嗚呼、愛しのカサブランカ!

マスター:秋月雅哉

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2014/12/23 19:00
完成日
2014/12/24 00:31

みんなの思い出

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オープニング

●美貌の令嬢への求婚者は果てがなく
「愛しのカサブランカ嬢! どうか私の求愛を受け入れてください!」
「なにをいう、カサブランカ嬢と未来を共にするのは私だ!」
「いや、僕が!」
「黙れ小童ども! カサブランカ嬢にふさわしいのは大人の魅力を兼ね兼ねそろえたワシじゃ!」
 帝国領の貴族屋敷が立ち並ぶ一角、風格を備えたある屋敷の前には男性の人だかりができていた。
 どうやら『カサブランカ』という名の女性への求婚者の群れらしい。
 身分や容姿、財力に自信のある者は老いも若きも誰もが我こそは、と名乗りを上げ、彼らにそれらで劣る者たちはせめて一目令嬢を視界に入れようと鈴なりになっている。
 あるいは窓から姿を見せたカサブランカが身分や容姿や財力を抜きにして自分を選んでくれる幸運はありはしないだろうか、とでも期待しているのかもしれない。
「――おい、聞いたか」
「何をだ?」
「カサブランカ嬢が屋敷から姿を消したらしい」
「なんだと?」
「カサブランカ嬢に一目ぼれした吸血鬼が攫って行ってしまったということだ」
「なんだって!? それが本当なら求愛の品など送っている場合じゃないじゃないか!」
「本当のところはどうなんだろうな……」

「どうも帝国領の貴族屋敷でまた問題が起こってるみたいだね。あぁいうところは本来閑静であってしかるべきだと思うんだけど」
 たびたび事件が起きるよねぇ、あそこ。ルカ・シュバルツエンド(kz0073)は事情を聴きに行くと気疲れするから嫌なんだよ、あそこ、とぼやきつつ今回の事件で分かっていることを語り始めた。
「カサブランカ、という名前の令嬢が住んでいる屋敷で吸血鬼の雑魔が出たらしい。最初は吸血鬼は身振り手振りで件の令嬢に求愛したらしいけどこの令嬢が貴族にしておくのがもったいないくらい気の強い令嬢らしくてね。こっぴどく振ったらしいんだ。
 それを多分逆恨みした吸血鬼が攫ってしまった、と。居場所を突き止めるために探している間にそろそろ噂にもなり始めてるし早急な退治をお願いしたい」
 使用人たちは長く仕えているし家族も堅物ではなかったからね、こちらの要望は成果を見せてもらえるという確約を感じ取ればある程度無茶振りも通ると思うよ。
 そう言ってルカは疲れたように、そして久し振りに怪しげな色の煙を立てる飲み物を飲み始めたのだった。

