• 空蒼

【空蒼】天空より大海を穿つ光

マスター:真太郎

シナリオ形態
イベント
難易度
やや難しい
オプション
参加費
500
参加制限
-
参加人数
1~50人
サポート
0~0人
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2018/06/25 15:00
完成日
2018/07/03 06:43

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オープニング

 火星クラスタを破壊した事により地球へのVOIDの危機は去った。
 と思われているが、実情は少し違う。
 火星クラスタは地球に接近した時点で多くのVOIDや小型のクラスタを放っており、小型クラスタの一つは太平洋に落着していた。
 
 地球統一連合宙軍はすぐにその海域周辺を索敵を開始したが、広大な海の探索は難航した。
 やがて探索中の潜水艦が雑魔化した大型海洋生物に襲われ、破壊された。
 その位置を中心に更に探索範囲を絞り込み、遂に海底火山に取り付いたクラスタを発見する。
 連合宙軍は海底火山のクラスタ破壊のため、潜水艦隊を送り込んだ。
 潜水艦隊は雑魔化した大型海洋生物や狂気型VOIDの攻撃を受けながらも何十発もの魚雷を海底火山に撃ち込む。
 しかし海底火山から発せられる負のマテリアルの波動は収まらなかった。
 魚雷を撃ち尽くした潜水艦隊は仕方なく撤退した。

 後日、海上から巡航ミサイルでの一斉攻撃を行われた。
 しかしミサイルを放った直後、海底火山が噴火した。
 海水を蒸発させながら吹き出したマグマと共に無数とも思えるほどの大量の噴石が空に飛び散る。
 それらが飛来してきたミサイルと衝突。
 多くのミサイルが海底火山に着弾する前に爆散した。
 こうして巡航ミサイルによる攻撃も失敗した。

 連合宙軍が次の手を考えている間も海底火山の噴火を繰り返し、吹き出たマグマで体積を増やした海底火山は今や火口が海面に出る程にまで成長していた。
 そして海面の火口周辺では狂気型のVOIDが幾つも飛来している様子が確認できた。
 クラスタの作り出すVOIDは日々数を増やしてゆくだろうと予測でき、時間的猶予もなくなった。
 一刻も早くクラスタを破壊するため連合宙軍が下したのは、最大戦力の投入。
 つまり、サルヴァトーレ・ブルの使用である。

 サルヴァトーレ・ブルの艦長『南雲 雪子』は出撃の命令と共に作戦の立案まで任された。
「謹んで拝命いたします」
 ブルの艦橋で命令を受けた雪子は主要なクルーを招集して作戦会議を始めた。
 会議室で作戦資料に目を通した雪子は、惨憺たる戦闘結果と戦況に少し眉根を寄せたものの、困惑している様子はない。
「……どう思う?」
 やがてクルーの皆が目を通し終わったのを見計らって尋ねた。
「……難敵ですね」
「まるで天然の要塞ですな」
「ですが、ブルの主砲なら岩盤ごとクラスタの核を撃ち抜く事も可能です。楽勝ですよ」
「クラスタの核の正確な位置は分かっていないのよ。核に当たる前にブルがエネルギー切れになるかもしれないわ」
「クラスタはマグマを操っていますから、恐らく火口付近にあるのではないでしょうか?」
「そうね。私もそう思うわ」
「ですから火口付近に狙って撃てば……あ」
「そう。火口と言っても縦に数キロも続いているわ。その何処にあるかまでは分からない」
「ですよね……」
「そうなると……まずは火口に探査機を送り込んで核の位置を特定する事から始めないといけませんね」
「だがそれには周辺の敵を一掃する必要があるぞ」
「敵はクラスタから続々と出てきますよ。一掃なんてできるんですか?」
「しかしそれしか方法はないだろう?」
 雪子はクルー達の意見を耳を傾けながら熟考した。
「……一つだけ。敵を一掃せずとも核を破壊する方法があるわ」
 やがてまとまった考えを口に出す。
「あるんですか?」
「火口の直上から真下に撃つの」
「え?」
「真上から?」
「ブルなら慣性制御装置で艦首を火口に向けた倒立状態になっても艦を安定させて主砲を撃つ事ができる。真上から撃てば核が火口のどの高さにあっても当たるわ」
「なるほど……」
「ただし幾つか問題もあるの。主砲で火口の全てを捉えられる訳ではないから外れる可能性もある。初弾が外れた場合、倒立状態のブルは機敏な回避機動を行えない」
「敵からは格好の的ですね」
「だからすぐに艦を水平に戻して離脱しなければいけない。でも全長3kmのブルは慣性制御装置を使っても機敏な転舵はできない。倒立から水平に戻すとなれば尚更ね。敵に包囲される事は避けられないでしょうね」
「包囲されないようCAMで敵の接近を阻んではどうでしょう」
「ブルのパイロットの練度は非常に高いけれど、フライトユニットを使っての飛行戦闘訓練はまだ不十分。そうよね?」
 雪子がCAM部隊の隊長に尋ねる。
「訓練不足で申し訳ありません。ですが我らは如何なる戦況であろうとも身命を賭して戦う覚悟であります」
「ありがとう。でも私は優秀なパイロットを無謀な作戦で死なせる無能な指揮官にはなりたくないの。今回はハンターズソサエティにも協力を仰ぎましょう」
「分かりました。手配します」
「では作戦を纏めます。ブルで火口の直上より降下して主砲を発射。初弾で倒せなかった場合は艦を水平に戻すまでの間フライトユニット装備のCAMで防衛。一旦その場を離脱して主砲を再チャージ。チャージ完了後に再び火口直上より主砲で攻撃。クラスタ破壊までこれを繰り返します」
 こうして作戦が決まり、準備が始められた。

 作戦当日、サルヴァトーレ・ブルは太平洋を高高度で航行していた。
 やがて眼下に噴煙を上げる火山が見えてくる。
「第一種戦準備」
「第一種戦準備!」
 艦橋の雪子が静かに告げて副長が復唱。艦内に戦闘準備の喧騒が響き始める。
「主砲にエネルギー充填開始」
 ブルのエンジンが全開稼働して唸りを上げた。
「主砲の充填完了!」
 機関手が告げる。
「艦首下げ」
 操舵手が舵輪を前に倒すと、艦が徐々に前に傾いてゆく。
 やがて艦は完全に倒立したが、艦内の重力は慣性制御装置で床方向に保ったままだ。
 メインスクリーンは噴煙を上げる火口を正面に捉えている。
「作戦開始。降下!」
 艦が降下を始め、火口との距離がぐんぐん縮まってゆく。
「主砲展開、最終セイフティ解除」
 主砲を覆っている装甲が開き、砲身が剥き出しとなる。
「砲撃長。照準を任せる」
「アイマム」
 雪子に命じられた砲撃長が照準器を火口に合わせた。
「照準よし!」
「撃て!」
 雪子が手を振り翳し、砲撃長がトリガーを引く。
 光が、まるで天と海とを繋ぐかのように撃ち放たれた。
 高密度のマテリアルは光の柱となって火口に突き刺さり、岩盤を破砕して大量の岩石を飛び散らせながら火口に更なる大穴を穿った。
「火口内部の反応は?」
 雪子がレーダー手に尋ねる。
 核に命中していたなら、同化していた岩盤が大きく消失するはずだった。
「……火口内変化ありません!」
 つまり核には当たらなかったのだ。
「直ちに艦を水平に戻して。CAM緊急発進! 主砲は再チャージ開始」
 雪子が矢継ぎ早に指示を飛ばす。
「チャージ完了時間は?」
「早くても……10分です」
 雪子は機関手の報告を聞きながらレーダーに目を向ける。
 そこには火口から出してくるVOIDの反応が幾つも灯っていた。
「長い10分になるかもしれないわね……」

リプレイ本文

 広い太平洋の一点に噴煙を上げる火山があった。
 クラスタに寄生され、歪虚の巣食う忌まわしき火山だ。
 その火山の上空1000m位の位置には主砲を真下に向けて倒立しているサルヴァトーレ・ブルがある。
 ブルは主砲より歪虚を滅する光を放ったが狙いは反れ、クラスタは未だに健在だ。
 ブルの艦長、南雲 雪子の指示でブルの艦載CAMが発艦した。
 それに合わせてハンター達も次々と艦の外の大空へと出撃してゆく。

「飛行ユニット以外は退避なきゃいけないですからぁ、1番手薄になっちゃいますもんねぇ。バーンちゃん、一緒に頑張りましょぉ」
 星野 ハナ(ka5852)はワイバーンのバーンに乗って意気揚々と出撃する。
「ノドゥスさんと一緒に戦場へ参加するのは、初めてとなりますが、がんばりましょう。そして無事に生還して、またのんびりしましょうね」
 ミオレスカ(ka3496)はワイバーンのノドゥスの首筋を撫でると、少し緊張気味な様子で大空に飛び出した。
「コントロール。こちらマリナ アルフェウス。ワイバーン、ティロ。発艦する」
 マリナ アルフェウス(ka6934)はそうするのが当然といった様子で発艦の手順を踏むと、ワイバーンで飛び立って行った。
 続いてイリエスカ(ka6885)の搭乗するコンフェッサーがハッチに向かう。
「マリナって変に慣れてるよね。ボクは空中戦は初めてだから、置いてかれないように頑張らないと」
 ハッチの前まで来ると[SW]ウイングフレーム「ゲファレナー・エンゲル」の『フライトシステム』を発動。
 ウイングフレームの推推進器から機体の後方に推進炎が噴射される。
「発進準備おーけー! 《Rampage Claw》、いきまーす!」
 マリナと違って気軽な掛け声で出撃したイリエスカのコンフェッサーがハッチから出た途端、ブルの慣性制御圏内から出たため重力の向きが90度変わる。
「わわっ!」
 いきなり真横に落下しそうになった機体を慌てて水平に戻す。
 ブルの外ではワイバーン、グリフォン、ポロウ、魔導ヘリコプター、等の様々なユニットが飛翔していた。
 その数は30機を超え、これだけの数の飛行系ユニットが同時に飛行する機会など滅多にない。
「これだけ数が揃うと壮観だなあ……」
 ワイバーンの背から大空を悠々と飛翔する一群の光景に鞍馬 真(ka5819)は感慨めいたものを覚えた。
「いやはや、成程。そうそう見れるものではありませんな」
 ワイバーンに乗るマッシュ・アクラシス(ka0771)も圧巻な光景に感服する。
「まさかサルヴァトーレ級が逆立ちするのに立ち会うなんて思わなかったな」
 ポロウに騎乗してきたレイオス・アクアウォーカー(ka1990)が未だ倒立状態のブルの姿を見て苦笑を浮かべる。
「は~……いやなんつーか、顔に似合わず結構無茶苦茶な作戦考えンなぁ……」
 ボルディア・コンフラムス(ka0796)は中佐の階級にしては若い雪子の顔を思い出しつつ、呆れながらも感心した。
 だが雪子は階級に相応しい頭のキレとしたたかさを持つため、あの若さでサルヴァトーレ・ブルの艦長になれているのである。
「逆に真上にも撃てそうだなぁ」
 魔導ヘリコプター「ポルックス」に乗って出撃した八島 陽(ka1442)はそんな風に思った。
 実際、主砲は真上に向けて撃つ事も可能だ。
「速めに核を破壊できるといいんですけどねぇ……」
 夜桜 奏音(ka5754)は縦になった主砲を眺めながら、ふとクラスタの核の位置を占ってみようと思った。
 札を1枚抜いてマテリアルを込め、『占術』を発動させて意識を集中する。
「……ここ、かなぁ?」
 なんとなく核のありそうな場所は占う事はできた。
 もちろん占いなので何の確証もないが。
「あまり効果は期待できませんがないよりはましですし、とりあえず伝えるだけ伝えておきましょう」
 夜桜は一応トランシーバーで占いの結果をブルのブリッジに伝えた。

