリムゾンウェストの気持ちがわかってきたぞ……!」
「ええっ!? やっぱダメなのか、俺!?」
「人類全体にとって君の存在が都合よすぎるんだよ……人類ダメにするマンじゃん……」
「そうなのか……でもそしたら俺はどうすれば……うおおお……っ!!」
頭を抱えて悩むリューだったが、やがてリアルブルーは溜息をひとつ。
「君、どーせ最後には弱者に後ろから刺されて死ぬぞ。それでもいいのかい?」
「そんなことにはならないぞ?」
「いや絶対なるからね!?」
「理想論かもしれないけど、やってみなきゃわからないだろ」
「その結果そうなったらどうするんだって」
「はははは! だから、ならないって。心配性だなあ?、おまえ。なっちまったらそん時はそん時だ!」
思わずズッコケる。
だが、リューは本当にそう思っている。それだけはヒシヒシと伝わってしまった。
「わかったよもう。好きにしなさいよ。はい目覚めよガーディアン」
「あれ? いつものアレ、やらないのか? 星の光のなんちゃらっていう……」
「君は覚悟を問うまでもないからな……まあいい、やるか。いちおうルールだしな」
リアルブルーが指をパチンと慣らすと、周囲の空間が青い宇宙に変貌する。
「――星の光の名の下に、汝、リュー・グランフェストに告げる。その魂の輝きを力と変え、星の救世主となる覚悟はあるか?」
「無論だ! 俺を信じてついてこい!」
「契約を受理する。星と英雄の記憶を以て、ここに神の力の一端を授けん。目覚めよ、ガーディアン!」
星の記憶石はリューの身体に吸い込まれ、まばゆい光を放った。
そして儀式はあっさり終わり、二人はすぐに通常空間へと戻る。
「ここに誓いは結ばれた。善光なる守護者よ、君の救世に期待するよ」
「おう、ありがとな! いや?、なんか困らせたみたいで悪かったな」
「いやいいんですよ、もう。君はもうそのまま、何処へなりとも走っていきなさい」
「おう! おまえも何か困ったらいつでも俺を呼んでくれよな!」
ひらひらと追い払うように手を振るリアルブルーに、リューは満面の笑顔を返す。
礼を言って走り去っていく青年の背中を、リアルブルーは苦笑と共に見送った。
(執筆:神宮寺飛鳥)
(文責:フロンティアワークス)
(文責:フロンティアワークス)
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アルマ・A・エインズワース(ka4901) 種族:エルフ クラス:機導師(アルケミスト) 「守護者」取得日:2019/04/23 ●「守護者」への表明 「わふーっ。これでも僕、いろいろ考えてるですよ?」 |
●「守護者」取得(クリックすると、下にノベルが展開されます)
「わふ、トマーゾ先生の所の子! 僕、契約は君がいいですー」
とれたてほやほやの星の記憶石を大事そうに抱えたアルマ・A・エインズワース(ka4901)が使命したのは、ベアトリクスだった。
ハンターズ・ソサエティ本部の訓練場で、二人は楽しそうに向き合っている。
「いつもおじいちゃんがお世話になっているわね?」
「わふ! 先生には僕の方がとってもお世話になってるですよ?!」
「そう?。けっこう身体に悪そうなモノ送りつけられてたけど?」
「むしろ調子いいですー!」
HAHAHA、と笑い合う二人。
どことなくノリが近い。そしてツッコミは不在である。
閑話休題……。
「わぅーっ。僕、色々見たです! そして思ったんです……ひどいな、って」
いつも明るいアルマだが、世界中の戦いで最前線に立ってきた歴戦の猛者でもある。
そんな彼の歩んだ道には、世界の問題――即ち宿業が錯綜していた。
「歪虚という共通の敵が存在し、今は一つになれたように見えるです。それでも、人は人同士で争ってしまう」
裏切られ続け、堕落した人を知っている。
過去の歴史が証明している。人は争うし、人は――裏切るのだと。
「僕は、好きだった彼にも手を下しました。けど……それでも僕、世界もヒトも、精霊さん好きです。大好きです。どれを忘れても、壊してもだめなんです」
「どうして、そう思えるのかしら? 私がいうのもあれだけど、けっこう人間ってしょうもない生き物じゃないかしら」
「わぅ……確かに人間はしょーもないです。それは残念だけど、事実です。僕には共に駆け抜けてくれる仲間がいるです。だから、人間の全部がダメなわけじゃないって、それはわかってるつもりです」
だが、アルマはそもそも人間という存在を信じてはいないのだ。
同時に、信じられないということを悲観してもいない。
「守護者の契約を望む上でどうかなと思うけど、僕には歪虚のお友達もいるです。そして僕の自慢の愛する人は、英霊……つまり、精霊です。たぶん僕は、元々“人間”という種族にこだわりはないんですー」
それでも、人間はこの世界に必要だ。
大切なのはバランスで、善い物も悪しき物も、それぞれがこの世界では調和を保っている。
「僕は、ヒトも世界も守りたいんです。この二つは消してはならない。例え今は見えなくても、僕の仲間やその子供達が、いずれはこの世界の未来を作っていくです。必要なのは永遠の停滞ではなく、流転の未来ですー」
「でも、人間は必ずしも善い未来を創るとは限らないでしょう?」
「はいですー。だから、ベアトリクスさん。僕を本物の『魔王の卵』にしてください」
嘗てのグリーンのように人が世界を壊すなら、抑止力の『魔王』に。
歪虚が世界を壊すなら、彼らにとっての『魔王』に。
「すべて愛するというのなら、誰にとっても敵として君臨する覚悟が必要だと思いませんか?」
「そう……。それがあなたにとって世界を守護するということなのね」
ベアトリクスは腕を組み、しばし思案する。
「でもね。それは口で言うほど簡単な事ではないわ。例えばあなたの大事な仲間や愛する人が道を違えた時、あなたの願う調和を壊そうとした時、迷わずにそれを断てるのかしら」
アルマもまた、同じくIFの未来に想いを馳せる。
「わふ……それはきっと、とってもとっても辛いことですー。僕も悲しくって、心臓が張り裂けちゃいます……」 胸に手を当て、掴んでみる。
心音は歯車ではない。機械仕掛けではなく、そこにあるのは命だと教えてくれる。
「実際ね、守護者になるっていうのはそういうことなのよ。正義の味方っていうのは、本質的には善きことの奴隷だわ。もしも誰かが道を誤った時には、望む望まないに関係なく倒さねばならない」
でもね、と言葉をつなぎ、ベアトリクスはアルマの手を握る。
「あなたはその力で望む未来を創ることだってできる。魔王を望むあなたを否定はしないわ。それでも忘れないで。あなたは善き王になることもできる」
ベアトリクスは理解している。アルマにこんなことを言っても大して意味はないのだと。
だからこれは願いだ。
「あなた自身が、善き天秤になって。そして未来を守ってあげて」
「わふ? 僕自身が天秤になる……ですか?」
「言い方アレだけど、そもそも私やあなたみたいなヤツには正しく世界を裁くことなんてできないのよ。だって本質的には他人事なんだもの。だったらあなたは世界の外側で、天秤になりなさい。誰かの願いを測る、正しき天秤に」
「わふふ……なかなかむずかしーです。僕も色々考えてるですが……確かにそういうのはシオンの方が向いてるですー」
「簡単なことよ。誰かの願いを叶えていけばいい。その先にあるのが魔王という役割なら、それでも……ね」
話は終わったと言わんばかりにベアトリクスは目を閉じる。
両腕を広げると、世界は緑色の光に包まれていく。
「――星の光の名の下に、汝、アルマ・A・エインズワースに告げる。その魂の輝きを力と変え、星の救世主となる覚悟はあるか?」
今一度、胸に手を当て考えてみる。
辛いこともあったけれど。それでもこの心臓は、未だ歯車にはなり得ない。
「覚悟は……ずっと、心(ここ)に」
「契約を受理します。星と英雄の記憶を以て、ここに神の力の一端を授けん。目覚めよ、ガーディアン!」
砕け散った星の欠片が虹色の渦を巻き、アルマの胸へと吸い込まれる。
光が弾けると同時に儀式は終わり、気づけば二人は訓練場の地面に立っていた。
「ここに誓いは結ばれた。天秤なる守護者よ、あなたの救世に期待します」
「わふー。あえて“魔王”じゃない、ですね?」
「そうよ。あえて、ね?」
なんとなく、二人は似た者同士のように笑っていた。
だからこそ、一度は世界を裁く王となったベアトリクスは、彼に違う未来を望んだ。
これは祈りだ。どうかヒトが、正しき道を歩みますようにと。
もしもアルマという力が狂気に呑まれても、きっと彼には正してくれる誰かがいるだろう。
天秤は自らの意思では何も測らない。
彼を正しく用いる者さえいれば――きっと、未来は……。
とれたてほやほやの星の記憶石を大事そうに抱えたアルマ・A・エインズワース(ka4901)が使命したのは、ベアトリクスだった。
ハンターズ・ソサエティ本部の訓練場で、二人は楽しそうに向き合っている。
「いつもおじいちゃんがお世話になっているわね?」
「わふ! 先生には僕の方がとってもお世話になってるですよ?!」
「そう?。けっこう身体に悪そうなモノ送りつけられてたけど?」
「むしろ調子いいですー!」
HAHAHA、と笑い合う二人。
どことなくノリが近い。そしてツッコミは不在である。
閑話休題……。
「わぅーっ。僕、色々見たです! そして思ったんです……ひどいな、って」
いつも明るいアルマだが、世界中の戦いで最前線に立ってきた歴戦の猛者でもある。
そんな彼の歩んだ道には、世界の問題――即ち宿業が錯綜していた。
「歪虚という共通の敵が存在し、今は一つになれたように見えるです。それでも、人は人同士で争ってしまう」
裏切られ続け、堕落した人を知っている。
過去の歴史が証明している。人は争うし、人は――裏切るのだと。
「僕は、好きだった彼にも手を下しました。けど……それでも僕、世界もヒトも、精霊さん好きです。大好きです。どれを忘れても、壊してもだめなんです」
「どうして、そう思えるのかしら? 私がいうのもあれだけど、けっこう人間ってしょうもない生き物じゃないかしら」
「わぅ……確かに人間はしょーもないです。それは残念だけど、事実です。僕には共に駆け抜けてくれる仲間がいるです。だから、人間の全部がダメなわけじゃないって、それはわかってるつもりです」
だが、アルマはそもそも人間という存在を信じてはいないのだ。
同時に、信じられないということを悲観してもいない。
「守護者の契約を望む上でどうかなと思うけど、僕には歪虚のお友達もいるです。そして僕の自慢の愛する人は、英霊……つまり、精霊です。たぶん僕は、元々“人間”という種族にこだわりはないんですー」
それでも、人間はこの世界に必要だ。
大切なのはバランスで、善い物も悪しき物も、それぞれがこの世界では調和を保っている。
「僕は、ヒトも世界も守りたいんです。この二つは消してはならない。例え今は見えなくても、僕の仲間やその子供達が、いずれはこの世界の未来を作っていくです。必要なのは永遠の停滞ではなく、流転の未来ですー」
「でも、人間は必ずしも善い未来を創るとは限らないでしょう?」
「はいですー。だから、ベアトリクスさん。僕を本物の『魔王の卵』にしてください」
嘗てのグリーンのように人が世界を壊すなら、抑止力の『魔王』に。
歪虚が世界を壊すなら、彼らにとっての『魔王』に。
「すべて愛するというのなら、誰にとっても敵として君臨する覚悟が必要だと思いませんか?」
「そう……。それがあなたにとって世界を守護するということなのね」
ベアトリクスは腕を組み、しばし思案する。
「でもね。それは口で言うほど簡単な事ではないわ。例えばあなたの大事な仲間や愛する人が道を違えた時、あなたの願う調和を壊そうとした時、迷わずにそれを断てるのかしら」
アルマもまた、同じくIFの未来に想いを馳せる。
「わふ……それはきっと、とってもとっても辛いことですー。僕も悲しくって、心臓が張り裂けちゃいます……」 胸に手を当て、掴んでみる。
心音は歯車ではない。機械仕掛けではなく、そこにあるのは命だと教えてくれる。
「実際ね、守護者になるっていうのはそういうことなのよ。正義の味方っていうのは、本質的には善きことの奴隷だわ。もしも誰かが道を誤った時には、望む望まないに関係なく倒さねばならない」
でもね、と言葉をつなぎ、ベアトリクスはアルマの手を握る。
「あなたはその力で望む未来を創ることだってできる。魔王を望むあなたを否定はしないわ。それでも忘れないで。あなたは善き王になることもできる」
ベアトリクスは理解している。アルマにこんなことを言っても大して意味はないのだと。
だからこれは願いだ。
「あなた自身が、善き天秤になって。そして未来を守ってあげて」
「わふ? 僕自身が天秤になる……ですか?」
「言い方アレだけど、そもそも私やあなたみたいなヤツには正しく世界を裁くことなんてできないのよ。だって本質的には他人事なんだもの。だったらあなたは世界の外側で、天秤になりなさい。誰かの願いを測る、正しき天秤に」
「わふふ……なかなかむずかしーです。僕も色々考えてるですが……確かにそういうのはシオンの方が向いてるですー」
「簡単なことよ。誰かの願いを叶えていけばいい。その先にあるのが魔王という役割なら、それでも……ね」
話は終わったと言わんばかりにベアトリクスは目を閉じる。
両腕を広げると、世界は緑色の光に包まれていく。
「――星の光の名の下に、汝、アルマ・A・エインズワースに告げる。その魂の輝きを力と変え、星の救世主となる覚悟はあるか?」
今一度、胸に手を当て考えてみる。
辛いこともあったけれど。それでもこの心臓は、未だ歯車にはなり得ない。
「覚悟は……ずっと、心(ここ)に」
「契約を受理します。星と英雄の記憶を以て、ここに神の力の一端を授けん。目覚めよ、ガーディアン!」
砕け散った星の欠片が虹色の渦を巻き、アルマの胸へと吸い込まれる。
光が弾けると同時に儀式は終わり、気づけば二人は訓練場の地面に立っていた。
「ここに誓いは結ばれた。天秤なる守護者よ、あなたの救世に期待します」
「わふー。あえて“魔王”じゃない、ですね?」
「そうよ。あえて、ね?」
なんとなく、二人は似た者同士のように笑っていた。
だからこそ、一度は世界を裁く王となったベアトリクスは、彼に違う未来を望んだ。
これは祈りだ。どうかヒトが、正しき道を歩みますようにと。
もしもアルマという力が狂気に呑まれても、きっと彼には正してくれる誰かがいるだろう。
天秤は自らの意思では何も測らない。
彼を正しく用いる者さえいれば――きっと、未来は……。
(執筆:神宮寺飛鳥)
(文責:フロンティアワークス)
(文責:フロンティアワークス)
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ハンス・ラインフェルト(ka6750) 種族:人間(リアルブルー) クラス:舞刀士(ソードダンサー) 「守護者」取得日:2019/06/04 「守護者武器」:[SW]星神器「天叢雲」 ●「守護者」への表明 「魂を奪われそうなほど美しい剣だったから、でしょうかね」 |
●「守護者」取得(クリックすると、下にノベルが展開されます)
ハンス・ラインフェルト(ka6750)は穏やかに微笑む。
「肝が据わっているというべきかな」
リアルブルーの大精霊は感心したようにいう。
「そういっていただけると嬉しいですね。明鏡止水、その心で望めれば嬉しいですよ」
リアルブルーの東方に興味を持っていたこともあり、日常から着流し等和装を好む。そこにある考え方には共感と神秘だけでなく、彼自身が望む物があった。
「雑談はともかく、ここに来たということは契約についてだね」
大精霊は話を向けた。ハンスはそれに応える。
「平穏な時代は文化が花開き、闘争の時代は技術革新が進む。この数年で随分いろいろな技術が進みました」
クリムゾンウェストに転移し、その世界を見た。リアルブルーと共闘により、それぞれの世界の技術が合わさり、より一層発展している。一つの世界では予測できないことだっただろう。
「私は今が闘争の時代ではないかと思うのですが……大精霊様はどうお考えですか」
「なるほど、技術のことと現状を見て考えるわけだね」
闘争は煙たがれ、技術革新は受け入れるものと考える傾向はあるが、それは表裏一体という見方。
「勝たねば生を得られぬゆえ、私達は邪神に勝とうとし強者であろうとしています。世界を守るため、精霊様も何十人もの守護者を生み出しました。たまには毛色が違う者もいかがでしょうか」
大精霊はきょとんとする。
「毛色かい? どういう意味で言っているのかな?」
「私は剣の道を極めたいと思っております。斬らねば剣の道は極められない。剣の狂気に完全に沈んでしまっては犬畜生以下、これもまた剣の道を極める事が出来なくなる。弱い者を斬っても剣の役に立たず。とはいえ、強い者にめぐり合うのもなかなか難しい」
ハンターをしていれば出会えるとしても、彼が考えるものと違うのだろうかと大精霊は考える。
「そんな時あの美しい剣を知る機会を得ました」
天叢雲、ヤマタノオロチを討伐した際に尾から現れたという剣の名。
「あの剣はジャイアントキリングのための剣。人より大きければ大きいほどそれは人より強者である可能性が高い。あの剣は常に強者を斬る事を求め続ける剣です」
ハンスの顔は明るい。
人を切りたいと願うだけならば、それはただの殺人鬼である。
一方で「道」を極める為、一本筋を通すならば、それは異なるものとなる。
斬ることに魅入られ、剣に惹かれているようにも思われる。
一方で、剣を生かすか否かは自身にあると気づいているようにも思われる。
大精霊は不思議そうにハンスを見る。
いや、英雄と言われるには振り切れるほどの考えがないということを大精霊は見てきている。
それがいいのか悪いのかなど、周りと歴史が意味つける。
「私はこれでも法治国家の民、契約を尊ぶ民族の出身です。あの剣を得てあの剣の望みを叶えるために結んだ契約ならば、どんな契約であれ尊び遵守いたしましょう」
「面白いことを言うね」
大精霊は苦笑した。
「大精霊様、契約を結びあの剣を私に下さいませんか?」
「剣がほしくて契約をする、というのかい? 守護者の契約がどんなものかわかっていないわけではないのだろう?」
大精霊は驚いた。
「だから、言ったではないですか、毛色の変わった守護者はどうですか、と」
大精霊は大きく息を吐いた。
「どちらが契約を結びに来たのかわからないね」
リアルブルーの大精霊は何かを受け取るようなしぐさをする。ふわりと星の記憶石が浮かぶ。
周囲の空気が清浄なものとなるようだった。
「――星の光の名の下に、汝、ハンス・ラインフェルトに告げる。その魂の輝きを力と変え、星の救世主となる覚悟はあるか?」
「むろんです」
それに呼応するように星の記憶石が輝く。
「契約を受理します。星と英雄の記憶を以て、ここに神の力の一端を授けん。目覚めよ、天叢雲!」
星の記憶石が砕け、その虹色の光が器に吸い込まれていく。
天叢雲は命を吹き込まれたかのように輝き、ハンスの腕に収まる。
「ここに誓いは結ばれた。剛剣なる守護者よ、君の救世に期待する」
ハンスは恭しく剣を掲げる。
そして、その視線は一つのスタートに立ったという満足さがある。
その上で、今後予想される戦いを思うと武者震いを禁じ得ないようだった。
「肝が据わっているというべきかな」
リアルブルーの大精霊は感心したようにいう。
「そういっていただけると嬉しいですね。明鏡止水、その心で望めれば嬉しいですよ」
リアルブルーの東方に興味を持っていたこともあり、日常から着流し等和装を好む。そこにある考え方には共感と神秘だけでなく、彼自身が望む物があった。
「雑談はともかく、ここに来たということは契約についてだね」
大精霊は話を向けた。ハンスはそれに応える。