リプレイ本文

●純白の百合の女王は気高く咲き誇り
 帝国の貴族の住宅が立ち並ぶ住宅街で日ごろから貴族や商人、市民に至るまで幅広い男性から求愛を受けていた令嬢、カサブランカ。
 気の強い彼女は吸血鬼をこっぴどく振った結果、逆恨みした吸血鬼に誘拐されてしまった。
 慌てたカサブランカの両親がハンターオフィスに娘の救出と吸血鬼の討伐を依頼し、現在ハンターたちは目撃情報を元に吸血鬼の居場所を探索中だ。
「吸血鬼を袖にするたぁ、随分と鼻っ柱の強いお嬢だぜ」
 個人的には好みの部類ではあるが、などとどこまで本気なのか分からない感想を漏らしつつナハティガル・ハーレイ(ka0023)が肩をすくめる。
「凄まじく自業自得よねぇ。カサブランカが攫われるのも、吸血鬼が滅ぼされるのもね。
 とはいうものの、カサブランカには好感が持てないこともないけれど。
 まぁ、何はともあれ、やるようにやらないといけないわね」
 エリシャ・カンナヴィ(ka0140)がやや呆れたように少々きつめの感想を漏らす横で、米本 剛(ka0320)はむしろ彼女の気の強さに感心した様子でふむ、とうなずく。
「聞いた話だけでも胆力が凄そうなお嬢さんですね……雑魔相手に物怖じしない……ハンター適性があればどうだろうか? と薦めたいほどですな。
 と言いますか……自分の知識だと通常『魅了』の能力は吸血鬼側にある認識でしたが、逆に虜にしてしまうとか……このお嬢さんはどんだけハイスペックなのかと突っ込みたくなりますね」
 感心もしているが若干の呆れというか苦笑も混ざっている様子だ。
「なるほど、吸血鬼……面白いですね。戦う相手には不足はないでしょう。これも戦神の思し召しというものです。
 しかしその令嬢も興味深い……戦神の信徒にまたとないお方ですね。事が終わったら勧誘してみましょうか」
 アデリシア=R=エルミナゥ(ka0746)もカサブランカの気の強さに興味を持ったのか勧誘を試みるつもりのようだ。
 屋敷の前で声高に求愛していた男性陣や夜の散歩に出かけていた貴族たちに目撃者がいないかそれとなく情報収集にいそしんだ結果当たりがつけられたのが森の中の廃墟だった。
 毒々沼 冥々(ka0696)が歌いながら廃墟に近づきドアを蹴破る。
「何、うるさいって? こいつはアレさ、お姫様に僕たちが来たことを伝えるためだぜ。
 っていうのは建前で歌いたいだァーけ! ぶぇろぶぇろぶわぁー!」
「吸血鬼と人間の恋か。ロマンチックね。ああでも、フラれてしまったんだっけ? ご愁傷様。それじゃあ救助に行くわよ」
 マリーシュカ(ka2336)は日傘を畳んで廃墟に足を踏み入れる。
 生まれつき色素を欠く体質であるため、日光の下で肌を晒すことを厭う彼女だが廃墟は廃墟の割に割としっかり屋根が保たれており、日光が差す心配がなさそうだと判断してだ。
「へぇ、気骨のあるお嬢様だね。ただ助けるだけじゃ気が収まらないよね、多分……ふむ」
 アルファス(ka3312)が令嬢を探しながら何か考え込むように口元に手を当て考え込む。
 そして何事か思いついたのか小さく笑ったのだった。
 廃墟の扉を一つずつ開けてカサブランカの姿を探していくと最奥の扉の一つ前の扉から女性の声が聞こえた。
「誰かいらっしゃるんですの?」
 雑魔は言葉を発しないからこれはおそらくカサブランカのものだろう。
 そう判断したlol U mad ?(ka3514)がガチャガチャと動きの悪いドアノブを乱暴に回して扉を開く。
「初めましてでしょうか。女性の方もいらっしゃいますし、私の両親が救助をハンターの方にお願いして、貴方たちがその依頼を受けた、というところかしら。
 求婚者の方たちがいいところを見せようと乗り込んできたのではないかとちょっと懸念していたのですけれどそういう雰囲気でもないので安心しましたわ。
 お手数をおかけしますけれど縄を解いてくださる?
 後ろ手に括られてしまって。もう少し様子が分かれば本で読んだ関節の外し方を実践して雑魔に一発お返しのビンタでも叩き込んでからお暇しようかと思っていたのですけれど縄を解いて頂けるなら関節を外す手間とはめる手間が省けますわ」
 突然現れた見ず知らずの相手に対して、攫われた令嬢はこれでもかというほど淡々と自分の意見を述べる。しかも淀みがない。
 誘拐された身、しかも雑魔が攫った相手となればいくら気が強くとももう少しパニックになっているのでは、むしろ気が強い女性を閉じ込めたことにより怒り狂っているのでは、と危惧していたが自分の理論を展開させて相手に反論の隙を与えないタイプの気の強さ、らしい。
 パニックに陥らず泰然としているのはそういった冷静な部分を必要とする気の強さを持っているからというのもあるだろうが貴族の令嬢として人前で感情を露わにすることは恥、という教育方針があったのかもしれない。
「意外と落ち着いてるんだな。そのトーリ、オレらは救助と吸血鬼の討伐にきたハンターだ」
 lolがそういう依頼だしな、と縄を解いてやりながら付け加えるとカサブランカは淡々とお礼を言った。
「散々気が強いって聞いてたから助けに来るのが遅い、とヒステリックに叫んでこられるパターンも想定してたんだが……意外と冷静だな?」
「それは私と私を育てた両親に対する侮辱ですか?
 依頼を受けてどうするのが合理的か作戦を立案する時間、この場所を見つけ出すまでの時間、雑魔を討伐するための準備に裂く時間、移動時間。その他私が思いつかないような手間もあるのでしょう。
 それに私は気のない相手に希望を持たせるような優しさと見せかけた残酷さは嫌いますからお断りする時はきっぱり断るせいで気が強い、と言われますが……自分に対して恋愛感情を抜きに労力を割いてくれる方に八つ当たりするほど愚かではありません」
 シャンパンゴールドの髪のほつれを直しながら反論するカサブランカにlolはそりゃ失礼、ともろ手を挙げた。
「では改めて吸血鬼の討伐へ向かいましょうか。……同行されますか?」
「止めを刺す前に一発張り手くらいは食らわせる時間を頂けると私的には嬉しいですわね」
 剛の問いかけにカサブランカが物騒なセリフと裏腹に艶やかに微笑む。
 攫われて満足に食事を与えられていなかったのだろう、顔色は良くないしやつれているがそれを差し引いても確かに求婚者が家の前にひしめくだけの美貌を彼女は備えていた。