 Uisca Amhran(ka0754)はクラスタの核を探すためにワイバーンの背から軍用双眼鏡で火口を覗き込んだ。
 ブルの主砲の攻撃によって火口には縦に大穴がポッカリと開いている。
 砲撃跡の壁面は高熱でガラス状に固まり、底の方は新たに湧き出してきた溶岩で徐々に埋まりつつあった。
 クラスタに限らず歪虚の核は個体によって大きさや形が違う。
 そのため負のマテリアルを感知できない遠方からの視認での捜索は難しい。
 それらしい怪しい物も見つからず、敵が密集して何かを守ろうとする動きも見当たらなかった。
「確実にクラスタを破壊してこれ以上の被害を出させないために核を見つけておきたかったのですが……仕方ありません。今はブルの防衛に専念しましょう」
「麗美はイスカの死角を消せるように戦うから、イスカは正面に迎撃に集中していいよぉ」
 ワイバーンに乗ってUiscaの隣りを飛んでいる天川 麗美(ka1355)が言う。
「ありがとう麗美さん。背中はお任せします」

「これがリアルブルーの空と海……」
 クリムゾンウェスト出身のGacrux(ka2726)はワイバーンの背から空と海を眺め、その青さに目細めた。
 リアルブルーの空気に身を晒すと、心地よい風が全身に感じられる。
 ただし。
「アレは余計ですねぇ……」
 眼下にいる異形の歪虚達がこの心地よい空間を汚していた。

「海底火山とは……また厄介な場所に落ちたものだ」
 クラン・クィールス(ka6605)はワイバーンの鞍から下方の海を覗き込み、渋い顔をする。
「クリムゾンウェストであっても、リアルブルーであっても変わりはない。
 歪虚の脅威に晒される人が減るように。
 命が『明日』を迎えられるように。
 そのために力を振るう。
 そのためにここにいる」
 クランと並んでワイバーンで飛んでいるアーク・フォーサイス(ka6568)が詩を紡ぐかのように言う。
「そうだな。それでは一つ、ブルの艦長の手伝いといこう」
 クランとアークは火口から上昇してくる歪虚に向けてワイバーンを降下させた。

 ブルにまず攻めてきたのは飛翔速度の速い強襲型だった。
「敵の第一波来ます。その後ろから蟹型も接近中。艦の体勢復帰までおよそ2分」
 エラ・“dJehuty”・ベル(ka3142)が『連結通話』で結んでおいたブルとの通信回線で得た情報をトランシーバーで仲間達に伝える。
「分かった。みんな! ブルを守るため全力で抑えろ!」
 ヴァイス(ka0364)は狂気に飲まれないためと仲間の士気を保つために大きく声を挙げた。
「ホムラ、艦を守る為にお前の力を貸してくれ」
 自分の駆るグリフォンの背を撫でると敵群に向かって飛翔させた。

「海底火山なんてロマンチックじゃない。これが歪虚じゃなければ良いバカンスなのに。残念だわ?」
 ケイ(ka4032)も眼下の歪虚を不快そうに見ると、ポロウを単騎で飛ばした。
「猛禽類なら良い視力してるんでしょう? 格好いいとこ見せなさいな」
 そして『隠れるホー』でポロウを隠蔽させると、火口へ向かわせる。
 降下してゆくポロウと急上昇してくる強襲型の群れとの距離がどんどん縮まってゆく。
 もしポロウの『隠れるホー』が見破られていたら、強襲型の鋭利な衝角で貫かれるだろう。
 しかし強襲型はポロウに気づく事なく脇を通過した。
「ふぅ……ここまでは上手くいったわね」
 ポロウは『伝えるホー』の効果範囲ギリギリまで降りると火口の上を旋回する。
 そして事前にケイに命じられた通り、火口中にクラスタの核と思われる歪虚以外の動かない物の影を探し始めた。


 敵味方の距離が縮まる中、先制したのは長い射程を持つ砲撃機ダイスレイブにキャリコ・ビューイ(ka5044)だった。
 本来、[SW]ウイングフレーム「ゲファレナー・エンゲル」の『フライトシステム』での飛行は機体の機動性を不安定にさせる。
 だが『フーファイター』での操縦で従来の機動性を確保し、迫る強襲型をブレる事なく照準器で捉えた。
「徹甲榴弾装填、ファイヤ!」
 ドンという重い砲撃音と共に発射された『砲撃:徹甲榴弾』が強襲型の外殻を貫通し、体内で爆散。
 強襲型の体が弾けて体液を空にぶち撒けられる。
「次弾、徹甲榴弾装填、ファイヤ!」
 間髪置かず逆の滑腔砲から『砲撃:徹甲榴弾』を発射。
 キャリコは腰部左右の滑腔砲から絶え間なく『砲撃:徹甲榴弾』発射し、強襲型が有効射程範囲外に接近するまで砲撃して狩り続けた。

「弾幕張らせてもらう!」
 ヴァイスは強襲型を射程に捉えると[SA]フォースリングの効果によって5体同時攻撃の『マジックアロー』が空を裂いて飛び、強襲型に突き刺さる。
 巨体に複数本マジックアローを喰らった強襲型2体がたちまち霧散する。
「上から下に向かって主砲を撃ち込んじゃおうだなんて大胆な作戦……嫌いじゃないよ!」
 移動は全てグリフォンに任せた夢路 まよい(ka1328)も[SA]フォースリングを介しての5体同時攻撃『マジックアロー』を放って2体屠る。
「初陣からいきなり厳しい戦場だけど、頼むよポロウ」
 最近お迎えしたばかりのポロウに乗ってきた鳳城 錬介(ka6053)も[SA]フォースリングを介しての5体同時攻撃『マジックアロー』を発射。
 そうしてマジックアローが乱れ飛ぶ様は正しく弾幕であった。
「あ、敵が集まってるね。じゃあ動けなくしてまとめて墜落させちゃおうかな」
 まよいは『集中』で体内のマテリアルを高めると『ブラックホールカノン』を発動。
「全てを無に帰せ……ブラックホールカノン!」  
 強襲型の群れの中で空間が歪んだように見えた直後、紫色の光を伴う重力波を発生。
 その重力波の中心に向かって重力が収束してゆき、周囲の強襲型を引き寄せる。
 重力に引きづられた強襲型は圧力によって徐々に潰されてゆき、最後には圧壊した。
 重力波から離れた位置にいて影響の少なかった強襲型もその場に縛り付けられて動けなくなってしまう。
 しかし強襲型は動けなくなってもまよいの思惑通りに墜落したりはしなかった。
「あれ? なんで?」
 狂気の歪虚は自らの力で浮き続ける事もできるからである。
 だが動けなくなった強襲型は格好の的で、ヴァイスと鳳城は遠慮なく『マジックアロー』を撃ち込んで撃破した。

 鞍馬は敵を引きつけようと『ソウルトーチ』を発動。
 炎のようなオーラを纏った身を晒すとワイバーンをブルから離れるように飛翔させた。
「ほら、こっちだ。ついて来い」
 しかし強襲型は鞍馬の方には来ず、まっすぐブルへ向かってゆく。
 全長3kmのブルが大きくて目立ちすぎるためか、それとも強襲型はブルだけを狙うように指示されているのか、理由は定かでないが『ソウルトーチ』は効果を成さなかった。
「待てカートゥル。∪ターンだ」
 鞍馬はワイバーンに旋回させて引き返すと、強襲型群へ向かいながら符を抜く。
 そして強襲型が射程に入ると符を3枚投擲して『風雷陣』を発動。
 符から転じた3条の稲妻が強襲型を打ち貫く。
 体に3つの穴を穿たれた強襲型は高度を下げて落ちていった。
 その間に別の強襲型が間近に迫る。
 鞍馬は[EX]魔導剣「カオスウィース」を抜き、衝突する前に『刺突一閃』を発動。
 魔導剣が伸びた刺突が強襲型の体の中心を穿って突き抜ける。
 体に大穴の空いた強襲型は高度を落として鞍馬のワイバーンの真下を通過。そのまま海へと落下していった。

 ボルディアも『ソウルトーチ』で強襲型を引きつけようとしたのだが、やはりまっすぐブルへ向かって行く。
「おいおい! なんでこっちに来ねェんだよ!?」
 ボルディアも慌てて引き返すと、迫ってくる強襲型の矢面に立った。
「予定が狂っちまったが仕方ねェ」
 先頭の強襲型を見据えて『野生の瞳』を発動し、ワイバーンに命じる。
「突っ込めシャル!」
 ボルディアを乗せたワイバーンが全速で強襲型に向かって飛ぶ。
 強襲型と激突しそうになるが『バレルロール』で避けて群れの中に入り込む。
 その瞬間、『烽火連天』を発動。
 自身の炎のマテリアルを両手に握った[EX]「モレク」に纏わせ、自分の身をワイバーンの上で大回転させる。
 それはまるでミキサーのようであった。
 ボルディアが回転する度に魔斧が強襲型の体を刻み、潰し、引き千切る。
 やがて回転が止まると、強襲型はボロボロの原型を留めていない肉片と化していた。
 もちろんそれで生きているわけがなく、そのまま塵となって消滅する。
 だが攻撃が終わった直後、ボルディアに向かって後続の強襲型が突進してきた。
「避けろシャル!」
 ボルディアは命じたが、ワイバーンは躊躇した。
 なぜならボルディアは回転攻撃を行った直後である。
 つまり、今はワイバーンの鞍の上に立っている状態だ。
 そんな時にワイバーンが急激な回避を行えば、ボルディアが鞍から落下するのは間違いなかった。
 その躊躇が隙となり、ワイバーンとボルディアは強襲型の突進の直撃を受けた。
 ボルディアは咄嗟に魔斧で防いだので無傷だ。
 だが衝撃で鞍の上からはふっとばされ、空に投げ出される。
 ワイバーンはダメージを受け、こちらもふっとばされていた。
 更に別の強襲型が続けてワイバーンに迫る。
「シャルー!」
 だがワイバーンは『バレルロール』で回避すると『サイドワインダー』を使って強襲型の群れの中から抜け出す。
 そしてそのまま落下中だったボルディアの元へ駆けつけて鞍でキャッチする。
「サンキューシャル」
 ボルディアはワイバーンの背をポンポンと撫でた。
 だがそこには痛々しい傷があった。
「悪ぃシャル。俺が無理させたせいで……。ちょっと間我慢しろ。いったん後退して治してもらうからな」
 ボルディアはワイバーンの傷を治すためにブルに向かって飛んだ。
  
 Uiscaは強襲型と接敵する寸前から『マーキス・ソング』を歌い始めた。
 Uiscaの綺麗な歌声は周囲のハンター達にとっては心地の良いものだった。
 しかし歪虚にとっても負のマテリアルを威圧して力を弱める呪いの旋律であった。
 Uiscaは『マーキス・ソング』を歌い続けながら強襲型が射程に入った瞬間『【龍獄】黒龍擁く煉獄の檻』を発動。
 強襲型のいる空間に突如として生み出された無数の闇色の龍牙や龍爪が強襲型を刺し貫いた。
 本来、闇属性の攻撃は狂気の歪虚には効きづらいのだが、Uiscaの高い魔法攻撃力と『マーキス・ソング』との相乗効果もあってか、一撃で強襲型を滅したのだった。

「やれやれ厄介だな」
 アルト・ヴァレンティーニ(ka3109)は向かい来る歪虚の大群に渋い顔をしながら『飛花・焔』を発動。
「まあ、出来る事をするだけだが」
 歪虚群に向かって飛翔させたグリフォンが強襲型に迫る中、鞍の上に立つ。
 グリフォンが強襲型にぶつかる寸前に急降下するのに合わせて『空渡』と『踏鳴』で空を足で駆けて強襲型に肉薄。
 『散華』で[EX]剛刀「大輪一文字」を横薙ぎにする。
 剛刀の刃が強襲型の外殻を斬り裂いて頭頂部に喰い込む。
 アルトは刃を喰い込ませたまま空を駆け、強襲型の頭頂から尾まで一気に斬り裂いた。
 体を裂かれた強襲型は体液を吹き出して落下しながら霧散していった。
 アルトは強襲型を切り裂きながら空を駆け抜けた直後、『空渡』の効果が切れて体が落下を始める。
 しかしそこにグリフォンが飛来し、アルトを背中に着地させた。
「いいタイミングだ。その調子で次も頼む」
 アルトはグリフォンに次の標的へ向かわせると再び空を駆けて強襲型を斬り裂いた。

