• 羽冠

【羽冠】踵が打ち鳴らす理想

マスター:紺堂 カヤ

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
3~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2018/06/03 07:30
完成日
2018/06/10 18:16

このシナリオは3日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 ため息が、重く落ちてゆく。
 水分を含んだ分厚い雲で満ちた空のように、アメリア・マティーナ(kz0179)の心は曇っていた。
 システィーナ王女殿下の政略結婚に反対する団体を結成し、決起集会を行ってからというもの、彼女の本分である「空の研究」は遅々として進まなくなった。それどころか、研究を押しのけて進めることとなったその反対運動も、実のところそう順調ではなかった。
「私はやはり、人の上に立ったり、人を率いることは向いていなかったようですねーえ」
 アメリアがそう呟くと、彼女の正面に座るトリイ・シールズが首を横に振った。トリイは、空の研究所の後ろ盾となっている貴族カリム・ルッツバードの秘書である。
「そんなことはありません。アメリア所長は、充分、人の上に立つことのできる器だと思いますよ」
 慰めはいりません、と言おうとして、アメリアはふと違和感をおぼえた。トリイの落ち着きぶりに、である。もともと穏やかな人物ではあるし、いつだってにこやかだが、今このときその態度でいられるのはどういうことなのだろう。アメリアを中心とした抗議団体を立ち上げることで市民運動をコントロールするのが、ルッツバード氏の狙いだったはずだ。しかしそれはどう贔屓目に見ても上手くいっているとは言えない。暴徒さながらの苛烈さで活動している市民たちの抑止力にはなりえず、アメリアのもとへ集っていた市民の中にも「そちらの方がいい」と言って去って行った者はたくさんいた。
「……もしや、こうなることが、わかっていたんですかねーえ? ルッツバード氏の本当の狙いは、ここからなのでは」
「お気づきになられましたか」
 トリイがにっこり頷く。アメリアは、目深にかぶったフードの下からトリイを睨んだ。見事に使われてしまったということだ。
「多くの市民が暴徒と化してもなお、冷静さを失わず理論的解決を求める人物だけを、この団体に残したかった……。そういうことですよねーえ?」
「さすがアメリア所長。そのとおりです。初めから意図を説明せず申し訳ありませんでしたが……、それを言えばきっとあなたは協力してくださらないと思いましたので」
 多くの市民を集め、そこからふるいにかける。確かに、アメリアの好むやり方ではない。
「……今回のことでは、私も個人的な目的にこの活動を利用しましたからねーえ。それで、おあいことしておきましょう」
 個人的な目的、とは、アメリアを付け狙い続けていたシェーラを捕らえること、であった。
「そういえば、捕らえたシェーラさんは、今どこに?」
「王都内に家をひとつ借り、そこにいてもらっていますよーお。キランとスバルさんを監視につけて。逃げ出す様子はありませんが、相変わらず何も話そうとしません。何を考えているのやら」
 アメリアはまたため息をついた。アメリアを疲弊させているのは、このシェーラの問題もあるからだ。
「それより……、市民をふるいにかけて何をするつもりなのですかねーえ? これ以上の抗議活動は、もう無意味でしょう。王女殿下は、そろそろ結論をお出しになるはずですよーお。ご自分の、お考えで、ね」
「ええ、そのとおりです。ご自分の、お考えで。そこが、重要なのです」
「と言うと?」
「市民にも、自分の考えをきちんと持ってもらわなければなりません。これからの王国に必要なのは、民がより賢くなることです。貴族の思惑に振り回されたりせず、きちんと国を守っていくには、それぞれがきちんとした考えを持ち、それを主張することが必要になります。今回の殿下の一件で、抗議する姿勢が市民にみられたことは僥倖でした。しかし、抗議の方法はもっと考えられるべきです」
「貴族の思惑に振り回されたりせず、ねーえ」
 アメリアの皮肉に、トリイはさすがに苦笑した。貴族側であるトリイがそれを言うことに矛盾があることは、当然自覚があるらしい。
「アメリア所長にはこれから、そうした意識改革に乗り出していただきたいのです」
「ふむ……。しかし、私は本来、空の魔法を研究するのが仕事ですからねーえ」
 いつまでもそちらをおろそかにはしていられない。どうしようか、と首をひねったとき。
「私に考えがあります!! どうか、私にやらせてください!!」
 ガチャリ、と応接室の扉が開いて、少女がひとり、入ってきた。どうやら、扉の向こうで盗み聞きをしていたらしい。
「あなたは?」
「私は、ラゼルといいます。この抗議団体に参加しています。是非、私に、『生き方を考えるための雑誌』を作らせていただきたいのです!」
 ラゼル、と名乗った少女は、瞳の奥に炎を燃え上がらせていた。