「平穏な時代は文化が花開き、闘争の時代は技術革新が進む。この数年で随分いろいろな技術が進みました」
クリムゾンウェストに転移し、その世界を見た。リアルブルーと共闘により、それぞれの世界の技術が合わさり、より一層発展している。一つの世界では予測できないことだっただろう。
「私は今が闘争の時代ではないかと思うのですが……大精霊様はどうお考えですか」
「なるほど、技術のことと現状を見て考えるわけだね」
闘争は煙たがれ、技術革新は受け入れるものと考える傾向はあるが、それは表裏一体という見方。
「勝たねば生を得られぬゆえ、私達は邪神に勝とうとし強者であろうとしています。世界を守るため、精霊様も何十人もの守護者を生み出しました。たまには毛色が違う者もいかがでしょうか」
大精霊はきょとんとする。
「毛色かい? どういう意味で言っているのかな?」
「私は剣の道を極めたいと思っております。斬らねば剣の道は極められない。剣の狂気に完全に沈んでしまっては犬畜生以下、これもまた剣の道を極める事が出来なくなる。弱い者を斬っても剣の役に立たず。とはいえ、強い者にめぐり合うのもなかなか難しい」
ハンターをしていれば出会えるとしても、彼が考えるものと違うのだろうかと大精霊は考える。
「そんな時あの美しい剣を知る機会を得ました」
天叢雲、ヤマタノオロチを討伐した際に尾から現れたという剣の名。
「あの剣はジャイアントキリングのための剣。人より大きければ大きいほどそれは人より強者である可能性が高い。あの剣は常に強者を斬る事を求め続ける剣です」
ハンスの顔は明るい。
人を切りたいと願うだけならば、それはただの殺人鬼である。
一方で「道」を極める為、一本筋を通すならば、それは異なるものとなる。
斬ることに魅入られ、剣に惹かれているようにも思われる。
一方で、剣を生かすか否かは自身にあると気づいているようにも思われる。
大精霊は不思議そうにハンスを見る。
いや、英雄と言われるには振り切れるほどの考えがないということを大精霊は見てきている。
それがいいのか悪いのかなど、周りと歴史が意味つける。
「私はこれでも法治国家の民、契約を尊ぶ民族の出身です。あの剣を得てあの剣の望みを叶えるために結んだ契約ならば、どんな契約であれ尊び遵守いたしましょう」
「面白いことを言うね」
大精霊は苦笑した。
「大精霊様、契約を結びあの剣を私に下さいませんか?」
「剣がほしくて契約をする、というのかい? 守護者の契約がどんなものかわかっていないわけではないのだろう?」
大精霊は驚いた。
「だから、言ったではないですか、毛色の変わった守護者はどうですか、と」
大精霊は大きく息を吐いた。
「どちらが契約を結びに来たのかわからないね」
リアルブルーの大精霊は何かを受け取るようなしぐさをする。ふわりと星の記憶石が浮かぶ。
周囲の空気が清浄なものとなるようだった。
「――星の光の名の下に、汝、ハンス・ラインフェルトに告げる。その魂の輝きを力と変え、星の救世主となる覚悟はあるか?」
「むろんです」
それに呼応するように星の記憶石が輝く。
「契約を受理します。星と英雄の記憶を以て、ここに神の力の一端を授けん。目覚めよ、天叢雲!」
星の記憶石が砕け、その虹色の光が器に吸い込まれていく。
天叢雲は命を吹き込まれたかのように輝き、ハンスの腕に収まる。
「ここに誓いは結ばれた。剛剣なる守護者よ、君の救世に期待する」
ハンスは恭しく剣を掲げる。
そして、その視線は一つのスタートに立ったという満足さがある。
その上で、今後予想される戦いを思うと武者震いを禁じ得ないようだった。
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穂積 智里(ka6819) 種族:人間(リアルブルー) クラス:機導師(アルケミスト) 「守護者」取得日:2019/06/04 「守護者武器」:[SW]星神器「ゾモロドネガル」 ●「守護者」への表明 「積み重ねてきた約束を、きちんと果たしたいと思いました」 |
●「守護者」取得(クリックすると、下にノベルが展開されます)
穂積 智里(ka6819)は緊張した面持ちで、リアルブルーの大精霊の前に立つ。リアルブルーの大精霊は静かに智里を見つめる。
「ここに来た、ということは……いや、僕が何かいう必要はないね。君の気持ちを聞かせてもらえるかい?」
大精霊は話をするように促す。
「正義なき力は暴力で、力なき正義は虚言だそうです」
大精霊は「虚言?」と反芻する。
「それならこの世界で生きていくうちに積み重ねてきた約束も力がなくて守れなければ、虚言になるのでしょうか」 智里の視線が揺れた。
「約束を守ることが正義ならば、それは成り立つね? でも、なぜそう思うかい?」
大精霊の言葉に智里は口を開く。
「最期まで詩天を守り、詩天を強くし、詩天で生きる……そう約束して私は人を殺しました」
その時のことが浮かぶのか、一瞬、智里の視線はリアルブルーの大精霊から逸れる。
「独りで生きていくのが恐ろしくて縋った人とは、悪夢を境に結局袂を分かちました」
智里の脳裏にその人の顔が浮かぶ。一緒に行動していたときの思い出とともに。
「絶対迎えに行くと宣言した歪虚を迎えに行けませんでした」
「律儀というべきなのかな?」
大精霊の言葉に智里は唇をかむ。そして、首を横に振り「弱いんです」と言う。
「約束は生きるための指針だと思います。それなのに積み重なった約束が果たせないまま手の中から零れていきます……全て、私が弱いから」
「本当に? 約束と言うのはヒトを縛るものだよ? それによって行動を制限するかもしれない。君はその約束だけに生きているわけではないだろう? 無理なことだってあるんじゃないかい? それに、君に対して害があるかもしれないよ?」
大精霊の確認とも質問ともとれる言葉に、智里は首を横に振る。
「約束を守れるほどに強くなりたい! きちんと1人で立ち続けられるようになりたい!」
智里は心の声をほとばしらせる。
「これからも私は、いろんな場所でいろんな約束をしながら生きていくことになると思います。その時に約束を違えずに済む力が欲しい」
大精霊は目を細める。認められたいともがく少女をふと思い出していた。内向きでどこか一歩引いた雰囲気を持ちながら、芯が強く、真っ直ぐと誠実に行動する姿は智里に重なるかもしれない。
智里は大精霊の反応を見ている。一番言わないといけない言葉が喉を何度か滑るが声にならなかった。
心を落ち着けるように呼吸を深くひとつする。
「大精霊様との契約も約束の一つだと思います。邪神から世界を守り、人を歪虚から守り、東方の平和を守る……。
約束を違えぬ力を得るために、私は守護者の力を得ることを望みます」
言い切ったところで智里は不安そうに、大精霊の言葉を待つ。
大精霊は溜息を洩らした。
「……決心は固いんだね」
智里は「はい」と答えた。
大精霊は軽くうなずいた。その瞬間、大精霊を中心として空気が変わる。
ピンと張り詰め、透明な空気に。
「――星の光の名の下に、汝、穂積 智里に告げる。その魂の輝きを力と変え、星の救世主となる覚悟はあるか?」
「はい、あります!」
智里は真っ直ぐと大精霊を見つめ、はっきりと言った。
「契約を受理します。星と英雄の記憶を以て、ここに神の力の一端を授けん。目覚めよ、ゾモロドネガル!」
星の記憶石が砕け、その虹色の光が器に吸い込まれていく。
ゾモロドネガルは命を吹き込まれたかのように輝く。
「ここに誓いは結ばれた。約言なる守護者よ、君の救世に期待するよ」
智里は自分の中の力の本流に気づく。力とその責任をおった証しであり、身が引き締まる。
「リアルブルーの大精霊、世界を守ります!」
智里は力強く言った。
大精霊は優し気にうなずき「よろしく」と穏やかに告げると、智里はほっとした表情を見せたのだった。
「ここに来た、ということは……いや、僕が何かいう必要はないね。君の気持ちを聞かせてもらえるかい?」
大精霊は話をするように促す。
「正義なき力は暴力で、力なき正義は虚言だそうです」
大精霊は「虚言?」と反芻する。
「それならこの世界で生きていくうちに積み重ねてきた約束も力がなくて守れなければ、虚言になるのでしょうか」 智里の視線が揺れた。
「約束を守ることが正義ならば、それは成り立つね? でも、なぜそう思うかい?」
大精霊の言葉に智里は口を開く。
「最期まで詩天を守り、詩天を強くし、詩天で生きる……そう約束して私は人を殺しました」
その時のことが浮かぶのか、一瞬、智里の視線はリアルブルーの大精霊から逸れる。
「独りで生きていくのが恐ろしくて縋った人とは、悪夢を境に結局袂を分かちました」
智里の脳裏にその人の顔が浮かぶ。一緒に行動していたときの思い出とともに。
「絶対迎えに行くと宣言した歪虚を迎えに行けませんでした」
「律儀というべきなのかな?」
大精霊の言葉に智里は唇をかむ。そして、首を横に振り「弱いんです」と言う。
「約束は生きるための指針だと思います。それなのに積み重なった約束が果たせないまま手の中から零れていきます……全て、私が弱いから」
「本当に? 約束と言うのはヒトを縛るものだよ? それによって行動を制限するかもしれない。君はその約束だけに生きているわけではないだろう? 無理なことだってあるんじゃないかい? それに、君に対して害があるかもしれないよ?」
大精霊の確認とも質問ともとれる言葉に、智里は首を横に振る。
「約束を守れるほどに強くなりたい! きちんと1人で立ち続けられるようになりたい!」
智里は心の声をほとばしらせる。
「これからも私は、いろんな場所でいろんな約束をしながら生きていくことになると思います。その時に約束を違えずに済む力が欲しい」
大精霊は目を細める。認められたいともがく少女をふと思い出していた。内向きでどこか一歩引いた雰囲気を持ちながら、芯が強く、真っ直ぐと誠実に行動する姿は智里に重なるかもしれない。
智里は大精霊の反応を見ている。一番言わないといけない言葉が喉を何度か滑るが声にならなかった。
心を落ち着けるように呼吸を深くひとつする。
「大精霊様との契約も約束の一つだと思います。邪神から世界を守り、人を歪虚から守り、東方の平和を守る……。
約束を違えぬ力を得るために、私は守護者の力を得ることを望みます」
言い切ったところで智里は不安そうに、大精霊の言葉を待つ。
大精霊は溜息を洩らした。
「……決心は固いんだね」
智里は「はい」と答えた。
大精霊は軽くうなずいた。その瞬間、大精霊を中心として空気が変わる。
ピンと張り詰め、透明な空気に。
「――星の光の名の下に、汝、穂積 智里に告げる。その魂の輝きを力と変え、星の救世主となる覚悟はあるか?」
「はい、あります!」
智里は真っ直ぐと大精霊を見つめ、はっきりと言った。
「契約を受理します。星と英雄の記憶を以て、ここに神の力の一端を授けん。目覚めよ、ゾモロドネガル!」
星の記憶石が砕け、その虹色の光が器に吸い込まれていく。
ゾモロドネガルは命を吹き込まれたかのように輝く。
「ここに誓いは結ばれた。約言なる守護者よ、君の救世に期待するよ」
智里は自分の中の力の本流に気づく。力とその責任をおった証しであり、身が引き締まる。
「リアルブルーの大精霊、世界を守ります!」
智里は力強く言った。
大精霊は優し気にうなずき「よろしく」と穏やかに告げると、智里はほっとした表情を見せたのだった。
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岩井崎 メル(ka0520) 種族:人間(リアルブルー) クラス:機導師(アルケミスト) 「守護者」取得日:2019/06/04 「守護者武器」:[SW]星神器「ゲイアサイル」 ●「守護者」への表明 「お久しぶりーっ。ルビーは元気? まぁ、あたしなりに考えた結果で、ね。」 |
●「守護者」取得(クリックすると、下にノベルが展開されます)
「お久しぶりーっ。ルビーは元気?」
「ええ?、元気よぉ。色々と忙しいけど、張り切って頑張ってるわ?」
岩井崎 メル(ka0520)とベアトリクス・アルキミア(kz0261)の対話はそんな挨拶から始まった。
「あ、これお土産にどうぞ」
メルが差し出したのは菓子折りだ。
彼女の旦那も守護者であり、守護者お茶会の先駆者でもある。
「旦那の真似をするのも妻らしさかなって!」
「お嫁さんってそういうのだったかしら?? まあでも、ありがたくいただくわ?」
せっかくなので、着席して二人で食べることにする。
「あはは……でも、やっぱりちょっぴり緊張するね。大精霊との契約なんてめったに体験できないし」
「私は大精霊の中でもゆるゆるだから、ちょっと理由とか聞いて、ぱ?っと終わるから大丈夫よぉ」
実際そんな気もするが、大精霊がそんな感じでよいのだろうか。当人が言うのだから、いいのか。
「わたしは皆の様に強く無いし、こう、余り頭も良くないのだけど。それでも夫や、友達や、みんな大切な人を守りたいしさ。こう見えてある程度の経験だって積んでるし、その力を役立てたいんだよねぇ」
「そうねぇ。星の記憶石に見初められたということは、力を持つ者としての責務があるわよね」
「うん。ルビーの「ししょー」と呼ばせて貰ってる責務を果たしたいのさー。あの子が信じてくれた世界を守らなきゃって思うしね」
メルにとってエバーグリーンでの冒険は忘れられない思い出だ。
彼女の今現在を、そのアイデンティティを構築した出来事だったとも言える。
「わたしはね、どう頑張っても結局は凡人なんだ。周りにすごい人がいっぱいだから、余計にそう思う」
彼女にとってかけがえのない存在も、彼女よりずっと早く守護者として世界の最前線に君臨している。
彼はきっと特別だ。ああいう者を、世界は「天才」とか「英雄」なんて呼ぶのだろう。
「追いつこうと頑張っても、どんどん先に行っちゃうから。ちょっと待って?なんて言えないし、わたしに何ができるのかなって、悩んだりしてさぁ」
それでも、メルにはメルにしか歩めなかった道があった。
エバーグリーンでの戦いの中で助け出したルビーという存在は、その象徴と言えるだろう。
「わたしたちはルビーを助けたけど、わたしもルビーの存在に助けられてるんだよ。わたしにも出来ることがあるんだって、そう思えるからさ」
「あの子を救ってくれたこと、私も感謝しているわ。今は私の仕事もたくさん引き継いでくれてるから」
「へぇ?、そうなんだ? じゃあ、わたしたちは二人の“ししょー”だね!」
二人して笑い合い、そしてメルは溜息を零す。
「まー……これまでの勘だけど、邪神にも色々な理由があるんだろうさねぇ。それの真意が分かるのはいつの日になるか分からないし、もしかしたら私達の根幹を揺るがすものなのかもなぁって」
「もしも邪神の理由というものが、正しいコトなら、私達はそれを許すべきなのかしら」
「どうだろう。それでも、だからって、手を挙げて無抵抗に死ぬのは何か違うんじゃないかな」
もしかしたら――この世界はどう足掻いても滅んでしまうのかもしれない。
破滅は避けられなくて、努力は無駄で、結果を覆すことはできないのかもしれない。
「けど――いつか誰かが。エバーグリーンの出会いの様に、見つけて想いを継いでくれるかもしれない」
エバーグリーンは、とうに終わった世界だった。
あの世界にも問題はあったが、努力が不足していたとは思わない。
最後まで戦い抜こうとしたからこそ、ルビーのような存在がいて、それが遠い未来、遠い世界で縁を繋いだのだから。
ベアトリクスは二度頷き、ゆっくりと席を立つ。
「いいでしょう。じゃ、いつものアレやりますか♪」
契約の間にて向き合う二人。ベアトリクスが指を鳴らすと、周囲の空間が緑の光に包まれていく。
「――星の光の名の下に、汝、岩井崎 メルに告げる。その魂の輝きを力と変え、星の救世主となる覚悟はあるか?」
「わたしの持てる力で一分一秒想いを残す、その時間を稼ぐ。可能性が消えてしまわないように!」
「契約を受理します。星と英雄の記憶を以て、ここに神の力の一端を授けん。目覚めよ、ゲイアサイル!」
砕けた星の記憶を吸い込んで、ゲイアサイルが覚醒する。
新たな力に手を伸ばし、メルはしっかりと両手で受け止めた。
「ここに誓いは結ばれた。追想なる守護者よ、あなたの救世に期待します」
最初に彼女がそう言った通り、ぱっと不思議な空間は消え、後には結果だけが残された。
「これがゲイアサイル……うん、わたしにぴったりだ!」
嬉しそうに笑うメルの様子を、ベアトリクスは少し離れた所から見つめていた。
「メルちゃん。これから先色々あると思うけど、ルビーをよろしくね」
優しく微笑みながら、しかしどこか申し訳なさそうにベアトリクスは告げた。
「あの子を、ひとりにしないであげてね」
言われるまでもない、当然のお願いだ。
だからメルは明るく返事をして、ベアトリクスもそれに満足するように笑った。
今にも消えてしまいそうなその笑顔の意味をメルが理解するのは、まだ少しだけ未来の話だ。
「ええ?、元気よぉ。色々と忙しいけど、張り切って頑張ってるわ?」
岩井崎 メル(ka0520)とベアトリクス・アルキミア(kz0261)の対話はそんな挨拶から始まった。
「あ、これお土産にどうぞ」
メルが差し出したのは菓子折りだ。
彼女の旦那も守護者であり、守護者お茶会の先駆者でもある。
「旦那の真似をするのも妻らしさかなって!」
「お嫁さんってそういうのだったかしら?? まあでも、ありがたくいただくわ?」
せっかくなので、着席して二人で食べることにする。
「あはは……でも、やっぱりちょっぴり緊張するね。大精霊との契約なんてめったに体験できないし」
「私は大精霊の中でもゆるゆるだから、ちょっと理由とか聞いて、ぱ?っと終わるから大丈夫よぉ」
実際そんな気もするが、大精霊がそんな感じでよいのだろうか。当人が言うのだから、いいのか。
「わたしは皆の様に強く無いし、こう、余り頭も良くないのだけど。それでも夫や、友達や、みんな大切な人を守りたいしさ。こう見えてある程度の経験だって積んでるし、その力を役立てたいんだよねぇ」
「そうねぇ。星の記憶石に見初められたということは、力を持つ者としての責務があるわよね」
「うん。ルビーの「ししょー」と呼ばせて貰ってる責務を果たしたいのさー。あの子が信じてくれた世界を守らなきゃって思うしね」
メルにとってエバーグリーンでの冒険は忘れられない思い出だ。
彼女の今現在を、そのアイデンティティを構築した出来事だったとも言える。
「わたしはね、どう頑張っても結局は凡人なんだ。周りにすごい人がいっぱいだから、余計にそう思う」
彼女にとってかけがえのない存在も、彼女よりずっと早く守護者として世界の最前線に君臨している。
彼はきっと特別だ。ああいう者を、世界は「天才」とか「英雄」なんて呼ぶのだろう。
「追いつこうと頑張っても、どんどん先に行っちゃうから。ちょっと待って?なんて言えないし、わたしに何ができるのかなって、悩んだりしてさぁ」
それでも、メルにはメルにしか歩めなかった道があった。
エバーグリーンでの戦いの中で助け出したルビーという存在は、その象徴と言えるだろう。
「わたしたちはルビーを助けたけど、わたしもルビーの存在に助けられてるんだよ。わたしにも出来ることがあるんだって、そう思えるからさ」
「あの子を救ってくれたこと、私も感謝しているわ。今は私の仕事もたくさん引き継いでくれてるから」
「へぇ?、そうなんだ? じゃあ、わたしたちは二人の“ししょー”だね!」
二人して笑い合い、そしてメルは溜息を零す。
「まー……これまでの勘だけど、邪神にも色々な理由があるんだろうさねぇ。それの真意が分かるのはいつの日になるか分からないし、もしかしたら私達の根幹を揺るがすものなのかもなぁって」
「もしも邪神の理由というものが、正しいコトなら、私達はそれを許すべきなのかしら」
