傾向と対策

マスター:とりる

シナリオ形態
ショート
難易度
やや難しい
オプション
参加費
1,500
参加制限
-
参加人数
3~15人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2018/06/22 19:00
完成日
2018/07/05 17:14

このシナリオは5日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 辺境某所。辺境部族の村――。
 あちらこちらの家屋から激しい火の手が上がっており、怒号と悲鳴が飛び交っていた……。

 これらの惨状を引き起こしたのは他でもない、歪虚の指揮官クラス、牙城・焔(kz0191)一派である。
 焔配下の、大量の火蜥蜴が村を襲い、口から火を噴き、村を焼いているのだ。
「…………」
 焔は立ち昇る炎と、黒煙と、逃げ惑う村人に目をやっているが……無言の上に無表情。
「焔様、粗方は焼き尽くしましたが、まだやりますか?」
「続けろ」
「はっ」
 焔は側近筆頭の白川・桜に命ずる。いつも通り他の側近二名、菊池・緑と球磨・遥の姿もある。
「…………」
 ふと、焔はあるものに目を止める。
「お母さぁん! お母さぁん!!」
 泣きじゃくる幼い少女。その目の前には足を怪我したらしく、動けない少女の母親と思われる女性がうずくまっている。
「お母さんはいいから、早く逃げなさい! 大丈夫だから、あとからすぐに追いつくから、ね?」
 母親は少女を宥めるに言い聞かせる。しかしその表情は傷の痛みからか苦悶が浮かぶ。
「いやだよぉ! お母さんと一緒じゃなきゃいやぁ!!」
 少女はわんわん泣きわめくのみ。
 焔はその光景を見て、馬鹿なことを……と思う。村は大量の火蜥蜴に包囲させており、村人には元より逃げ場などない。
「…………」
 焔はゆっくりと歩を進め、その親子の前までやって来る。
「ひっ!?」
 少女と母親はあからさまに怯えた表情。そして焔は……動けない母親の首を掴み、軽々と持ち上げる。
「お母さん!?」
「がっ……はや……にげ……」
 母親は苦しそうにもがきながら言葉を振り絞る。
「…………」
 焔は思う。この状況でも我が子の命を優先するか、と。焔は少女の母親を持ち上げているもう片方の手で、腰の二刀の内、一振りを抜く。
 そしてその切っ先を母親へつき付けた。焔は思う。我は武人である……と自負している。しかし目の前にあるのは戦う者ではない、力を持たぬ弱者。
 弱者は強者に喰われるのが世の理。ゆえに……この母親は我が炎で焼くか、それとも刀で斬り捨てるか。両方でもいいかもしれない。
 しかし……この殺生にはなんの意味も無い。ハンターのような戦士と刃を交えた後にそれを殺めるならともかく、この場合はただの虐殺だ。
 その行為は武人ではなく、ただの外道……。焔は「ふふ」と自嘲気味に嗤う。我は歪虚に身を落した身。今更外道もなにもあるのか、と。
 だが……どうもこの自分にとっては虫けら同然の母親を殺めるのには気が乗らない。
 村を焼く火蜥蜴にも燃やすのは家屋だけで、村人を焼き殺せとは命じてはいない。逃げ遅れた者は居るかもしれないが。
「やめてぇ! お母さんを殺さないでぇ!!」
 少女が叫び、焔の着物に縋り付いて来る。
「だめ……抵抗……しては……はやく……にげて……」
 少女の必死の命乞いと、我が子だけでも逃がそうとする母親……。そのとき。
「やめろ!!」
 青年と思しき男の声が響く。
「……ようやく来たか」
 声の主はハンターの青年だった。周りには仲間と思しきハンターの姿もある。総勢十名といったところか。
 焔は母親の首を掴んでいた手を離し、地に落とす。
「げほっ! げほっ!」
「お母さん!!」
 少女は母親に駆け寄り、抱き付いた。
 焔はそんなものには目もくれず、ハンター達のほうへ目をやり、刀を向ける。
 ――焔は予め村人を数名だけ村から脱出させておいたのだ。そうすれば当然、ハンターズソサエティに助けを求めるだろう、と。
 以前にも使った手だ。今回は足止めでも、【灼導】兵器の実験でもなく、ただ単純に闘争を求めてのことだが。
「待っていたぞハンター共。さあ、殺し合いを始めようではないか」

