雑魔が集まる場所の謎を追え

マスター:狐野径

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
3~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2018/07/10 22:00
完成日
2018/07/16 18:24

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●大島
 エトファリカ連邦国の天ノ都より徒歩で二日ほど行ったところにある地域。
 もともと治めていた武家が不在ということもあり、その補佐に近いような、ただ長い間住んでいるからボス的役割になっていた大江家主導で、都に避難していた民が戻っていた。
 海に近いこともあるため内陸に住むことも検討されたが、海岸線の形状から現状維持となっていた。
 大江家の住む島の名前がなかったのでとりあえず「大島でいいと思います」という大江 紅葉(kz0163)の思い付きでとりあえず、大島となった。
 なお、島こそ「大島」とついたが、地域の名前は不明なままだった。大江家も周辺に住んでいた人も忘却した上、「今忙しいから後でいいや」と結構おおざっぱだった。
 一気に人が増えたため、作業も捗る。
 一方で問題もじわじわ湧く。
 紅葉の師匠の吉備家も都から拠点をこちらに動かしてしまった。そのため、妻子と家臣の多くがこちらにいる。
 都育ちの妻は文句こそ言わないが、不満が膨れ上がっている。大江家の方が非常に気を使って、優先的に屋敷の建造をはじめとして便宜は図っている。もちろん、それだけで優先しているわけでもない。小さな紅葉が陰陽寮に入った後、面倒を見ていたのが彼やその師匠だったから恩義も感じている。
 子どもたちは都の外が初めてであり、思いっきり走り回っても怒られないためのびのびとしていた。里人の子らとも知り合いになり、色々と学ぶ良い機会となっていた。
 妻子の状況は家臣から連絡を受けていた吉備 灯世は緊張感漂わせつつ、都で必要物資を買い込んで里に向かった。
 灯世は荷物の一部は大江家に搬送する。そちらから注文を受けた物や、灯世自身が世話になっていることもあって色々差し入れたのもある。
 ようやく妻と対面したが、不安と不満と色々入り混じる表情をしている。むろん、夫に会えて安堵しているのも伝わる。
「旦那様……」
「すまない……」
「なら、都に戻ってもよいのではありませんか」
「……スメラギ様に頼りっぱなしの安全確保も問題かもしれないと思っている……」
 だからこその無理矢理の脱出だった。
 妻はしおれる。
「安全に生きられることを願っている。都が安全だとは思う。ただ、住める地があるのにそこにとどまれば、妖怪をのさばらすことにつながるとも思っている」
「あなたが考えることでは……でも……そうですわね。そうです! 子どもたちに少し勉強するように叱ってくださいませ」
 妻は少し表情を緩めた。
 直後、子どもたちがなだれ込んでくる。父親の帰宅に非常に喜んだ。これまであったことをすべて話す勢いである。叱るどころではない。遊べるとき、遊んでおくのも重要だと感じる内容だ。子らは子らで「飲み水見つけた」「草がたくさん生えている所見つけた」などこの地域の発展に貢献をする遊びをしているのだから。
「で、紅葉さんはどうしたのですか?」
 妻に言われた瞬間、灯世が何とも言えない顔になった。
「色々あってグラズヘイムにいる」
「え?」
「そろそろ戻ってくると思うが……」
 妻はこの瞬間、夫も夫で大変だったのだと感じ。子らが疲れ果てて眠った後、二人で仲良くお茶を飲みながら夏の夜を過ごした。