「どうだろう。それでも、だからって、手を挙げて無抵抗に死ぬのは何か違うんじゃないかな」
もしかしたら――この世界はどう足掻いても滅んでしまうのかもしれない。
破滅は避けられなくて、努力は無駄で、結果を覆すことはできないのかもしれない。
「けど――いつか誰かが。エバーグリーンの出会いの様に、見つけて想いを継いでくれるかもしれない」
エバーグリーンは、とうに終わった世界だった。
あの世界にも問題はあったが、努力が不足していたとは思わない。
最後まで戦い抜こうとしたからこそ、ルビーのような存在がいて、それが遠い未来、遠い世界で縁を繋いだのだから。
ベアトリクスは二度頷き、ゆっくりと席を立つ。
「いいでしょう。じゃ、いつものアレやりますか♪」
契約の間にて向き合う二人。ベアトリクスが指を鳴らすと、周囲の空間が緑の光に包まれていく。
「――星の光の名の下に、汝、岩井崎 メルに告げる。その魂の輝きを力と変え、星の救世主となる覚悟はあるか?」
「わたしの持てる力で一分一秒想いを残す、その時間を稼ぐ。可能性が消えてしまわないように!」
「契約を受理します。星と英雄の記憶を以て、ここに神の力の一端を授けん。目覚めよ、ゲイアサイル!」
砕けた星の記憶を吸い込んで、ゲイアサイルが覚醒する。
新たな力に手を伸ばし、メルはしっかりと両手で受け止めた。
「ここに誓いは結ばれた。追想なる守護者よ、あなたの救世に期待します」
最初に彼女がそう言った通り、ぱっと不思議な空間は消え、後には結果だけが残された。
「これがゲイアサイル……うん、わたしにぴったりだ!」
嬉しそうに笑うメルの様子を、ベアトリクスは少し離れた所から見つめていた。
「メルちゃん。これから先色々あると思うけど、ルビーをよろしくね」
優しく微笑みながら、しかしどこか申し訳なさそうにベアトリクスは告げた。
「あの子を、ひとりにしないであげてね」
言われるまでもない、当然のお願いだ。
だからメルは明るく返事をして、ベアトリクスもそれに満足するように笑った。
今にも消えてしまいそうなその笑顔の意味をメルが理解するのは、まだ少しだけ未来の話だ。
(執筆:神宮寺飛鳥)
(文責:フロンティアワークス)
(文責:フロンティアワークス)
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イツキ・ウィオラス(ka6512) 種族:エルフ クラス:格闘士(マスターアームズ) 「守護者」取得日:2019/06/04 「守護者武器」:[SW]星神器「レガリア」 ●「守護者」への表明 「過去と未来を繋ぐ、現在を護る為に。命を、夢を導く為に」 |
●「守護者」取得(クリックすると、下にノベルが展開されます)
大精霊リアルブルーは目を見張り、恥じ入るように目を閉じた。
契約の前に資格の有無を見極める必要がある。
だが、その資格があり過ぎる者にどう接すればいいのだろうか。
「立って、座ってくれていいよ。長い話になるのだろう?」
跪くイツキ・ウィオラス(ka6512)を促し簡素な席に座らせる。
自身も同じ形の席に座り、エルフの紫の瞳を真正面から見つめた。
「はい」
1個の世界とそれを構成するマテリアルと向かい合っている。
生命としての規模が天文学的な規模で違う。
それを実感として理解しているはずなのに、イツキは穏やかに微笑み包み隠さず思いを語る。
「私が救えたもの、私を救ってくれたもの、私には救えなかったもの」
細かく語る必要はない。
膨大な記憶と経験を持つリアルブルーには、小さなエルフが何を経験してきたかなど容易く把握出来る。
「たくさんの夢を見て、たくさんの夢を失って」
把握出来る分からない。
どうして砕けずここまで来ることが出来たかが理解出来ない。
「数え切れないほどの願いを、想いを――嘆きを、見て来ました」
もう十分だろうと言いたくなる。
隠遁して穏やかな余生を過ごすのを勧めたいほどだ。
「何が正しいとか、間違っているとか……。私には、わかりません」
イツキは断罪を受け入れるかのように深く頭を下げる。
完全に無防備な今なら、戦闘センスの欠如に定評にあるリアルブルーでも手を下せる。
「この場での見極めは形式的なものだよ」
少なくとも君のようなひとにはねと内心でつぶやき、大精霊は意識して高次の存在らしい表情と気配を保ち顔を上げさせる。
己の全てを正しく使い尽くす覚悟が決まっている者に対する、最低限の義務だと信じて。
「――はい。命が紡ぎ続けるこの世界で、夢が織り成すこの世界で――歩み続ける事を諦めたくはない」
儚いほど小さく穏やかではあっても、イツキの魂は強靱だ。
契約もしていないのに、部屋の入り口に置いた星神器が反応している気がする。
「いつか出逢った夢、やがて出逢う夢、もう二度とは逢えない夢」
このエルフの魂は純白ではない。
過酷な戦いで傷つき焼け付き、黒く滲んだ箇所すらある。
「彼らの想いに、私の全てを賭して応える為に」
故に魅了させられる。
これならば、何度も期待しその度に諦めてきた勝利が手に入るのではないかと期待させられるのだ。
「想い結び、約束を紡いで絆を成す、そう約束した、誰かの為に」
その結果1つの魂に大きすぎる負担をかけることになっても。
普通の命としての終わりを取り上げてしまうことになっても……守護者という役割から逃がすつもりはない。
「私は、歩き続けます。どんなに暗い闇が広がっていようとも。私の軌跡が、ひとつでも多くの希望を導き、未来に実らせる事を願って」
時間としてはそれほど長くなくても、交わされた情報はイツキの人生1回分だ。
鍛え抜かれた彼女でも疲労はしているようで、白い額に汗を薄く汗が浮かんでいた。
「ありがとう」
リアルブルーは頭を下げた。
これからイツキを使い尽くすことになる。形としては大精霊が力を貸すことになっても、イツキが自身の思いに従うことがリアルブルーの悲願達成に繋がる。
「――星の光の名の下に、汝、イツキ・ウィオラスに告げる。その魂の輝きを力と変え、星の救世主となる覚悟はあるか?」
星の記憶石が浮かび上がる。
エルフと星神器と大精霊が、物理的な距離は変わらぬまま極限まで霊的に近くなる。
「世界と共に。命と、夢と共に」
イツキが同意する。
リアルブルーの口が動くより早く、大精霊を構成するマテリアルが反応した。
星の記憶石が物としての形を失い広がっていく。
「契約を受理します。星と英雄の記憶を以て、ここに神の力の一端を授けん。目覚めよ、レガリア!」
最初からそこにあったかのように、イツキの手の中に星神器がある。
イツキもさすがに戸惑う。意識と視線を向けるたびに微かに色合いが変わっていく。
「ここに誓いは結ばれた。清浄なる守護者よ、君の救世に期待する」
リアルブルーからイツキにマテリアルが流れていく。
大精霊から見れば一滴の滴にも満たない量なのに、イツキの一部として定着すると恐るべき強靱さと鋭さを持つようになる。
「決して断ち切られる事の無い絆を示す事を、この身、この魂を以って、誓います」
イツキは立ち上がり、霊的に扱いの難しいはずの星神器を己の一部として扱い改めて跪く。
それはリアルブルーの期待する守護者として完成され過ぎていて、己の欲望の形を目の前に突きつけられている気すらした。
無理はしないようにという一言を、大精霊は最後まで口に出来なかった。
契約の前に資格の有無を見極める必要がある。
だが、その資格があり過ぎる者にどう接すればいいのだろうか。
「立って、座ってくれていいよ。長い話になるのだろう?」
跪くイツキ・ウィオラス(ka6512)を促し簡素な席に座らせる。
自身も同じ形の席に座り、エルフの紫の瞳を真正面から見つめた。
「はい」
1個の世界とそれを構成するマテリアルと向かい合っている。
生命としての規模が天文学的な規模で違う。
それを実感として理解しているはずなのに、イツキは穏やかに微笑み包み隠さず思いを語る。
「私が救えたもの、私を救ってくれたもの、私には救えなかったもの」
細かく語る必要はない。
膨大な記憶と経験を持つリアルブルーには、小さなエルフが何を経験してきたかなど容易く把握出来る。
「たくさんの夢を見て、たくさんの夢を失って」
把握出来る分からない。
どうして砕けずここまで来ることが出来たかが理解出来ない。
「数え切れないほどの願いを、想いを――嘆きを、見て来ました」
もう十分だろうと言いたくなる。
隠遁して穏やかな余生を過ごすのを勧めたいほどだ。
「何が正しいとか、間違っているとか……。私には、わかりません」
イツキは断罪を受け入れるかのように深く頭を下げる。
完全に無防備な今なら、戦闘センスの欠如に定評にあるリアルブルーでも手を下せる。
「この場での見極めは形式的なものだよ」
少なくとも君のようなひとにはねと内心でつぶやき、大精霊は意識して高次の存在らしい表情と気配を保ち顔を上げさせる。
己の全てを正しく使い尽くす覚悟が決まっている者に対する、最低限の義務だと信じて。
「――はい。命が紡ぎ続けるこの世界で、夢が織り成すこの世界で――歩み続ける事を諦めたくはない」
儚いほど小さく穏やかではあっても、イツキの魂は強靱だ。
契約もしていないのに、部屋の入り口に置いた星神器が反応している気がする。
「いつか出逢った夢、やがて出逢う夢、もう二度とは逢えない夢」
このエルフの魂は純白ではない。
過酷な戦いで傷つき焼け付き、黒く滲んだ箇所すらある。
「彼らの想いに、私の全てを賭して応える為に」
故に魅了させられる。
これならば、何度も期待しその度に諦めてきた勝利が手に入るのではないかと期待させられるのだ。
「想い結び、約束を紡いで絆を成す、そう約束した、誰かの為に」
その結果1つの魂に大きすぎる負担をかけることになっても。
普通の命としての終わりを取り上げてしまうことになっても……守護者という役割から逃がすつもりはない。
「私は、歩き続けます。どんなに暗い闇が広がっていようとも。私の軌跡が、ひとつでも多くの希望を導き、未来に実らせる事を願って」
時間としてはそれほど長くなくても、交わされた情報はイツキの人生1回分だ。
鍛え抜かれた彼女でも疲労はしているようで、白い額に汗を薄く汗が浮かんでいた。
「ありがとう」
リアルブルーは頭を下げた。
これからイツキを使い尽くすことになる。形としては大精霊が力を貸すことになっても、イツキが自身の思いに従うことがリアルブルーの悲願達成に繋がる。
「――星の光の名の下に、汝、イツキ・ウィオラスに告げる。その魂の輝きを力と変え、星の救世主となる覚悟はあるか?」
星の記憶石が浮かび上がる。
エルフと星神器と大精霊が、物理的な距離は変わらぬまま極限まで霊的に近くなる。
「世界と共に。命と、夢と共に」
イツキが同意する。
リアルブルーの口が動くより早く、大精霊を構成するマテリアルが反応した。
星の記憶石が物としての形を失い広がっていく。
「契約を受理します。星と英雄の記憶を以て、ここに神の力の一端を授けん。目覚めよ、レガリア!」
最初からそこにあったかのように、イツキの手の中に星神器がある。
イツキもさすがに戸惑う。意識と視線を向けるたびに微かに色合いが変わっていく。
「ここに誓いは結ばれた。清浄なる守護者よ、君の救世に期待する」
リアルブルーからイツキにマテリアルが流れていく。
大精霊から見れば一滴の滴にも満たない量なのに、イツキの一部として定着すると恐るべき強靱さと鋭さを持つようになる。
「決して断ち切られる事の無い絆を示す事を、この身、この魂を以って、誓います」
イツキは立ち上がり、霊的に扱いの難しいはずの星神器を己の一部として扱い改めて跪く。
それはリアルブルーの期待する守護者として完成され過ぎていて、己の欲望の形を目の前に突きつけられている気すらした。
無理はしないようにという一言を、大精霊は最後まで口に出来なかった。
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歩夢(ka5975) 種族:人間(クリムゾンウェスト) クラス:符術師(カードマスター) 「守護者」取得日:2019/06/04 「守護者武器」:[SW]星神器「カレトヴルッフ」 ●「守護者」への表明 「のんびりぐーたらできる世界、取り戻してきてやるよ」 |
●「守護者」取得(クリックすると、下にノベルが展開されます)
「正直、めんどくさいのは嫌いなんだけどな」
そう言葉にするだけでも随分とふてぶてしいのだが、歩夢(ka5975)は敢えて声に出す。
「なぁんて言うわりに、手土産持参とか?、素直じゃないわね??」
儀式を行うための空間、そこで待っていた大精霊ベアトリクス・アルキミアは面白がっているようだ。
「あまぁい匂い。なにかな??」
ベアトリクスが何もない空間に向かい腕を振るえば、シンプルなチェアセットが現れる。勧められるままに歩夢も席につく。
「食べられるならよかったよ」
すぐに飲めるよう、水筒に入ったお茶をカップに注ぎ、菓子は皿に盛った。すぐにかぶりつくベアトリクスを前に契約の事を一時、忘れる。
「んぐんぐ……で、面倒くさがりなのに力が欲しいのは何でなの??」
「さっきも言った通りだ。何時だって、のんびりしていたいよ、俺は」
やる気のない言葉を吐くけれど、視線は真直ぐベアトリクスに向いている。
「でもな、今の状況ってのはさ。俺がのんびりしていたい世界じゃなくなりそうなんだよ」
煩わしい事ばかり起きてばかりで、優しい奴らが優しいだけでいられない。
「優しくあるために、優しさを貫くために。俺の仲間はどいつもこいつも急ぎすぎるんだ」
優しさのために動いて自分をすり減らすだけなら、強引にでも休ませればいいのかもしれない。けれどそれじゃ間に合わない状況だ。
「……気負いすぎなんだよ。一人で出来る事なんて、タカがしれてんのにさ」
疲れるだけじゃすまない、怪我なんて日常茶飯事。そんな殺伐とした世界で、自分一人だけのんびり楽しくなんて生きていられない。
「そう言う奴に限って、俺が好きな奴らだったりするんだよな」
簡単に言葉に出来ないかわりに、常に胸に秘めるようになってしまった。
「死なせたくはないんだ」
……もう、誰も。
声にならない言葉だけれど、瞳の強さが充分に語っている。
「損な役回りって言われない??」
「そうか? 俺はのんびりしたいだけだぜ」
ものぐさな俺だって本気を出すさ。そう嘯く歩夢はある意味、最大の自己中心的な考えの持ち主なのかもしれない。
「それにな。戦場になるのも、今、狙われてるのも俺の世界だ。生まれてから当たり前に暮らしてきた場所だ」
まだ菓子が残っている皿をベアトリクスの方に寄せる。
「別の世界から来てくれたあんた達ががんばってくれてんのに、この世界の住人たる俺が日和ってなんかいられねえよな」
手土産を持ってきたのは気紛れなどではなく。契約への打算でもなく。ただ、ベアトリクスを労いたいと、気持ちだけでも伝えたいと、そう思ったからだ。
丁度、ベアトリクスの持つカップが空になった。
音もなくカップが置かれた直後、白衣がドレスへと変化する。
「――星の光の名の下に、汝、歩夢に告げる。その魂の輝きを力と変え、星の救世主となる覚悟は……あるかしら?」
それまでの気だるげな、いい加減な口調はなりをひそめ、大精霊としての気配が、圧が歩夢へと向かう。
それまですぐ傍に在った筈のお茶の香りも、口の中にかすかに残る甘差も瞬時に消え失せる。けれど歩夢は笑みを浮かべた。
「気負わずあわてず、けれど命をかけて取り戻してやるぜ」
いつも通りの口調。なぜならそれが歩夢の望みだから。当たり前の未来にしたいから、今という瞬間もそれを貫き続けるために。
「何にも代えがたい、退屈な日常って奴をさ」
この空間に来てからずっと、視線はぶれていない。
「……それからだったら、サボる方法を考えたっていいよな?」
その後なら、守護者の休日だってあるはずだ。姿勢も、ずっとぶれていない。
頷いたベアトリクスの口元は笑みに歪んだ。意識して、息を吸う。
「契約を受理するわよ。星と英雄の記憶を以て、ここに神の力の一端を授けん。目覚めよ、星神器「カレトヴルッフ」!」
ゆっくりと目の前に降りてくる剣、その柄を歩夢が掴む。
「大振りだな……でも、だからこそ御し甲斐があるってものさ」
すぐにでも素振りを試したいと、その目が語っている。
「出てからにしなさいな?? ……ここに誓いは結ばれたわ。願望なる守護者よ、あなたの救世に期待するわね」
「ああ、東方の符術剣士として、すぐに使いこなしてやるさ」
「いいけど?。お茶、まだ残ってる?」
いつの間にか白衣姿に戻ったベアトリクスが、おかわりを要求しはじめる。
「持ってきた俺が言う事じゃないが、オンとオフが激しいな」
「それをあなたが言うのかしら?」
軽口を交わしながら、穏やかな時間が流れ始める。
望む世界を得るためだからと、敢えて、当たり前のこととしてお茶の時間は続いていった。
そう言葉にするだけでも随分とふてぶてしいのだが、歩夢(ka5975)は敢えて声に出す。
「なぁんて言うわりに、手土産持参とか?、素直じゃないわね??」
儀式を行うための空間、そこで待っていた大精霊ベアトリクス・アルキミアは面白がっているようだ。
「あまぁい匂い。なにかな??」
ベアトリクスが何もない空間に向かい腕を振るえば、シンプルなチェアセットが現れる。勧められるままに歩夢も席につく。
「食べられるならよかったよ」
すぐに飲めるよう、水筒に入ったお茶をカップに注ぎ、菓子は皿に盛った。すぐにかぶりつくベアトリクスを前に契約の事を一時、忘れる。
「んぐんぐ……で、面倒くさがりなのに力が欲しいのは何でなの??」
「さっきも言った通りだ。何時だって、のんびりしていたいよ、俺は」
やる気のない言葉を吐くけれど、視線は真直ぐベアトリクスに向いている。
「でもな、今の状況ってのはさ。俺がのんびりしていたい世界じゃなくなりそうなんだよ」
煩わしい事ばかり起きてばかりで、優しい奴らが優しいだけでいられない。
「優しくあるために、優しさを貫くために。俺の仲間はどいつもこいつも急ぎすぎるんだ」
優しさのために動いて自分をすり減らすだけなら、強引にでも休ませればいいのかもしれない。けれどそれじゃ間に合わない状況だ。
「……気負いすぎなんだよ。一人で出来る事なんて、タカがしれてんのにさ」
疲れるだけじゃすまない、怪我なんて日常茶飯事。そんな殺伐とした世界で、自分一人だけのんびり楽しくなんて生きていられない。
「そう言う奴に限って、俺が好きな奴らだったりするんだよな」
簡単に言葉に出来ないかわりに、常に胸に秘めるようになってしまった。
「死なせたくはないんだ」
……もう、誰も。
声にならない言葉だけれど、瞳の強さが充分に語っている。
「損な役回りって言われない??」
「そうか? 俺はのんびりしたいだけだぜ」
ものぐさな俺だって本気を出すさ。そう嘯く歩夢はある意味、最大の自己中心的な考えの持ち主なのかもしれない。
「それにな。戦場になるのも、今、狙われてるのも俺の世界だ。生まれてから当たり前に暮らしてきた場所だ」
まだ菓子が残っている皿をベアトリクスの方に寄せる。
「別の世界から来てくれたあんた達ががんばってくれてんのに、この世界の住人たる俺が日和ってなんかいられねえよな」
手土産を持ってきたのは気紛れなどではなく。契約への打算でもなく。ただ、ベアトリクスを労いたいと、気持ちだけでも伝えたいと、そう思ったからだ。
丁度、ベアトリクスの持つカップが空になった。
音もなくカップが置かれた直後、白衣がドレスへと変化する。
「――星の光の名の下に、汝、歩夢に告げる。その魂の輝きを力と変え、星の救世主となる覚悟は……あるかしら?」
それまでの気だるげな、いい加減な口調はなりをひそめ、大精霊としての気配が、圧が歩夢へと向かう。
それまですぐ傍に在った筈のお茶の香りも、口の中にかすかに残る甘差も瞬時に消え失せる。けれど歩夢は笑みを浮かべた。