「とばっちりを受けないよう、注意してください。我々としても被害が及ばないよう全力を尽くすつもりですが」
 飛び出して怪我をすることを危惧した剛がやんわり釘をさすと前に出ていいといわれるまでは最後尾で大人しくしている、と存外『いい子』の返事が返ってきた。
「そろそろ日が昇ったし、吸血鬼はお休みの時間でしょう。さっさと退治して送り届けないとね」
 エリシャが見ていないのは後は最奥の扉の奥だけだから、と其方へ向かうとハンターたちは最後尾にカサブランカを加えて吸血鬼討伐に向かったのだった。
 扉を開くと窓のない室内で蝙蝠たちの鳴き声が響いている。
 吸血鬼は寝入りばなを起こされたのか何が起きているか分からない様子できょろきょろと視線をさまよわせた。
 ナハディガルがライトを目つぶし代わりに吸血鬼に向かって当てる。
 盾の前面に聖印が刻まれた逆互角形の形の盾を構え、蝙蝠を仲間が殲滅し終えるまで吸血鬼を抑える心づもりだ。
「はっ、強引に攫うことでしか見てもらうことすら叶わないなんて、実に無様ね。
 せめて、俺について来いとでも言ってみなさいよ」
 喋る事の出来ない雑魔相手にそんな挑発をしながら距離を詰めて全力で吸血鬼の股間を蹴りあげるエリシャ。
 挑発に乗って怒り狂った吸血鬼は距離を詰められたことを幸いとエリシャに攻撃しようとしたが思わぬ場所への攻撃を食らって苦悶の表情を浮かべた。
「八百万の神々よ……聖なる光を!」
 耳障りな鳴き声を上げてハンターたちに飛びかかってくる蝙蝠に向けて剛がホーリーライトを放つ。
「やれやれ、男たるもの……女性に対してはもっと紳士的になって頂きたいですね! 最後まで力尽くとは嘆かわしい!」
「良いね良いねゲロ良いね」
 冥々が独特の口調で楽しげに歌いながら意図的に跳弾を起こすことで敵の予期せぬ方向からの攻撃をお見舞いする。
 味方の武器に光の精霊力を付与し、強化した後、吸血鬼にむけて輝く光の弾による衝撃でダメージを与えながらアデリシアが鞭の届く距離まで移動する。
 中間距離で鞭を振るいながら吸血鬼が攻撃するのを阻害しつつ、時折攻撃手段をホーリーライトに戻してつかず離れずで戦う。
「近寄らなければ、剣も吸血もできまいが。さあ、頭か胸か、どこを打って欲しいか言ってみるがいい……!」
「蝙蝠って嫌いだわ。可愛くない。同じ空を舞い、血をすするものなら、蝶の方がずっと素敵」
 目標は小さく、数が多いことから面での攻撃を心掛けて視力の高い動物霊の力を借りることで周囲を見極め、攻撃の命中率を高めた状態でマリーシュカが両手に拳銃を構えて乱射する。
 lolは攻撃の瞬間に武器であるグリントボウにマテリアルを強く込め、威力を高めた一矢を蝙蝠に向かって放つ。
「ザコでも数だけは多いし、メンドクセ―な」
 そう言いながらも矢継ぎ早に射抜いていく表情は真剣なものだ。
 蝙蝠の討伐が終わり、吸血鬼も弱り始めた様子を見せ始めたことで蝙蝠の退治に専念していた仲間たちや抑え役に回っていたナハティガルも吸血鬼に集中することに。
 二丁拳銃で蝙蝠の群れを掃討していたアルファスはそれまで邪魔をしないようにと彼女なりに配慮していたのか大人しいカサブランカに視線を向ける。
「あの変態吸血鬼に、一発くれてやる? 必要なら力を貸すよ」
「えぇ、可能ならぜひ」
 初めて間近で展開される戦闘に怯むわけでも、アルファスの問いかけにしり込みをするわけでもなく、むしろ一発お見舞いできれば清々する、とでも言いたげな口調で短く返事をすると場にそぐわない爽やかな笑みを浮かべるカサブランカ。
 彼女と寄り添い、共にエア・スティーラーを構えて標準合わせとマテリアル込めを担当した後、引き金を引くように促すアルファスの様子を見て冥々が茶化すように言葉を紡いだ。
「へいプリンセス、愛しのダーリンと今生の別れさ。いいたい事のひとつもあるんじゃねーの?」
「愛しくも名残惜しくもありませんわ。貴方には迷惑と嫌悪しか感じませんでしたからご冥福をお祈りいたしませんわ。精々華々しく散ってくださいませ」
「……クールッ!!」
「変態吸血鬼、これがカサブランカからの返事だってさ!」
 託された引き金を引いたカサブランカとアルファスの共同作業で吸血鬼は断末魔の呻きをあげて偽りの命に幕を引いた。
「あはは、一緒に戦えて楽しかったよ。ああ、そうだ。
 色々と付き纏われて大変みたいだしこれ、あげるよ」
 そういってデリンジャーを差し出すアルファス。
「君の健闘を讃えて、ね♪ ハンターになって精霊の加護がないと使いこなせないかもだけど、小型でドレスに隠せるし、お守り位にはなるんじゃないかな?」
「有難うございます」
 やはり怯むことなく武器を受け取った様子を見てそれだけの勇気があればハンターになれるだろう、と思いつつも家の事情もあるだろうからと言葉にはしなかったアルファス。
(ふふ、でもいつかまた一緒に戦えたら楽しそうだけど)
 そんなことを心で思いつつ勇敢な少女へ敬意の笑顔を向けた。
 その後言葉はそれぞれ違っていたが『気が強いのはいいが断り方を工夫しないと家族が心配するし、雑魔や歪虚より怖いのは人間なのだから配慮した方がいいのでは』という言葉を受け、カサブランカが少し考えた後出した答えは。
「自分の身に火の粉が降りかかっても対処できるよう、そして大事にしてくれる両親に危害が加えられそうになったとき人に頼らず自分の手で守れるよう、このデリンジャーを相棒にハンターを目指すのもいいかもしれませんわね」
 というどこまでも強気なものなのだった。
 いつの日か、もしかするとこの令嬢と戦線を共にする日も来るのだろうか、そんなことを考えながら覚醒者たちは苦笑する者、呆れを隠さない者、予想外のセリフに言葉を失う者、驚きが笑いを引き起こした者など様々な反応を見せた。
 帰り道は護衛対象にハンターについての基礎講座の時間へと変わり、ある意味当然なのか、それともどうしてこうなった、なのか分からない道中を経て「さようなら」ではなく「縁があればまた」という言葉で今回の依頼は締めくくられた。
「周りが見えてんのか見えてないのか測りかねるお嬢だったな……」
 ある意味雑魔より手ごわい、とナハティガルが呟いた言葉が一番的を得ていた、かも知れない。