 Gacrux(ka2726)は敵が接近してくるまではワイバーンに幻獣砲「狼炎」に攻撃させていたが、強襲型が近くまで来ると錬金杖「ヴァイザースタッフ」を持って『ソウルエッジ』を発動し、すぐ武器をミラージュグレイブに持ち替えた。
 強襲型が突進してくるのに合わせてGacruxもワイバーンで突進し、『刺突一閃』でグレイブを突き出す。
 『ソウルエッジ』で魔力を帯びたグレイブの刃は強襲型の外殻を安々と突き破って貫通。
 体の中心に風穴を開けた強襲型は塵となり、Gacruxのワイバーンがすれ違いざまに吹き散らしてゆく。
 強襲型を倒し終えたGacruxはすぐに武器を防御用のパリィグローブ「ディスターブ」に持ち替える。
 本来なら動きが止まって次への行動に移りにくくなる戦術だが、移動をワイバーンに任せられる今なら有効な戦術である。
 そして次の獲物を物色しつつも、劣勢な味方がいないか気を配る。
「無茶して俺の手をわずらわせる人なんてまさかいないですよね」
 口ではそう言いつつも味方の様子が気になって仕方のない、ツンデレなGacruxだった。

「サクラ! あいつから叩き落とすですよ! 厄介なものを撒き散らされる前に、早々に始末しやがりますっ!」
「主砲の発射態勢が整うまで、近づかせないようにしないとですね……」
 シレークス(ka0752)はサクラ・エルフリード(ka2598)と共にブル目掛けて上昇してくる強襲型を標的に定めた。
 シレークスは強襲型が射程内に入ると彩弓「アルカンシェル」を引き絞ったが、飛んでいるポロウの背ではフラフラと狙いが定めにくく、放った矢は敵を反れて外れた。
 サクラも揺れるワイバーンに苦労しながらも狙いを定め『シャドウブリット』を放つ。
 こちらは当たったが闇属性の攻撃であったためか、強襲型は大してダメージを受けていないようだ。
「それなら」
 強襲型との距離が更に縮まったところでワイバーンの『ファイアブレス』で攻撃。
 炎が外殻を焼き剥がしてダメージを負わせたが、強襲型は速度を落とす事なく突進してくる。
 ワイバーンは『サイドワインダー』で身を旋回させて避けると同時に[SA]魔竜牙「エルプシオン」で強襲型に喰らいついて引き裂いた。
 サクラも強襲型とのすれ違い様に『セイクリッドフラッシュ』を放つ。
 ワイバーンに負われた傷を更に聖なる光で焼かれた強襲型は大きく身悶えた。
 更にシレークスが身悶える強襲型の真上からポロウで急降下。
「死にやがりませですっ!」
 機甲拳鎚「無窮なるミザル」を強襲型に叩き込む。
 機甲拳鎚は外殻を粉砕して強襲型の身をへし折り、完全に息の根を止めた。

 強襲型の群れ数を減らしながらも速度を落とさず進み続け、迎撃に出てきたハンター達の脇を抜けた。
「バーンちゃん、突出しすぎて囲まれたくないのでぇ、射程ギリギリを狙ってすれ違いざまの攻撃をお願いしますぅ」
 ハナは抜けてきた強襲型に向かってワイバーンを飛ばすと『レイン・オブ・ライト』を発動させてたら、すぐ∪ターンもさせた。
 ワイバーンがチャージしたマテリアルの光は4体の強襲型を撃ったが、強襲型はダメージを受けても全く速度を落とさない。
「うぅ~ん……やっぱり私も攻撃した方がいいですかねぇ?」
 ハナは符を抜くとダメージを負った強襲型に『風雷陣』で稲妻を落とす。
 すると3体の強襲型が焼け焦げて海へと落ちていった。
「次はバーンちゃんですよぉ」
 続いてワイバーンが『ファイアブレス』を放つ。
 そして焼け焦げた強襲型に今度はハナが『五色光符陣』の光でまとめて焼き滅ぼす。
 そうしてハナはワイバーンと交互に攻撃しながら強襲型を減らしていった。

「お前の初仕事だ。行くぞテュア!」
 レイオスはEX]闘旋剣「デイブレイカー」を構えるとポロウに強襲型との間合いを詰めてもらう。
 その間に『ソウルエッジ』を発動させ、闘旋剣を水平に構えて腕を引く。
「火口が近くて暑いだろ? こいつで熱ごとフッ飛ばしてやるよっ!」
 レイオスは『衝撃波』を発動させて突いた。
 剣先は強襲型に届いていない。
 だが剣先から生じた衝撃波が走り、強襲型を斬り刻んで進む。
 その斬撃は強襲型の頭頂から尾にまで及んで貫通し、敵を絶命させた。
「おっと、フッ飛ぶ前に身体が消えちまったか」
 レイオスはポロウで別の強襲型を追いすがり、再び『ソウルエッジ』を発動させて『衝撃波』を放つ。
 そしてレイオスが『衝撃波』を放つ度に強襲型は撃墜されていった。

「ブルには取り付かせない!」
 八島はブルに迫る強襲型を発見すると『人機一体』を発動させた。
 多量のマテリアルがヘリへと流れ込み、八島は生命を吸われたような猛烈な倦怠感に襲われる。
「くっ、これキツイな……」
 だがヘリは幻影のオーラを纏って加速し、一気に強襲型から距離を取った。
 そう、八島は距離を取ったのである。
 だが決してブルを見捨てて逃げた訳ではない。
 [SW]対歪虚用試作弾頭「クリスマスツリー」を撃つには十分に距離を取る必要があるのだ。
 全ては強襲型の侵攻を阻むため。
 ヘッドマウントディスプレイの照準器が有効射程外の【赤】から有効射程内の【白】に変わる。
 そして『H.F.F.』という見慣れないスキルマーカーが点灯する。
 強襲型は今やブルの間近だ。
「発射ぁ!」  
 照準を合わせてトリガーを引き、全長300cmの大型ミサイルが放たれた。
 だが実際にはクリスマスツリーが飛んでいるとしか思えないおかしな光景だ。
 ツリーの先が強襲型の横腹にぶつかる。
 直後、轟音と共に色とりどりの花火が咲き誇った。
 歪虚との激しい戦闘の最中とは思えない華やかな光景であった。
 見る者は唖然とした。
 ふざけているのかとも思った。
 じっくり見ても、やっぱりふざけているとしか思えない。
 だが八島は(たぶん)大真面目だ。
 その証拠に強襲型の脇腹は大きくえぐれており、そのまま消滅してゆく。
 一撃粉砕であった。
「うわっ! 軌道をずらすだけのつもりが撃破までできた……」
 撃った本人も驚いていた。
 やっぱりふざけて撃ったのかもしれない。

 シガレット=ウナギパイ(ka2884)はブルまですぐに駆けつけられる位置から重機関銃「ラワーユリッヒNG5」を撃ち放った。
 しかしワイバーンの騎乗しながらの空中戦では狙いがつけ辛くなるため、敵が遠いとほとんど当たらない。
 やがて弾幕を抜けた強襲型が迫ってくる。
「これ以上は行かせねェ!」
 シガレットは2体並んで進む強襲型の間で『プルガトリオ』を発動。
 空間を切り裂くように現れた闇の刃が針山のように伸び、2体の強襲型を刺し貫いた。
 闇属性の魔法であるためダメージは抑えられたが、2体の強襲型をその場に縫い止められる。
「やれグラウ!」
 ワイバーンの口腔から『ファイアブレス』が放たれ、身動きのできない強襲型を呑み込んで炸裂する。
 その間もシガレットは『プルガトリオ』で迫ってくる強襲型を空間に縫い止めてゆく。
 だが動けなくなった強襲型はその場で小型歪虚の浮遊型を排出すると同時に全身にある目のような器官からレーザーを放ち始めた。
 シガレットは咄嗟にワイバーンの手綱を引いてレーザーを回避しつつ、『ファイヤブレス』を浮遊型の群れに撃ち込んだ。
 多くの浮遊型が焼け落ちたが、強襲型からは次々に排出されてくる。
 他にも『プルガトリオ』を使える者達が強襲型を縫い止めていたが、そこからも続々と浮遊型が排出されていた。
「チッ! 数が多すぎだぜ」

「まだ艦が水平じゃないのにいっぱい来たぁー!」
 甲板に続くハッチで待機していたアシェ-ル(ka2983)にも強襲型から出てきた浮遊型が大量に向かってくるのが見えていた。
 アシェ-ルには[SA]グラヴィティブーツ「カルフ」や自身の『壁歩き』のスキルを使えば水平ではない甲板にも張り付いて戦える自信はあった。
 しかし、かつてサルヴァトーレ・ロッソでも同じように張り付いて逆さになって戦った時にスカートが捲れ上がった恥ずかしい思い出があるため、躊躇していた。
「今度は逆さまにならないからスカートは大丈夫な、はず!」
 意を決し、『壁歩き』を発動してまだ斜めの甲板に足を踏み出す。
 高高度のため風は強いがスカートが捲れ上がる程ではない。
「うん、大丈夫。それじゃ行ってくるね。いざという時は回復をお願い」
 アシェ-ルは足が甲板に吸着した事を確かめると、ユグディラのカジディラはその場に残して、歪虚を攻撃できる位置まで走った。
「空を飛ぶとペナルティーも多いですから、私にはこれが丁度いいです」
 ぞろぞろと向かってくる浮遊型の群れを見据え、『炎弾』の魔法詠唱を始める。
「……万物を爆ぜる炎よ! 我が敵を滅せよ!」
 詠唱と共に掌に生じた火球を撃ち放つ。
 浮遊型の先頭集団に投じられた火球が弾け、衝撃と炎が浮遊型をまとめて焼き滅ぼしてゆく
 だが、事件はその直後に起こった。
 『壁歩き』は移動以外の攻撃やスキル使用などの大きな行動を起こした時には解除される。
 当然『炎弾』を撃てば解除され、吸着力を失ったアシェ-ルは斜めの甲板を滑り落ちた。
 その際、スカートが大きく捲れ上がる。
「キャーー!!」
 その悲鳴は恐怖によるものか羞恥によるものか?
 アシェ-ルは大慌ててでスカートを抑えながら『壁歩き』を再発動して落下を止めた。
 やや顔を赤らめながら周囲を確認する。
 幸いここにはアシェールしか居らず、見ていたのはユグディラのカジディラだけだ。
「ニャー! ニャー!」
 カジディラはアシェールが滑り落ちる瞬間を目撃したためか、心配そうな鳴き声をあげている。
「だ、大丈夫ですよ~」
 アシェールはカジディラを安心させるために笑顔で手を振ると、元の位置まで戻った。
 そして『炎弾』を撃つ、滑り落ちる、『壁歩き』で止める、を繰り返したのだった。

「初任務、よろしくお願いしますねポルックス」
 ブルの直衛についていたフィロ(ka6966)が魔導ヘリコプター「ポルックス」で浮遊型の前に立ちふさがると、照準を合わせてトリガーを引いた。
 マシンガン「ディプラ」から連続して放たれた銃弾が浮遊型を撃ち抜いてミンチに変える。
 別の浮遊型がレーザーで反撃してきたが、ツインローターを操って何とか回避し、マシンガンを撃ち続ける。

「核を破壊するまで、何としてもブルを守らなくちゃ。行くよクウ」
 ユウ(ka6891)を乗せたワイバーンのクウは浮遊型の群れの前まで飛翔すると口腔を大きく開いた。
 そして口腔に装着した[SA]魔竜牙「エルプシオン」を介して高威力の『ファイアブレス』を浮遊型の群れに放つ。
 火炎の弾は浮遊型に当たった瞬間大きく弾け、小さな火弾を周囲に幾つもバラ撒いて複数の浮遊型を同時に焼き潰していった。