「気負わずあわてず、けれど命をかけて取り戻してやるぜ」
いつも通りの口調。なぜならそれが歩夢の望みだから。当たり前の未来にしたいから、今という瞬間もそれを貫き続けるために。
「何にも代えがたい、退屈な日常って奴をさ」
この空間に来てからずっと、視線はぶれていない。
「……それからだったら、サボる方法を考えたっていいよな?」
その後なら、守護者の休日だってあるはずだ。姿勢も、ずっとぶれていない。
頷いたベアトリクスの口元は笑みに歪んだ。意識して、息を吸う。
「契約を受理するわよ。星と英雄の記憶を以て、ここに神の力の一端を授けん。目覚めよ、星神器「カレトヴルッフ」!」
ゆっくりと目の前に降りてくる剣、その柄を歩夢が掴む。
「大振りだな……でも、だからこそ御し甲斐があるってものさ」
すぐにでも素振りを試したいと、その目が語っている。
「出てからにしなさいな?? ……ここに誓いは結ばれたわ。願望なる守護者よ、あなたの救世に期待するわね」
「ああ、東方の符術剣士として、すぐに使いこなしてやるさ」
「いいけど?。お茶、まだ残ってる?」
いつの間にか白衣姿に戻ったベアトリクスが、おかわりを要求しはじめる。
「持ってきた俺が言う事じゃないが、オンとオフが激しいな」
「それをあなたが言うのかしら?」
軽口を交わしながら、穏やかな時間が流れ始める。
望む世界を得るためだからと、敢えて、当たり前のこととしてお茶の時間は続いていった。
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ジャック・エルギン(ka1522) 種族:人間(クリムゾンウェスト) クラス:闘狩人(エンフォーサー) 「守護者」取得日:2019/06/04 「守護者武器」:[SW]星神器「ヴァジュラ」 ●「守護者」への表明 「やってやるさ。俺らに力を貸してくれる、皆の想いを背負ってな」 |
●「守護者」取得(クリックすると、下にノベルが展開されます)
「そんじゃ始めるか。俺の名前はジャック・エルギンだ。星神器「ヴァジュラ」を得て、守護者になることを望むぜ」
契約の間でリアルブルー(kz0279)と向き合うジャック・エルギン(ka1522)に緊張は見られない。
前置き抜きに結論を提示すると、リアルブルーは腕を組む。
「そうか。じゃあ渡してもいい」
「……おぉ? 一応、理由とか聞かなくていいのかよ?」
「君からは迷いを感じないからなぁ。どうあっても最後まで自分のやるべきことをやり抜くって顔だ。たまにそういう奴が来るんだよな……」
「そうだな。ここまできたら資格なしって言われようが、最後まで戦うしな」
そういう意味で、やるべきことは何も変わらない。
過程の変化が結論に影響しないのなら、リラックスしていて当然かもしれない。
「別に何がなんでも守護者になりたいって訳じゃねえ。だが、相手は半端じゃねえ。仲間の前じゃ口に出せねえが、本当に何とか出来んのかよって思ったこともある」
「まさに僕もそう思っているよ。あんな桁外れの敵、どうすればいいんだよって」
「だよな。だから力が借りたいんだ。元より、俺らは自分の力だけで戦ってるんじゃねえし」
ジャックは覚醒者という存在を正確に理解していた。
確かに才能はあるだろう。だが、その才能も精霊の加護という火を灯して初めて熱く燃え上がる。
「精霊の協力がなきゃ覚醒もできねえ。スキルだって先人が編み出した技だ。使う装備は職人、技術者の知恵の結晶だろ。そもそも最初から一人で戦うのなんか無理なんだよ」
ジャックの愛剣「アニマ・リベラ」は特別な龍鉱石で作られたものだ。
そしてその銘は、彼の父親から受け継いだもの。
「俺の剣は星の傷跡の龍鉱石だ。龍の力も借してもらってる。立場の違いとか色々あるけど、過去から積み重ねてきたものが今を作ってるんだ」
「君もそのサイクルの一つに過ぎないと?」
「まあな。だから、俺が星神器に認められなかったとしても、それもしょうがねえしよ。別に悲観するようなことでもねえ。俺は俺に出来ることで何かを積み重ねるだけなんだから」
剣を鞘に納め、ジャックは爽やかな笑みを浮かべる。
リアルブルーは彼の持つ星の記憶石を受け取り、それをマテリアルの光と共に宙に浮かべた。
「星の記憶石は神の見た夢、人の歴史の結晶だ。清濁併せ、英雄もそうでなかった者も、その想いのすべてを託している。こいつに選ばれた時点で、君は守護者の資格を持っていたのさ」
「人の歴史の結晶、か……。だったら願ったり叶ったりだぜ。俺は人間、精霊、龍、他にもすべての力……いや、皆の想いってヤツを束ねて、邪神をブッ飛ばす!」
「――いいだろう、英雄。その言葉に二言はないぞ」
リアルブルーが腕を振るうと、世界を青い光の海が上書きしていく。
「――星の光の名の下に、汝、ジャック・エルギンに告げる。その魂の輝きを力と変え、星の救世主となる覚悟はあるか?」
「これまでの全部をぶつけなきゃ、とても勝てねえ相手だ。だから大精霊、この星神器の力を俺に貸してくれ!」
ジャックの声に応じ、星の記憶石が砕け散る。
小さな光のシャワーはやがて渦を巻き、星神器へと吸い込まれ覚醒を促す。
「契約を受理します。星と英雄の記憶を以て、ここに神の力の一端を授けん。目覚めよ、ヴァジュラ!」
光に手を伸ばし、ジャックは確かに掴み取る。
星の歴史が紡いだ結晶。星神器「ヴァジュラ」がその手にあった。
「ここに誓いは結ばれた。後継なる守護者よ、君の救世に期待する」
儀式が終わり、青い光が消えると同時に契約の間が明らかになる。
「誰かの願いを受け継ぐってことは、過去の奴隷となることにも等しい」
リアルブルーはそう言ってジャックの前に立つ。
「英雄が背負うものは重いぞ。最後までやり遂げられるかい?」
「やってやるさ。俺らに力を貸してくれる、皆の想いを背負ってな」
しっかりと答え、それからジャックは少し照れ臭そうに笑う。
「まあ、実際のところ俺みたいなやつが守護者に相応しいのかはわからねえんだけどな。俺はただ自分がどこまで行けるのか、試したかっただけの気もするし」
ただ自由に、ただ真っすぐに走り続けた日々。
身軽な筈の旅路だったのに、今は沢山の想いを背負ってしまった。
「だが、そういうのも悪くねえ。俺は、俺の後に続く誰かを勇気づけられる存在でありてえからよ」
リアルブルーは穏やかに笑みを浮かべる。
誰かが紡いだものを、次の誰かが受け取って、少しだけ前へ。
それはきっと、自由ではない。それでも選び取った不自由なら――きっと、後悔はしない。
男は空を見上げた。
子供の頃に駆け抜けたあの港町と変わらない、抜けるような青空がそこにあった。
契約の間でリアルブルー(kz0279)と向き合うジャック・エルギン(ka1522)に緊張は見られない。
前置き抜きに結論を提示すると、リアルブルーは腕を組む。
「そうか。じゃあ渡してもいい」
「……おぉ? 一応、理由とか聞かなくていいのかよ?」
「君からは迷いを感じないからなぁ。どうあっても最後まで自分のやるべきことをやり抜くって顔だ。たまにそういう奴が来るんだよな……」
「そうだな。ここまできたら資格なしって言われようが、最後まで戦うしな」
そういう意味で、やるべきことは何も変わらない。
過程の変化が結論に影響しないのなら、リラックスしていて当然かもしれない。
「別に何がなんでも守護者になりたいって訳じゃねえ。だが、相手は半端じゃねえ。仲間の前じゃ口に出せねえが、本当に何とか出来んのかよって思ったこともある」
「まさに僕もそう思っているよ。あんな桁外れの敵、どうすればいいんだよって」
「だよな。だから力が借りたいんだ。元より、俺らは自分の力だけで戦ってるんじゃねえし」
ジャックは覚醒者という存在を正確に理解していた。
確かに才能はあるだろう。だが、その才能も精霊の加護という火を灯して初めて熱く燃え上がる。
「精霊の協力がなきゃ覚醒もできねえ。スキルだって先人が編み出した技だ。使う装備は職人、技術者の知恵の結晶だろ。そもそも最初から一人で戦うのなんか無理なんだよ」
ジャックの愛剣「アニマ・リベラ」は特別な龍鉱石で作られたものだ。
そしてその銘は、彼の父親から受け継いだもの。
「俺の剣は星の傷跡の龍鉱石だ。龍の力も借してもらってる。立場の違いとか色々あるけど、過去から積み重ねてきたものが今を作ってるんだ」
「君もそのサイクルの一つに過ぎないと?」
「まあな。だから、俺が星神器に認められなかったとしても、それもしょうがねえしよ。別に悲観するようなことでもねえ。俺は俺に出来ることで何かを積み重ねるだけなんだから」
剣を鞘に納め、ジャックは爽やかな笑みを浮かべる。
リアルブルーは彼の持つ星の記憶石を受け取り、それをマテリアルの光と共に宙に浮かべた。
「星の記憶石は神の見た夢、人の歴史の結晶だ。清濁併せ、英雄もそうでなかった者も、その想いのすべてを託している。こいつに選ばれた時点で、君は守護者の資格を持っていたのさ」
「人の歴史の結晶、か……。だったら願ったり叶ったりだぜ。俺は人間、精霊、龍、他にもすべての力……いや、皆の想いってヤツを束ねて、邪神をブッ飛ばす!」
「――いいだろう、英雄。その言葉に二言はないぞ」
リアルブルーが腕を振るうと、世界を青い光の海が上書きしていく。
「――星の光の名の下に、汝、ジャック・エルギンに告げる。その魂の輝きを力と変え、星の救世主となる覚悟はあるか?」
「これまでの全部をぶつけなきゃ、とても勝てねえ相手だ。だから大精霊、この星神器の力を俺に貸してくれ!」
ジャックの声に応じ、星の記憶石が砕け散る。
小さな光のシャワーはやがて渦を巻き、星神器へと吸い込まれ覚醒を促す。
「契約を受理します。星と英雄の記憶を以て、ここに神の力の一端を授けん。目覚めよ、ヴァジュラ!」
光に手を伸ばし、ジャックは確かに掴み取る。
星の歴史が紡いだ結晶。星神器「ヴァジュラ」がその手にあった。
「ここに誓いは結ばれた。後継なる守護者よ、君の救世に期待する」
儀式が終わり、青い光が消えると同時に契約の間が明らかになる。
「誰かの願いを受け継ぐってことは、過去の奴隷となることにも等しい」
リアルブルーはそう言ってジャックの前に立つ。
「英雄が背負うものは重いぞ。最後までやり遂げられるかい?」
「やってやるさ。俺らに力を貸してくれる、皆の想いを背負ってな」
しっかりと答え、それからジャックは少し照れ臭そうに笑う。
「まあ、実際のところ俺みたいなやつが守護者に相応しいのかはわからねえんだけどな。俺はただ自分がどこまで行けるのか、試したかっただけの気もするし」
ただ自由に、ただ真っすぐに走り続けた日々。
身軽な筈の旅路だったのに、今は沢山の想いを背負ってしまった。
「だが、そういうのも悪くねえ。俺は、俺の後に続く誰かを勇気づけられる存在でありてえからよ」
リアルブルーは穏やかに笑みを浮かべる。
誰かが紡いだものを、次の誰かが受け取って、少しだけ前へ。
それはきっと、自由ではない。それでも選び取った不自由なら――きっと、後悔はしない。
男は空を見上げた。
子供の頃に駆け抜けたあの港町と変わらない、抜けるような青空がそこにあった。
(執筆:神宮寺飛鳥)
(文責:フロンティアワークス)
(文責:フロンティアワークス)
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東條 奏多(ka6425) 種族:人間(リアルブルー) クラス:疾影士(ストライダー) 「守護者」取得日:2019/06/04 ●「守護者」への表明 「そう変わりはしないよ、やるべきことをやるだけだ」 |
●「守護者」取得(クリックすると、下にノベルが展開されます)
「今回は、誰が来るのかしら??」
白衣を纏ったベアトリクス・アルキミア(kz0261)は、椅子に座り、のんびりと寛いでいた。
今の状況を鑑みれば、ゆっくりしている暇はないのだが、だからと言って、慌てても仕方がないとベアトリクスは思っていた。
契約の間に姿を現したのは、東條・奏多(ka6425)だった。
ベアトリクスが、きょとんとした顔をしていた。
「あら、私と契約したいの?」
奏多は、リアルブルー出身のハンターであったが、ベアトリクスとの面会を求めた。
「私で良いのなら、話は聞くわよ?」
ベアトリクスは椅子から立ち上がり、奏多の方へと歩み寄った。
「……守護者の力を求める理由、だったか」
「そうよ。それが肝心なことよ。しっかり聞かせて頂戴」
ベアトリクスが真剣な眼差しをすると、奏多は一呼吸してから、話し始めた。
「単純な話、やるべき事をやるために一番有効だったから選んだ、ただそれだけだ。邪神と戦うのに大きな力が欲しい、言うまでもない当然の話だ。それに、戦いが終わった後に、この終わりかけた世界をどうにかしないといけない。邪神を倒した処で、世界のマテリアルの枯渇は避けられない。根本の問題を解決しないといけないだろう?」
「そこまで先を見越して、考えていたのね。もう少し聞かせてくれる?」
「普通の学生だった頃の俺には、全く関係ない話だったけども、ハンターの俺はもう当事者であって、 守護者になった俺になら、解決の一助になれるついでに、隣に立つ顔見知りも助けられるしな?」
奏多は転移する前、日本の一般家庭で育った少年だった。大学に合格した後、目標であるコロニー開発者を知るために宇宙へと向かうが、その道中でクリムゾンウェストに転移してきたのだ。
知り合いが誰もいない異世界は、奏多を自暴自棄にさせたこともあった。そんな時、一人の少女との出会いが転機となった。
成り行きとは言え、ハンターとして依頼を熟していくうちに、次第と仲間も増えていった。
隣に立つ顔見知り……それこそ、奏多にとって、かけがえのない存在となった。
「……大切な仲間を守りたいのね?」
ベアトリクスが微笑むと、奏多は改めて思った。
自分がやろうとしていることは、何も変わっていない。
手段が変わっているように思えても、自分の願いはずっと変わらないのだ。
「もう、リアルブルーの広い宇宙に人の居場所を作る夢は叶わないかもしれないけども、この広い世界に人が生きる手助けはしていきたい。今、世界を失う事に怯えてる人にも、もう世界を失ってしまった人にも、まだ見ぬ世界を旅する人達にも、居場所を作ってやりたい。ここにいていいんだと言ってやりたい。困った時は立ち寄る場所を作りたい……」
奏多の想いは純粋だ。
純粋であるが故に、迷うことも増えるだろう。
ベアトリクスが、問いかけた。
「本当に良いの? 後悔はしない? 最悪の事態になったとしても?」
「……後悔だけはしたくないから、ここにきたんだ。どんな結果になったとしても、諦めたくはないんだ」
奏多の一途な想いを聴き、ベアトリクスが頷いた。
「分かったわ。じゃあ、契約の儀式を始めるわよ」
互いに向かい合い、ベアトリクスは奏多の手を優しく握り締めた。
「――星の光の名の下に、汝、東條・奏多に告げる。その魂の輝きを力と変え、星の救世主となる覚悟はあるか?」
「できることと、やりたいことが一致した。だからやる、それだけだ」
「契約を受理します。星と英雄の記憶を以て、ここに神の力の一端を授けん。目覚めよ、ガーディアン!」
奏多の身体が光に包まれ、世界を凝縮したような重みが圧し掛かるのを感じた。
「ここに誓いは結ばれた。疾風なる守護者よ、あなたの救世に期待します」
「ここまで関わってきたからには、当事者として最後まで役目を全うしよう」
奏多は、先を見据えていた。
今、自分ができることをやるだけ……その積み重ねが、進むべき道を切り開いていくのだろう。
この先が闇でも、自らが光となって、世界を照らしていく覚悟を噛みしめていた。
白衣を纏ったベアトリクス・アルキミア(kz0261)は、椅子に座り、のんびりと寛いでいた。
今の状況を鑑みれば、ゆっくりしている暇はないのだが、だからと言って、慌てても仕方がないとベアトリクスは思っていた。
契約の間に姿を現したのは、東條・奏多(ka6425)だった。
ベアトリクスが、きょとんとした顔をしていた。
「あら、私と契約したいの?」
奏多は、リアルブルー出身のハンターであったが、ベアトリクスとの面会を求めた。
「私で良いのなら、話は聞くわよ?」
ベアトリクスは椅子から立ち上がり、奏多の方へと歩み寄った。
「……守護者の力を求める理由、だったか」
「そうよ。それが肝心なことよ。しっかり聞かせて頂戴」
ベアトリクスが真剣な眼差しをすると、奏多は一呼吸してから、話し始めた。
「単純な話、やるべき事をやるために一番有効だったから選んだ、ただそれだけだ。邪神と戦うのに大きな力が欲しい、言うまでもない当然の話だ。それに、戦いが終わった後に、この終わりかけた世界をどうにかしないといけない。邪神を倒した処で、世界のマテリアルの枯渇は避けられない。根本の問題を解決しないといけないだろう?」
「そこまで先を見越して、考えていたのね。もう少し聞かせてくれる?」
「普通の学生だった頃の俺には、全く関係ない話だったけども、ハンターの俺はもう当事者であって、 守護者になった俺になら、解決の一助になれるついでに、隣に立つ顔見知りも助けられるしな?」
奏多は転移する前、日本の一般家庭で育った少年だった。大学に合格した後、目標であるコロニー開発者を知るために宇宙へと向かうが、その道中でクリムゾンウェストに転移してきたのだ。
知り合いが誰もいない異世界は、奏多を自暴自棄にさせたこともあった。そんな時、一人の少女との出会いが転機となった。
成り行きとは言え、ハンターとして依頼を熟していくうちに、次第と仲間も増えていった。
隣に立つ顔見知り……それこそ、奏多にとって、かけがえのない存在となった。
「……大切な仲間を守りたいのね?」
ベアトリクスが微笑むと、奏多は改めて思った。
自分がやろうとしていることは、何も変わっていない。
手段が変わっているように思えても、自分の願いはずっと変わらないのだ。
「もう、リアルブルーの広い宇宙に人の居場所を作る夢は叶わないかもしれないけども、この広い世界に人が生きる手助けはしていきたい。今、世界を失う事に怯えてる人にも、もう世界を失ってしまった人にも、まだ見ぬ世界を旅する人達にも、居場所を作ってやりたい。ここにいていいんだと言ってやりたい。困った時は立ち寄る場所を作りたい……」
奏多の想いは純粋だ。
純粋であるが故に、迷うことも増えるだろう。
ベアトリクスが、問いかけた。
「本当に良いの? 後悔はしない? 最悪の事態になったとしても?」
「……後悔だけはしたくないから、ここにきたんだ。どんな結果になったとしても、諦めたくはないんだ」
奏多の一途な想いを聴き、ベアトリクスが頷いた。
「分かったわ。じゃあ、契約の儀式を始めるわよ」
互いに向かい合い、ベアトリクスは奏多の手を優しく握り締めた。
「――星の光の名の下に、汝、東條・奏多に告げる。その魂の輝きを力と変え、星の救世主となる覚悟はあるか?」
「できることと、やりたいことが一致した。だからやる、それだけだ」
「契約を受理します。星と英雄の記憶を以て、ここに神の力の一端を授けん。目覚めよ、ガーディアン!」
奏多の身体が光に包まれ、世界を凝縮したような重みが圧し掛かるのを感じた。
「ここに誓いは結ばれた。疾風なる守護者よ、あなたの救世に期待します」
「ここまで関わってきたからには、当事者として最後まで役目を全うしよう」
奏多は、先を見据えていた。
今、自分ができることをやるだけ……その積み重ねが、進むべき道を切り開いていくのだろう。
この先が闇でも、自らが光となって、世界を照らしていく覚悟を噛みしめていた。
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シガレット=ウナギパイ(ka2884) 種族:人間(クリムゾンウェスト) クラス:聖導士(クルセイダー) 「守護者」取得日:2019/06/04 「守護者武器」:[SW]星神器「ゲネシス」 ●「守護者」への表明 「悲劇を繰り返さないために俺はここに在る」 |