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参加者一覧

  • 一刀必滅
    ナハティガル・ハーレイ(ka0023
    人間(紅)|24才|男性|闘狩人
  • 優しさと厳しさの狭間
    エリシャ・カンナヴィ(ka0140
    エルフ|13才|女性|疾影士
  • 王国騎士団“黒の騎士”
    米本 剛(ka0320
    人間(蒼)|30才|男性|聖導士
  • Trigger "H"
    毒々沼 冥々(ka0696
    人間(蒼)|17才|女性|猟撃士
  • 戦神の加護
    アデリシア・R・時音(ka0746
    人間(紅)|26才|女性|聖導士

  • マリーシュカ(ka2336
    エルフ|13才|女性|霊闘士
  • 《聡明》なる天空の術師
    アルファス(ka3312
    人間(蒼)|20才|男性|機導師
  • Two Hand
    lol U mad ?(ka3514
    人間(蒼)|19才|男性|猟撃士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2014/12/20 01:52:28
アイコン 質問卓
米本 剛(ka0320
人間(リアルブルー)|30才|男性|聖導士(クルセイダー)
最終発言
2014/12/20 08:10:34
アイコン 相談卓
米本 剛(ka0320
人間(リアルブルー)|30才|男性|聖導士(クルセイダー)
最終発言
2014/12/23 18:36:06