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【幻想】

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青髯は……青木 燕太郎は、討ち果たせました。
これで辺境地域の大きな脅威は去ったと考えて良いでしょう。皆さんのおかげですね。
ですが、私達にはまだ残された問題があります。黙示騎士、邪神……そして選択。
ハンターの皆さんがどのような選択をされるか大変興味深いですが、私はどのような選択をされても尊重致します。
あなた方ハンターがいなければ、この世界はとうの昔の歪虚に敗北しているでしょうから。
せめて……悔いの無い選択をして下さい。

辺境要塞管理者:ヴェルナー・ブロスフェルト(kz0032)

更新情報(6月18日更新)

グランドシナリオより派生したリベンジシナリオも完結!
怠惰王、そして青木燕太郎との激しい戦いを終え、辺境は傷つきながらも問題を克服しつつあります。
その物語は【血断】などに続いていきますが、今はひとたびの決着です。

6月18日、【幻想】連動シナリオ全体のエピローグとして特設ページのノベルを更新しました!
▼【幻想】グランドシナリオ「白と黒」(4/10?4/26)▼

▲OPと参加者一覧▲
 
 

【幻想】ストーリーノベル「雲の向こうは、いつも青空」(6月18日公開)

オーロラ

青木 燕太郎

イェルズ・オイマト

ヴェルナー・ブロスフェルト

バタルトゥ・オイマト

 真なる怠惰王オーロラに続き、終末の獣と化した青木 燕太郎(kz0166)の討伐に成功。
 この話は瞬く間に辺境を駆け巡った。
 辺境に歪虚は残っているが、王を廃した功績は大きい。
 王を失った怠惰の歪虚達は、少しづつ力を失っていくだろうと思われ……辺境中が喜びに沸く筈だが、手放しに喜べる状況でもなく――。


「……指揮官の務め、無事に果たされたようですね。お疲れ様でした。きっとバタルトゥさんも喜ばれるでしょう」
「ありがとうございます。……それで、あの。族長は……?」
 神妙な面持ちのイェルズ・オイマト(kz0143)の問いに、黙って首を振るヴェルナー・ブロスフェルト(kz0032)。
 怠惰王との戦いの果てに、意識不明となっているバタルトゥ・オイマト(kz0023)は、青木の討伐に成功した今も、依然眠り続けたままだった。
 ヴェルナーはふう、とため息をつくと目を伏せる。
「辺境を独立した国家とし、王を置くというのは……大幅な計画変更を余儀なくされそうですね」
「……ヴェルナーさんが以前話されていた件ですよね。族長は『俺は王の器ではない』とか言ってましたけど」
「ええ、そう仰ってましたね。……私は、バタルトゥさんであれば辺境を国家としても王として導いていけるだろうと思っていました。御納得戴けるまで説明差し上げるつもりだったんですけどね」
 思い出すように呟くイェルズに、眉根を寄せるヴェルナー。
 帝国と辺境がパシュパティ条約を締結したあの日。
 ヴェルナーは、バタルトゥに王の器を見出していた。
 辺境の数ある部族を纏める為に部族会議を制定し、その大首長にバタルトゥが就任したことも、ヴェルナーの描く未来予想図に多大な影響を及ぼしたと言える。
 そして、怠惰王を退けた暁には――部族会議が……辺境が他国と渡り合える国家となる門出になると思っていたのに。
「本当、流石の私も予想外で対応にあぐねています。……誰か1人に頼る策など、考えるものではありませんね」
 反省しました、と続けたヴェルナーにかける言葉が見つからないイェルズ。
 この目の前のノアーラ・クンタウの管理責任者は……部族会議の大首長に随分肩入れしているように思えた。
「複数の責任者を置いた形にするというのも手かもしれませんね。……イェルズさん、試しに貴方が王になってみますか?」
「ええ、そうですね……って、はぁ!!?」
 何でもないことのように、軽い調子で言うヴェルナーに一瞬頷きかけたイェルズ。
 アワアワと手を振りながら続ける。
「いや、あの……俺は辺境の戦士です。シバ様の遺志を継いで、赤き大地を守ろうとは思いますが……王としてではないです」
「そうなんですか? 部族会議の大首長の補佐役を務めているくらいですから周囲を納得させるのは容易かと思いますが」
「……そもそも、俺にその資質があったら、ヴェルナーさん俺に確認するまでもなく話を進めてるでしょ?」
「流石イェルズさん。私の行動を良く読んでいますね。……ともあれ、このままバタルトゥさんを寝かしておく訳にもいきません。起こす方法を考えませんと」
 くつりと笑うヴェルナー。穏やかな紫色の瞳に、挑戦的な光が宿ったのを、イェルズは見逃さなかった。
「ヴェルナーさん、その様子だと何か思いついてますね?」
「おやおや。補佐役殿は察しがいいですね。バタルトゥさんもちょっと見習って戴きたいものです」
「族長は朴念仁だから……」
 笑い合う2人。そうだ。未来はまだ閉じた訳ではない。
 ヴェルナーは顎に手を添えて、イェルズを見据えた。
「その方策ですが、まずファリフさんの協力を得るのが望ましいですね」
「……何で族長を起こすのにファリフさんが???」
「それは……」