●「守護者」取得(クリックすると、下にノベルが展開されます)
「あのベアトリクスが今や大精霊で、守護者の契約までやってるとはなァ……」
シガレット=ウナギパイ(ka2884)は、彼女がまだ狂気王の名を冠していた頃を思い出す。
戦ったことがあるからという理由で契約神に選んだのだが、あの巨大な怪物がダブルピース女になるなど誰が予想できただろう。
「そうなのよ?。ウナパイ兄貴と戦った記憶ないけど?」
「まあ、正気を失ってた頃だから無理もな…………ん?」
何か妙な呼称の気配を感じた。
ナディアもそんな感じの呼び方をしていた気がするが、神の間で流行っているのだろうか。
そもそもつっこんでいいのだろうか。思案している間に機会を失ってしまった。
「そういえば、お菓子は持ってきてないの? 他の契約者はよく持ってくるのだけれど」
「悪いが手ぶらだぜェ」
「ウナギパイなのに?」
「ウナギパイなのに」
閑話休題。
「ベアトリクスには嬉しくない話となるがなァ……」
シガレットはそう前置きして語り出す。
反影作戦で異界調査に赴いたシガレットは、そこで崩壊直前のエバーグリーンの記憶と出くわした。
そこでこの世のものとは思えない咆哮が轟き、人々は恐慌し、大地は崩落して何もかもが失われていくのを見た。
「それが邪神の記録だと理解しても、俺に出来ることはなかったのかと無力感に苛まれるばかりだぜェ……」
「そうねぇ。あれはひどかったわねぇ。私も記憶は曖昧だけど、本気になった邪神の力は星をも破壊するわけだし」 同意しながらも、ベアトリクスは問い返す。
「ちゃんと見たならわかってると思うけど、無力というか……そもそも本来的には人間にどうにかできるレベルの“天災”ではないのよ。それでも抗うの?」
「実際のところ、どうにもならない場合もあるってことは、わかってるんだけどなァ」
どれだけ高潔な誓いも、絶対の約束も、必ず守れる保証なんてない。
「俺は二度も誓いを果たせなかった男だ。だが、諦めは悪い方でなァ。やると決めたことは、やり通したいのさ……」
シガレットにとって、この状況はさして絶望するほどではないのかもしれない。
だって、彼はとうに二度も深い絶望を味わったのだから。
生きることを諦めるのなら、とっくにそうしているだろう。
「俺は悲劇ってやつが嫌いでな。そいつを繰り返さないためにハンターをやってる。俺の信条、ってヤツだァ」
今、世界は滅ぶかどうかの瀬戸際にある。
エバーグリーンがそうであったように、クリムゾンウェストもリアルブルーも、邪神に破壊されるかもしれない。
「ならば、あの絶望しかなかった悲劇を繰り返さないために、俺は力を欲する。これが俺の理由だぜェ」
「そう。だったら、あなたは元々守護者だったのね」
シガレットの人生にとって肝要なものは、既に過去になってしまった。
今彼が立っている場所は、彼という物語が終わった先。
己のためではなく、己のようになってくれるなと願う、誰かのための物語だ。
「あんまり考えた事はないが、言われてみるとそうかもなァ」
「そうね。私もこう見えてけっこうなおばあちゃんだけど、あなたもまだ若いのにおじいちゃんみたいね?」
「そこは大人の男と言ってほしいなァ」
男はのらりくらりと生きている。
いちいち怒ったりしないし、大抵のことは気楽に受け止める。
ままならぬこともあると知りながら、それでも諦めぬことを誓ったからこその度量だ。
「元から滅私の賢者だというのなら、あとは同意だけね」
そう言ってベアトリクスは頷き、その力で周囲の空間を塗り替えていく。
「――星の光の名の下に、汝、シガレット=ウナギパイに告げる。その魂の輝きを力と変え、星の救世主となる覚悟はあるか?」
「おう。悲劇を繰り返さないために、俺はここに在る」
「契約を受理します。星と英雄の記憶を以て、ここに神の力の一端を授けん。目覚めよ、ゲネシス!」
星の記憶石がゲネシスに力を与え、そして色づていく。
「ここに誓いは結ばれた。大樹なる守護者よ、あなたの救世に期待します」
「これで俺もガーディアンの一員かァ……」
なってみると呆気ないものだ。
身構えるようなことではないと思っていたし、実際にもそうだった。
「しかし、こうしてみるとハンターと大精霊の相互理解も随分と進んでるんだなァ」
「そうね。守護者と契約を結ぶ度、私達は人の心に触れ、そして理解する」
ベアトリクスは腕を組み、そして微笑む。
「今度会いに来る時は、菓子折りもよろしくね♪」
「ああ。覚えてたらなァ」
ひらひらと手を振り、シガレットは去っていく。
大精霊との契約などなんでもない通過点だと、のんびりした背中が告げていた。
シガレット=ウナギパイ(ka2884)は、彼女がまだ狂気王の名を冠していた頃を思い出す。
戦ったことがあるからという理由で契約神に選んだのだが、あの巨大な怪物がダブルピース女になるなど誰が予想できただろう。
「そうなのよ?。ウナパイ兄貴と戦った記憶ないけど?」
「まあ、正気を失ってた頃だから無理もな…………ん?」
何か妙な呼称の気配を感じた。
ナディアもそんな感じの呼び方をしていた気がするが、神の間で流行っているのだろうか。
そもそもつっこんでいいのだろうか。思案している間に機会を失ってしまった。
「そういえば、お菓子は持ってきてないの? 他の契約者はよく持ってくるのだけれど」
「悪いが手ぶらだぜェ」
「ウナギパイなのに?」
「ウナギパイなのに」
閑話休題。
「ベアトリクスには嬉しくない話となるがなァ……」
シガレットはそう前置きして語り出す。
反影作戦で異界調査に赴いたシガレットは、そこで崩壊直前のエバーグリーンの記憶と出くわした。
そこでこの世のものとは思えない咆哮が轟き、人々は恐慌し、大地は崩落して何もかもが失われていくのを見た。
「それが邪神の記録だと理解しても、俺に出来ることはなかったのかと無力感に苛まれるばかりだぜェ……」
「そうねぇ。あれはひどかったわねぇ。私も記憶は曖昧だけど、本気になった邪神の力は星をも破壊するわけだし」 同意しながらも、ベアトリクスは問い返す。
「ちゃんと見たならわかってると思うけど、無力というか……そもそも本来的には人間にどうにかできるレベルの“天災”ではないのよ。それでも抗うの?」
「実際のところ、どうにもならない場合もあるってことは、わかってるんだけどなァ」
どれだけ高潔な誓いも、絶対の約束も、必ず守れる保証なんてない。
「俺は二度も誓いを果たせなかった男だ。だが、諦めは悪い方でなァ。やると決めたことは、やり通したいのさ……」
シガレットにとって、この状況はさして絶望するほどではないのかもしれない。
だって、彼はとうに二度も深い絶望を味わったのだから。
生きることを諦めるのなら、とっくにそうしているだろう。
「俺は悲劇ってやつが嫌いでな。そいつを繰り返さないためにハンターをやってる。俺の信条、ってヤツだァ」
今、世界は滅ぶかどうかの瀬戸際にある。
エバーグリーンがそうであったように、クリムゾンウェストもリアルブルーも、邪神に破壊されるかもしれない。
「ならば、あの絶望しかなかった悲劇を繰り返さないために、俺は力を欲する。これが俺の理由だぜェ」
「そう。だったら、あなたは元々守護者だったのね」
シガレットの人生にとって肝要なものは、既に過去になってしまった。
今彼が立っている場所は、彼という物語が終わった先。
己のためではなく、己のようになってくれるなと願う、誰かのための物語だ。
「あんまり考えた事はないが、言われてみるとそうかもなァ」
「そうね。私もこう見えてけっこうなおばあちゃんだけど、あなたもまだ若いのにおじいちゃんみたいね?」
「そこは大人の男と言ってほしいなァ」
男はのらりくらりと生きている。
いちいち怒ったりしないし、大抵のことは気楽に受け止める。
ままならぬこともあると知りながら、それでも諦めぬことを誓ったからこその度量だ。
「元から滅私の賢者だというのなら、あとは同意だけね」
そう言ってベアトリクスは頷き、その力で周囲の空間を塗り替えていく。
「――星の光の名の下に、汝、シガレット=ウナギパイに告げる。その魂の輝きを力と変え、星の救世主となる覚悟はあるか?」
「おう。悲劇を繰り返さないために、俺はここに在る」
「契約を受理します。星と英雄の記憶を以て、ここに神の力の一端を授けん。目覚めよ、ゲネシス!」
星の記憶石がゲネシスに力を与え、そして色づていく。
「ここに誓いは結ばれた。大樹なる守護者よ、あなたの救世に期待します」
「これで俺もガーディアンの一員かァ……」
なってみると呆気ないものだ。
身構えるようなことではないと思っていたし、実際にもそうだった。
「しかし、こうしてみるとハンターと大精霊の相互理解も随分と進んでるんだなァ」
「そうね。守護者と契約を結ぶ度、私達は人の心に触れ、そして理解する」
ベアトリクスは腕を組み、そして微笑む。
「今度会いに来る時は、菓子折りもよろしくね♪」
「ああ。覚えてたらなァ」
ひらひらと手を振り、シガレットは去っていく。
大精霊との契約などなんでもない通過点だと、のんびりした背中が告げていた。
(執筆:神宮寺飛鳥)
(文責:フロンティアワークス)
(文責:フロンティアワークス)
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龍崎・カズマ(ka0178) 種族:人間(リアルブルー) クラス:疾影士(ストライダー) 「守護者」取得日:2019/06/04 「守護者武器」:[SW]星神器「武御雷」 ●「守護者」への表明 「正直なところを言うと、あまり頼りたくはなかったんだ」 |
●「守護者」取得(クリックすると、下にノベルが展開されます)
「正直なところを言うと、あまり頼りたくはなかったんだ」
開口一番、龍崎・カズマ(ka0178)が大精霊であるリアルブルーに、そう告げた。
青き髪を指でいじりながら、大精霊は微笑を浮かべていた。
契約を望みに来た者が、最初に言い放った言葉から続く、その内容に興味を感じたからである。
「聞かせて貰ってもいいかな? 君が何故、契約を望むのか、何故、頼りたくないと思ったのか」
その内容如何によっては、契約は行わない――そんな雰囲気を漂わせていた。
それはそうだろう。『守護者』への表明は、契約なのだから。契約である以上、双方の合意がなければ成立しない。
「俺は……人が立ち向かう為の力は、人の心の奥底から生まれる力であって欲しかった」
カズマの口調は至って普通だった。
押し通すような強い口調でもなければ、掻き消えるような弱々しい口調でもない。
かと言って、淡々と告げているようにも思えないと大精霊は感じながら、一区切りしたカズマに、続けるよう促す。
「あなた方――大精霊――という“親”の力に縋る“仔”であってはいけないと……そう、信じたかったんだ」
「なるほどね。君は守護者――ガーディアン――をそう捉えていたのか」
良い意味で言えば自立。違う見方をすれば傲慢ともいえる。
これは契約なのだ。大精霊の力を行使する以上、捉え方によっては、力に縋っているともいえよう。
「だから、君は頼りたくなったと。そんな君が、それでも、力を手にしたい……そう、決意させたものはなんだい?」
リアルブルーの青い目が真っ直ぐ身体を貫くようにカズマを見つめる。
それに臆する事なく、カズマは胸を張って答えた。
「俺は明日を望む。いつだって、笑って迎えられる明日を望む」
「君自身は、心の奥底から本当に笑う事が出来るのかい?」
何もかも見透かすようなリアルブルーの瞳。
答える前に、眼鏡の位置を直そうとしたカズマよりも早く、リアルブルーが続けた。
「いや、そうじゃないか……君は、なぜ、そのような明日を望む?」
「生命は、次に繋がる“何か”を残せる。俺は、その正しいサイクル以外の終わりを認めない」
今の自分があるのは、遥か昔から続く“何か”があったからこそ。
そのサイクルは続けなければいけない。それが、この生命を持って生まれた意味の一つではないのか。
「生命同士が争うこともあるだろう、傷つくこともあるだろう。だが、それは、“何か”を残すためのものだと思う」
続いているカズマの話を聞き、リアルブルーは彼の口調の中にあるものを見つけた。
何かを砕こうとする強さでもない。閉じこもろうとする弱さでもない。
それは――熱意だ。燃え続ける命そのものだ。
「何も残らない終わりなど、俺はもう認めない」
「それが、君を決意させたものなんだね。いいよ、君を契約に足る者と認めよう」
微笑を浮かべていたリアルブルーが真顔になって姿勢を正すと右手を突き出した。
「君は『世界』の秩序を守る存在として活動する契約に同意するかい?」
「同意する。生命が生き残っていくためには秩序が必要だ。俺が守りたい世界は、彼女が命を懸けて守りたかった世界だから」
カズマは目の前に突き出された大精霊の右手を左手で力強く掴む。
次に、大精霊は左手を差し出した。
「ヒトと精霊の調停者としての契約に同意するかい?」
「かまわない、喜んで契約しよう。生命が生命として、正しく生きられるように」
差し出された大精霊の左手を、カズマは右手で握り締めた。
膨大なマテリアルが両腕を介して流れ込む。
「――星の光の名の下に、汝、龍崎・カズマに告げる。その魂の輝きを力と変え、星の救世主となる覚悟はあるか?」
「ある」
迷いの欠片もない決意の返事に、リアルブルーは頷いた。
「契約を受理します。星と英雄の記憶を以て、ここに神の力の一端を授けん。目覚めよ、星神器「武御雷」!」
眩い光と共に両者の間に、星神器が姿を現した。
拳に装着する祭器のような純白の武具だった。
「ここに誓いは結ばれた。生命を繋ぐ守護者よ、君の救世に期待する」
「彼女が守った世界の維持に、全て掛けよう」
カズマは出現した星神器を手にする。
星神器は、かすかな温もりと紫紅色の光を発し続けていた。
「君は、過去を失い、現在を亡くした。けれど、まだ、未来はある。未来を守れ。たくさんの人が笑って迎えられる未来を。そして、いつか……君自身が、心の奥底から本当に笑える未来が来る事を、僕は信じているよ」
願うような大精霊の言葉に、カズマは星神器を装着して応えるのであった。
開口一番、龍崎・カズマ(ka0178)が大精霊であるリアルブルーに、そう告げた。
青き髪を指でいじりながら、大精霊は微笑を浮かべていた。
契約を望みに来た者が、最初に言い放った言葉から続く、その内容に興味を感じたからである。
「聞かせて貰ってもいいかな? 君が何故、契約を望むのか、何故、頼りたくないと思ったのか」
その内容如何によっては、契約は行わない――そんな雰囲気を漂わせていた。
それはそうだろう。『守護者』への表明は、契約なのだから。契約である以上、双方の合意がなければ成立しない。
「俺は……人が立ち向かう為の力は、人の心の奥底から生まれる力であって欲しかった」
カズマの口調は至って普通だった。
押し通すような強い口調でもなければ、掻き消えるような弱々しい口調でもない。
かと言って、淡々と告げているようにも思えないと大精霊は感じながら、一区切りしたカズマに、続けるよう促す。
「あなた方――大精霊――という“親”の力に縋る“仔”であってはいけないと……そう、信じたかったんだ」
「なるほどね。君は守護者――ガーディアン――をそう捉えていたのか」
良い意味で言えば自立。違う見方をすれば傲慢ともいえる。
これは契約なのだ。大精霊の力を行使する以上、捉え方によっては、力に縋っているともいえよう。
「だから、君は頼りたくなったと。そんな君が、それでも、力を手にしたい……そう、決意させたものはなんだい?」
リアルブルーの青い目が真っ直ぐ身体を貫くようにカズマを見つめる。
それに臆する事なく、カズマは胸を張って答えた。
「俺は明日を望む。いつだって、笑って迎えられる明日を望む」
「君自身は、心の奥底から本当に笑う事が出来るのかい?」
何もかも見透かすようなリアルブルーの瞳。
答える前に、眼鏡の位置を直そうとしたカズマよりも早く、リアルブルーが続けた。
「いや、そうじゃないか……君は、なぜ、そのような明日を望む?」
「生命は、次に繋がる“何か”を残せる。俺は、その正しいサイクル以外の終わりを認めない」
今の自分があるのは、遥か昔から続く“何か”があったからこそ。
そのサイクルは続けなければいけない。それが、この生命を持って生まれた意味の一つではないのか。
「生命同士が争うこともあるだろう、傷つくこともあるだろう。だが、それは、“何か”を残すためのものだと思う」
続いているカズマの話を聞き、リアルブルーは彼の口調の中にあるものを見つけた。
何かを砕こうとする強さでもない。閉じこもろうとする弱さでもない。
それは――熱意だ。燃え続ける命そのものだ。
「何も残らない終わりなど、俺はもう認めない」
「それが、君を決意させたものなんだね。いいよ、君を契約に足る者と認めよう」
微笑を浮かべていたリアルブルーが真顔になって姿勢を正すと右手を突き出した。
「君は『世界』の秩序を守る存在として活動する契約に同意するかい?」
「同意する。生命が生き残っていくためには秩序が必要だ。俺が守りたい世界は、彼女が命を懸けて守りたかった世界だから」
カズマは目の前に突き出された大精霊の右手を左手で力強く掴む。
次に、大精霊は左手を差し出した。
「ヒトと精霊の調停者としての契約に同意するかい?」
「かまわない、喜んで契約しよう。生命が生命として、正しく生きられるように」
差し出された大精霊の左手を、カズマは右手で握り締めた。
膨大なマテリアルが両腕を介して流れ込む。
「――星の光の名の下に、汝、龍崎・カズマに告げる。その魂の輝きを力と変え、星の救世主となる覚悟はあるか?」
「ある」
迷いの欠片もない決意の返事に、リアルブルーは頷いた。
「契約を受理します。星と英雄の記憶を以て、ここに神の力の一端を授けん。目覚めよ、星神器「武御雷」!」
眩い光と共に両者の間に、星神器が姿を現した。
拳に装着する祭器のような純白の武具だった。
「ここに誓いは結ばれた。生命を繋ぐ守護者よ、君の救世に期待する」
「彼女が守った世界の維持に、全て掛けよう」
カズマは出現した星神器を手にする。
星神器は、かすかな温もりと紫紅色の光を発し続けていた。
「君は、過去を失い、現在を亡くした。けれど、まだ、未来はある。未来を守れ。たくさんの人が笑って迎えられる未来を。そして、いつか……君自身が、心の奥底から本当に笑える未来が来る事を、僕は信じているよ」
願うような大精霊の言葉に、カズマは星神器を装着して応えるのであった。
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アルバ・ソル(ka4189) 種族:人間(クリムゾンウェスト) クラス:魔術師(マギステル) 「守護者」取得日:2019/06/04 「守護者武器」:[SW]星神器「タナトス」 ●「守護者」への表明 「私はこの星の騎士となろう」 |
●「守護者」取得(クリックすると、下にノベルが展開されます)
(……神聖)
そう表現する以外の言葉が浮かばないこの場所は、確かに契約に相応しいとアルバ・ソル(ka4189)は思う。
視線の先に立つリアルブルー大精霊に表情は浮かんでいない。無の重圧に耐えてこそと決意を奮い立たせるアルバに、声が問うてくる。
「それじゃあ、君の話を聞こうか」
なんの示唆もない、ただの合図としての言葉。だからこそ戸惑わず、胸の奥から口に出せる。
「私は誓おう。この世界を護る、と」
「ほう」
ごく小さな相槌はアルバの声を遮るものではない。
「精霊と共にあり、手を携えて困難に立ち向かっていく事を」