リプレイ本文

 ラゼルは、「空の研究所」の食堂で気合充分な腕まくりをしていた。テーブルの上には原稿用紙、企画書、色とりどりのペン。書記役の少女もスタンバイしている。それに加え、クッキーやマドレーヌを盛った菓子鉢。あとは熱い湯を注ぐだけに整えられたティーポット。
参加者は、約束の時間通りに続々と集まってきた。
「こんにちは、ラゼルさん。今日はよろしくお願いしますね。これ、アップルパイなんですけれど。お茶と一緒にどうかと思って」
 高瀬 未悠(ka3199)があたたかな笑顔と共にパイの箱を差し出した。ラゼルが感激しながらそれを受け取り、礼を言うと、未悠の後ろからアルカ・ブラックウェル(ka0790)が顔を出す。
「それ、未悠の手作り? 楽しみだな」
 わいわいと卓を囲むのは見事に女性ばかり。和気あいあいとした雰囲気になりそうだった。ラゼルはこほんと咳払いをし、挨拶する。
「皆さん、お集まりありがとうございます。本日は、雑誌に掲載いたします記事の為に皆さんにインタビューさせていただきます。よろしくお願い致します」
 ラゼルがぺこんとお辞儀をする。エメラルド・シルフィユ(ka4678)がぱちぱちと拍手をしながら、小首を傾げて呟いた。
「雑誌インタビューか……、こんな事するのは初めてだな……」
「事前に聞いとった話やと、雑誌のテーマは結婚らしいけど」
 白藤(ka3768)が言うと、初耳だったらしいエメラルドが、結婚だと、と声を荒げた。
「わ、私は聖職者だぞ? いや別に教義で結婚を禁じられている訳ではないのだが……」
 口篭もり、複雑な表情を浮かべるエメラルドを前に、ミア(ka7035)が元気よく挙手をした。
「ミアはばりばり独り身ニャスけど、幸せな「ゆめ」くらいは語れるニャスよ♪」
 ラゼルは淹れたての紅茶を皆に配りながら頷く。
「皆さんには、結婚に対する意見を自由に述べていただけたらと思います。それから皆さんの「理想の生き方」についても」
「生き方って、今まであまり考えたことなかったです」
 ラゼルの言葉を聞いて、巳蔓(ka7122)が真剣な顔で小首を傾げた。自分のこれまでの生き方を考えているようである。
「では……、どなたから?」
 ラゼルがぐるりと場を見回すと、エメラルドが視線を泳がせているのが目に入った。
「私は……、結婚に積極的な訳でもない……。決して相手がいないからとか生活面が駄目だからとかそういう理由ではないのだぞ! 私の親友にも結婚している者がいるが……どうしてこう……私とは違い過ぎるというか……。もうこうなったら実家の縁談受けてみようかな……」
 ぶつぶつと呟くエメラルドの体が、だんだんとナナメに傾いでいった。しばらくしてハッとしたように姿勢を正す。
「というかもう結婚の話を聞くなら普通にアルカが適任だな!」
「え?」
 突然話を振られて、アルカが目を丸くし、未悠が仕草でティーカップを持ち上げつつ、微笑む。
「私もアルカの新婚生活の話が聞きたいわ」
「そんなわざわざ披露するほどの話はないんだけど……、そうか。既婚者はボクだけなのか」
 一同をぐるりと見回して、アルカはぱちぱちとまばたきをした。うーん、と考えるようにしながら、語り出す。
「ボクの結婚観から話すけど……、以前は、結婚は一族が決めた人とすればいい、って思ってた。初恋を失恋して、それがトラウマでね。ボクは故郷の村では長の一族だから、家の為になる相手と結婚するのが当然と考えてたのもある。ボクは故郷を、両親を始めとする一族を本当に愛しているから。一族を栄えさせる歯車のひとつになる事は本望だし」
 アルカはそこで一度言葉を切ると、ふ、と柔らかな微笑みを浮かべた。
「でも……人生ってわからないよね。幼馴染のエルフとドワーフに告白されて。ミユや他の知合いにも沢山相談して……、それでドワーフの幼馴染の手を取って去年秋に結婚したんだ。故郷は『混血至上主義』でね。ボクの一族はエルフと人間の混血エルフが多いけどドワーフの親族は今までいなくて」
「それって」
 ラゼルがかすかに息を飲んだ。
「……分かる? ボクはね、一族にドワーフの血を入れたくて彼の手を取った。無論、それよりも彼自身を愛しているけど。結婚て99%の愛情と1%の打算……なのかな」
 ラゼルは、アルカの言葉を咀嚼するように神妙な顔で頷いた。そして問う。
「幸せ、ですか?」
「幸せに決まってるよ」
 アルカは即答した。ラゼルがもう一度頷く。今度は、微笑んで。未悠がそれ以上の笑顔でアルカに質問した。
「結婚して一番幸せな事はなに?」
「え? 一番? うーん……、ボクのすべては彼のモノで、彼のすべてはボクのモノ。何気ない日常のふとした時にそう思える事かな!」
 自信に満ちた笑顔でそう言い切るアルカに、未悠が自分のことのように喜ぶ。友人の幸せそうな姿を見るのは嬉しいことだ。