「この状況では攻撃の効率化重視ですねぇ」
 マッシュは浮遊型の群れの上空に位置どると真下に符を投擲。
 『風雷陣』によって符が稲妻と化して浮遊型を貫く。
 ワイバーンも『ファイアブレス』を放って浮遊型を火炙りにした。
 威力もよりも数を当てられる攻撃を重視して浮遊型を確実に減らしてゆく。

「そんなに固まってたら格好の的だよー」
 イリエスカはコンフェッサーに腕に装備させた[SW]クローアーム「ボラルデード」から『マテリアルレーザー』を発射。
 光線が空に一直線の筋を描いて走り、光線上にいた全ての浮遊型を撃ち抜いて消滅させた。

 R7エクスシアに乗って参戦したディーナ・フェルミ(ka5843)は浮遊型の群れがブルに向かってくる事が分かると、格納庫から未だ斜めの甲板に出て[SW]フライトブースター「ズヴォルタ」の『フライトシステム』で大空に飛び立った。
 [SW]量産型フライトパックも装備してきて航続時間を強引に伸ばしてきたが、それでも10分には満たない。
 それでもR7に乗ってきたのは
「悩ましいけど狂気相手ならR7のイニシャライズオーバーは重要だと思うの」
 という理由からだ。
 ブルから発艦したR7に縫い止められた強襲型や浮遊型がレーザーを放ってくる。
 ディーナは『マテリアルカーテン』で展開したマテリアルエネルギーのマントで機体を覆いつつ、左右の腕に装備したマテリアルドリルで全て防ぎきった。
 そして浮遊型の群れの中に突進。
 周囲が浮遊型だらけの中で『スキルトレース』を介して『セイクリッドフラッシュ』を発動させた。
「聖なる光よ、闇を滅ぼすの」
 光の波動がR7を中心にして広がり、その衝撃で周りにいた全ての浮遊型がボロボロと崩れ去ってゆく。
 更にレーザーを放ち続けている強襲型の元まで飛ぶと『フォースクラッシュ』を発動し、殴る。殴る。殴る。
「歪虚は殲滅なの!」
 強襲型が消滅するまでマテリアルドリルで殴り続けた。

 蜜鈴=カメーリア・ルージュ(ka4009)は縫い止めれた強襲型にワイバーンで接近しながら、魔導拳銃「エニアグラム」を抜いた。
 強襲型からはレーザーが放たれてくるが、『バレルロール』で旋回してレーザーの間を縫うようにして飛ぶ。
「相も変わらず狂気の歪虚は見目が悪いのう……」
 強襲型の醜悪な姿に眉をひそめつつ、銃口を目に向けてトリガーを引く。
 決して口径の大きい銃ではないが目を撃ち抜くには十分で、装甲の薄い部分を撃ち抜かれ続けた強襲型はやがて力尽きて消滅した。


 こうして敵の第一波の強襲型を確実に減らしていたのだが。
「第二波来ます。そのすぐ後ろから既に第三波が接近中!」
 エラが『三散』を撃ち放って浮遊型を潰しながらトランシーバーを通じて警告を発する。
 一息つく間もなくやってきた歪虚は蟹型の大群だった。
「……アルフェウス、エンゲージ!」
 マリナはワイバーンで蟹型群の直上から『サイドワインダー』で急降下。
 重機関銃「ラワーユリッヒNG5」が薬莢をバラ撒きながら眼下の蟹型に幾つもの弾痕を刻んでゆく。
 外殻が弾け飛んで体液が飛び散らせる蟹型にワイバーンが更に『ファイアブレス』を浴びせた。
 しかし蟹型は炎を浴びても大してダメージを受けている様子はない。
「炎は効果が薄い……」
 蟹型の群れを突き抜けたマリナは180度回頭し、先程の蟹型目掛けて急上昇。
 重機関銃を浴びせつつ接敵すると、ワイバーンが獣牙「インガルフ」で喰らいつく。
 ワイバーンの強靭な顎が蟹型の甲殻を噛み砕き、胴体部を喰い千切る。
 体が半分なくなった蟹型は落下してゆく、そのまま消滅した。
 蟹型群を抜けて再び上に出たマリナだが、群れから2体の蟹型を後を追ってきた。
 後ろから溶岩弾が続けざまに放たれてくる。
 マリナはワイバーンを右ロールさせて初弾を避け、そのままシザースして次弾も避ける。
 そしてオーバーシュートさせてワイバーンの前に出させた蟹型に重機関銃を撃ち込む。
「後ろはとらせない。空戦の大原則である」
 だが重機関銃を浴びせられた蟹型はその場にホバリングして急停止した。
「っ!」
 追走していたマリナは蟹型を追い抜いてしまい、再び後ろから溶岩弾で撃たれる。
 咄嗟に『バレルロール』を発動。ワイバーンを急旋回させて溶岩弾をやりすごす。
 だが2体の蟹型は依然として後ろに張り付いて溶岩弾を撃ってくる。
 ワイバーンをシザースして避けつつオーバーシュートを誘うが、先程の事で警戒されているのか上手くいかない。
「それなら……」
 マリナは敵との距離を慎重に詰めると『サイドワインダー』の発動と同時にワイバーンを急上昇させた。
 そこからワイバーンは翼を畳み、首を丸め、後ろに宙返りする。
 針路を殆ど変えず、ほぼその場でループしたのだ。
 まるでクルビットのような機動をしたワイバーンを2体の蟹型が追い抜いてゆく。
 ワイバーンは首を伸ばして翼を広げ直すと急加速し、蟹型の後ろから獣牙で喰らいついた。
 そしてワイバーンが甲殻を喰い千切り、剥き出しになった甲殻内にマリナが魔導銃「アクケルテ」を撃ち込む。
 「パン」と乾いた炸裂音と共に放たれた弾丸は蟹型の内部を破砕し、大量の体液を飛び散らせた。
 体が弛緩して落下を始めた蟹型を捨てると、マリナは武器を重機関銃に持ち直す。
 下方から溶岩弾が放たれてきた。
 咄嗟にワイバーンの頭を下に向け、体を垂直にして避ける。
 正面には上昇してくる蟹型がいる。
 マリナは降下しつつ重機関銃を乱射。
 蟹型は弾痕を刻まれながらも溶岩弾で反撃してくる。
 『バレルロール』で旋回して避けつつ更に重機関銃を撃つ。
 蟹型との距離が詰まり、最接近した瞬間、ワイバーンが喰らいつきにいった。
 しかし蟹型はホバリングで退がって避け、至近距離から溶岩弾を撃とうとする。
 だがマリナが手早く持ち替えた魔導銃を先に発砲。
 弾丸は溶岩弾を撃とうと開けていた蟹型の口腔内を撃ち抜いた。
 蟹型は溶岩弾を撃つ事なくワイバーンとすれ違う。
 そして上空で力尽き、海へと落ちていった。

「新手かぁー。君は何だか硬そうだねー」
 イリエスカはコンフェッサーを蟹型と相対させると、『フーファイター』を発動させた。
「さぁ、暴れちゃうよー♪」
 そして既に何体も歪虚を引き裂いたビームクロー「ウーニャシーカ」を構えて前に出る
 蟹型はコンフェッサーが動き出すのに合わせて溶岩弾を撃ってきた。
 イリエスカは『アクティブスラスター』を噴射して避ける同時にスラスターの推力も合わせて一気に距離を詰める。
 蟹型を間合いに捉えると『マテリアルフィスト』を発動。ビームクローがマテリアル状のバリアに覆われてぼんやり輝いた。
「くっらえー!」
 蟹型は振り下ろされてくるビームクローを爪でブロックした。
 しかし『マテリアルフィスト』のバリアが干渉し、ビームクローはブロックした爪ごと蟹型を容易く引き裂いた。
 蟹型は片腕になり胴体部にも深い裂傷を負ったが、長い尾をコンフェッサーに巻きつけて拘束した。
「こんなものー!」
 イリエスカは容易く拘束を引きちぎると再びビームクローで引き裂いてトドメを刺す。
 しかしその直後、コンフェッサーの背面に溶岩弾が2発命中した。
 先程の拘束はコンフェッサーの動きを少しでも止めて他の蟹型に攻撃させるためのものだったのだ。
「やったなぁー!」
 イリエスカが間合いを詰めると、2体の蟹型は左右に別れた。
 片方を追うと、それは全速で逃げ。もう1体が後ろから溶岩弾を撃ってきた。
「姑息な真似をー!」
 イリエスカは機体を旋回させるとクローアームを後ろの蟹型に向け、固有スキルの『マテリアルレーザー』を発射する。
 だがレーザーの出力があまり高くないせいか蟹型を仕留めるには不十分で、溶岩弾で反撃された。
 前にいた蟹型もコンフェッサーが足を止めたため、再び溶岩弾を撃ってきた。
 なんとか回避はしたものの、『マテリアルレーザー』は今ので撃ち尽くす。
「こうなったら後ろから撃たれるのは無視して片方に突っ込む!」
 そう覚悟を決めた時、不意に片方の蟹型が銃撃を受けた。
 火線の先に目を向けると、高空から降下してくるワイバーンが見える。
「こちらで対象を捕捉。援護する」
 マリナが援護に駆けつけてきてくれたのだ。
 イリエスカはトランシーバーを所持していないので声は聞こえないが、姿で分かった。
「さすがはボクの相棒!」
 イリエスカは『アクティブスラスター』を発動させると最大速度でもう片方の蟹型に迫った。
 蟹型は溶岩弾を撃ってきたが、スピードを全く落とす事なくスラスターの噴射だけで避けて肉薄。
 『マテリアルフィスト』で甲殻を粉砕しつつ中身をビームクローで引き裂く。
「落ちろー!」
 更に足を振り上げ、脚爪「モーンストルム」で踵落としを傷跡に叩き込む。
 頭頂部が完全にひしゃげた蟹型は落下してゆく、海に落ちる前に消滅した。
「次っ!」
 続けてマリナのワイバーンとドッグファイト中の蟹型に『アクティブスラスター』で迫る。
 蟹型は2対1では不利だと思ったのか逃走に転じた。
「逃がすかぁー!」
 しかしイリエスカは[SW]クローアーム「ボラルデード」から細長い爪を射出。爪で蟹型の背中の羽をえぐり取る。
 羽を失った蟹型は落下はしなかったが機動力は衰えたため、イリエスカは容易く近接の間合いに入り込む。
「これで、トドメだ!」
 振り下ろされたビームクローは蟹型を真っ二つに引き裂いて消滅させた。 

「見た事ないヤツだね。新種か? マグマの中ですら生き永らえるその生命力、実に興味深い」
 蟹型を目にした龍宮 アキノ(ka6831)は興味深そうに目を輝かせて見入る。
 蟹型は龍宮が仔細に観察している隙に横に回り込んで溶岩弾を撃ってきた。
「おっと!」
 咄嗟に回避しようとしたが『特殊訓練:サガラ』を習得していない龍宮のワイバーンは空中戦が得意ではなく、避けきれずに被弾した。
 着弾の衝撃で傷を負うと同時に付着した溶岩の熱で傷口が焼かれ、ワイバーンは苦鳴を上げた。
「溶岩を吐くのか。そして蟹のような見た目に反して機動性も高い。そのトンボのような羽は伊達ではないのだな」
 龍宮はワイバーンに『ヒール』を施しながらも観察を続ける。
 蟹型が長い尾を振りながら一気に間合いを詰めてきて爪を叩き込んできた。
 今度は辛くも避けると、手綱を操って蟹型の後ろを取る
「やはり爪でも攻撃を行うか。そして溶岩を吐くという事は、おそらく火属性だろう。ならばこれはどうだ」
 龍宮が蟹型の背中に向けて『デルタレイ』を発動。
 三角形の光から放たれた3条の光線の内2条が蟹型の外殻を貫通する。
「ふむ、耐えたか。外殻はそこそこ硬いらしいな」
 更に観察を続けていると、蟹型が尾を大きく振るい、ワイバーンに巻きつけてきた。
 ワイバーンはもがいて振りほどこうとするが、蟹型は構わず引き寄せて爪を振り上げた。
 龍宮は聖盾「コギト」で受けようとしたが、飛行中な上に引き寄せられた際に激しく揺れたため体勢が悪く、爪は体に打ち据えられた。
 着込んだヒドゥンハンドがひしゃげ、衝撃が内臓まで響く。
「ぐふっ!」
 思わずこみ上げてきた血を飲み込み、蟹型を睨みつける。
「モルモットがやってくれるじゃないか……」
 堕杖「エグリゴリ」を掲げて『機導砲』を発動。
 マテリアルから変換したエネルギーが一条の光となって蟹型を撃ち抜いた。
 胴体に大穴の空いた蟹型が塵となってボロボロと崩れてゆく。
「なんだ、もう死んだのか。なら次だ」
 龍宮は自身に『ヒール』を施すと次のモルモットに狙いを定めた。