視線は大精霊を真正面から捉えている。言葉にあわせてアルバの手が差し出されている。
「得た力を世界を護る為にこそ振るうと」
出した手を引き戻し、胸に拳をあてる仕草。
「私は、私の魂と共にここにそれを誓おう」
黒の瞳はずっと大精霊へと向けたまま。身体もその決意にあわせて動いていたということなのだろう。悪手すべきかと出しかけた手を引き戻して、大精霊は疑問を口にする。
「……君の手に、世界は大きすぎると思うけど?」
それなのに、どうして壮大な想いを持てるのだろう。驕るわけでもなく、純粋なものだと感じとれるからこそ不思議だ。
「少し遠回りな話になるのだけれど、構わないか?」
「勿論、僕は君の想いを知らなければならないのだからね」
薄く微笑めば、アルバの緊張で強張っていた表情が少し、解れた。
「私の父も、母も、共に世界を護り戦った騎士だ」
世界を想い、技を磨き、術を練り、力を揮った。子供の頃から憧れ、その背に追いつきたいと精進してきた。ずっと目標として在った。
「その事実は、私の今日までを支えてきた誇り」
戦う術を教えてくれた師でもあるその両親が築き上げてきたものを、アルバなりに受け継ぎ、確かに身に着けてきたと、その自負がある。
「これまで私の得た成果を。本当の意味で示す時が来たと思う」
「それが、騎士だと言うんだね」
力強く頷くアルバ。
「でも、それだけじゃない」
ただ騎士になるだけなら、両親と同じ道を歩めばいい。既に両親が歩いた道を追えばいい。
「尊敬する父母だけでなく、この世界にあった偉大な先人達が支えてきた過去があるからこそ、現在がある」
アルバはハンターとして別の場所も視てきたから、別の道を選ぶ。
「騎士とは、伝統とは。受け継いで、先へと受け継がせていくものだと私は思っている」
先人達は過去という文化だけでなく、現在に繋がる道を拓いた。その足跡は敬意を払うべきもので、今もなお胸の内にある。
今の自分達は受け継いだ現在を守り、過去を汚さず無駄にせず、日々を歩み、未来に繋がる道を作る存在だ。
「私は、この星の未来を。切り拓いてみせたいんだ」
大きいからって、諦める理由にはならない。
広いからって、歩みを止める理由にはならない。
今居る場所だって、世界のほんの一部だと。知った上でアルバは言っている。
誰かの生き様が在ったからだと、一人で歩いてきたわけではないと言っている。
「そうか、君も同じことを言うんだね……」
一人ではない。その言葉を前にもたらしたのは誰だったか。
「私は貴方と契約を行いたいと、そう願っただろう? 大精霊」
姓を聞いて、知っていたはずだった。
「さすが、友達の兄といったところかな。――星の光の名の下に、汝、アルバ・ソルに告げる。その魂の輝きを力と変え、星の救世主となる覚悟はあるか?」
先入観は良くないし、何より大事なのは各自の想いや覚悟だったから、名前には意識を向けていなかった。言葉も切欠も違うけれど、想いはとてもよく似ている。
「勿論。過去を受け継ぎ、よりよい今日を作ることを忘れず、未明の明日を確かなものにするために」
迷いのない言葉に頷く大精霊の顔には微笑みが浮かんでいる。
「契約を受理しよう。星と英雄の記憶を以て、ここに神の力の一端を授けん。目覚めよ、星神器「タナトス」!」
呼び出された大鎌の純白は、早速アルバの武具の色に寄り添おうと輝いている。
「……ここに誓いは結ばれた。道筋と縁を辿る、結護なる守護者よ、君の救世に期待するよ」
アルバの手に渡ったタナトスは、純白の光を変らず放ち続けている。
「どんな色に染まるのか、気になっていたけれど……君が求める騎士の道、そこに似合うとするなら、このままがいいのかもしれないね」
力を揮う度、過去へと想いを馳せ、未来への階にするアルバの想いは、タナトスにとっても新しい道を拓くかもしれない。
「そう在れるよう努める。私はこの世界の、この星の、騎士となって……その上で、世界と良き隣人の為に共に戦っていく」
それを誓いと成そう。
そう表現する以外の言葉が浮かばないこの場所は、確かに契約に相応しいとアルバ・ソル(ka4189)は思う。
視線の先に立つリアルブルー大精霊に表情は浮かんでいない。無の重圧に耐えてこそと決意を奮い立たせるアルバに、声が問うてくる。
「それじゃあ、君の話を聞こうか」
なんの示唆もない、ただの合図としての言葉。だからこそ戸惑わず、胸の奥から口に出せる。
「私は誓おう。この世界を護る、と」
「ほう」
ごく小さな相槌はアルバの声を遮るものではない。
「精霊と共にあり、手を携えて困難に立ち向かっていく事を」
視線は大精霊を真正面から捉えている。言葉にあわせてアルバの手が差し出されている。
「得た力を世界を護る為にこそ振るうと」
出した手を引き戻し、胸に拳をあてる仕草。
「私は、私の魂と共にここにそれを誓おう」
黒の瞳はずっと大精霊へと向けたまま。身体もその決意にあわせて動いていたということなのだろう。悪手すべきかと出しかけた手を引き戻して、大精霊は疑問を口にする。
「……君の手に、世界は大きすぎると思うけど?」
それなのに、どうして壮大な想いを持てるのだろう。驕るわけでもなく、純粋なものだと感じとれるからこそ不思議だ。
「少し遠回りな話になるのだけれど、構わないか?」
「勿論、僕は君の想いを知らなければならないのだからね」
薄く微笑めば、アルバの緊張で強張っていた表情が少し、解れた。
「私の父も、母も、共に世界を護り戦った騎士だ」
世界を想い、技を磨き、術を練り、力を揮った。子供の頃から憧れ、その背に追いつきたいと精進してきた。ずっと目標として在った。
「その事実は、私の今日までを支えてきた誇り」
戦う術を教えてくれた師でもあるその両親が築き上げてきたものを、アルバなりに受け継ぎ、確かに身に着けてきたと、その自負がある。
「これまで私の得た成果を。本当の意味で示す時が来たと思う」
「それが、騎士だと言うんだね」
力強く頷くアルバ。
「でも、それだけじゃない」
ただ騎士になるだけなら、両親と同じ道を歩めばいい。既に両親が歩いた道を追えばいい。
「尊敬する父母だけでなく、この世界にあった偉大な先人達が支えてきた過去があるからこそ、現在がある」
アルバはハンターとして別の場所も視てきたから、別の道を選ぶ。
「騎士とは、伝統とは。受け継いで、先へと受け継がせていくものだと私は思っている」
先人達は過去という文化だけでなく、現在に繋がる道を拓いた。その足跡は敬意を払うべきもので、今もなお胸の内にある。
今の自分達は受け継いだ現在を守り、過去を汚さず無駄にせず、日々を歩み、未来に繋がる道を作る存在だ。
「私は、この星の未来を。切り拓いてみせたいんだ」
大きいからって、諦める理由にはならない。
広いからって、歩みを止める理由にはならない。
今居る場所だって、世界のほんの一部だと。知った上でアルバは言っている。
誰かの生き様が在ったからだと、一人で歩いてきたわけではないと言っている。
「そうか、君も同じことを言うんだね……」
一人ではない。その言葉を前にもたらしたのは誰だったか。
「私は貴方と契約を行いたいと、そう願っただろう? 大精霊」
姓を聞いて、知っていたはずだった。
「さすが、友達の兄といったところかな。――星の光の名の下に、汝、アルバ・ソルに告げる。その魂の輝きを力と変え、星の救世主となる覚悟はあるか?」
先入観は良くないし、何より大事なのは各自の想いや覚悟だったから、名前には意識を向けていなかった。言葉も切欠も違うけれど、想いはとてもよく似ている。
「勿論。過去を受け継ぎ、よりよい今日を作ることを忘れず、未明の明日を確かなものにするために」
迷いのない言葉に頷く大精霊の顔には微笑みが浮かんでいる。
「契約を受理しよう。星と英雄の記憶を以て、ここに神の力の一端を授けん。目覚めよ、星神器「タナトス」!」
呼び出された大鎌の純白は、早速アルバの武具の色に寄り添おうと輝いている。
「……ここに誓いは結ばれた。道筋と縁を辿る、結護なる守護者よ、君の救世に期待するよ」
アルバの手に渡ったタナトスは、純白の光を変らず放ち続けている。
「どんな色に染まるのか、気になっていたけれど……君が求める騎士の道、そこに似合うとするなら、このままがいいのかもしれないね」
力を揮う度、過去へと想いを馳せ、未来への階にするアルバの想いは、タナトスにとっても新しい道を拓くかもしれない。
「そう在れるよう努める。私はこの世界の、この星の、騎士となって……その上で、世界と良き隣人の為に共に戦っていく」
それを誓いと成そう。
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テノール(ka5676) 種族:人間(クリムゾンウェスト) クラス:格闘士(マスターアームズ) 「守護者」取得日:2019/06/04 「守護者武器」:[SW]星神器「メギンギョルズ」 ●「守護者」への表明 「傭兵としてあんたに損をさせない働きはして見せよう」 |
●「守護者」取得(クリックすると、下にノベルが展開されます)
テノール(ka5676)とリアルブルーは顔を合わせると暫し沈黙していた。
黒曜と青玉、二人の双眸が交わされる。
互いの……否、テノールの持つ手札の様子を探るかのような。
「さて、何のために守護者になりたいのかだが」
切り出したのはテノールだ。
テノールがリアルブルーを指名した。
神の御前で畏まり、自分を作っても相手は神が故に素で対話を試みることにした。
「ざっくり言えば、世界を守りたいからってことになるな」
素直な言葉を口にしていると感じたリアルブルーは表情を変えずに彼が出そうとしている言葉の続きを待つ。
「……唐突になるが、俺は本が好きでな」
ぽつりとテノールが呟く。
傭兵の家系に生まれた彼にとって戦いはすぐそこに在るもの。
幼い頃から戦い方、戦場で生き残る術を叩き込まれ、家族と仲間で死と隣り合わせになるような時も駆け抜けていった。
しかし、彼にとって戦いで強さを得て、戦いの騒音や死を覚悟する鼓動の音よりも本を読んで知を得て、物語を読んだ満足感の余韻に浸る方を好む。
「もっとたくさんの本が読みたい。あわよくば書く方に回ってみるの面白そうだとも思っている」
この世にはまだまだ文章が存在する。リアルブルーにだってそれはある事をテノールは知っているし、読むことが出来れば読んでみたいと思っている。
「ふぅん、享受されるだけじゃなく、生産する方にもって事か。いいじゃないか」
相槌を打つリアルブルーは馬鹿にするようでもなく、どこか淡々としたようでもある感嘆の声を上げている。
「僕も読書が趣味でね。自分で書くって発想はなかったけど、戦士の書く物語も面白そうだ」
「あぁ……」
書けるかどうかはさておいて、とりあえず受け止めてくれたことにテノールはどこか照れた様子を見せた。
「加えて悪友共と呑む酒はそれなりに美味いしな」
次に挙げたのは友人の事だ。
意識を傾けて記憶を呼び起こせば、呵々と笑い合い、依頼であった話やたわいもない話をし、酒を飲みかわす楽しい記憶。
「爺……まぁ、血は繋がってないが、最期ぐらいは看取ってやりたい。両親にも孝行は一応してやりたいし、妹達が可愛くて可愛いから構いたい」
血の繋がりがあってもなくても家族は家族だ。
傭兵稼業やハンターの仕事で自分達の命がどうなっていくか分からない。
だが、看取ることが、守って見届け出来るのであればそうしたいと思っている。
「何より」
少し視線を外していたテノールがリアルブルーを見据えた。
「一生捕まえておきたい好きな女がいる、そいつとの間に生まれる子がどんな風に育つのもみたい」
言うだけ言ったテノールは、思ったより言いたいことがあったものだと自分で感心する。
「ま、自分の事が一番わかってない……いう言葉もあるしね」
見透かしたようなリアルブルーにテノールは「神だから」と納得する。
改めて言葉に、声に出して分かったことがある。
自分にとって好きなものをはじめ、やりたい事があった。
神の御前での懺悔などではない。
未来を大切な人達と進みたいと願う言葉だ。
生まれ育ったクリムゾンウェストは勿論の事、もう一つの世界であるリアルブルーもテノールにとって大事な世界だと言える。
脳裏に過るあの名にテノールの眉間にしわが寄った。
邪神ファナティックブラッド……。
世界を食らわんとするかの邪神はテノールが思い描く未来を潰す存在とみた。
大切な未来……命が奪われるかもしれない可能性にテノールは邪神の存在を邪魔と判断している。
邪魔を排除するには今のテノールには力が足りないと自覚している。
「俺は俺の未来が守れる力が欲しい」
願いを声にするテノールが見るリアルブルーが口を開く。
「――星の光の名の下に、汝、テノールに告げる。その魂の輝きを力と変え、星の救世主となる覚悟はあるか?」
そう問うリアルブルー瞳の色にテノールは記憶を呼び起こす。
稽古中に一本取られて中空に投げ飛ばされた時に仰ぎ見た晴天の澄んだ空の色。
あれから自分は戦う術を持った。
「俺を雇わないかリアルブルー。あんたが思い描きたい未来を作るための傭兵として」
じっとテノールを見たリアルブルーは鷹揚に頷く。
「いいだろう。契約を受理する。星と英雄の記憶を以て、ここに神の力の一端を授けん。目覚めよ、メギンギョルズ!」
リアルブルーの声と共に雷と純白の発光に目を細めたテノールだが、すぐに光は消えた。
「やれるならやってみるがいい」
星神器を手にしたテノールは、突き放した口調のリアルブルーを見やる。
「書き終えたらこの僕が読んであげようじゃないか。楽しみにしているよ?」
リアルブルーの真意に「そっちか!」と思ったテノールはくつくつと笑う。
「その前にやる事をやってくる」
未来を手にする為、テノールはその場を辞した。
黒曜と青玉、二人の双眸が交わされる。
互いの……否、テノールの持つ手札の様子を探るかのような。
「さて、何のために守護者になりたいのかだが」
切り出したのはテノールだ。
テノールがリアルブルーを指名した。
神の御前で畏まり、自分を作っても相手は神が故に素で対話を試みることにした。
「ざっくり言えば、世界を守りたいからってことになるな」
素直な言葉を口にしていると感じたリアルブルーは表情を変えずに彼が出そうとしている言葉の続きを待つ。
「……唐突になるが、俺は本が好きでな」
ぽつりとテノールが呟く。
傭兵の家系に生まれた彼にとって戦いはすぐそこに在るもの。
幼い頃から戦い方、戦場で生き残る術を叩き込まれ、家族と仲間で死と隣り合わせになるような時も駆け抜けていった。
しかし、彼にとって戦いで強さを得て、戦いの騒音や死を覚悟する鼓動の音よりも本を読んで知を得て、物語を読んだ満足感の余韻に浸る方を好む。
「もっとたくさんの本が読みたい。あわよくば書く方に回ってみるの面白そうだとも思っている」
この世にはまだまだ文章が存在する。リアルブルーにだってそれはある事をテノールは知っているし、読むことが出来れば読んでみたいと思っている。
「ふぅん、享受されるだけじゃなく、生産する方にもって事か。いいじゃないか」
相槌を打つリアルブルーは馬鹿にするようでもなく、どこか淡々としたようでもある感嘆の声を上げている。
「僕も読書が趣味でね。自分で書くって発想はなかったけど、戦士の書く物語も面白そうだ」
「あぁ……」
書けるかどうかはさておいて、とりあえず受け止めてくれたことにテノールはどこか照れた様子を見せた。
「加えて悪友共と呑む酒はそれなりに美味いしな」
次に挙げたのは友人の事だ。
意識を傾けて記憶を呼び起こせば、呵々と笑い合い、依頼であった話やたわいもない話をし、酒を飲みかわす楽しい記憶。
「爺……まぁ、血は繋がってないが、最期ぐらいは看取ってやりたい。両親にも孝行は一応してやりたいし、妹達が可愛くて可愛いから構いたい」
血の繋がりがあってもなくても家族は家族だ。
傭兵稼業やハンターの仕事で自分達の命がどうなっていくか分からない。
だが、看取ることが、守って見届け出来るのであればそうしたいと思っている。
「何より」
少し視線を外していたテノールがリアルブルーを見据えた。
「一生捕まえておきたい好きな女がいる、そいつとの間に生まれる子がどんな風に育つのもみたい」
言うだけ言ったテノールは、思ったより言いたいことがあったものだと自分で感心する。
「ま、自分の事が一番わかってない……いう言葉もあるしね」
見透かしたようなリアルブルーにテノールは「神だから」と納得する。
改めて言葉に、声に出して分かったことがある。
自分にとって好きなものをはじめ、やりたい事があった。
神の御前での懺悔などではない。
未来を大切な人達と進みたいと願う言葉だ。
生まれ育ったクリムゾンウェストは勿論の事、もう一つの世界であるリアルブルーもテノールにとって大事な世界だと言える。
脳裏に過るあの名にテノールの眉間にしわが寄った。
邪神ファナティックブラッド……。
世界を食らわんとするかの邪神はテノールが思い描く未来を潰す存在とみた。
大切な未来……命が奪われるかもしれない可能性にテノールは邪神の存在を邪魔と判断している。
邪魔を排除するには今のテノールには力が足りないと自覚している。
「俺は俺の未来が守れる力が欲しい」
願いを声にするテノールが見るリアルブルーが口を開く。
「――星の光の名の下に、汝、テノールに告げる。その魂の輝きを力と変え、星の救世主となる覚悟はあるか?」
そう問うリアルブルー瞳の色にテノールは記憶を呼び起こす。
稽古中に一本取られて中空に投げ飛ばされた時に仰ぎ見た晴天の澄んだ空の色。
あれから自分は戦う術を持った。
「俺を雇わないかリアルブルー。あんたが思い描きたい未来を作るための傭兵として」
じっとテノールを見たリアルブルーは鷹揚に頷く。
「いいだろう。契約を受理する。星と英雄の記憶を以て、ここに神の力の一端を授けん。目覚めよ、メギンギョルズ!」
リアルブルーの声と共に雷と純白の発光に目を細めたテノールだが、すぐに光は消えた。
「やれるならやってみるがいい」
星神器を手にしたテノールは、突き放した口調のリアルブルーを見やる。
「書き終えたらこの僕が読んであげようじゃないか。楽しみにしているよ?」
リアルブルーの真意に「そっちか!」と思ったテノールはくつくつと笑う。
「その前にやる事をやってくる」
未来を手にする為、テノールはその場を辞した。
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八島 陽(ka1442) 種族: クラス: 「マスティマ」取得日:2019/07/04 ●「マスティマ」への表明 「ファーザーにこちらを認識させる為の力、多分それが今は要るんだ」 |
●「マスティマ」取得(クリックすると、下にノベルが展開されます)
「あいつは……ファーザーは孤独だ」
八島 陽(ka1442)は、冷静に分析した結果を語った。
邪神ファナティックブラッドの中で観測者として見守り続けて来たファーザー。
片や、三つの世界を渡り歩きながら諦めない事を掲げて戦い続けたハンター。
世界を左右する両者。その最大の違いは何か。
それは――ハンターには常に誰かが存在していた事だ。
「その孤独がファーザーを苦しめているという事かな?」
話を聞いていた大精霊リアルブルー。
八島は彼の問いに頭を振る。
「少し違うな。彼はその孤独を苦とは考えていない……まだな」
「まだ?」
「ファーザーは、ハンターを知らない」
ファーザーは強大な相手だ。
だが、一方でファーザーはハンターを知らない。
時には共感し、時には異論を唱える仲間。
その仲間と力を合わせてこれまで強大な敵を倒してきた。
まっすぐに目の前の敵と戦って来られたのも、その傍らに仲間がいたからだ。
一方、ファーザーはファナティックブラッドが多くの世界を飲み込み、恭順した無数の世界の記憶を観測してきた。だが、それは対等な仲間とは呼べない。