「愛されてるのね。貴女が幸せだと私も嬉しいわ」
 ミアも体をふわふわと揺らしてにこにこ聞いていた。
「いいニャスなぁ、幸せな結婚~! 幸せな結婚とは何かっていうのもいろいろ考え方があると思うニャスけど……」
 ミアがこてん、と首を傾げ、自然に話す順番となった。
「幸せって、自然と寄ってくるものじゃないと思うんニャス。周りの幸せを考えたり、周りを大切に思ったり、そういうことをちゃんと考えて、周りを幸せにできる人に、幸せって寄ってくるんだと思うニャス」
 ミアがテーブルの上のクッキーの皿を、白藤の方へ押し出しながらそう話す。白藤は穏やかに微笑んでそれを受け取り、ミアにはマドレーヌの皿を差し出してやる。周りを幸せにできる人に、幸せが寄ってくる。それを、体現するように。
「だから、みんなが思いやりを意識していれば、みんながあったかい幸せに包まれるんじゃニャいかなぁ、って」
 ラゼルも穏やかな笑顔になって頷いた。
「あとは、えーと、そうニャスなぁ……、あ! ミアは、どんな形の恋愛でも、結婚に至るまでどれだけ時間がかかっても、本当にお互いが愛し愛されて結ばれるような結婚がしたいニャぁ。大変なことも一緒に乗り越えて、絆を深くして、信頼で支え合えるような人……いるかニャ?」
「いるさ」
 力強く頷いたのはアルカで、その言葉は説得力を含んで響いた。えへへ、とミアは照れたように笑う。
「なんか色々喋っちゃったニャスけど、世間に転がってる結婚の定義なんて、所詮定義ニャス。なにに自分を当て嵌めるかは、自分が考える「幸せ」次第ニャスかな?」
「自分が考える幸せ次第、か。いいこと言うね」
 白藤がミアのふわふわした髪を撫でて目を細めた。
「結婚、かぁ……。結婚願望がないわけでは、なかったんやけどなぁ……」
 ラゼルは白藤に向き直った。視線を感じた白藤が、次は自分の順番になるのだと察して面持ちを真剣にする。
「結婚、な。子供が欲しいんやったら、ちゃぁんとした方がえぇって思う。子供を、作る前に」
「堅いことをおっしゃるんですね」
「ちゃうちゃう、うちはたぶん古臭いんや。故郷の名残でな、どうしてもその辺は難しい考えてまうね。一妻一夫の国柄やったからなぁ……」
 そこでふっと、白藤は遠い目になる。
「……自分の子供に、お菓子を作って上げれるような家庭とか、素敵やと思うよ。結婚は……」
 白藤はどこか遠い目をしたままで考え込んでから、ゆるく首を振った。諦めているようにも、決めかねているようにも見える、そんな動きだった。それから、困ったように笑みを浮かべて一同を見回す。
「さて……、どうやろうかな。相手も今んトコ、おらへんしな」
「……そういう相手ができたら、考えたらいいのではないですか?」
 巳蔓が、静かに言った。それもそうやね、と白藤は笑う。未悠が、それに深く頷いた。
「大好きな人と、幸せになりたいと願う末の結婚だと、私も思うわ。今は、ね」
「今は?」
 ラゼルがその一言を聞き逃さずに問い直した。未悠は静かに語り出す。
「そう、今は。転移前は親の決めた相手と結婚するのが自分の運命と受け入れていたの。すべてを諦め、考える事を放棄して。結婚に希望を見出だせなかったし……、幸せになりたいだなんて思っていなかった」
 未悠はそっと目を伏せてから、すぐに明るい瞳をラゼルに向けた。
「でも今は違うの。大切で大好きなあの人を幸せにしたいし彼と幸せになりたいと願っているわ」
「……そういう方が、未悠さんにはいらっしゃるんですね。そして、考えが変わった」
「そう。結婚は大切な人と幸せになる為に、優しさや愛情を与え合う為にするもので、親や国の為にするものじゃないと思うわ。だから……、立場柄難しいと思うけれど、王女には女性としても幸せになって欲しいわね」
「はい」
 ラゼルは大きく、はっきりと頷いた。そして尋ねる。
「未悠さんの想い人は、どんな方なんですか」
「何もかもが最高に素敵な人よ」
 未悠はかけらの迷いもなく即答した。
「強くて優しくて頼もしくて、けれどミステリアスで冷ややかな魅力もあって……。囚われて離れられないのよ」
 未悠の周囲が桃色に輝いて見えそうだった。好きで好きで。好きで仕方ない、という未悠の態度で想い人を語る様子は、それはもう可愛らしく、皆釣られてにこにこしてしまう。
 そして、それまでおとなしく全員の話を興味深そうに聞いていた巳蔓が、そっと口を開いた。
「結婚は、私はまだ全然考えたことないですけど、きっと結婚する人の生き方に大きく関わることですよね。今、皆さんの話を聞いていて、私もいろいろと考えました。結婚する、しないは誰でも自由であって、許されることだと思います。でも結婚をさせる、させないというのは、結婚する人が自由じゃないですし、誰も幸せになれないんじゃないかなって思います」