●砦建設現場
 妖怪は南から来る……ここの地理を考えると、都側のルートよりそちらから今後も多くは来るだろう。
 南の道はちょっとした丘であるが、どこにつながっているか不明だ。だから、そちらに砦を作る昔も今も。
 紅葉は「陸地と島をつなぐ橋を作る」とは言っているが、優先順位では砦だった。なにが起こるかわからないため見張りが必要だ。人数は増えたとはいえ、戦えるものは限られている。
 砦を作り、防御し、少しでも時間を稼ぎ、有利に戦わないとならない。木材や竹材を使いつつも、できる限り石やレンガなど、頑丈な物にしようとしていた。
 まず、ふんだんにある竹で大まかな建設位置を定め、柵を作った。それが徐々に石やレンガを使った建物に変わっていく予定だ。
 現在は一棟だけ建った。高さは三階建てに近い建物で、屋上が見張り台となるものだ。それと、中は仮眠を取ったり、休憩を取ることができるスペースとしてある。とはいえ、ここの作業にかかわる人間の数を考えると足りない。その近くに仮設の小屋がある。
 次に、その建物から左右に一定距離の壁を作っていく。壁の中に道があるタイプだが、まだ途中だ。
 灯世はそれを見物に来る。
「紅葉も伊達に西に遊びに行っているわけではないな」
 どう考えても、技術はこちらのものであるが、建物の形状は西の物を意識している。必要なものを取り入れ、新たなものを作っている。
「それにしても……嫌な雰囲気が漂っているんだが」
 建設現場には仮設がある。仮設の建物自体は問題はないし、働く人にも問題はない。
「……何かはある?」
 占ったところで何避けられると言えば、気持ちの問題だ。
 羅盤を取り出し、方角や時間を示していく。そして、一つの卦が現れる。
「……冗談じゃないぞ……なんでだ、妖怪の卦? まあ、何かはいそうだがが」
 注意は必要ということだろうか?
 南からの強い風は生温かく、血の匂いを含んでいるようだった。
「おい、塔の上から南を見て、何かあるか?」
 見張りに声をかける。
「……特には……いえ、女性でしょうか」
 この瞬間、灯世ははっとする。旅人もいるだろうから人が来ないということもないだろう。しかし、この先に集落があるとは聞いていない。
 先日、灯世の家に来たハンターたちは西にいたモノについて告げていた。
「おい、戦えるものは準備しろ。いや……逃げられるものもは早くしろ! 里まで戻ったら『妖怪が来たから防備を整えろ』と告げろ」
 一気に緊張の糸が張り詰めた。
「焦るな……まあ、俺だって大した符術師じゃないんでな……」
 灯世はつぶやいた。

●依頼
 里から都まで時間がかかる。しかし、依頼を出すのにはそれしか方法はない。
 結局、灯世自身もぎりぎりで離れた。敵の数が多かったこともあるし、砦でやり取りするほど力はない。
 里では大島に避難したり、都側に避難経路を確保したり、体制を整える。
 幸い、砦から敵は来る様子はなかった。しかし、それは不気味さが漂う。道はここから都に抜けられるが、道を通らなければ都には行ける。
 何が起こっているのか、確認していかないとならなかった。

●妖怪
 あな、懐かしや……あな、憎しや……結局、ここに戻ってきたのう。
 ここに何があるのか……ついてくるモノもおる。
 ああ、あの方……あの方……名前が思い出せぬ。
 ここは? あの山の稜線、記憶に、ある? もっと、青々としていたような……。