 ***

「牙城・焔一派の討伐に向かったハンター達が全滅しました」
 要塞都市【ノアーラ・クンタウ】にある辺境のハンターズソサエティにて、受付嬢のクラヴィーア・キルシェ(kz0038)が神妙な面持ちで言った。
「辺境部族の村が牙城・焔一派の襲撃を受け、その救援にハンターを向かわせたのですが……残念ながら……」
 全滅と言っても生存者は居たが重体や再起不能となってしまったらしい。派遣されたのは中堅程度のハンターを主軸としたパーティだったという。
「未だ牙城・焔一派の脅威は健在です。そこで皆さんに第二波として向かっていただきたいのです」
 ですがその前に……とクラヴィーアは言う。
「第一波の際は緊急を要したため、それほど情報を用意出来なかったのですが、今回は同じ轍を踏まないようにこちらで出来る限りの情報を用意しました」
 クラヴィーアは資料をハンター達に配る。
「これが、ハンターズソサエティが把握している牙城・焔一派の情報全てです。出発までに熟読してください。よろしくお願いします」

 ***

【牙城・焔一派に関する資料】
●牙城・焔
通称、二刀爆炎の焔。
歪虚の指揮官クラス。
二つの刀と爆炎を自在に操る。

確認されている技一覧:
【紅蓮爆刃】
二刀を地面に叩き付け発生させる範囲攻撃。

【紅蓮爆刃・弐】
二刀に炎を纏わせ、爆発を伴う斬撃を発生させる。

【灼溶爆炎】
焔を中心とした範囲攻撃。

【灼溶爆炎・弐】
上記の威力強化版と思われる。

【紅蓮火球】
【紅蓮火球・連打】
刀から高威力の火球を飛ばす遠距離攻撃。

奥義:
【火龍爆炎剣】
龍の形をした炎を二刀に纏わせ、炎の剣とし、リーチ(射程)と威力を格段に向上させる。

■【灼導】兵器
コーリアス製の焔用兵器。どれも高威力で非常に危険。
・手榴弾
・無反動砲
威力は【灼溶爆炎】並みかそれ以上。

・熱線砲
焔の爆炎を圧縮して撃ち出す範囲射撃(砲撃)武器と思われる。

・跳躍装置
焔に飛行能力、および加速力を付与するものと思われる。

●白川・桜(しらかわ・さくら)
焔の側近筆頭。中~遠距離攻撃担当。
【紅蓮魔矢】という射撃系の技を使用。

・連なり
連射。

・降らし
広範囲攻撃。

・剛力
威力強化。

を確認。

●菊池・緑(きくち・みどり)
焔の側近。回復・魔法支援担当。
【紅蓮魔球】という支援系の技を使用。
【紅蓮魔球・放射】という閃光を伴う技を確認。
また、緑は自身を守る結晶を複数周囲に浮遊させている。

●球磨・遥(くま・はるか)
焔の側近。防御担当。
【紅蓮魔障壁】という防御系の技を使用。
防御時に【攻性防壁】に似たノックバックが発生する。

●火蜥蜴
牙城・焔が兵として使役する歪虚。雑魔では無い。
全身に炎を纏ったトカゲ型歪虚。口から炎のブレスを吐き、牙や爪による攻撃も行う。
また、この敵に対し直接攻撃を行うと火属性の延焼ダメージを受ける。
移動速度は並程度。体長は2mほど。

リプレイ本文


 辺境部族の村を襲った牙城・焔(kz0191)一派。最初に派遣されたハンター達は全滅……。
 次いで派遣されたハンターグループの第二波が村へと急ぐ――。

 ***

「また関わることになろうとはな……宜しく頼む」
 前回、牙城・焔に苦汁を舐めさせられたレイア・アローネ(ka4082)は神妙な面持ちで皆に挨拶をする。

「今までの報告書は少し読んだけど、敵は炎を操る歪虚なんだね」
 夢路 まよい(ka1328)は事前にハンターズソサエティから受け取った資料と、過去の報告書を読み込み、敵の分析を行う。
「攻撃を火属性の武器で受けて軽減するのはやったみたいだけど、敵の防御属性はどうなってるんだろ。試してみようかな?」