――仲間の強さ。
それは孤独であるファーザーでは持ち得ない強さだ。
「仲間との絆。……なんだか言っていて恥ずかしくなるね」
リアルブルーは軽く笑みを浮かべる。
言葉で説明するのは容易いが、その強さは傍目では分からない。
しかし、リアルブルーは知っている。邪神ファナティックブラッド相手にも臆する事無く戦いを挑むハンター達。ここまで来る道筋は、生半可な態度では辿り着けない。
「それが真実だ。だが、それだけでは足りない」
「へぇ。ハンターの力だけでは不足なんだ」
「ファーザーと対等になり得なければ、『認識』してもらえない。
孤独のファーザーへ手を差し伸べる為には、もっと力が必要だ」
八島は、ファーザーへ世界の足掻きを見せなければならないと考えていた。
クリムゾンウェスト、リアルブルー、エバーグリーンといった世界が抵抗し、抗い、生き残る事でファーザーにハンターの存在を強く認識させなければならない。
そして、ファーザーを孤独から解き放てばファナティックブラッドによる危機から脱する方法へ繋がるはずだ。
「そんな簡単にうまくいくのかな?」
「だからこそ、力がいる。ファーザーと対等になり得るだけの力。彼の顔をこちらに向かせ、みんなの力も生かして彼にアピールできる状況を作る為の、ね」
「それが……『マスティマ』なんだね」
リアルブルーの背後に立つマスティマを八島は改めて見上げる。
大きく聳えるマスティマ。
因果律を操作する力。その強大の力を持ってして、ファーザーを救おうとしていた。
「――星の光の名の下に、汝、八島 陽に告げる。その魂の輝きを力と変え、星の救世主となる覚悟はあるか?」
「ああ。世界をみんなで救い、ファーザーに絆を示す為に」
八島は誓う。
これから如何なる戦いが待っていようとも、八島は前へ進む。
だが、八島は一人ではない。
その傍らには共に立ち向かう仲間達がいる。
「契約を受理します。星と英雄の記憶を以て、ここに神の力の一端を授けん。目覚めよ、マスティマ!」
リアルブルーの呼び掛けに答えるように、マスティマは青白く輝く。
この瞬間、マスティマは八島へと移譲される。
「ここに誓いは結ばれた。知勇なる絆の守護者よ、あなたの救世に期待します」
リアルブルーの言葉と共に、八島は歩み出す。
ファナティックブラッドの中で待つファーザーの元へ。
八島 陽(ka1442)は、冷静に分析した結果を語った。
邪神ファナティックブラッドの中で観測者として見守り続けて来たファーザー。
片や、三つの世界を渡り歩きながら諦めない事を掲げて戦い続けたハンター。
世界を左右する両者。その最大の違いは何か。
それは――ハンターには常に誰かが存在していた事だ。
「その孤独がファーザーを苦しめているという事かな?」
話を聞いていた大精霊リアルブルー。
八島は彼の問いに頭を振る。
「少し違うな。彼はその孤独を苦とは考えていない……まだな」
「まだ?」
「ファーザーは、ハンターを知らない」
ファーザーは強大な相手だ。
だが、一方でファーザーはハンターを知らない。
時には共感し、時には異論を唱える仲間。
その仲間と力を合わせてこれまで強大な敵を倒してきた。
まっすぐに目の前の敵と戦って来られたのも、その傍らに仲間がいたからだ。
一方、ファーザーはファナティックブラッドが多くの世界を飲み込み、恭順した無数の世界の記憶を観測してきた。だが、それは対等な仲間とは呼べない。
――仲間の強さ。
それは孤独であるファーザーでは持ち得ない強さだ。
「仲間との絆。……なんだか言っていて恥ずかしくなるね」
リアルブルーは軽く笑みを浮かべる。
言葉で説明するのは容易いが、その強さは傍目では分からない。
しかし、リアルブルーは知っている。邪神ファナティックブラッド相手にも臆する事無く戦いを挑むハンター達。ここまで来る道筋は、生半可な態度では辿り着けない。
「それが真実だ。だが、それだけでは足りない」
「へぇ。ハンターの力だけでは不足なんだ」
「ファーザーと対等になり得なければ、『認識』してもらえない。
孤独のファーザーへ手を差し伸べる為には、もっと力が必要だ」
八島は、ファーザーへ世界の足掻きを見せなければならないと考えていた。
クリムゾンウェスト、リアルブルー、エバーグリーンといった世界が抵抗し、抗い、生き残る事でファーザーにハンターの存在を強く認識させなければならない。
そして、ファーザーを孤独から解き放てばファナティックブラッドによる危機から脱する方法へ繋がるはずだ。
「そんな簡単にうまくいくのかな?」
「だからこそ、力がいる。ファーザーと対等になり得るだけの力。彼の顔をこちらに向かせ、みんなの力も生かして彼にアピールできる状況を作る為の、ね」
「それが……『マスティマ』なんだね」
リアルブルーの背後に立つマスティマを八島は改めて見上げる。
大きく聳えるマスティマ。
因果律を操作する力。その強大の力を持ってして、ファーザーを救おうとしていた。
「――星の光の名の下に、汝、八島 陽に告げる。その魂の輝きを力と変え、星の救世主となる覚悟はあるか?」
「ああ。世界をみんなで救い、ファーザーに絆を示す為に」
八島は誓う。
これから如何なる戦いが待っていようとも、八島は前へ進む。
だが、八島は一人ではない。
その傍らには共に立ち向かう仲間達がいる。
「契約を受理します。星と英雄の記憶を以て、ここに神の力の一端を授けん。目覚めよ、マスティマ!」
リアルブルーの呼び掛けに答えるように、マスティマは青白く輝く。
この瞬間、マスティマは八島へと移譲される。
「ここに誓いは結ばれた。知勇なる絆の守護者よ、あなたの救世に期待します」
リアルブルーの言葉と共に、八島は歩み出す。
ファナティックブラッドの中で待つファーザーの元へ。
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サクラ・エルフリード(ka2598) 種族: クラス: 「守護者」取得日:2019/07/19 ●「守護者」への表明 「皆を守るための盾として、この生命をかけます…」 |
●「守護者」取得(クリックすると、下にノベルが展開されます)
「皆を守るための盾として、この生命をかけます……」
「開口一番から随分重いな……」
儀式の間で、サクラ・エルフリード(ka2598)が真剣な面持ちで告げると、リアルブルー大精霊(kz0279)は目を細めた。長いまつげが羽の様に上下している。
ベアトリクス・アルキミア(kz0261)が先の作戦で文字通り命を燃やしつくした。彼が搭乗するマスティマの手の上で死んだ。
なので、リアルブルーとしては命をかけると言われることが重く感じる。
「私だって……軽々しく言っているわけではありません……」
銀髪の少女は静かに告げた。
「うん。聞かせてくれるかい?」
「最初の内は悩んでいたんです……」
サクラはぽつりぽつりと話し始めた。
「ですが、邪神との最終決戦が決まったと言うことで……決心しました」
「どんなことだろう?」
「自らが盾となり……皆を守る盾となり戦うことを……です」
彼女の声はあくまで静かに凪いでいる。けれど、本人が言うように、その中には固い決意が覗いていた。
「全員を護れるとは言いません……」
「そこも随分謙虚なんだな……」
謙虚と言うか、真面目なのだろう。できないかもしれないことを、たとえ願いであっても、目標だとしても、「できる」とは言えないのだ。
「謙虚なのでしょうか……ともかく、せめて自分の目が届く範囲、手が届く範囲だけでも護りたいと思いました……その思いで今日はここに来ています……」
そう言い終えて、サクラはじっと目の前の大精霊を見ている。どこか思い詰めた様な顔でもある。これから不合格を言い渡されるのではないか。そう思っているようにも、リアルブルーからは見えた。
サクラ・エルフリードという少女は物静かな印象を受けるハンターだった。話を聞いた今も、その印象は変わらない。
相当悩んだのだろう、ということは話を聞いてリアルブルーも理解した。
「そうか──」
リアルブルーが口を開くと、サクラはきゅっと唇を引き結んだ。
「ここに来た、ということは、君は星に認められていると言うことだろう」
ただの真面目だけでは契約を申し入れることもできない。
「努力しました」
「それは、守護者になっても変わらずしてくれる。そうだろう?」
これまでもたくさん努力してくれた。これからもしてくれる。その確信を持てるほどに、サクラ・エルフリードという人物の言葉、態度には一貫性がある。ぶれない、というのが良いだろうか。
守りたいという言葉にこれほど説得力のある態度もない。きっと、手に届く範囲を守ってくれるだろう。リアルブルーは、そんな確信を得ている。
「はい……」
サクラはこっくりと頷いた。リアルブルーは微笑んだ。
もとより、断る理由などない。
「それじゃあ、前置きはここまでにしようか――星の光の名の下に、汝、サクラ・エルフリードに告げる。その魂の輝きを力と変え、星の救世主となる覚悟はあるか?」
「はい。あります」
「契約を受理します。星と英雄の記憶を以て、ここに神の力の一端を授けん。目覚めよ、ガーディアン!」
星の記憶石が砕け散り、虹色の光が広がった。その光が向かうのは、サクラの身体だ。
「ここに誓いは結ばれた。静謐なる守護者よ、あなたの救世に期待します」
「あ……ありがとうございます……」
サクラはぺこり、と丁寧に頭を下げた。
「本当に君は謙虚なんだな」
リアルブルーは思わず笑いそうになる。
「ではこちらも……どうぞよろしくお願いするよ」
守護者の契約というものは、譲渡ではなく共鳴であるとナディアが証明した。
だから自分も彼女たちと共鳴しよう。
これ以上失わないために。
契約の間で、守護者と大精霊がお互いに頭を下げている姿は、どこか平和な眺めだった。
「開口一番から随分重いな……」
儀式の間で、サクラ・エルフリード(ka2598)が真剣な面持ちで告げると、リアルブルー大精霊(kz0279)は目を細めた。長いまつげが羽の様に上下している。
ベアトリクス・アルキミア(kz0261)が先の作戦で文字通り命を燃やしつくした。彼が搭乗するマスティマの手の上で死んだ。
なので、リアルブルーとしては命をかけると言われることが重く感じる。
「私だって……軽々しく言っているわけではありません……」
銀髪の少女は静かに告げた。
「うん。聞かせてくれるかい?」
「最初の内は悩んでいたんです……」
サクラはぽつりぽつりと話し始めた。
「ですが、邪神との最終決戦が決まったと言うことで……決心しました」
「どんなことだろう?」
「自らが盾となり……皆を守る盾となり戦うことを……です」
彼女の声はあくまで静かに凪いでいる。けれど、本人が言うように、その中には固い決意が覗いていた。
「全員を護れるとは言いません……」
「そこも随分謙虚なんだな……」
謙虚と言うか、真面目なのだろう。できないかもしれないことを、たとえ願いであっても、目標だとしても、「できる」とは言えないのだ。
「謙虚なのでしょうか……ともかく、せめて自分の目が届く範囲、手が届く範囲だけでも護りたいと思いました……その思いで今日はここに来ています……」
そう言い終えて、サクラはじっと目の前の大精霊を見ている。どこか思い詰めた様な顔でもある。これから不合格を言い渡されるのではないか。そう思っているようにも、リアルブルーからは見えた。
サクラ・エルフリードという少女は物静かな印象を受けるハンターだった。話を聞いた今も、その印象は変わらない。
相当悩んだのだろう、ということは話を聞いてリアルブルーも理解した。
「そうか──」
リアルブルーが口を開くと、サクラはきゅっと唇を引き結んだ。
「ここに来た、ということは、君は星に認められていると言うことだろう」
ただの真面目だけでは契約を申し入れることもできない。
「努力しました」
「それは、守護者になっても変わらずしてくれる。そうだろう?」
これまでもたくさん努力してくれた。これからもしてくれる。その確信を持てるほどに、サクラ・エルフリードという人物の言葉、態度には一貫性がある。ぶれない、というのが良いだろうか。
守りたいという言葉にこれほど説得力のある態度もない。きっと、手に届く範囲を守ってくれるだろう。リアルブルーは、そんな確信を得ている。
「はい……」
サクラはこっくりと頷いた。リアルブルーは微笑んだ。
もとより、断る理由などない。
「それじゃあ、前置きはここまでにしようか――星の光の名の下に、汝、サクラ・エルフリードに告げる。その魂の輝きを力と変え、星の救世主となる覚悟はあるか?」
「はい。あります」
「契約を受理します。星と英雄の記憶を以て、ここに神の力の一端を授けん。目覚めよ、ガーディアン!」
星の記憶石が砕け散り、虹色の光が広がった。その光が向かうのは、サクラの身体だ。
「ここに誓いは結ばれた。静謐なる守護者よ、あなたの救世に期待します」
「あ……ありがとうございます……」
サクラはぺこり、と丁寧に頭を下げた。
「本当に君は謙虚なんだな」
リアルブルーは思わず笑いそうになる。
「ではこちらも……どうぞよろしくお願いするよ」
守護者の契約というものは、譲渡ではなく共鳴であるとナディアが証明した。
だから自分も彼女たちと共鳴しよう。
これ以上失わないために。
契約の間で、守護者と大精霊がお互いに頭を下げている姿は、どこか平和な眺めだった。
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ミグ・ロマイヤー(ka0665) 種族: クラス: 「マスティマ」取得日:2019/ ●「マスティマ」への表明 「邪神は倒したが、今度は未来の平和のためにマスティマを欲する。」 |
●「守護者」取得(クリックすると、下にノベルが展開されます)
例えば外見通りなら、それもまた若さゆえの興奮だと受け止められたのかもしれない。
「……そんなに興味深いですか?」
ミグ・ロマイヤー(ka0665)のいつまでたっても落ち着かない様子に、大精霊は首を傾げて問いかける。それを責める響きも、興味深いと気にかける響きでもなく、単純に、ただの疑問として。
「それはそうじゃろう、ただの覚醒とは違う、大精霊相手の契約は神聖な物。技術と同じで、後世に残しておけるものは多い方が良いというものじゃ」
「……そう」
ただ立ってミグを見るでもなく、視線を定めさせないまま。大精霊クリムゾンウェストは静かになった。
「そなたは止めないんじゃのぅ」
ミグの家族なら、こんなとき率先して飛んできて、力づくでも止めにくる。それが当たり前になっていたミグとしてはいささか拍子抜けと言っていい。
「気が逸れたままで話されても。この契約に不足が生まれるのでは意味がありませんので」
だから気が済むまでどうぞ、ということらしい。
「では、決意を述べさせてもらおうかのぅ」
心行くまでこの場所を堪能したミグが大精霊に向き直る。小さく頷く大精霊は、ただミグの顔を見ているようで、全身を捉えているようで。その仕草だけで肯定を示した。
(確かにこれでは、気を逸らしてなどいられまい)
それこそ心の底から想いを言葉にしなければ、意味がないとミグも本能から理解する。ゆっくりと、唇が開いた。
「ミグは機導師であるがゆえに、技術としてのマスティマを研究し、後世へ伝えるための一助となりたいものである」
自己紹介でもあり、命題でもあり、そしてこの契約のための最大の理由だ。
それは戦力として欲していないように、ただの研究者として、知識欲を満たす為のようにも聞こえるけれど。
実際のミグが見据えているのはそれよりもずっと先、未来の話だ。
「確かにミグ達は、ハンター達は、この世界は邪神と戦っているし、平和を求めて邁進しているがの。ミグはそれだけではだめだと思うのじゃ。平和とは儚きものでもある。まずこの戦いに勝って、その上で。ミグの存命中に次の危機が来るとは思えぬが……」
ドワーフであるミグの寿命は長い方だが、しかし現時点でそれなりの年数を生きているために大きな戦乱に、己が立ち会う可能性は低いとそう感じている。
「だが、それよりも先、未来に訪れる可能性はゼロではないからのぅ。備えぬものは愚か者だけであるよ」
子供達に、孫達に……子孫が生きる未来に備えないなんて、親ではないのだ。勿論自分の血を繋ぐ者達だけではなくて、同じ地を踏む者達の未来も考えている。
「その為には、マスティマの技術を異世界の遺物ではなく、この世界の技術として昇華させたい。今を生きる技術者達の粋を決して、解析し、理解し、根源からの理解を得て……この世界に定着させたいのじゃ。でなければ、何時までも過去に頼りきりになってしまう。誰かに負担をかけ過ぎてしまう。未来の危機に瀕した者達の為に、扱いやすくあるべきと思うのじゃ。それが、この世界に生きる者の務めと信じているのじゃ」
大精霊の目が少し細くなった。それは問うような視線であり、ミグの懸念に気付いていると、無言のプレッシャーのようでもあった。
「……ミグは理解もしているのじゃ。それは同時に、この世界を生きる者達同士の戦いという危険をはらんでいるとな。しかし、マスティマが“すべての人の手に渡れば”……それで、抑止される戦いもあると信じているのじゃよ」
それほどの段階にまで、当たり前の力、その手段として、技術を知識を、今の時代に添わせたい。
「ゆえに、ミグはマスティマを欲するのである」
決意は言葉で紡いだ。想いは視線に乗せて交わす。ここで、圧し負けてはいけないと、そうミグは理解していた。
「そこまで理解しているなら」
呟きのようでいて、けれどはっきりと大精霊の声が届いた。
「――星の光の名の下に、汝、ミグ・ロマイヤーに告げる。その魂の輝きを力と変え、星の救世主となる覚悟はあるか?」
「勿論じゃ。例え、力に溺れた者と謗られようとも。ミグはミグの信念を貫くと約束しよう」
それくらい、決意がなくては研究者などやっていない。腹から声を出すように、マテリアルと気合を籠めた。
「……契約を受理します。星と英雄の記憶を以て、ここに神の力の一端を授けん。目覚めよ、マスティマ!」
光を纏う機体がミグの前に現れる。
「ここに誓いは結ばれた。追究なる守護者よ、あなたの救世に……いや、残すだろう記録と技術、その道のりに。期待します」
期待。その言葉はミグの胸に希望を灯す。
「ああ、必ず。平和への道筋につなげてみせよう」
「……そんなに興味深いですか?」
ミグ・ロマイヤー(ka0665)のいつまでたっても落ち着かない様子に、大精霊は首を傾げて問いかける。それを責める響きも、興味深いと気にかける響きでもなく、単純に、ただの疑問として。
「それはそうじゃろう、ただの覚醒とは違う、大精霊相手の契約は神聖な物。技術と同じで、後世に残しておけるものは多い方が良いというものじゃ」
「……そう」
ただ立ってミグを見るでもなく、視線を定めさせないまま。大精霊クリムゾンウェストは静かになった。
「そなたは止めないんじゃのぅ」
ミグの家族なら、こんなとき率先して飛んできて、力づくでも止めにくる。それが当たり前になっていたミグとしてはいささか拍子抜けと言っていい。
「気が逸れたままで話されても。この契約に不足が生まれるのでは意味がありませんので」
だから気が済むまでどうぞ、ということらしい。
「では、決意を述べさせてもらおうかのぅ」
心行くまでこの場所を堪能したミグが大精霊に向き直る。小さく頷く大精霊は、ただミグの顔を見ているようで、全身を捉えているようで。その仕草だけで肯定を示した。
(確かにこれでは、気を逸らしてなどいられまい)
それこそ心の底から想いを言葉にしなければ、意味がないとミグも本能から理解する。ゆっくりと、唇が開いた。
「ミグは機導師であるがゆえに、技術としてのマスティマを研究し、後世へ伝えるための一助となりたいものである」