リプレイ本文

●大島前
 情報収集や整理のために、依頼人のいる大島周辺にハンターたちは寄る。吉備 灯世は大島の外にある陸地側で待機しており、やってきたハンターを見てほっと息を吐いた。
 トリプルJ(ka6653)はピリピリした雰囲気を吹き飛ばすような明るい声を出す。
「島の民の安全確保の砦が雑魔に占拠されちまったら本末転倒だぜ。当たる、を幸いになぎ倒していくしかねーんじゃないの?」
 拳を固める姿は不安の多い民にとって頼もしく映る。
 メイム(ka2290)は眉を中心に寄せる。
「今は情報不足だし、今回はあたしたちも少人数、駆逐目指すのはやめとこう?」
 倒せるという確信がない場合は手を出さないことも重要だと指摘する。
 ロニ・カルディス(ka0551)は慎重であるべきとは考えおり、同意する。
「威力偵察が優先だな。砦にいるのか不明だが……そこに留まっている場合、そのあたりに何があるかの情報も聞きたいところだ」
 灯世が了解の旨を示す。
 カーミン・S・フィールズ(ka1559)が灯世に情報の確認をする。
「で、敵は今、砦に立てこもっているわけね?」
「……というのも状況の一つでしかないな」
 灯世はこの地域の地図、もみじマークが入って手作りの物を見せた。
 レイア・アローネ(ka4082)は情報収取を始めた仲間を見る。
「私は、ここで待っていよう。敵が来る危険性があるというなら、見張りもいるだろう」
 フィリテ・ノート(ka0810)がそれに付き合う旨を告げる。
「何かいる方向には馬で行くし、ここで待っていれば少しでも里の人のためになるよね」
 見張りに当たっている人たちはハンターに礼を述べた。

●情報
 カーミンは地図を見て、ライブラリで見たところのある場所の可能性を考える。
「距離は違うかもしれないわね」
 夢に近く、情報の整え方によっては実際のものとのずれはあるかもしれない。
「同じかもしれないけれど、この地域を考えれば何かはあった場所よね……。もし、あの時の人たちがいたとしても生きていない可能性が高いのかもしれないわね」
 東方での妖怪との戦いでは多くの人が亡くなっているのだから。
「さて、地図は叩き込んだし、行く準備よね」
 カーミンは気持ちを切り替えた。

 トリプルJに大島で、大江家の家令・堀川 瑞貴に以前から懸念事項だったことを聞く。今回関わっているかはわからないが、関連がある可能性は否定できない。
「ここ五十年くらいで紅葉の姉妹を除いて行方不明になったり死んだりした大江家宗家の娘はどれくらいいるか?」
 瑞貴は父親から情報は引き継いでおり、首を横に振る。
「先代の家族にも女性はいましたが、普通の死に方……いえ、天ノ都に逃げる途中で命を落としたかそれ以前になくなっています」
「普通?」
「誘拐や家出、歪虚以外による殺害は特にないです」
 トリプルJはこの地域の激戦具合を考えると瑞貴の言葉に悲しみを覚える。現在のために、図書館に出た歪虚がリシャール・べリンガーに紅葉が贈った刀につけてある香に反応した旨を告げる。
「香ですか……宗主だけが調合を教わる物を得られる位置にいる人物で不審な状況になったモノはないですね」
 瑞貴がトリプルJにすまなそうな表情を見せる。
「正直申しますと、先代の奥方様も歪虚となっておりました。我々を逃がすために残った方々が歪虚となっていても……驚きません」
 トリプルJは礼を述べて仲間のところに行った。

 ロニは灯世に状況を確認する。
「砦の近くに歪虚がとどまっているならば、その近辺に何があるのかと考えられる。そのため、重要なものがあるかということを聞きたい」
「んー、俺の知っている範囲で答えると、砦の前は砦であり、その前も砦。その近くには武家の屋敷があったはずだ」
「武家?」
「武家だっていたさここも。砦の立て直しが多かったかというと、何度か襲撃を受けているからだ。最初は武家が担当していたらしいが、その武家が崩壊した後、大江家主導で地域を守るためのかなめの一つとした」
 徐々に南から侵略された結果なのだとロニは推測できた。
「調査の結果、必要なら大江の方に聞こう」
「そうしてくれ」
「大江家と武家に何かあったとかは?」
「避難してきたとき言っていたけれども、大江側からするとさっさと戦線崩壊起こしたため辛口だったな」
 ロニは礼を述べた。