 舞刀士である多由羅(ka6167)は愛剣、斬魔刀『祢々切丸』の鞘を両手で握り締め、精神集中をする。
「敵にとって不足なし」

 黒髪のショートヘアに健康的な小麦色の肌、印象的な淡緑の瞳、半袖の学生服にプリーツスカート姿の巳蔓(ka7122)。
 彼女はこの後の戦闘に備え、愛銃・ショットガン『ストラフォルン』の調整を行う。
「簡単には勝たせてもらえない、ですよね」
 敵は指揮官クラスの歪虚と、その部下、それに多数の火蜥蜴型歪虚である……。
(相手が強敵だからこそ、得られるものも多いはずです。強くなるための糧にさせてもらいます)
 ……巳蔓は強敵との戦いを通じて自らの力を高めようと考えていた。

(歪虚の本能だぁ? 世の摂理だぁ? 眠てぇこと言ってんじゃねえ。そんな言葉で自分を飾ってる奴には、俺には絶対ェに勝てねぇぜ!)
 ボルディア・コンフラムス(ka0796)はライバル視している(?)焔が出現したということで気合が入っている様子。

「何を考えてるか知らないけど、少しくらいはやり返さないとなのだ!」
 ネフィリア・レインフォード(ka0444)もレイアと同じく前回、焔一派に苦戦を強いられたために少しは反撃したいと考えている。
 焔一派が辺境部族の村を襲った理由とは……果たして……。

 ***

 問題の村付近に到着したハンター達は馬車を降り、徒歩で村へと向かう。
 村の周囲は焔配下の火蜥蜴によって包囲されていた……。ハンター達は進路を遮っている火蜥蜴群を排除しつつ村を目指す――。

 ***

 しばらくして、村へ到着。だがそこは既に焼け野原であった……。中心部の大きな屋敷以外、ほとんどの家屋が焼け落ちてしまっている……。
 村人は無事だろうか……と、そこで――

 部下三名を引き連れた牙城・焔が姿を見せる。
「…………来たか。待っていたぞ。もう来ぬものかと思って、危うく全てを焼き払うところであった」
 焔は腰に差した鞘から二刀を抜く。
「よう、いじめっ子やンのは楽しいか?」
 ボルディアが焔に対し、言いながら前へ出る。
「まだなんか燃やしたンねぇってンなら、俺が相手になってやるよ。テメェも不完全燃焼じゃ今夜気持ちよく寝れねぇだろ?」
 ボルディアも得物――魔斧『モレク』を構える。
「ふん、お前が相手ならば退屈はしなさそうだな……ゆくぞ」
 ――そうして、二人がぶつかった。長柄の斧と二刀が激しく打ち合い、火花が散る。
「歪虚じゃねえテメェの本当の望みはなんだよ? この焼け野原がテメェの望みが? これで満足したか?」
 初っ端から猛烈な鍔迫り合いを繰り広げながらボルディアが焔に問う。
「何を言っているのか分からぬが、満足出来ぬから貴様と今、こうして殺し合っているのではないか」
「俺は! 心の底から燃える本気のテメェをぶっ倒してぇんだよ!」
「我もそうだ。そこらの雑魚では無く、貴様のような猛者との闘争を求めるからこそ、わざわざこのような手段を使った! 前のようなつまらんことはしてくれるなよ?」
 紅蓮爆刃・弐により炎を纏った刀が打ち付けられ、連続で爆発を起こす。ボルディアは弾かれつつも、ダメージを気に掛けることなく、何度も焔へ向かっていく。
「相変らずクソ熱いぜ……だが、楽しいなァ! 焔ァ!!」

 ***

 ネフィは焔が飛行したらこちらも【天駆けるもの】で対抗し、空中から【ファントムハンド】や【倫理爆裂拳】で撃ち落とせないか試すつもりであったが……。
 今回は【灼導】兵器を装備していない様子であった。ゆえに焔の相手はボルディアに任せ、魔導大剣『ティルヴィング』を掲げて、既に陣形を整えている焔の側近三名のほうへ。