自己紹介でもあり、命題でもあり、そしてこの契約のための最大の理由だ。
それは戦力として欲していないように、ただの研究者として、知識欲を満たす為のようにも聞こえるけれど。
実際のミグが見据えているのはそれよりもずっと先、未来の話だ。
「確かにミグ達は、ハンター達は、この世界は邪神と戦っているし、平和を求めて邁進しているがの。ミグはそれだけではだめだと思うのじゃ。平和とは儚きものでもある。まずこの戦いに勝って、その上で。ミグの存命中に次の危機が来るとは思えぬが……」
ドワーフであるミグの寿命は長い方だが、しかし現時点でそれなりの年数を生きているために大きな戦乱に、己が立ち会う可能性は低いとそう感じている。
「だが、それよりも先、未来に訪れる可能性はゼロではないからのぅ。備えぬものは愚か者だけであるよ」
子供達に、孫達に……子孫が生きる未来に備えないなんて、親ではないのだ。勿論自分の血を繋ぐ者達だけではなくて、同じ地を踏む者達の未来も考えている。
「その為には、マスティマの技術を異世界の遺物ではなく、この世界の技術として昇華させたい。今を生きる技術者達の粋を決して、解析し、理解し、根源からの理解を得て……この世界に定着させたいのじゃ。でなければ、何時までも過去に頼りきりになってしまう。誰かに負担をかけ過ぎてしまう。未来の危機に瀕した者達の為に、扱いやすくあるべきと思うのじゃ。それが、この世界に生きる者の務めと信じているのじゃ」
大精霊の目が少し細くなった。それは問うような視線であり、ミグの懸念に気付いていると、無言のプレッシャーのようでもあった。
「……ミグは理解もしているのじゃ。それは同時に、この世界を生きる者達同士の戦いという危険をはらんでいるとな。しかし、マスティマが“すべての人の手に渡れば”……それで、抑止される戦いもあると信じているのじゃよ」
それほどの段階にまで、当たり前の力、その手段として、技術を知識を、今の時代に添わせたい。
「ゆえに、ミグはマスティマを欲するのである」
決意は言葉で紡いだ。想いは視線に乗せて交わす。ここで、圧し負けてはいけないと、そうミグは理解していた。
「そこまで理解しているなら」
呟きのようでいて、けれどはっきりと大精霊の声が届いた。
「――星の光の名の下に、汝、ミグ・ロマイヤーに告げる。その魂の輝きを力と変え、星の救世主となる覚悟はあるか?」
「勿論じゃ。例え、力に溺れた者と謗られようとも。ミグはミグの信念を貫くと約束しよう」
それくらい、決意がなくては研究者などやっていない。腹から声を出すように、マテリアルと気合を籠めた。
「……契約を受理します。星と英雄の記憶を以て、ここに神の力の一端を授けん。目覚めよ、マスティマ!」
光を纏う機体がミグの前に現れる。
「ここに誓いは結ばれた。追究なる守護者よ、あなたの救世に……いや、残すだろう記録と技術、その道のりに。期待します」
期待。その言葉はミグの胸に希望を灯す。
「ああ、必ず。平和への道筋につなげてみせよう」
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北谷王子 朝騎(ka5818) 種族: クラス: 「守護者」取得日:2019/ ●「守護者」への表明 「そんなパンツで大丈夫でちゅか?」 |
●「守護者」取得(クリックすると、下にノベルが展開されます)
北谷王子 朝騎(ka5818)は「何事も最初が肝心でちゅ」と思いながら、契約の場に現れた。
クリムゾンウェストの大精霊の足元に、仰向けヘッドスライディングで近づく。
「そんなパンツで大丈夫でちゅか?」
スカートの中を覗き込んでフレンドリーに挨拶をした。スカートの中ではなく、空が見える。クリムゾンウェストの大精霊はそこにはいなかった。
「……大精霊のスカートの中って、空になってるんでちゅね……」
「何が大丈夫か分かりませんが、問題なく、大丈夫です」
大精霊は淡々と答えてくれた。
「これおみやげでちゅ」
土産の「水陸両用朝騎パンツ」と「朝騎ウェハース」を渡した。
「丁寧にありがとうございます。あなたの名前がついているものなのですね」
水陸両用朝騎パンツには朝騎の顔のイラストがプリントされている。ウェハースの包の中に朝騎のポートレートが入っているらしい。大精霊は開けてみる。
「ポートレートだけ取って、ウェハースを捨てることは許されないでちゅ」
朝騎が忠告に大精霊はうなずくと、さくさくと食べ始める。ウェハースとチョコレートの甘さが口に広がる代物だ。
大精霊が食べきるのを見て、朝騎は嬉しくなる。
食べ終わったところで、大精霊は朝騎に向き直る。
「ここに来たということは、守護者としての力を得たいということなのですね?」
問いかけに朝騎はうなずく。
「子供たちの明るい未来を守りたいでちゅ」
先ほどの特異な行動とは異なり、未来を憂える言葉が紡がれる。
大精霊は静かに聞く。
「人が安心して子を産み育てられる、そんな普通で平和な……リアルブルーに歪虚が攻めてくる前くらいの平和な時代がいつか来たらいいなって思ってまちゅ」
朝騎は笑う。
気づいたら戦いが続く世界だった。軍人だったという記憶があっても、一部消えてしまっている。
「人間同士の争いとかあったりもしまちたけど、今の邪神がいるときに比べれば随分、平和なほうでちた」
人間同士の争いも問題ではあるが、いつか終わる可能性がある。実際、争いのタネ葉残っても、どこかで区切りがつけられてきている。
しかし、邪神との戦はすりつぶされるだけという恐怖が迫る。
「それと朝騎、好きな人がいまちゅ。丘精霊のルルしゃんでちゅ」
脳裡に丘精霊の姿が浮かぶ。
「ルルしゃんと添い遂げる為にも、邪神屈せずに護れる力が欲しいでちゅ」
朝騎は真っ直ぐ大精霊を見た。気持ちもすべて真っ直ぐ届くそのような視線。
大精霊の手元に光の種が現れる。朝騎が持つ星の記憶石がそれに反応を示し、浮かび上がる。
「――星の光の名の下に、汝、北谷王子 朝騎に告げる。その魂の輝きを力と変え、星の救世主となる覚悟はあるか?」
「はい! 邪神屈せずに護れる力が欲しいでちゅ」
「契約を受理します。星と英雄の記憶を以て、ここに神の力の一端を授けん。目覚めよ、ガーディアン!」
星の記憶石が砕け散り、虹色の光が瞬く。そしてその光は朝騎の身体に吸い込まれていった。
「ここに誓いは結ばれた。丘友なる守護者よ、あなたの救世に期待します」
光が消えた後、朝騎はほっと息を吐き、手を握りしめた。力があるのを感じるが、守れるかは自分次第だとも考える。
「邪神との戦いが終わったら王国でルルしゃんと一緒に暮らしたいでちゅ」
「それが叶うことを祈ります。いえ、共に前に進みましょう」
大精霊に朝騎は抱きついた。
クリムゾンウェストの大精霊の足元に、仰向けヘッドスライディングで近づく。
「そんなパンツで大丈夫でちゅか?」
スカートの中を覗き込んでフレンドリーに挨拶をした。スカートの中ではなく、空が見える。クリムゾンウェストの大精霊はそこにはいなかった。
「……大精霊のスカートの中って、空になってるんでちゅね……」
「何が大丈夫か分かりませんが、問題なく、大丈夫です」
大精霊は淡々と答えてくれた。
「これおみやげでちゅ」
土産の「水陸両用朝騎パンツ」と「朝騎ウェハース」を渡した。
「丁寧にありがとうございます。あなたの名前がついているものなのですね」
水陸両用朝騎パンツには朝騎の顔のイラストがプリントされている。ウェハースの包の中に朝騎のポートレートが入っているらしい。大精霊は開けてみる。
「ポートレートだけ取って、ウェハースを捨てることは許されないでちゅ」
朝騎が忠告に大精霊はうなずくと、さくさくと食べ始める。ウェハースとチョコレートの甘さが口に広がる代物だ。
大精霊が食べきるのを見て、朝騎は嬉しくなる。
食べ終わったところで、大精霊は朝騎に向き直る。
「ここに来たということは、守護者としての力を得たいということなのですね?」
問いかけに朝騎はうなずく。
「子供たちの明るい未来を守りたいでちゅ」
先ほどの特異な行動とは異なり、未来を憂える言葉が紡がれる。
大精霊は静かに聞く。
「人が安心して子を産み育てられる、そんな普通で平和な……リアルブルーに歪虚が攻めてくる前くらいの平和な時代がいつか来たらいいなって思ってまちゅ」
朝騎は笑う。
気づいたら戦いが続く世界だった。軍人だったという記憶があっても、一部消えてしまっている。
「人間同士の争いとかあったりもしまちたけど、今の邪神がいるときに比べれば随分、平和なほうでちた」
人間同士の争いも問題ではあるが、いつか終わる可能性がある。実際、争いのタネ葉残っても、どこかで区切りがつけられてきている。
しかし、邪神との戦はすりつぶされるだけという恐怖が迫る。
「それと朝騎、好きな人がいまちゅ。丘精霊のルルしゃんでちゅ」
脳裡に丘精霊の姿が浮かぶ。
「ルルしゃんと添い遂げる為にも、邪神屈せずに護れる力が欲しいでちゅ」
朝騎は真っ直ぐ大精霊を見た。気持ちもすべて真っ直ぐ届くそのような視線。
大精霊の手元に光の種が現れる。朝騎が持つ星の記憶石がそれに反応を示し、浮かび上がる。
「――星の光の名の下に、汝、北谷王子 朝騎に告げる。その魂の輝きを力と変え、星の救世主となる覚悟はあるか?」
「はい! 邪神屈せずに護れる力が欲しいでちゅ」
「契約を受理します。星と英雄の記憶を以て、ここに神の力の一端を授けん。目覚めよ、ガーディアン!」
星の記憶石が砕け散り、虹色の光が瞬く。そしてその光は朝騎の身体に吸い込まれていった。
「ここに誓いは結ばれた。丘友なる守護者よ、あなたの救世に期待します」
光が消えた後、朝騎はほっと息を吐き、手を握りしめた。力があるのを感じるが、守れるかは自分次第だとも考える。
「邪神との戦いが終わったら王国でルルしゃんと一緒に暮らしたいでちゅ」
「それが叶うことを祈ります。いえ、共に前に進みましょう」
大精霊に朝騎は抱きついた。
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クリスティア・オルトワール(ka0131) 種族: クラス: 「守護者」取得日:2019/ ●「守護者」への表明 「ずっとずっと、愛し、見守り続けます」 |
●「守護者」取得(クリックすると、下にノベルが展開されます)
編み籠の中から取り出してみせるのは王国北西部で作られた赤ワイン。他にも二人分のワイングラスとクッキーの包みが見えている。
「お土産が必要だと聞きましたので」
そういって微笑むクリスティア・オルトワール(ka0131)に請われるまま、大精霊クリムゾンウェストはテーブルセットを呼びだした。
「……別に無くてもよいのです」
「そうなのですか? 飲めない、食べられないというわけではないのでしたら、ご相伴いただけると」
封を切ってしまった瓶を傾ける様子からは緊張感といったようなものはクリスティアからは感じられない。うながされるまま大精霊も席についた。
「ありがとうございます」
にこやかに礼を言われ、首を傾げる大精霊。ただ、その方が契約者にとってより良い状態となるのだろうと、そう思っただけなのだ。
香りを楽しんで、少しだけ口の中で転がす。王国が作り上げたものだからこそ、今のクリスティアには意味があるのだ。
「……最初は」
だから、自然と語りだせた。
「世界を救いたい、守りたいなんて大それた気持ちは無かったのですよね……」
酒の力というよりも、その後ろにある王国が、クリスティアの想いを、その背をおしてくれる。
「なぜって、少し普通より強い程度の人の手で抱えられる命は限られてるではありませんか。私はそれを知っていたから、だから、身近な人達だけは守れたらと、精々そんなもので」
魔術の力を確かめられれば、求める答えが得られれば、もし見つけ出せたときに、己の手で節目を迎えられたら。理由は様々にあったけれど、全てを纏めて一つの言葉で覆うとするなら、先の言葉が当初の考えだった。
「でも、そんな意識でいたから、多くの命を取り零したんです。失敗をしては後悔して、改善したつもりでも失敗が重なって。結局後悔の日々は数知れず……」
思い返すには時間が足りない。語るにも想いをそのまま表せる言葉を紡ぐ余裕はない。
「それでも、立ち止まりたくはなかったから、ここに来ました」
それはクリスティアがこの場に居る大きな理由。けれどそれは大きいけれどもあくまでも一つ目。
一口、含むだけだった赤ワインを、グラスごと傾けて、干す。
「理由はもう一つあるんです」
二杯目を注ぐでもなく、ワインのラベルへと視線を向けた。作られた地名でもなく、王国でもなく、その地を守る者の背が、脳裏に浮かぶ。
「私は、私が愛した方が守り抜いた王国を、守りたいと思ったからです」
声に甘いものが混じる様子は酔っているようにも見えるけれど。すぐに真剣な響きに戻る。
「傲慢王がいなくなった今も邪神を始め、世界に脅威は残っています。もし、この後の邪神との戦いを無事終えたとしても……争いが根絶される訳じゃありません」
争いのない世界、そんなものは幻想だとクリスティアは考えている。
「……だから私は、彼が願い守り抜いたものを、代わりに守り続けます」
もし、邪神との戦いで何が起きたとしても。それは決意であり願いであり強い想いとなって大精霊へと向けられる。
「幾世を経たとしても、この想い尽きる事はないと誓えるほどに。もし、彼がいなくなった世界でも……私はこの世界と、王国を見守り続けます」
そう言葉にするクリスティアの脳裏には、かつて、想い人と出会った日の記憶が描かれている。
頼る場が増えて申し訳ないと、そう口にした彼女に返された言葉も。
援護しようとしたその時に揮われた確かな力も。
労いに否定も肯定もしない、ある意味ありのままを受け入れている姿も。
(今でも鮮明に思い出せます……とくに、祝宴のお姿。あの時の光景が当たり前のものになった後も、ずっと……)
そこまで考えたところで、大精霊から向けられる視線に気づく。
「失礼しました。私の彼への想いは、内緒でお願いしますね?」
クリスティアに胸の内を告げる予定はない。
「あの方を想う方は多いですから。それに……」
そっと、口元に人差し指を添えた。
「愛は見返りを求めないものです♪」
「……想っている、というのは伝わりました。だから」
淡々と、うながされるままにワインを傾けていた大精霊の手からグラスが離れる。
「――星の光の名の下に、汝、クリスティア・オルトワールに告げる。その魂の輝きを力と変え、星の救世主となる覚悟はある?」
これが最後の確認だと真直ぐに見据える瞳が告げている。
「ええ。私の愛はずっとずっと、想い続けていくこと。見守り続けていくことこそに意味がありますから」
迷いのない瞳と共に返される。
「契約を受理します。星と英雄の記憶を以て、ここに神の力の一端を授けん。目覚めよ、ガーディアン!」
知らぬ間に浮かんでいた星の欠片がクリスティアの前に向かい、その胸の前で弾ける。
少しずつ速く、少しずつ多く、虹は吸い込まれていき……全てが見えなくなったその時には、元の場所へと戻っていた。
「ここに、誓いは結ばれた。傾慕なる守護者よ、あなたの救世に期待します」
「お土産が必要だと聞きましたので」
そういって微笑むクリスティア・オルトワール(ka0131)に請われるまま、大精霊クリムゾンウェストはテーブルセットを呼びだした。
「……別に無くてもよいのです」
「そうなのですか? 飲めない、食べられないというわけではないのでしたら、ご相伴いただけると」
封を切ってしまった瓶を傾ける様子からは緊張感といったようなものはクリスティアからは感じられない。うながされるまま大精霊も席についた。
「ありがとうございます」
にこやかに礼を言われ、首を傾げる大精霊。ただ、その方が契約者にとってより良い状態となるのだろうと、そう思っただけなのだ。
香りを楽しんで、少しだけ口の中で転がす。王国が作り上げたものだからこそ、今のクリスティアには意味があるのだ。
「……最初は」
だから、自然と語りだせた。
「世界を救いたい、守りたいなんて大それた気持ちは無かったのですよね……」
酒の力というよりも、その後ろにある王国が、クリスティアの想いを、その背をおしてくれる。
「なぜって、少し普通より強い程度の人の手で抱えられる命は限られてるではありませんか。私はそれを知っていたから、だから、身近な人達だけは守れたらと、精々そんなもので」
魔術の力を確かめられれば、求める答えが得られれば、もし見つけ出せたときに、己の手で節目を迎えられたら。理由は様々にあったけれど、全てを纏めて一つの言葉で覆うとするなら、先の言葉が当初の考えだった。
「でも、そんな意識でいたから、多くの命を取り零したんです。失敗をしては後悔して、改善したつもりでも失敗が重なって。結局後悔の日々は数知れず……」
思い返すには時間が足りない。語るにも想いをそのまま表せる言葉を紡ぐ余裕はない。
「それでも、立ち止まりたくはなかったから、ここに来ました」
それはクリスティアがこの場に居る大きな理由。けれどそれは大きいけれどもあくまでも一つ目。
一口、含むだけだった赤ワインを、グラスごと傾けて、干す。
「理由はもう一つあるんです」
二杯目を注ぐでもなく、ワインのラベルへと視線を向けた。作られた地名でもなく、王国でもなく、その地を守る者の背が、脳裏に浮かぶ。
「私は、私が愛した方が守り抜いた王国を、守りたいと思ったからです」
声に甘いものが混じる様子は酔っているようにも見えるけれど。すぐに真剣な響きに戻る。
「傲慢王がいなくなった今も邪神を始め、世界に脅威は残っています。もし、この後の邪神との戦いを無事終えたとしても……争いが根絶される訳じゃありません」
争いのない世界、そんなものは幻想だとクリスティアは考えている。
「……だから私は、彼が願い守り抜いたものを、代わりに守り続けます」
もし、邪神との戦いで何が起きたとしても。それは決意であり願いであり強い想いとなって大精霊へと向けられる。
「幾世を経たとしても、この想い尽きる事はないと誓えるほどに。もし、彼がいなくなった世界でも……私はこの世界と、王国を見守り続けます」
そう言葉にするクリスティアの脳裏には、かつて、想い人と出会った日の記憶が描かれている。
頼る場が増えて申し訳ないと、そう口にした彼女に返された言葉も。
援護しようとしたその時に揮われた確かな力も。
労いに否定も肯定もしない、ある意味ありのままを受け入れている姿も。
(今でも鮮明に思い出せます……とくに、祝宴のお姿。あの時の光景が当たり前のものになった後も、ずっと……)
そこまで考えたところで、大精霊から向けられる視線に気づく。
「失礼しました。私の彼への想いは、内緒でお願いしますね?」
クリスティアに胸の内を告げる予定はない。
「あの方を想う方は多いですから。それに……」
そっと、口元に人差し指を添えた。
「愛は見返りを求めないものです♪」
「……想っている、というのは伝わりました。だから」
淡々と、うながされるままにワインを傾けていた大精霊の手からグラスが離れる。
「――星の光の名の下に、汝、クリスティア・オルトワールに告げる。その魂の輝きを力と変え、星の救世主となる覚悟はある?」
これが最後の確認だと真直ぐに見据える瞳が告げている。
「ええ。私の愛はずっとずっと、想い続けていくこと。見守り続けていくことこそに意味がありますから」
迷いのない瞳と共に返される。
「契約を受理します。星と英雄の記憶を以て、ここに神の力の一端を授けん。目覚めよ、ガーディアン!」
知らぬ間に浮かんでいた星の欠片がクリスティアの前に向かい、その胸の前で弾ける。
少しずつ速く、少しずつ多く、虹は吸い込まれていき……全てが見えなくなったその時には、元の場所へと戻っていた。
「ここに、誓いは結ばれた。傾慕なる守護者よ、あなたの救世に期待します」