 そうして蟹型に対応していたハンター達だが、事態はまた転換点を迎える。
「第三波接近。更にその後ろに第四波の強襲型も確認!」
 エラの3度目の警告がトランシーバーから響く。
 第三波は大量の浮遊型を引き連れた大蟹型だった。

「ずいぶんとデカイのが来たな。こうも醜くなると蟹が喰えなくなりそうだ……」
 キャリコは今までの戦闘で弾切れになった『砲撃:徹甲榴弾』を『徹甲弾装填』で再装填し、大蟹型の1体に狙いを定めた。
「徹甲榴弾、ファイヤ!」
 放たれた弾丸は狙い違わず大蟹型に向けて飛来したが、大蟹型は羽を羽ばたかせ、真横にスライドするかのような機動で避けた。
「デカイくせに早いな」
 次弾を装填して照準器で狙いを定めていると、大蟹型の外殻の一部がめくれ上がって幾つもの目がギョロリと剥き出しになるのが見えた。
 そしてその無数の目から【狂気】が放出された。
「ウぁあァーー!!」
「アははハっ!!」
「…………」
「ウぉー! うリァー!」
 その途端、叫ぶ者、笑い出す者、完全に身動きを止める者、武器を振り回す者、等と症状は様々であるが、者達が出始める。
 しかもそれはハンターだけでなく幻獣にまで及んだ。
 大蟹型は目を晒したまま大口を開け、散弾状の飛散する溶岩弾を【狂気】に侵された者達に浴びせ始めた。
 更に随伴していた浮遊型も一斉に【狂気】に侵された者達に攻撃を開始したのだった。

「なに無抵抗の人間を攻撃してやがりますっ!!」
 シレークスは『シレークス式聖闘術『我思う故に我あり』』を発動させて攻撃の矛先を自分に向けさせた。
 そして自分が負った傷は『マテリアルヒーリング』で回復させて耐える。
 シレークスが耐えてくれている間にサクラは傷を負った仲間を『ヒーリングスフィア』で回復させてゆく。
 だが傷は治っても正気には戻らない。
「気をしっかり持って下さい。【狂気】になんて負けないで!」

 主力となる味方とはから少し離れ、遊兵となって転戦をしていたミオレスカは敵の気を引くために浮遊型の群れの中に突っ込んでいった。
「敵はこっちです。こっちを見るです!」
 敵群の中で『制圧射撃』を四方八方に撃ち放ち、片っ端から【行動不能】にさせてゆく。
 もちろん浮遊型から狙われるが、ワイバーンの『バレルロール』で回避。
 魔導拳銃「エア・スティーラー」の弾が尽きれば『クイックリロード』で瞬く間に再装填してすぐに撃つ。
 とにかく撃って撃って撃ちまくる事で味方を助けようとした。

「仲間をやらせるかぁー!!」
 八島は魔導ヘリの『スモークカーテン』を発動させると歪虚と仲間達の間を縦横無尽に飛び回り、【狂気】に侵された仲間を狙う敵の射線妨害をする煙の壁を作った。

「ボレアス! しっかりして!」
 夜桜のワイバーンのボレアスは一瞬【狂気】の症状を見せたものの『姿勢制御』で耐えたのかすぐに正気を保つ。
「狂気を振り払えたのね。よかった……。じゃあ、みんなを助けに行ける?」
 ボレアスがコクリと頷く。
「ありがとう」
 夜桜は【狂気】を発症している者の元へ向かうと『アイデアル・ソング』を発動させ、歌を紡ぎ始める。
 騎乗中なのでステップは踏めないので手拍子で代用し、【狂気】の波動を歌声で打ち消してゆく。

「R7で来て正解だったぜ。狂気と長く戦うならイニシャライズオーバーはやっぱ必須だ!」
 ルベーノ・バルバライン(ka6752)はすぐにR7エクスシアの『イニシャライズオーバー』を発動。
 自機の周囲に【狂気】に対する結界を広範囲に展開した。
「やべぇ奴は俺の周囲に連れてこい! すぐ治る」

「みんな私の元に集まるの。結界の中なら狂気なんて平気なの」
 同じくR7に乗っているディーナも『イニシャライズオーバー』で結界を張り、正気な人にも呼びかける。

「オラァ! この程度の狂気なんかに呑まれてんじゃねェ! 気をしっかり持ちやがれっ!」
 シガレットは『ピュリフィケーション』を発動させながら大声で怒鳴りつけた。

「これはマズイのじゃ……」
 【狂気】に侵されて無防備になった仲間達が歪虚の攻撃に晒されている様子はブルのハッチ内にいたカナタ・ハテナ(ka2130)からも見えていた。
「今こそ飛行アイテム使いこなしてみせる時なのじゃ!」
 仲間を救うために意を決したカナタはハッチから出て [SW]小型飛行翼アーマー「ダイダロス」の『エアグライディング』で大空に飛び出す。
 飛行翼アーマーから噴射する推進力で体がフワリと浮き上がり、全身に風を感じた。
「よし! ちゃんと飛べているのじゃ!」
 安定飛行ができた事には満足したが、やはり体は動かしにくく、身体機能は半分程度になっている気がした。
「じゃが敵の命中率も下がれば問題無いのじゃ」
 カナタは『レクイエム』を発動させて敵群の中に突っ込んむと、朗々と鎮魂歌を歌い上げた。
 すると周囲の浮遊型の動きが鈍くなり、レーザー攻撃の照準もズレ始めた。
 カナタも浮遊型にレーザーで撃たれたが1発も当たらず、ドヤ顔で鎮魂歌を歌い続けていた。
 しかし不意に放たれてきたレーザーがカナタを直撃した。
「ギャウっ!!」
 あまりの激痛に悲鳴を上げて身悶える。
 レーザーが飛んで来た方を見ると、遠方に『プルガトリオ』で磔になっている強襲型があった。
「効果範囲外からの攻撃じゃと……」
 カナタはすぐに『フルリカバリー』で全回復したが、『レクイエム』が途切れたため周りの浮遊型からの攻撃も当たるようになる。
 飛行しながらでは魔導猫盾「にゃんにゃんミーくん」での防御も難しいため、何発かは被弾してしまう。
 すぐに『レクイエム』をまた歌って浮遊型の攻撃を阻害したが、強襲型はまだ自分を狙っている。
「ピンチなのじゃ。もし集中砲火を喰らったら回復する前にたぶん死ぬのじゃ……」
 だが不意に浮遊型が向きを変えた。
 浮遊型が向いた先を見ると、炎のようなオーラを纏った人がワイバーンに乗ってこちらに向かってきていた。
 カナタの危機に気付いた鞍馬が『ソウルトーチ』を使って浮遊型の気を引いたのである。
「浮遊型になら効果はあったか。よかった」
 浮遊型の群れが一斉にレーザーを放つ。
 鞍馬はワイバーンの『バレルロール』を使うとレーザーとレーザーの間を縫うように飛んで回避する。
 そして符を抜くと『風雷陣』で3体の浮遊型に稲妻を落として一気に葬る。
 浮遊型をある程度片付けると、磔になっている強襲型にワイバーンで迫り、『刺突一閃』で滅した。
「助かったのじゃ鞍馬どん」
「生身で空に飛び出してくるなんて無茶するね。でもお陰で被害は抑えられたみたいだ」
 鞍馬の言うように、カルマの『レクイエム』で浮遊型からの攻撃の多くは外れてくれていた。

 オートマトンは『抵抗』が低いためか、イリエスカ、マリナ、フィロの3人は【狂気】の影響を受け、身動き一つしなくなった。
 イリエスカの乗るコンフェッサーは『フライトシステム』が停止したため落下。
 フィロの乗る魔導ヘリも『ツインローター』が止まって落下する。
 マリナは騎乗するワイバーンも【狂気】に捕らわれ、不規則な機動で飛び始めたため鞍から落ち、やはり落下していた。
 だがマリナの落下が不意に止まった。
 正確にはマリナの腰のホルダーにある魔導拳銃が浮いて体を支えていた。
 蜜鈴が『マジックフライト』で浮かせたのだ。
 更に近くを落下中のイリエスカのコンフェッサーのビームクローを浮かせて落下を止める。
「あと一人いけるかえ?」
 蜜鈴は目についたフィロの魔導ヘリの元まで飛ぶと、マシンガンを浮かせて落下を止める。
「やれやれ、何とか助けられたのぅ。じゃがこやつらこのままでは格好の的じゃな」
 言っている間にも浮遊型がわらわらとやってきてレーザーを撃ち、サイズの大きいコンフェッサーと魔導ヘリにビシバシと当たる。
「仕方ない。乗りかかった船じゃ、最後まで面倒見てやるかのぅ」
 蜜鈴は封印されし魔腕を敵群に向けると呪文を唱え始める。
「轟く雷、穿つは我が怨敵……一閃の想いに貫かれ、己が矮小さを識れ」
 『雷霆』によって稲光が大空を切り裂くように一直線に走り、電撃に呑み込まれた浮遊型が一瞬で塵と化した。
「広がる枝葉、囲むは小さき世界、大地に跪き、己が手にした罪を識れ」
 続けて『荘厳』を発動。
 浮遊型の群れの中心に突如として紫色の光を伴う重力波を発生。
 空間ごと浮遊型を捻じ曲げて押し潰した。
 更に上空から浮遊型に群れに『ファイアブレス』が浴びせられた。
 マリナのワイバーンを正気を取り戻して駆けつけてきたのだ。
「おんしは正気に戻ったのかえ。なら手を貸しておくれ」
 蜜鈴は3人が正気に戻るまで浮遊型を倒し続け、正気に戻った後は『ヒール』で傷の治療までしてあげた。

 麗美と麗美の乗るワイバーンのジッポは【狂気】に捕らわれたため、海に向かって真っ直ぐ降下していた。
「麗美さん!」
 Uiscaは今まで歌っていた『マーキス・ソング』を中断すると『【再演】絆ヲ紡グ想イノ謡』を介して『アイデアル・ソング』を歌い始める。
 麗美さんの耳にUiscaの優しい歌声を届くと、たちまち頭の中がスッキリとした。
 ジッポの瞳にも光が戻り、大きく翼を広げて落下を止める。
「イスカの歌が聞こえて……私……何を……」
 麗美は記憶と意識に空白があったため戸惑いを見せた。
「All right? 麗美さん」
 Uiscaが言葉を歌詞として歌に乗せながら尋ねてくる。
 麗美はUiscaが『アイデアル・ソング』を歌っている事に気づくと、自分が【狂気】に捕らわれていたのだと悟った。
「うん……。ごめんイスカ。麗美、イスカを助けるつもりで来たのに、逆に足をひっぱちゃったよぉ」
「Non problem Let Fight?」
 弱々しく笑う麗美にUiscaが微笑みかけて尋ねる。
「うん、戦えるよ。イスカを傷つけようとする奴らは許さない!」
 麗美は力こぶを作るとちゃんと笑ってみせた。