(水属性が弱点かどうかや抵抗の強さを測っていくよ)
 まよいも錬金杖『ヴァイザースタッフ』を握り、焔の側近三名の対応へ。
 水属性魔法の【アイスボルト】や【ブリザード】を詠唱し敵を攻撃、ダメージの通り具合を見る。
 また、【集中】を魔法に乗せて更に強力な攻撃を行う。……単体攻撃は遥に受け止められてしまうが範囲攻撃はそうもいかない。
 三名に均等にダメージを与え……いや、緑だけは違った。ダメージは彼女の周囲を浮遊する結晶が肩代わりし、砕け散る。
 …………見たところ水属性魔法による攻撃は普通に通っており、『効果抜群』というほどでも無いようにまよいは感じた。
 ちなみにバッドステータスは敵の抵抗がかなり高いらしく、あまり効果は見られない。

 レイアは魔導剣『カオスウィース』を、多由羅は刀を振るい近接攻撃を仕掛けるが例によって遥の盾に阻まれ、受け止められ、ノックバックにより弾かれる。
「くっ、後退させられるとは厄介な……」
「あの盾に対して近接攻撃は……一気に多数で攻めないと厳しいかもしれませんね……。っ! 敵の攻撃、来ます」
 反撃の、桜の紅蓮の矢が飛ぶ。

 少し離れて、ボルディアと焔の会話を見つめ、反応をじっと観察していた鳳城 錬介(ka6053)。
(先日は作戦とはいえあまり面白くない方法を取りましたから、何か心境の変化が無いか……)
 焔の『つまらんことはしてくれるなよ』という言葉により、前回のハンター達の作戦を少しは根に持っているらしいことが確認出来た。

(私の射撃が敵に通用するか、特に防御担当という球磨さんに効くかを確かめたいところ……)
 巳蔓はショットガンを構えて射撃し、散弾が遥に向かって飛ぶ。……一応命中はしたものの、あまりダメージが入ったようには見えない。
 続いて少し後退し【高加速射撃】を用いた射撃。攻撃の瞬間にマテリアルを使って弾を加速させる。
 その際に巳蔓は敵の防御がどの程度堅いのか、防御に死角はないのかを注視。……やはり遥の防御はかなり堅牢らしく、あまり効いた様子は無い……。

 更に巳蔓は、レイアと多由羅、そしてネフィが近接戦を仕掛け、気を引いてくれている間に今度は支援担当の緑へ、自分の射撃が有効かどうかの確認を行う。
 再度ショットガンを構えて射撃。――だがそれは、やはり周囲を浮遊する結晶によって防がれてしまう。
 緑を攻略するにはまずこの防御結晶を排除する必要があるようだ……。
 ……巳蔓は遥と緑に試した射撃の効果にどの程度の違いがあるか、しっかりと覚えておく。
(挑発に反応してくれるかどうかも試したいですね……)
 巳蔓はショットガンの銃口を焔の側近三名、壁役の遥、支援役の緑、射撃役の桜のほうへ向け、出来る限り余裕の『表情を作って』このように言い放つ。
「良い的ですね。できれば動かないで、大人しく撃たれていただきたいのですが」
 …………結果、特に反応無し。しかし桜の紅蓮の矢が連続で飛んできた。
 ……表情には出ていないが、もしかすると側近三名とも、少しはムッとしたのかもしれない……。

 ***

 さて、対焔戦。一対一でやり合っていたボルディアは少し押され始めていた。
「どうした? その程度か?」
「はっ! このくらいどうってことねェよ焔ァ!!」
 全身が刀による斬り傷だらけであったボルディアは【紅火血】を使用し生命力を回復させる。