 うんうん、と全員が頷いた。ラゼルは最初と同じようにぐるりと周囲を見回して、居住まいを正した。
「皆さん、結婚についてのお話を聞かせていただいてありがとうございました。次に、理想の生き方について教えていただけませんか」
 と、今度こそは真面目に、とエメラルドが背筋を伸ばした。
「私は今の生き方が既に理想だと思っている」
「結婚しないことが?」
 白藤がニヤリとしてまぜっかえす。
「いや独身の話ではなく! ハンターかつ聖導士としての自分が、だ」
 エメラルドはわたわたと手を振った。どうしたっていじられキャラになってしまう何かを、彼女は持っているらしい。
「聖職者として主の教えを人々に広めたいとは勿論思ってはいるのだが、同時に皆が幸せに生きられるのなら信仰はいらないとも思っている。ただ私が皆を幸せにする手段が信仰だというだけの事だ。私の行いにより誰かが一人でも幸せになれるのなら、それだけで私は聖導士になった意味がある」
「とてもよく、わかるわ」
 未悠が頷いてエメラルドに同意を示した。
「私も、一人でも多くの人を救いたいし、大切な人達を守りたいと思ってるわ。それと同時に、最愛の人と幸せになりたいとも思っているし……。すべてを叶えるのは難しいとわかっているけれど、でもこの命がある限りは決して諦めないわ。自分の心に正直に生きるの」
「自分の心に正直に、か。ボクも近いものがあるかもね。『自分を偽らず、自分を貫き通す』って事が理想の生き方かな。凄く難しいだろうけどね」
 アルカが続けて言った。
「凄く難しいからこそボクの中の理想、なのかな。自分を貫いた事で、他の誰かにとって悪い事態となる可能性もあるわけだからね。でも、自分で選択した事ならば責任を持って貫く。そう在りたいって思うよ」
「なるほどねえ……。うちは……せやね……」
 白藤が、ゆったりと視線を上に持ち上げながら考える。
「他人の履く靴は、様々や。ブーツやハイヒール、サンダルに下駄。色も形も大きさも、もっともっとありよる。自分がどれだけ周りに古臭いだの似合わんだの言われても、気に入った靴を好きやからって言って履ける……男も、靴も。勿論、他の人が履いててもそうやね……男性がヒール履いとっても女性が安全靴履いとっても、似合うやん? っていえるようなん。そんな生き方が……うちの理想やろか」
 やわらかな口調とやわらかな言葉の内側には芯のある理想が詰まっていた。白藤はそれをさらりと語って、顔をミアに向けた。
「ミアはどうなん?」
「うニャ? そんなの決まってるニャス」
 話を振られたミアは元気よく声を跳ねさせた。
「難しく考える前に、先ずは行動――どんな時でもミアらしく生きることニャス! ミアの人生を代わりに生きてくれる人なんていないニャスからネ」
「せやなあ、その通りや」
 白藤がゆったりと頷いて、残るは巳蔓だけとなった。神妙な顔で考え考え、巳蔓は言葉を紡ぐ。
「理想と言えるかは分かりませんが、生きていく中でこうしたい、と思うことはあります。私は、私にとって大切な人達を守るために戦い続けたいです。大切な人達の幸せや自由を脅かす敵が存在する限り、これは変わらないと思います。敵にも大切な人達がいて、守るために戦っているのかも知れません。それでも私は、私にとっての敵と戦って守り続けたいです。……多分それが私にとっての幸せで、自由でもあると思っています」
 しっかりとした自分の言葉で語り終えた巳蔓は嬉しそうに、恥ずかしそうにはにかんでから、ラゼルの方を向いた。
「皆さんの意見も興味深くお聞きしましたが……、ラゼルさんの意見はいかがですか? よろしければ、聞かせていただきたいのですが」
「えっ、私ですか?」
 インタビューすることだけを考えていたラゼルは、逆に質問をされて驚いてしまった。しかし、恥ずかしそうにしつつ語り出す。
「私の理想の生き方は、何かひとつ、自分のやりたいことに熱中して生きることです。……アメリア所長のように」
 巳蔓はなるほど、と納得したように頷いた。未悠がやわらかく微笑む。
「アメリアさんは、ラゼルさんの憧れなのね」
「はい! だから、この雑誌の刊行に本当に熱中して取り組みたいんです!!」
「今日がその第一歩というわけだな」
 エメラルドがうんうん、と嬉しそうに頷いてくれるので、ラゼルも嬉しくなった。
「じゃあ張り切って、いい雑誌にするニャス!」
「表紙に、提案があるんだ、タイトルのまま、透明な靴の絵を表紙の中心に描いて、その周りはテーマに沿った「花」の絵で彩るのはどうかな?」
 アルカが身を乗り出すと、未悠もミアも顔を輝かせて案を出し始めた。ラゼルは次々出される妙案に目を丸くしながら、パッと笑顔になった。
「それもいいですね……、あっ、お茶のおかわりいかがですか?」
 編集会議という名の女子会は、まだまだ続きそうであった。