 ユウの乗るワイバーンのクウは【狂気】に捕らわれ、無茶苦茶な飛行を始めていた。
「クウ! どうしたの? しっかりして!」
 ユウは振り落とされないようにクウの首にしがみつきながら声をかけるが、クウは暴れるのを止めない。
「クウ、私の声が聞こえないの……」
 悲しみでユウの瞳に涙が滲む。
 だが決して諦めない。
 どんな事があろうとも助ける。
「クウ! クウっ!」
 だから必死に呼びかけ続ける。
 浮遊型がクウを狙ってレーザーを放ってくる。
 クウは回避をする素振りすら見せない。
 だからユウはクウにしがみついて自分の身を盾にした。
 背中にレーザーが直撃して激痛が走る。
「っ!」
 しかしユウはクウを守るのを止めない。
 なぜならクウはユウの家族だから。
 どんな事があってもユウはクウを絶対に守るのだ。
 不意に、正面にいた浮遊型の群れに炎が浴びせられて消滅した。
 クウが『ファイアブレス』を放ったのである。
「クウ……正気に戻ったんだね!」
 ユウの瞳から涙が溢れた。
 しかし今度は悲しみの涙ではなく、喜びの涙だ。
 クウが首を後ろに曲げてユウを見た。
 クウの瞳には心配気な色と、悲しみの色が滲んでいる。
「大丈夫……大丈夫だよ」
 そんなクウにユウは優しく微笑みかけながら首筋を撫でてあげた。
「クウ、もう平気?」
 クウが首を縦に振る。
「じゃあ、また一緒に戦おう!」
 ユウとクウは再び歪虚との戦場に舞い戻っていった。

 レイオスが【狂気】に捕らわれてしまったため、ポロウのテュアは配そうな鳴き声を発した。
「ポウ! ポウ!」
 しかしレイオスは正気に戻らない。
 テュアはレイオスを守るために自主的に『惑わすホー』を発動させ、作り上げた幻影の結界内に逃げ込んだ。
 結界内では浮遊型の攻撃を避けられたものの、大蟹型の散弾までは避けられなかった。
 しかしその時も攻撃がレイオスに当たらないように自分の身で庇い、羽毛に酷い火傷を負う。
「お、俺は……」
 レイオスはすぐに正気を取り戻したが、状況を把握するのに少し時間がかかった。
「くっそぉ! 俺は狂気なんかに捕われて……」
 悔しさが込み上げてきたが、テュアが怪我をしている事に気付いた。
「もしかして俺を庇ってくれたのか? すまない!」
 レイオスは急いで携帯品の中からプレミアムエビフライを取り出してテュアに与えた。
「後でまた食わせてやる。だからもう少し頼むぜ」
「ホー♪」
「俺はもう決して狂気に屈したりしない!」
 レイオスは断固たる意思を固めると、大蟹型に挑みかかった。

 レイア・アローネ(ka4082)は【狂気】に捕らわれた者達の中で最も悪い状況にいた。
 レイアは『ソウルトーチ』で多くの浮遊型を引きつけている最中に【狂気】の捕らわれてしまったからだ。
 しかもレイアの乗るワイバーンも【狂気】に捕らわれたため、浮遊型に攻撃されても回避も防御も一切できないでいた。
 ブルにいるフェリア(ka2870)は双眼鏡で戦況を見ていたため、レイアの危機には気付いていた。
「フェリア! レイアが危ない! 助けないと!」
 フェリアと同じようにブルに残っていた七夜・真夕(ka3977)が急かしてくる。
 しかし飛行する手段のない2人にはレイアを救う術がない。
 フェリアに出来たのはトランシーバーと『エレメンタルコール』でレイアの救援を頼む事だけだった。
 だが、フェリアが救援要請をする前にGacruxが『サイドワインダー』でレイアの元に駆けつけていた。
 軽装甲で遠距離武器も持たずに『ソウルトーチ』で敵を集めているレイアをGacruxは危なっかしいと思って気にかけていたのである。
 Gacruxはミラージュグレイブを小脇に構えると『刺突一閃』で浮遊型の群れの中に突進。
 まるで馬に乗った騎士がランスを持ってチャージするかのように、浮遊型を蹴散らしてゆく。
 更に『刺突一閃』によるチャージを敢行し、残敵を掃討した頃にはレイアも彼女のワイバーンも正気に戻っていた。
 Gacruxはレイアに並走して飛ぶと、不機嫌そうな顔で言った。
「まったく、無茶をするからこんな事になるんですよ」
「……すまない。助けてくれてあり」
「礼なら後で。それより2度と無茶な事はしないで下さい。次は助けませんよ」
 Gacruxはレイアのお礼の言葉を途中で遮ると、その場から飛び去っていった。
 深い傷を負っていたレイアは傷を癒やすために一旦ブルに戻る事にした。
 すると、少し距離を置きながらGacruxがついてくる。
 そしてレイアの近づく歪虚を倒していった。
 どうやら護衛してくれている分かったので、レイアは尋ねてみた。
「どうして守ってくれるんだ?」
「せっかく助けたのですから、死なれては寝覚めが悪いですからね」
 Gacruxはそっぽを向きながら無愛想に答えた。
(さっきと言ってる事が違うぞ……)
 そう思いながらもレイアはさっき言えなかった言葉を言う事にした。
「ともかく助かった、感謝する」
「どーも」
 Gacruxは無愛想なまま応じた。
 でも本当は心の中では嬉しく思っている。
 単にツンデレなだけなのだ。

 クランと彼のワイバーンのグラムも【狂気】に捕らわれてしまっていた。
「しっかりしろクラン!」
 これまで共に戦っていたアークが呼びかけても返事すらしない。
 だがアークはクランが【狂気】などに屈するような弱い男ではないと知っている。
 すぐに正気に戻ると確信すらしていた。
 だからアークは今自分ができる事を始めた。
 それは、クランとグラムが攻撃されないように周囲の敵を叩いてしまう事だ。
 まずワイバーンの『ファイヤブレス』で接近して来ていた浮遊型を一掃。
 蟹型が溶岩弾を放ってきたが『バレルロール』で避けつつ間合いを詰める。
 聖罰刃「ターミナー・レイ」の間合いに捉えると『電光石火』を一閃。蟹型を細切れにする。
 だがそこまで倒した時に大蟹型が溶岩散弾を放ってきた。
 『バレルロール』で溶岩と溶岩の間の隙間を抜けるように飛んでギリギリ避けた。
 しかし広範囲に放たれた溶岩散弾はクランとグラムにも命中してしまう。
(ここは位置が悪い)
 アークは『先手必勝』で大蟹型より先に動くと、わざと目の前を飛んで気を引く。
 大蟹型はアークのワイバーンを追って首を巡らすと再び溶岩散弾を放った。
 『バレルロール』で急降下して辛くも避ける。
 そして今の溶岩散弾はクランには当たらなかった。
 しかし『バレルロール』は残り僅かで、長く戦い続けるのは難しい。
 アークの顔に焦りが滲みかけた、その時。
「アーク!」
 クランの声がした。
 目の端で正気の顔のクランが大蟹型に挑もうとしているのが見える。
 焦りが浮かびかけていたアークの顔に笑みが浮かぶ。
(思った通りだ)
 クランが正気に戻った時、実はまだ意識がハッキリしていなくて状況が分かっていなかった。
 しかしアークが1人大蟹型と戦っているのが見えた瞬間、加勢しようと体が動いたのだ。
 クランはまずワイバーンに装備させた獣機銃「テメリダーV3」を撃った。
 だが外殻に傷がついた程度でダメージは浅い。
「硬いなコイツ」
 クランは『攻めの構え』を取ると、更に『ケイオスチューン』も発動。
 体内で極限まで高めたマテリアルがオーラとして体から吹き出し始める。
「行けグラム!」
 ワイバーンの飛翔で一気に間合いを詰めると莫邪宝剣を振りかぶり、『強打』で斬る。
 クランの攻撃に合わせてアークも『電光石火』で斬った。
 外殻が裂け、体液が噴出する。
 だが大蟹型は傷などもろともせず爪を振り回して反撃してきた。
 クランは『鎧受け』を発動させながら 龍壁「ガータル・ゾア」で受ける。
 衝撃でワイバーンが後ろに吹き飛ばされたがダメージはない。
「くそっ! 硬い上にタフだな」
 大蟹型は溶岩散弾を放とうと口を開けた。
 不意にその口に向かって矢が飛来してくる。
 矢は口腔内に突き刺さり、そのまま頭の後ろまで突き抜けた。
「加勢しますよお二人さん」
 それは二人の知人であるマッシュの放った『貫徹の矢』だった。
 大蟹型はマッシュに向けて溶岩散弾を放ってきた。
 マッシュは『サイドワインダー』で避けると、そのまま大蟹型の後ろに回り込む。
「僕の矢傷へ集中攻撃です」
 クランとアークに指示しながら再び『貫徹の矢』を放つ。
 矢は大蟹型の頭頂部を突き抜けた。
 アークは上昇すると背面飛行で飛び、大蟹型とすれ違い様に『電光石火』で斬り裂く。
 『貫徹の矢』によって甲殻がもろくなっているため今までより遥かに強い手応えを感じ、大蟹型に深い残痕を刻んだ。
「いけるぞクラン」
「うおぉぉ!!」
 クランは大蟹型の直上からワイバーンで急降下すると『強打』で頭頂部を刺し貫いた。
 莫邪宝剣の光の刃は鍔元どころかクランの肘まで突き立った。
 この一撃が致命傷となり、大蟹型はその身を黒い塵を化して消えていった。
 大蟹型を倒し終えたクランは神妙な表情でアークの隣にやってきた。
「なぁアーク。俺【狂気】に侵されてたんじゃないのか? それでお前が守ってくれてて」
「気にするな」
 アークはクランの言葉を遮り、リペアキット「キズナオール君」を渡そうとする。
「怪我してるぞ、使え」
 アークにしてみれば守りきれず負わせてしまった傷だ。
「それなら俺じゃなくグラムに使ってやってくれ」
「分かった」
 アークは手を伸ばしてクランの乗るグラムに「キズナオール君」を注射してあげた。


 BS回復系スキルを持つ者達のお陰で【狂気】に侵されていた者達もすぐに正気を取り戻す事ができた。
 しかしBS回復スキルの恩恵を受けられない者もいた。

 作戦が開始される前。
「やはり最新鋭機と言われれば乗らねばなるまいな。そうでなければこの空を征するミグの名が廃るわ」
 そう考えたミグ・ロマイヤー(ka0665)は魔導ヘリコプター「ポルックス」に乗って参戦した。
 しかし魔導ヘリだけではいかんせん戦力不足。
 そこで以前に見たリアルブルーでのアニメを参考にして下部に魔導アーマーを吊るしていく事を思いつく。
 それを実現するために目をつけたのが、今は解散してしまった小隊で知り合ったゾファル・G・初火(ka4407)。
 喧嘩っ早くて暴れん坊だが頼りにはなるので声を掛ける。
 一方ゾファルは魔導アーマー「ヘイムダル」で参戦したものの、『フライトシステム』では短時間しか飛べない事に悩んでいた。
「今回の依頼は分単位で滞空時間がないとほぼ役立たずな依頼じゃん」
 そこに渡りに船とミグの話が舞い込んでくる。
「ヘリにぶら下がって空中戦なんてベリークールじゃん。いいぜ。俺様ちゃんが手を貸してやるよ」
 こうしてミグとゾファルのコンビが結成された。