 その様子を見たレイアはタイミングを見計らって大きく踏み込み、焔へ魔導剣『カオスウィース』による【刺突一閃】を見舞い、ボルディアに加勢。
 焔は二刀を交差させて受け止めた。そして、レイアの顔を見て眉根を寄せる……。
「貴様はこの間の……また割って入るか。まあよい。二人纏めて相手にしてくれる」
「……牙城・焔、お前は何の罪もない村人達を殺している」
 レイアが二刀に魔導剣を打ち付けながら言った。
「だからどうした? 弱者は強者に淘汰されて当然だろう?」
 焔はレイア、ボルディアと交互に得物で打ち合いながら返す。
「そんな事を言っても、結局のところお前達は弱い者をいたぶる事しか出来ない獣だろう」
 紅蓮爆刃・弐の爆発を伴う斬撃に弾かれながらもレイアは挑発を続ける。
「私達ハンターを誘き寄せるためとは言え、弱者を殺していてはそこらの歪虚……いや、知能の低い雑魔とすらなんら変わりは無い」
(……人によっては聞き流されるような挑発だが……もしかしたら何らかの反応を見せるかもしれない……)
 それに対し焔は。
「……ほう。雑魔と同じ扱いとはよく言ってくれる」
 焔の身体にめらめらと激しい炎が宿る。
(怒らせたか……?)
 レイア、ボルディアはそれぞれ魔導剣と魔斧を構え、警戒。……しかし。
 焔の身体に宿った炎はすっと消えた。そして。
「桜、緑、遥、撤退するぞ。……火蜥蜴共、壁を作れ!」
 側近三名は「はっ!」と返事をし、戦闘を中断。焔と共に撤退行動を開始。その後すぐに多数の火蜥蜴が焔の指示通りに壁を形成する。
「焔てめェ! 戦いの途中で逃げンのか!?」
「興が乗らん! また後日相手にしてやる。さらばだ、ハンター共」
 火蜥蜴の群れに阻まれたボルディアが怒りの声を上げたが、焔達はそのまま撤退して行ってしまった……。

「これまでの借りを返すのだー! ……って、帰っていったのだ!?」
 魔導大剣『ティルヴィング』をぶんぶん振り回していたネフィは虚を突かれ、きょとんとした表情を浮かべる。

 こうして焔達の撤退支援のために壁を形成した火蜥蜴の群れと共に、ハンター達は取り残される形となった…………。
 意外な展開である。


「うがー! ストレスマッハなのだー!!」
 ネフィは火蜥蜴の群れへ、ストレス発散に魔導大剣を担いで殴りに行く。
「蜥蜴さんしかいなくなったしっ。うむむむぅ、しょうがないからそっちに怒りをぶつけるのだ!」
【地を駆けるもの】にて火蜥蜴の炎のブレスを回避しつつ、魔導大剣を振るって斬り付ける。
 多少自分にダメージ出ても気にも留めず、ひたすら敵をばっさばっさと斬る。炎の熱さより燃える怒りのほうが勝るのだろうか。

「クソッ! 焔の奴……! 良いところで尻尾巻いて逃げやがって!! せっかく燃えて来たってのに!!」
 ボルディアも鬱憤を晴らすように長柄の斧を力任せにぶん回し、火蜥蜴の群れを薙ぎ払う。ネフィと同じくダメージなど気にしない。
「焔ァ……次会ったとき覚えてろよ!!」

 まよいは【エクステンドキャスト】を使用。【ブリザード】の範囲を広げ、火蜥蜴の群れを纏めて攻撃し、一気に撃破する。
 更に【エクステンドレンジ】で射程も伸ばしつつ、敵陣後方へ【ブリザード】による範囲攻撃を行う。

「牙城達が去ったとは言え、歪虚の火蜥蜴共が多数……油断は出来ん」
 レイアは【ソウルエッジ】と【攻めの構え】によって威力を強化し、【薙ぎ払い】や【刺突一閃】で複数の火蜥蜴を同時に攻撃。鋭い斬撃や刺突を見舞う。
(今の私の実力を確かめるいい機会でもある。こやつらを倒せないようでは牙城達に及ぶべくも無いだろうからな……)

 錬介は普段通りに仲間への回復支援を担当する。まずは前へ出て【ガウスジェイル】を展開。
 聖盾剣『アレクサンダー』を構え、前衛にて仲間の盾役を買って出て、ダメージは【ファーストエイド】を併用した【フルリカバリー】により回復。
 他は必要に応じて更に回復を重ね、隙を見て【プルガトリオ】を詠唱。火蜥蜴への攻撃も行う。
「使用回数が尽きたら聖盾剣で接近戦ですが、出来ればそれまでに何とか凌ぎたいですね」

 多由羅は火蜥蜴の群れに対し斬魔刀『祢々切丸』により、【次元斬】を使用。空間に斬撃を繰り出し、纏めて叩く。
「牙城・焔を討つ為にこのようなところで負ける訳にはいきません」
 再度斬魔刀による【次元斬】を繰り出し、全力で火蜥蜴を叩く。

(気を抜かず……冷静に照準して……撃つ)
 巳蔓は焔の側近相手のときと変わらず、ショットガンにより射撃し、散弾を火蜥蜴にぶつける。
 弾丸の再装填は【クイックリロード】で素早く済ませ、射撃を絶やさない。
 また、敵が近接の間合いに入れば【クローズコンバット】にて対応していった。