森山恭子

 突然ファリフ・スコール(kz0009)の名前が出て来てキョトンとするイェルズ。
 続いたヴェルナーの言葉は、バーンと扉が開く音でかき消された。
「うおおおん イェルズちゃん! あいたかったザマスーーー!! 無事で良かったザマスーーーー!!」
「うわっ」
 突然飛びついてきた森山恭子(kz0216)を思わず避けたイェルズ。
 恭子はそのまま勢いよく柱へと抱きついた。
「イェルズちゃん暫く合わない間に身体が固くなったザマスね!? どこか痛いところは!? 怪我はないザマス!?」
「森山艦長、それ俺じゃなくて柱です」
 自分で避けておきながら容赦なくツッコむイェルズ。
 ――この話は、また後日の方が良さそうですね。
 そんなことを考えていたヴェルナーは、もう1組来訪者がいることに気が付いた。

アルト・ヴァレンティーニ

リューリ・ハルマ

「おや。千客万来ですね。どうされました?」
「失礼します。アルト・ヴァレンティーニです。今日はお願いしたいことがあって参りました。……リューリちゃん」
 恭しく頭を下げたアルト・ヴァレンティーニ(ka3109)。彼女に促され、リューリ・ハルマ(ka0502)もぺこりと頭を下げた。
「あの。……オーロラさんと燕太郎さんにお墓作ってあげられないかなって思って」
「……はい? 怠惰王に墓ですか? 一応理由をお伺いしても?」
「以前、辺境の北の山で見つかった哨戒艇があっただろう。そこに沢山の遺骨があった。エンタロウは、あの哨戒艇に乗ってた部隊の一員だったんだ」
 続くアルトの説明。
 以前、バタルトゥからの依頼で北の山脈に赴き、そこで氷で覆われた哨戒艇を発見した。
 そこには沢山の遺骨があり、転移に巻き込まれたリアルブルーの部隊であることが推測出来た。
 遺品や遺骨をこのままにはしておけないと、戻って来てから埋葬場所について相談したところ、開拓地ホープの一角がいいだろいうということになり……。
 ホープには、彼らの鎮魂碑が置かれていた。
「……えっとね。あんなことになっちゃったけど、オーロラさんも元々リアルブルーの人で……燕太郎さんの養女になるはずだったんだよ」
「ホープにはエンタロウの親友も眠ってる。だから……何とか出来ないかと思って」
「燕太郎さん、塵になって消えちゃったから、埋葬出来るものもないんだけど……仲間と一緒に、眠らせてあげたいなって思ったの」
 アルトとリューリの必死の訴えに、無言を返すヴェルナー。
 暫しの沈黙の後、ため息を漏らす。
「そうですか……。『歪虚の墓』、というと抵抗を覚える人はいるかもしれませんが、『ただの転移者の墓』であれば問題ないでしょう」
「……! うん! 燕太郎さんは『ただの人間』だから! ありがとう!」
 喜びを顔いっぱいで表現して、ヴェルナーに頭を下げるリューリ。アルトもまた、安堵のため息を漏らした。


ブラッドリー

「青髯は、倒れましたか」
 ブラッドリー(kz0252)は大量の負のマテリアルが消失した事を察知していた。
 時間はかかるだろうが、この辺境の地も一気に浄化が進む事になるだろう。
 大転移以前は絶望的な状況とさえ思われていたが、ハンターの存在はそれ程までに巨大な物になっている。
「さらに世界だけでなく、神も救おうという思考。
 コーリアス、あなたの予想を彼らは大きく外れるかもしれません」
 かつて『錬金の到達者』コーリアス(kz0245)は、ハンターが人間から敵視されるようになると考えていた。歪虚という存在が消えれば、ハンターは力を持つ危険な存在として禁忌される。
 しかし、ハンターに秘められた力はその予想をも遥かに凌駕しつつある。
「ハンターならば本当に……」
 神を救えるかもしれない。
 ブラッドリーは自らの口から溢れそうな言葉を、敢えて飲み込んだ。
 仮にそうだとしても、その道が重なる事はない。
「仕方ありません。そう、仕方ない事なのです」
 ブラッドリーはエンジェルダストに向かって歩き出す。
 予定されていた計画を遂行する為に。


 ……。
 …………。
 …………――。

「ねえ。エンタロウ。それはなぁに?」
 可愛らしく小首を傾げる少女。
 その目線が、胸元にぶら下がる銀色のプレートに注がれているのに気づいて……男は首からプレートを外すと、そっと少女の掌に乗せる。
「これはドックタグと言ってな。軍隊に在籍する兵士の個人識別に使われる。……ほら。俺の名前が書いてあるだろう?」
「どうしてこれをつけているの?」
「軍人は有事の際に戦うのが仕事だからな。戦場で死んでもこれがあれば誰の死体か分かる」
「……! そう、これは、とても大事な役目があるのね」
 掌のプレートに目を落とす少女。
 男の名前に指で撫でていたかと思ったら、パッと顔を上げる。
「エンタロウ! 私もドッグタグが欲しいな」
「一体どういう風の吹き回しだ? ……お前は軍属している訳でなし、ペンダントならもう少し華やかなのがいいんじゃないか?」
「ペンダントじゃなくてドックタグがいいの。……何かあっても、エンタロウに見つけて貰えるように」
「……そんなものがなくても、俺はお前を見つける。心配しなくていい」
 少女の金糸のような髪を撫でる男。
 それに、少女はくすぐったそうに微笑んだ。


 ――ある男の長い旅路は、終焉を迎えた。
 自責と過ぎた願いの果てに男が得たものは、憎悪と悔恨。
 それでも……最期は『ただの人間』として、死んで行けたのではないか。
 そうであって欲しいと、ハンター達は願った。

(執筆:近藤豊猫又ものと
(文責:フロンティアワークス)

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