 2人は予定通り、ミグの魔導ヘリの『キャリーアンカー』でゾファルのヘイムダルを懸架して出撃。
 ブルの主砲がクラスタの核を外したと分かると。
「さらにクールなやり口としてブルの砲撃に合わせて核の観測する作戦に志願しちまおう」
 というゾファルの思惑に乗り、火口付近の敵戦力が少なくなった頃を見計らって火口へと降下していたのだった。
 敵戦力が減っているとは言え0でなく。
 浮遊型から何度となくレーザー攻撃を受けたが、ミグの『フーファイター』の操縦で上手く避けつつ、ゾファルが撃破していった。
 そして火口近くに到着するとゾファルが火口の溶岩に向けて『スペルランチャー「天華」』を放った。
 『スペルランチャー』の爆散の衝撃で溶岩に穴を穿ち、溶岩内部を仔細に観察してクラスタの核を探す。
 しかし見つからず、溶岩の穴はすぐに埋まった。
 ゾファルが2発目の『スペルランチャー「天華」』を撃とうと構えると、不意に溶岩が盛り上がって大蟹型が姿を現した。
「コイツはいったい何じゃん?」
 ゾファルが『スペルランチャー「天華」』を溶岩から大蟹型に変えて撃とうとしたが、それより先に大蟹型の甲殻から幾つもの目を覗き、【狂気】の波動を放ってきた。
「うヒゃひャひゃ」
 途端、ミグのトランシーバーからゾファルの笑い声が響いてきた。
「おい! いきなりどうした小娘?」
 それだけではなく、ヘイムダルが暴れ始める。
「まさか【狂気】に感染したのではあるまいな?」
 そのまさかである。
 ゾファルは【狂気】に捕らわれていた。
 そんな2人に大蟹型は溶岩散弾を放ってくる。
 ミグは何とか避けようとしたが、広範囲に放たれる散弾を全て避けきる事はできず、何発か被弾した。
「やむを得ん。撤」
 『ダメージコントロール』で機体を回復させつつ「撤退じゃ」と言いかけた時、ヘイムダルを繋いでる『キャリーアンカー』が外された。
「ふぉおお!!」
 思わずミグの口から変な声が出た。
 【狂気】に捕らわれたゾファルが外してしまったのかは分からないが、ヘイムダルは火口に向けて落ちてゆく。
 ミグは落下するヘイムダルを追い、ヘイムダルの直上に機体を着けると『キャリーアンカー』を発動。
 空中でも何とかヘイムダルを再懸架した。
「やれやれ……期せずして空中で切り離した後の再ドッキング実験ができてしまったわい」
 だが安堵するのも束の間、大蟹型の放った溶岩散弾が再び着弾する。
 すぐに『ダメージコントロール』するが、ダメージの方が上回っており、回復が追いついていない。
 しかもトランシーバーからは未だにゾファルの馬鹿笑いが響いている。
 状況は最悪だ。
「いつまで馬鹿笑いをしておるんじゃ馬鹿娘!! とっとと正気に戻らんかっ!!」
 トランシーバーに向かって力の限り怒鳴る。
「……ハッ! 俺様ちゃんは何を?」
 ゾファルがようやく正気を取り戻した。
「小娘、正気に戻ったのならさっさと撤」
 「撤退しろ」と言いかけたところで大蟹型の溶岩散弾が魔導ヘリとヘイムダルを直撃した。
 『ダメージコントロール』でも回復不能な程のダメージを受けた魔導ヘリは操縦を受け付けなくなり、墜落し始めた。
 ミグは急いで『キャリーアンカー』をヘイムダルから切り離すとハッチを開けて外に出る。
「受け止めろ小娘!」
 魔導ヘリを捨て、ヘイムダルに向かって跳躍。
 ゾファルは反射的にミグをヘイムダルの手で受け止めた。
「撤退しろ、急げ小娘」
「なんでじゃん? あんな敵俺様ちゃんなら余裕で」
「馬鹿もーんっ!! 貴様がまた【狂気】に感染したら2人揃ってお陀仏じゃ! いいからフライトシステムが使えるうちに撤退せい!」
 ゾファルは納得したのか機体を転進させると、全速でその場を離脱した。
「チクショー! 俺様ちゃん達かっこわりぃ~」
「馬鹿もん。カッコ悪いのは小娘だけじゃ。ミグまで一緒にするな」
 結局2人は何の成果も出さないまま撤退した……訳でもなかった。
 火口の上空では今もケイのポロウが観測を続けていたのだ。
 そしてゾファルが『スペルランチャー「天華」』で溶岩に穴を穿った瞬間、溶岩の奥で僅かに色の違う部分があるのをポロウの目は捉えていた。
 それが溶岩の奥にある何かがある証拠なのかはポロウにも分からない。
 だが他に異常らしい異常を発見できていなかったポロウはそこで『伝えるホー』を発動させて自分の視界をケイと繋いだ。
 ブルにいたケイの視界が急に切り替わる。
「わっ!」
 構えていたとはいえ、急に視界が別のものに変わると驚いてしまう。
 そして今度は見えている景色の鮮明さに驚いた。
「これが……ポロウの見ている世界……」
 鳥の視力は人間の8倍あると言われている。
 例えるならケイの視界は今、ブラウン管テレビで見ていたものが4Kテレビになったかのような鮮明さで見えていた。
 それはある種、感動的な光景であった
 だが感動してばかりもいられない。
 ケイはポロウが見つけたはずのクラスタの核を探し始めた。
 しかし何処にあるのか分からない。
 なぜならポロウは火口から何百メートルも離れた距離を飛んでおり、その視界は火口のほぼ全てを捉えていたからだ。
 おそらく見ているものの中心にあるのだろうと目を凝らすが、やはり分からない。
 溶岩の奥の陰は、溶岩に穴が穿たれた瞬間に一瞬だけ見えたものであり、今はもう溶岩で埋まってしまっているからだ。
 しかもケイはその事を知らない。
「……どこなのポロウ?」
 尋ねても声は伝わらないのでポロウは答えない。
 結局ケイは見つけ出す事ができず、『隠れるホー』の効果時間も残り僅かになってきたため、ポロウをケイの元へ帰らせた。
 そして帰ってきたポロウに直接尋ねたが、ポロウは「ホゥ」とか「ポー」としか言えないので、やっぱり分からない。
 なのでケイはブリッジを訪ね、地図を出してもらってポロウが見ていた景色の中心を指し示し。
 ポロウがここを見ていたのでクラスタの核はここにあるかもしれない。
 という曖昧な情報を伝える事しかできなかった。


 大蟹型の参戦により戦況は混迷を招いたが、悪い事ばかりが起こっている訳ではなかった。
 ブルの姿勢制御が終わり、艦が水平に戻ったのである。
 それに合わせて艦内に残っていたブルの艦載CAMも甲板上に展開し、【狂気】対策でR7に中心にしたフォーメーションを組む。
 エラはブルのCAM隊にハンターの位置や歪虚の分布などの情報を伝達した。
 R7は『マテリアルライフル』を放って浮遊型を掃討し、デュミナスはスナイパーライフルで狙撃して潰して始める。
 ブルのCAMの参戦により、戦場にいる歪虚の総数が一気に減少した。
 七夜は甲板に出るとまず『エクステンドキャスト』で体内のマテリアルを長い時間をかけて練り上げる。
 フェリアはその間に双眼鏡と『エレメンタルコール』でレイアから得た情報で、敵がなるべく密集しており、仲間がまだ対応仕切れておらず、味方を巻き込む事なく多くの敵を討てる位置を割り出して七夜に伝える。
 七夜は『エクステンドキャスト』で射程と威力を更に伸ばして『メテオスウォーム』を発動。
「暴れて、ホノカグツチ!」
 戦場の空の更に上空に突如として燃え盛る3つ火球を出現した。
 火球は重力に引かれるように落下。真下にいた歪虚を全て呑み込んで激しく燃え盛った。
 その場にいた浮遊型は全て蒸発し、火属性の蟹型も少なからずダメージを負った。

「よし! 一気に攻勢をかける」
 小型の歪虚が少なくなって大蟹型を狙いやすくなったヴァイスは『マジックアロー』を大蟹型に放つ。
 [SA]フォースリングで矢数の増えたマジックアローを全て避けきる事はできず、大蟹型は何本に体に突き立った。
 大蟹型は避ける事を諦めたのかヴァイスに真正面から突っ込み、溶岩散弾を放つ。
 ヴァイスは避けようとしたが溶岩の数が多すぎる上、グリフォンの騎乗しながらの戦闘では回避もしづらくなるため、何発か溶岩弾を受けてしまう。
「くっ!」
 着弾の衝撃と高熱で焼かれる痛みで顔を顰める。
 溶岩弾はグリフォンにも命中しており、羽毛が焼けただれたホムラが苦鳴を上げる。
 だが、痛みはすぐに消えた。
 なぜなら鳳城が『フルリカバリー』で治してくれたからだ。
「ありがたい」
 ヴァイスは体に付着した溶岩を振り払うと再び『マジックアロー』を大蟹型に放つ。
 大蟹型は『マジックアロー』を喰らいながらも一気に間合いを詰めると爪で攻撃してきた。
 ヴァイスはグリフォンを急上昇させて避けた。
 しかし大蟹型は爪を振り抜いた勢いで体を旋回させ、尾を振るってきた。
 鞭のようにしなって飛んできた尾はグリフォンを打ち据えると同時にヴァイスにも巻き付いて拘束した。
「爪はフェイントか!」 
 大蟹型は拘束したヴァイス達に大口を開けて向ける。
 至近距離から溶岩散弾を浴びせるつもりだ。
「撃たせません!」
 しかし溶岩散弾を撃つ前に鳳城が大蟹型の顔面に[SA]フォースリング『マジックアロー』を撃ち込んだ。
 衝撃とダメージで大蟹型がグラリと揺らぎ、拘束が若干緩む。
 ヴァイスは拘束の間から腕を伸ばすと、鳳城と同じく大蟹型の顔面に向けて[SA]フォースリング『マジックアロー』を撃ち込んだ。
 撃ち終わると完全に顔の潰れた大蟹型があり、拘束が完全に緩んでヴァイスとグリフォンは自由になった。
 油断なく様子を伺っていると大蟹型の体は徐々に塵と化してゆき、やがて完全に消滅した。


 艦を水平に戻したブルは直ちに火口上空から離脱を始めた。
「メインエンジン出力40%を推力へ」
 雪子が機関長に命じる。
 100%にしないのは、ブルのメインエンジンは1基しか搭載されておらず、その出力で『推力』『主砲』『慣性制御装置』等を稼働させているためである。
 なので推力に100%回してしまうと他の機関が止まってしまうのだ。
 ブルが動き出したのに合わせてハンター達も徐々に退避を始めた。
 もちろん歪虚は追撃してくるが、相対速度的に追いつかるまでに時間があり、その間に攻撃できるため、今までのよりも遥かに楽に迎撃できていた。
 だからといって警戒は怠らない。
 BS回復系スキルを使える者を中心にして陣を組み、主にブルの後方を着いた。
 今までほど激しくはないが、追ってくる歪虚との戦闘を行っている最中、遂にディーナのR7が『フライトシステム』と『フライトブースト』を使い切った。
 『イニシャライズオーバー』は【狂気】対策の要であるため、ずっと皆の中心に位置して飛んでいたのだが、ここまでである。
 ディーナは飛行できなくなってもR7に『ウォーターウォーク』をかけ、勢い殺しながら海面にふんわり着水すればいいと考えていた。
 しかし実際にはフライトユニットの翼はCAMを軟着させられる揚力を生み出せるほど大きくはない。
 なので推力のなくなったディーナのR7はたちまち失速し、猛スピードで墜落を始めた。
「えっ? そんな! 落ちちゃうのっ!」
 慌てるディーナだったが、不意に落下が止まった。
 フィロの魔導ヘリが『キャリーアンカー』で懸架してくれたのだ。
「大丈夫ですか?」
「はい、ありがとうございます。助かりましたの」
 ディーナは吊り下げて貰いながら、ふと思いついた事を頼んでみる事にした。
「あの、このまま皆の中央で飛んで欲しいの。そうすればイニシャライズオーバーで皆を守れ続けられるの」
「はい、いいですよ」
 快諾したフィロはディーナのR7を吊り下げたまま飛び続けた。