 火蜥蜴の群れを掃討し、無事村人を救出したハンター達はひとまず依頼を完遂。辺境のハンターズソサエティへ帰還し、とりあえず報告を終える。
 しかし課題は残った。牙城・焔一派への対応策だ。これまでの戦いで、ただ無暗矢鱈にぶつかるだけでは勝てないと心底思い知ったためだ。
 というわけで、今回の依頼に参加したハンター達でハンターズソサエティの一室を借り、牙城・焔一派への対応策を話し合うこととなった。

 ***

 ハンター達はテーブルにつき、わりと真剣に牙城・焔一派への対策会議を行う。

 まずはボルディア――。彼女は焔達の分断を提案。
「アジトを見つけるなり部下だけを誘き出すなりし、各個撃破でもしないとアイツらは倒せない」
 ボルディアはそのように断言する。何度も焔一派……特に焔本人とやり合って来た彼女の言葉であるからして、説得力……というか圧があった。

 次にネフィ――。
「取り合えず本人たちの能力が高いうえに装備で更に強くなってるのが厄介だなーとは思ってるのだー。可能だったら各個撃破、せめて焔とそれ以外とを分断できれば……」
 やはり考えるのは敵の分断。
「むー、難しい事考えるのは苦手なのだー。あ、でもあの空飛ぶ機械とか空から撃ってくる武器とかは厄介だよねー」
 焔が使用する【灼導】兵器は実際に戦ってみて、かなり厄介であることが解った。身に沁みる程に。今回は装備していなかったようだが……。
「各個撃破出来るのが理想だけど、そも一人ずつで行動することってないよね。何とか別々に行動させられるといいんだけども」
 それは何らかの案をひねり出すか、あるはチャンスを窺うか、だろう……。
「そういえば属性って気にしてなかったけど、防御は火、攻撃は水が効果的だったのかな? かな?」
 そちらに関してはまよいが検証しており、後ほど述べるだろう。
「あぅー、考えすぎると頭から煙が出そうなのだー」
 ネフィは難しいことを考えるのが苦手なため、頭から煙を噴いて(幻覚です)テーブルに突っ伏した。

 まよい――。
「もし敵が水属性が弱点ならそれを活かすっていうのはまず一つ。……でも部下のほうは水属性魔法で攻撃して見た感じ特別効き目があった感じは無かったかな? 防御は無属性?」
 先ほどネフィが口にした疑問についてまよいが検証結果を皆に話す。どうやら少なくとも焔の側近三名に関しては、防御属性は無属性であることが有力のようだ。
「指揮官クラスの歪虚一体の能力は、ハンター一人の能力より高いことが多いだろうから、いかに敵の能力を弱めて、味方の能力を高めていくかが重要になりそう。指揮官は抵抗も高そうだけど」
 そのためには方法を模索する必要がある……。バッドステータスが手っ取り早いのだが、やはり敵の抵抗が高いのが問題となる。
「部下三人は遥が他二人を護る陣形をとるみたいだけど、狭い範囲に固まるようなら範囲攻撃すれば、纏めて攻撃されることを嫌って散開するかも」
「敵が散開したところに何人かずつハンターが張り付いて分断とか」と、まよいは続ける。
 それに関してはどうだろうか……。今回まよいが陣形を組んだ側近三名に対し範囲魔法で攻撃した際、敵は全く陣形を崩さなかった。
「焔の【灼導】兵器には飛行能力もあるみたいだけど、飛行中ってハンターなら回避し難くなるよね。歪虚もそうかわからないけど、焔の飛行を誘発した後に追撃を加える、とか作戦の一つとしてはあるかな?」
【灼導】兵器の跳躍装置に関しては一度しかデータを得られていないため、まだ未知数なところが多い。まよいの言う作戦は実際に試してみる必要がある。