 後日、無事に刊行された「透明な靴」の創刊号は、驚くべき売り上げを見せ、雑誌としては異例なことに、増版までされたのであった。

依頼結果

依頼成功度大成功
面白かった! 4
ポイントがありませんので、拍手できません

現在のあなたのポイント:-753 ※拍手1回につき1ポイントを消費します。
あなたの拍手がマスターの活力につながります。
このリプレイが面白かったと感じた人は拍手してみましょう!

MVP一覧

  • 淡緑の瞳
    巳蔓ka7122

重体一覧

参加者一覧

  • 陽光の愛し子
    アルカ・ブラックウェル(ka0790
    人間(紅)|17才|女性|疾影士
  • シグルドと共に
    未悠(ka3199
    人間(蒼)|21才|女性|霊闘士
  • 天鵞絨ノ空木
    白藤(ka3768
    人間(蒼)|28才|女性|猟撃士
  • 悲劇のビキニアーマー
    エメラルド・シルフィユ(ka4678
    人間(紅)|22才|女性|聖導士
  • 天鵞絨ノ風船唐綿
    ミア(ka7035
    鬼|22才|女性|格闘士
  • 淡緑の瞳
    巳蔓(ka7122
    人間(蒼)|15才|女性|猟撃士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2018/05/31 00:21:45
アイコン 控室(相談卓)
エメラルド・シルフィユ(ka4678
人間(クリムゾンウェスト)|22才|女性|聖導士(クルセイダー)
最終発言
2018/06/03 00:22:54