 やがて敵の追撃も全て振り切ると、ブルは大きく弧を描いて火口へ戻る進路を飛行しつつ、徐々に高度を上げていった。
 再び高高度からの降下砲撃作戦を行うためだ。
 降下地点到達前にブルのブリッジでは主要なクルーを集めた作戦会議が行われた。
 議題は主砲で火口の何処を狙うかである。
 とはいえ、狙う箇所は最初の作戦開始前から既に決定済みで、単なる作戦内容の確認だけが行われるはずだった。
「第二射の目標地点はここにします」
 しかし艦長の雪子が示したのは予定とは別の場所であった。
 そしてそこはケイの「ポロウが見ていた」と主張した地点でもあった。
「そこですか?」
 クルーが怪訝な顔をして雪子に尋ねる。
「そうよ。理由は」
 雪子の語った理由は、そこが夜桜の占いで示した場所とも近かった事。
 そして第三射に予定していた地点とも近かった事だ。
 雪子達ブルのクルーもクラスタの正確な場所は把握してはいない。
 ならば第三射の予定を第二射に繰り上げても何の問題もないと判断したのである。

 ブルは再び火口の真上に到着し、艦首を真下に向けた。
 まだ飛行時間に余力のある者達は防衛のためにブルの前に出た。
 とはいえ、ブルは高速で降下する。
 接敵して戦闘があったとしても一瞬だろう。
「作戦開始。降下!」
 ブルが降下するのに合わせて歪虚も急上昇してくる。
 上がってくるのはほぼ強襲型ばかりだ。
 ハンター達は敵が射程に入り次第攻撃を開始。
 空と海との間に幾つもの火線が飛び交う。
「主砲展開、最終セイフティ解除」
 主砲を覆っている装甲が開き、砲身が剥き出しとなる。
「主砲の近くにいる者は全員退避!」
 エラが最後の警告を発する。
 もちろん皆言われるまでもなく主砲の前から離れていた。
「撃て!」
 雪子が手を振り翳し、砲撃長がトリガーを引く。
 ブルより放たれた必滅の光は斜線上にいたあらゆる歪虚を消滅させ、再び火口を貫く。
 岩盤が、溶岩が、バラバラになった歪虚の体が、四方八方に飛び散った。
 火口が割れてヒビが入り、そこに海水が流れ込む。
 溶岩と接触した海水が蒸発し、もうもうと水蒸気が上がった。
「火口内部の反応は?」
 雪子がレーダー手に尋ねる。
 だがレーダー手が答える前に火口に異変があった。
 大量の海水が火口に流入を始め、水蒸気の量が猛烈に増えたのだ。
 それは、火口を形成していた岩壁の大部分が消失した事を示している。
 つまり、クラスタが同化していた岩壁ごと消えたのだ。
「……火口内に今まで確認されていなかった大きな空洞を確認。クラスタの消失によるものと思われます」
 レーダー手が改めて報告した瞬間、ブリッジに歓声が上がった。
「みんなありがとう。では今から残敵の掃討を開始します」
 雪子は感謝を述べると、新たな指示を出した。
 しかしクラスタのなくなった今、敵が新たに増える事はなく、残敵の掃討は速やかに終了した。

 こうして火星クラスタの残滓ともいえる小型クラスタは破壊され、太平洋には平和が戻った。



 作戦が無事終了し、帰還するブルの中で鳳城はポロウを労っていた
「行きなり凄いところに連れてきてしまったけれどお疲れ様。おかげで助かったよ」
 そこでふと気づく。
「……あ、名前。考えてやらないと。男の子だし勇ましい名前がいいかな?」
 こうしてのんびり悩んでいられるのも、1人の死者もなく作戦を終えられたからである。
 この平和で穏やかな時間が少しでも長く続く事を皆が望むだろう。
 そして何時かはこの平和な時間が当り前のものとなる日が来るだろう。
 そのためにハンター達は戦っているのだから。

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  • ヴァイス・エリダヌス(ka0364
    人間(紅)|31才|男性|闘狩人
  • ユニットアイコン
    ホムラ
    ホムラ(ka0364unit004
    ユニット|幻獣
  • 伝説の砲撃機乗り
    ミグ・ロマイヤー(ka0665
    ドワーフ|13才|女性|機導師
  • ユニットアイコン
    マドウヘリコプター「ポルックス」
    バウ・キャリアー(ka0665unit009
    ユニット|飛行機
  • 流浪の剛力修道女
    シレークス(ka0752
    ドワーフ|20才|女性|闘狩人
  • ユニットアイコン
    カリブンクルス
    カリブンクルス(ka0752unit004
    ユニット|幻獣
  • 緑龍の巫女
    Uisca=S=Amhran(ka0754
    エルフ|17才|女性|聖導士
  • ユニットアイコン
    ウイヴル
    ウイヴル(ka0754unit003
    ユニット|幻獣
  • 無明に咲きし熾火
    マッシュ・アクラシス(ka0771
    人間(紅)|26才|男性|闘狩人
  • ユニットアイコン
    ワイバーン
    ワイバーン(ka0771unit002
    ユニット|幻獣
  • ボルディアせんせー
    ボルディア・コンフラムス(ka0796
    人間(紅)|23才|女性|霊闘士
  • ユニットアイコン
    ワイバーン
    シャルラッハ(ka0796unit005
    ユニット|幻獣
  • 夢路に誘う青き魔女
    夢路 まよい(ka1328
    人間(蒼)|15才|女性|魔術師
  • ユニットアイコン
    イケロス
    イケロス(ka1328unit002
    ユニット|幻獣
  • 心の友(山猫団認定)
    天川 麗美(ka1355
    人間(紅)|20才|女性|機導師
  • ユニットアイコン
    ジッポ
    ジッポ(ka1355unit002
    ユニット|幻獣
  • 真実を見通す瞳
    八島 陽(ka1442
    人間(蒼)|20才|男性|機導師
  • ユニットアイコン
    マドウヘリコプター「ポルックス」
    魔導ヘリコプター「ポルックス」(ka1442unit012
    ユニット|飛行機
  • 王国騎士団“黒の騎士”
    レイオス・アクアウォーカー(ka1990
    人間(蒼)|20才|男性|闘狩人
  • ユニットアイコン
    テュア
    テュア(ka1990unit006
    ユニット|幻獣
  • 猫の守り神
    カナタ・ハテナ(ka2130
    人間(蒼)|12才|女性|聖導士
  • 星を傾く者
    サクラ・エルフリード(ka2598
    人間(紅)|15才|女性|聖導士
  • ユニットアイコン
    ワイバーン
    ワイバーン(ka2598unit005
    ユニット|幻獣
  • 見極めし黒曜の瞳
    Gacrux(ka2726
    人間(紅)|25才|男性|闘狩人
  • ユニットアイコン
    ワイバーン
    ワイバーン(ka2726unit004
    ユニット|幻獣
  • 【Ⅲ】命と愛の重みを知る
    フェリア(ka2870
    人間(紅)|21才|女性|魔術師
  • 紫煙の守護翼
    シガレット=ウナギパイ(ka2884
    人間(紅)|32才|男性|聖導士
  • ユニットアイコン
    ワイバーン
    グラウ(ka2884unit004
    ユニット|幻獣
  • 東方帝の正室
    アシェ-ル(ka2983
    人間(紅)|16才|女性|魔術師
  • ユニットアイコン
    カジディラ
    カジディラ(ka2983unit004
    ユニット|幻獣
  • 茨の王
    アルト・ヴァレンティーニ(ka3109
    人間(紅)|21才|女性|疾影士
  • ユニットアイコン
    ジュリア
    ジュリア(ka3109unit003
    ユニット|幻獣
  • 世界は子供そのもの
    エラ・“dJehuty”・ベル(ka3142
    人間(蒼)|30才|女性|機導師
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    ヤマアオイ
    山葵(ka3142unit005
    ユニット|幻獣
  • 師岬の未来をつなぐ
    ミオレスカ(ka3496
    エルフ|18才|女性|猟撃士
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    ノドゥス
    ノドゥス(ka3496unit003
    ユニット|幻獣
  • 轟雷の巫女
    七夜・真夕(ka3977
    人間(蒼)|17才|女性|魔術師
  • ヒトとして生きるもの
    蜜鈴=カメーリア・ルージュ(ka4009
    エルフ|22才|女性|魔術師
  • ユニットアイコン
    テンロク
    天禄(ka4009unit003
    ユニット|幻獣
  • 憤怒王FRIENDS
    ケイ(ka4032
    エルフ|22才|女性|猟撃士
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    ポロウ
    ポロウ(ka4032unit002
    ユニット|幻獣
  • 乙女の護り
    レイア・アローネ(ka4082
    人間(紅)|24才|女性|闘狩人
  • ユニットアイコン
    アウローラ
    アウローラ(ka4082unit001
    ユニット|幻獣
  • ゾファル怠極拳
    ゾファル・G・初火(ka4407
    人間(蒼)|16才|女性|闘狩人
  • ユニットアイコン
    マドウアーマー「ヘイムダル」
    ダルちゃん(ka4407unit005
    ユニット|魔導アーマー
  • 自在の弾丸
    キャリコ・ビューイ(ka5044
    人間(紅)|18才|男性|猟撃士
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    アラドヴァル
    アラドヴァル(ka5044unit004
    ユニット|CAM
  • 想いと記憶を護りし旅巫女
    夜桜 奏音(ka5754
    エルフ|19才|女性|符術師
  • ユニットアイコン
    ボレアス
    ボレアス(ka5754unit002
    ユニット|幻獣

  • 鞍馬 真(ka5819
    人間(蒼)|22才|男性|闘狩人
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    カートゥル
    カートゥル(ka5819unit005
    ユニット|幻獣
  • 灯光に託す鎮魂歌
    ディーナ・フェルミ(ka5843
    人間(紅)|18才|女性|聖導士
  • ユニットアイコン
    アールセブンエクスシア
    R7エクスシア(ka5843unit002
    ユニット|CAM
  • 命無き者塵に還るべし
    星野 ハナ(ka5852
    人間(蒼)|24才|女性|符術師
  • ユニットアイコン
    バーンチャン
    バーンちゃん(ka5852unit005
    ユニット|幻獣
  • 流浪の聖人
    鳳城 錬介(ka6053
    鬼|19才|男性|聖導士
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    ランドウ
    藍銅(ka6053unit006
    ユニット|幻獣
  • 決意は刃と共に
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    人間(紅)|17才|男性|舞刀士
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    ムラクモ
    ムラクモ(ka6568unit002
    ユニット|幻獣
  • 望む未来の為に
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    人間(紅)|20才|男性|闘狩人
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    グラム
    グラム(ka6605unit003
    ユニット|幻獣
  • 我が辞書に躊躇の文字なし
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    人間(紅)|26才|男性|格闘士
  • ユニットアイコン
    アールセブンエクスシア
    R7エクスシア(ka6752unit004
    ユニット|CAM
  • 好奇心の化物
    龍宮 アキノ(ka6831
    人間(蒼)|26才|女性|機導師
  • ユニットアイコン
    ワイバーン
    ワイバーン(ka6831unit003
    ユニット|幻獣
  • 食事は別腹
    イリエスカ(ka6885
    オートマトン|16才|女性|猟撃士
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    ランページ・クロー
    Rampage Claw(ka6885unit001
    ユニット|CAM
  • 無垢なる守護者
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    ドラグーン|21才|女性|疾影士
  • ユニットアイコン
    クウ
    クウ(ka6891unit002
    ユニット|幻獣
  • 青き翼
    マリナ アルフェウス(ka6934
    オートマトン|17才|女性|猟撃士
  • ユニットアイコン
    ワイバーン
    ティロ(ka6934unit001
    ユニット|幻獣
  • ルル大学防諜部門長
    フィロ(ka6966
    オートマトン|24才|女性|格闘士
  • ユニットアイコン
    マドウヘリコプター「ポルックス」
    魔導ヘリコプター「ポルックス」(ka6966unit003
    ユニット|飛行機

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
マリナ アルフェウス(ka6934
オートマトン|17才|女性|猟撃士(イェーガー)
最終発言
2018/06/25 08:10:39
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2018/06/24 21:21:05