「お疲れさまー。こっちは特に変わったことはなかったよ」
 メイムが気になることを調べに行っていた仲間を迎えた。
「気づくと虎猫があちこちにいる気がする」
「確かに多いな」
 フィリテの指摘通り、放し飼いの虎猫にレイアは気付く。あまりに気にはならないが、苦手だと気になるのだろう。
 気になることを聞きに行った人達が情報を伝えた。
「……武家の屋敷ねぇ」
 カーミンは眉を寄せる。グラズヘイム王国で遭った歪虚はそのような雰囲気は持っていた。
「現在目撃された歪虚は、ゆかりのある人物ってことかな」
「要確認事項だな」
 ロニの言葉にカーミンはうなずいた。
「あと、以前、グラズヘイムで出た歪虚の手がかりもここにあると思って聞いておいた。でもなー、進展がないというか……歪虚支配地域になると異常なことしかないってことだな……」
 トリプルJは大きく息を吐く。
「生きている人がいれば語ってくれるけれど、その前になるとあやふやになっていくよね」
 メイムは告げる。霊闘士である彼女には【深淵の声】というスキルがあるが、死体が記憶する最期が完全にみられるわけでもない。死人に口なしとまではいかないが、知ることができるのはわずかな手がかりだ。
「分からないことはひとまずおいておいて、目の前の事件にあたろうよ」
「そうだな」
 フィリテの言葉をレイアが肯定するが、他の者も同じで気を引き締め出発した。

●偵察
 状況を見るだけか、威力偵察になるか、薙ぎ払うことは状況による。
「虎猫が歩いている以外……何もなかったよね」
 フィリテは周囲を見渡す。馬に乗っている分、遠くまで見える。なお、大江家の周りにいる多くの虎猫達は、見回りをしているようにうろついているだけで、特に何もしてこなかった。
「……遠くを見ても……よくわからないけれど……なんか、いるようには見える」
 フィリテは首をかしげる。
「近付くにしても用心だね。少しだけ偵察に行かせるよ……行って、あんず」
 メイムが桜型妖精アリスのあんずを飛ばし【ファミリアアイズ】を使用する。
「こういうことすると、もし、負のマテリアルが強かったらあんずの命がかかっているんだよね」
 ふとメイムが言う。あくまでペットの視界を共有するだけであるため、なんとなく不安にも思うのだった。
「なら飛ばすな、とは言えないのよね」
 カーミンが苦笑し、メイムが「でしょ?」と同意を求めた。
 しばらくは何もないことがわかる。その安全そうなあたりまで再度進み、【ファミリアアイズ】を用いる。
「なんか、やっぱり、いるような気がするんだよね」
「用心しすぎると調査も進まないな。隠れる所も少なくなるしな」
 ロニの指摘に一定範囲まではこの方法で行き、その先は別途考えることを意思の一致とした。

 あんずは見ていた、うねうねする物体とカタカタ音を立てる物体を。
「戻っていいよ。で……スライム状と骸骨系の雑魔がいるよ。まあ、この辺りでよく見るタイプかもしれないよね……油断さえしなければ大丈夫だとは思うけれど、数は多いかな」
 メイムが共有していた視覚情報に考えを乗せて話す。
「砦が占拠されているのは確実ってことだな」
 トリプルJが目視する中、建物は限られている。
「雑魔だけならば、討伐すればいい」
「それはそうだけれど……」
 レイアの言葉にメイムは不安を覚える。
「まあ、いる場所は分かっているわけだからできるだけ状況を考え行動しよう」
 カーミンに言われ、メイムはおおよその地図を地面に書く。
「回り込む感じかな」
「それでいいだろう。念のため、建物の方は見たほうがいいな」
 ロニの確認に他の者はうなずく。外にいる雑魔に気を取られ、中にいるモノを放置するのは問題外だ。
 そして、仮設の柵に沿って進む者と仮設の建物に回り込むほうで別れた。