 レイア――。
「さて、打ち合わせだな……。まずは次、牙城に会った時にはまた軽く挑発をかけてみたい」
 両手を組み、両肘をテーブルの上に置き、彼女は言う。
「前回も気になった事がある。私の不意打ちは見事失敗に終わったわけだが、それに対して牙城が怒っていたようなのがな」
 事前に提示した条件を破ったため、焔は怒ったと思われる。命のやり取りをする敵との戦い、作戦なのだから不意打ちしてもどうこう言われる筋合いは無いのだが。
 強敵相手にフェアであるとか、そうでないとか、そんなことを言っている余裕は無い。
「あれでなかなかプライドが高いのだとしたらそれを利用できることもあるかもしれない。そうだとしたらボルディア達の言う部下三体との分断にも使えそうだ」
 焔のプライドを刺激し、利用する……『武将』タイプの焔にそれが通用するかどうかは判らない……。
「だが――今回は挑発してみたら撤退して行った…………。奴の心中はよく解らん……」

 錬介――。
「この世に完全無欠の強さは存在しません。必ずどこかに隙は存在します。……それを埋める為に『連携』が生まれたのですから」
 はっきりと、彼は言う。
「つまりそれは、しっかり連携されている今の状態だと攻略は困難を極めるという事です」
 全く持ってその通りだ。……が、もっとよく敵を観察し、動きを見極めれば隙はあるかもしれない。彼自身が言っているように『完全無欠』の存在など無いのだから。
「もちろん何事にも例外はいますが、そういう存在が居合わせて正面突破してくれる幸運を待つよりはどんな戦力でも何とかなるような手を考えた方が健康的です」
 依頼に参加するハンターの面子は毎回同じとは限らない……と言うか、毎回違うと言ったほうが良いだろう。
「連携を崩さなければいけません。焔と三人娘を引き離し、そして三人娘も連携を崩して各個撃破が望ましい。とはいえ向こうも当然それは警戒しているでしょうからこれはこれで困難なのですが」
 やはり焔の側近三名に関しては分断して各個撃破、という案が出るらしい。
「拠点に奇襲を掛ける、ファントムハンドや攻性防壁といった相手を引き寄せたり弾き飛ばしたりする技で陣形を強制的に崩す……さて、どうしたものでしょうか」
 うむむと錬介は首をひねり、あごに手を当てる。
「狙うとしたら誰から狙うか、も考えた方が良いのでしょうね……」

 巳蔓――。彼女は敵の側近三人の連携を崩す方策がないかを議題として提案。やはりそれが出る。
「球磨さんか菊池さんを先に倒すことが出来れば持久戦になることは避けられますし、防御担当がいるということは他の敵は防御が堅くないのでは、と予想しています」
 だが今回の戦闘結果を見れば、球磨・遥だけでなく、菊池・緑の防御も中々に厚いことが巳蔓にも感じられたはずである。
 緑をどうにかするにはまずあの防御結晶を全て破壊しなければならないだろう。
「敵の連携に弱点がないか考えたいです。戦闘の様子から牙城さんたちが闘争以外に興味を示さないのかについても確認しておきたいです」
 今のところ焔達の目的はハンター……特に練度の高い者達との闘争を求めているように見える。
「戦い自体が陽動になり得るなら、こちらから攻撃を仕掛ける場合に有効な作戦が増えそうですから」
 そのように締め括る巳蔓であった。

 こうして対策会議は終了。今回の内容が次の……牙城・焔一派との戦いに活かされれば良いのだが。
 ハンター達はそのように考えつつ、戦の後で腹が減ったため、皆で食事を摂ることにしたのだった。

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参加者一覧

  • 爆炎を超えし者
    ネフィリア・レインフォード(ka0444
    エルフ|14才|女性|霊闘士
  • ボルディアせんせー
    ボルディア・コンフラムス(ka0796
    人間(紅)|23才|女性|霊闘士
  • 夢路に誘う青き魔女
    夢路 まよい(ka1328
    人間(蒼)|15才|女性|魔術師
  • 乙女の護り
    レイア・アローネ(ka4082
    人間(紅)|24才|女性|闘狩人
  • 流浪の聖人
    鳳城 錬介(ka6053
    鬼|19才|男性|聖導士
  • 秘剣──瞬──
    多由羅(ka6167
    鬼|21才|女性|舞刀士
  • 淡緑の瞳
    巳蔓(ka7122
    人間(蒼)|15才|女性|猟撃士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 作戦会議
レイア・アローネ(ka4082
人間(クリムゾンウェスト)|24才|女性|闘狩人(エンフォーサー)
最終発言
2018/06/22 19:02:05
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2018/06/22 15:47:30