 カーミンは近づいたとき、スライム状のそれらからうめき声を聞く。ひょっとしたら訴えることがあるのではと思わず耳を傾けた。
 それらは一瞬黙ったが、再び音を出した瞬間、カーミンは脳を揺さぶられるような感覚に陥る。
「うぅ」
「おい、無理するな! こうなったら葬るのが最善の弔いだろう」
 トリプルJが前に出て雑魔に攻撃をした。
「分かっているけれど」
 カーミンは立ち上がると、武器を構える。レイアの攻撃でも雑魔はかなり減るため、このまま倒し切れるようである。
 柵側から回り込む三人も、雑魔を適宜討伐している。
 建物の近くで合流するというところまで来た。
 仮設の建物が揺れる。
 内部からの攻撃で扉が吹き飛ぶ。それと同時に、小袖のような物を頭からかぶったドレス姿の女性が現れる。手には大太刀があり、それが扉を壊した原因だと判断できた。
「あれはやばいよ!」
「そこまでまずいの!?」
 メイムの言葉にフィリテは驚きながらも、魔法の発動体を握りしめ、魔導書も取り出す。
「応援は必要だな」
 ロニが告げたときには、三人とも仲間への援護や、敵に攻撃ができる位置まで移動した。
「あら、いつぞやのおひいさまじゃないの」
 カーミンは目の前に現れた見覚えのある歪虚に声をかける。
「うぬらは……ここまで現れるとは思わなんだ」
「それはこっちもだぜ? グラズヘイムでの仕事は終わったのか?」
 トリプルJの問いかけを、歪虚は一瞥で済ます。
「あなたの取り巻きが何か訴えているようだけれど、何を言っているのかわかるかしら?」
「怒りに決まっておろう。見捨てられ、打ち捨てられた怒り。それ以外に何が有ろう」
 嘲笑が返ってくる。
「ねえ……もう、一服するつもりはないの?」
 カーミンは荷物の紅茶を見せ、あえて問う。返答によっては情報の一端として有意義になる。
「そのようなものが何の役に立つ。妾の……いや、先日のあの童は何かのう。それと、妾の文はどこに行ったのかのう?」
 ふと、歪虚は寂し気に見える表情になるが、怒りに震える寸前にも見える。
「……大江家の初代……島に住んだ人のことを覚えている?」
 カーミンは情報を得られるか、総力戦に持ち込む羽目になるか賭けに出た。
 全員がかたずをのんだ。歪虚の動きが止まり、一瞬、表情が消えた。
「おおえ……大江……ああ、文……妾の文」
 歪虚は肩を震わせる。怒り。炎があふれるようなマテリアルの本流が感じられる。
「まずい……キノコっ、みんなを護ろう! 【コンバートソウル】から【シンクロナイズ】!」
 歪虚の近くにおり、男性であるトリプルJを必ず巻き込む位置でスキルをメイムは使う。
「もう、時間は経っているんだよ」
 カーミンが歪虚に畳みかける。
「大江も変わって、あんたが知っている奴はいないぞ」
 トリプルJが歪虚の攻撃を予期して前に出る。
「うるさい! なぜ、妾を迎えに来ぬ! 約束をたがえる? あり得ぬ!」
 歪虚はマテリアルを用いて攻撃を放つ。
 予期はしていたがよけきれるものではなかった。すかさず、ロニが回復のために力を振るう。
「奥義発動! 【深淵の声】」
 メイムは念のため、戦闘のさなかスキルを使う。しかし、スキル自体は発動しているが、相手にはかからない。拒絶されたようだった。
「なんか悲しそうだってことは分かった。そして、悲しいから怒っているってわかった。でも、いないんだよね、相手は。そして、この人は歪虚になっているのよね。なら、魔導書の力を用いて……」
 フィリテは【グリムリリース】を用い、【ライトニングボルト】を放つ。
「香りは記憶と直結するからな、あんたも思い出してきたってわけか」
 だから戻ってきたのかとトリプルJは考える。歪虚である以上、倒すことが解決の道であるため、攻撃を放つ。
 レイアはこの歪虚の話は聞いており、トリプルJが魅了されることを注意していた。しかし、問題がないならば、その間に敵を攻撃する。
「ああ、恋していたのだな。恋は苦しい。その上、相手がいなくなればより一層、苦しく、辛い」
 レイアは恋をしていただろう歪虚を考えた。その言葉に、歪虚は苛立ちを見せた。
「うるさい! おまえに何がわかるのかのう!」
「分かろうとはするが、完全にわからない」
 ロニは淡々と告げる。仲間の回復に専念した。
「ねえ、あなたは誰?」
 カーミンは歪虚を翻弄するように移動しつつ、尋ねる。
「それは――そうだのう……妾はすべてを得たい! 同化し得たいのう……ふふっ。あれは妖怪好き……いや、リアルブルーかぶれというのか……そうだのう、文車妖妃(ふみぐるまようき)とでも名乗ろうかのう」
 歪虚はにんまりと笑った。その唇が異様に赤く目立つ。
「そうだの! ああ、決めた! 大江の血筋を根絶やしにする、というのが一番面白いのう」
 ハンターはまずいと考え、一気に攻勢をかける。
 しかし、攻撃は当たるが、倒し切る前に離脱される。
 ついて行けなかった雑魔たちが残っているため、討伐はする必要があった。

●事後処理
 トリプルJはしばらく砦に残ることにした。
「砦の奪還はできただろ? 考える力があるあいつがここを離脱したってことは、戻ってこないとは思うが……念のためいるよ」
 トリプルJを残し他の者は一旦はなれる。砦を守る者、直す者が行くのは確実であるから。
 大島の方に戻り、状況の説明をされ、灯世と家令の瑞貴は何とも言えない顔になる。
「初代って何やらかしたの!」
「大江家の血筋を根絶やしにする宣言をしたぞ」
 カーミンとロニに言われたときには表情が硬直する。
「初代は口が軽いタイプではあったそうです……よく言えば、交渉がうまい、悪く言えば八方美人」
「……それかああ」
 カーミンは頭を抱える。主筋の姫君に何か言った可能性はあり、相手が真に受けたのかもしれない。
「初代の血筋だと、紅葉様しかおりません。現在、グラズヘイム王国にいますし」
「なら手紙を出すなり注意は促しておいたほうがいいだろう」
 ロニの提案に瑞貴はうなずいた。
「紅葉さんの居場所、わかっているならそれが確実だよね」
 メイムはうなずく。
「イスルダ島から帰ってくると思いますが」
「……よりによってそこにいるの!?」
 ここも歪虚支配地域だったが、イスルダ島も歪虚支配地域であったわけだから思わずメイムは苦笑した。
「恋をしているときに死んだのか」
「それは悲しいよね……ん?」
「どうかしたか?」
「なんでもない……なんでここ猫多いの!?」
 レイアが心配して声をかけたところに、フィリテの目の前を虎猫が通り過ぎたのだった。

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MVP一覧

  • 支援巧者
    ロニ・カルディスka0551
  • 花言葉の使い手
    カーミン・S・フィールズka1559

重体一覧

参加者一覧

  • 支援巧者
    ロニ・カルディス(ka0551
    ドワーフ|20才|男性|聖導士
  • 恋人は幼馴染
    フィリテ・ノート(ka0810
    人間(紅)|14才|女性|魔術師
  • 花言葉の使い手
    カーミン・S・フィールズ(ka1559
    人間(紅)|18才|女性|疾影士
  • タホ郷に新たな血を
    メイム(ka2290
    エルフ|15才|女性|霊闘士
  • 乙女の護り
    レイア・アローネ(ka4082
    人間(紅)|24才|女性|闘狩人
  • Mr.Die-Hard
    トリプルJ(ka6653
    人間(蒼)|26才|男性|霊闘士

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依頼相談掲示板
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ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2018/07/07 11:31:39
アイコン 依頼内容、調査。
カーミン・S・フィールズ(ka1559
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|疾影士(ストライダー)
最終発言
2018/07/10 19:02:35