忍び寄る虧影

マスター:鷹羽柊架

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
3~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2018/07/13 07:30
完成日
2018/07/20 06:18

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 ドワーフ工房の協力部族が盗賊に狙われていた事が分かり、工房管理官のアルフェッカ・ユヴェーレンはハンターを雇い、盗賊の捕縛を頼んだ。
 捕縛は成功。尋問にて、盗賊達の狙いは鉱物……だけではなかった。
 協力部族を使い、鉱脈と近隣に存在するドワーフ工房の武器を作っているドワーフ工房の武器を奪うのが目的だという。
 賊は成功すると思っていて、強襲を終えたあとに鉱物や情報を売り捌く買い手と会う約束をしていた。
 取引の刻限は近づいてきている。
 その取引場所を尋問担当より話を聞いたアルフェッカは怪訝そうな顔をし、「了解した」旨と教えてくれたことに感謝した。
 自身の執務室へと向かったアルフェッカは切れ長の蒼い瞳を細め、思案にくれる。

 アルフェッカはカペラ、シェダル、フォニケを執務室に呼び、先ほど聞いてきた賊の結果を伝えた。
「ウチの武器を狙いは本命はウチに納品する武器ってこと?」
 顔を顰めたのはカペラだ。
「両方だろうな」
 シェダルは窓辺に立って紙巻煙草を燻らせている。
「ウチが目立つ理由ってわからないでもないけど」
 ため息交じりに呟くフォニケが燻製肉のサンドイッチを頬張った。
 四人の頭の中に浮かぶのは夏場には近寄りたくない仄かどころではない体臭を漂わす某ドワーフ王。
「それが原因だったら前からだろ。ともあれ、取引場所に行くようにハンターには依頼している」
「私も……」
「前、散々甘やかしてもらったんだからダメ」
 挙手しようとするフォニケはアルフェッカから仕事の指示書を渡され、頬を膨らませる。
「諦めろ」
 そう呟くシェダルはアルフェッカの方へと顔を向けた。
「場所はどこだ?」
「お前も知っているところだ」
 紫の視線を受けたアルフェッカは机に肘をつけて頬杖をつく。
「前の要塞管理官の側近が通っていた娼館」
 しれっと呟くアルフェッカに三人の表情が変わる。
 現在の要塞管理官が来るまで、要塞都市は腐敗していた。
 暴力や賄賂が横行し、治安も良くなかった。
 ドワーフ工房もそんな環境の中でやっており、いい思い出はあまりない。
 しかし、その要塞管理官の側近は何かとフォニケやシェダルに便宜を図ってくれていたが、娼館の女を身請けする際に横領に手を出し、身請けする前に捕まってしまった。
「蛇の歪虚が出たんでしょ」
 しれっと、フォニケが告げる。
 アルフェッカもシェダルも「どこで聞きつけたんだ」と言わんばかりの顔をしていた。
「一度は歪虚が出たのによく使う気になったわね。また歪虚と遭遇すると考えないおばかさんか……」
「何とかできる実力がある覚醒者かってところかしら」
 呆れるカペラの言葉をフォニケが繋いで肩をすくめる。
「決めつけはだめだって。ま、何にせよハンター達に買い手捕まえればわかるだろ」
 ふーっと、息を吐いたアルフェッカが呟いた。


 早急に集められたハンター達は問題の宿に向かっていた。
 アルフェッカが聞いてきた話ではハンター達が向かう日がその当日だという。
 場所は辺境郊外の娼館。この辺りは現在の辺境管理官の手が入った地域であり、周囲に人の姿はない。
 殆どの店が違法風俗で摘発に遭い、すっかり寂れてしまっている。
 これから向かう娼館も、人身売買で買った女に売春行為をさせており、横領の件も含めて潰されたという話だ。
 前にハンター達が関わった依頼では、当該の元側近が身請けしようとしていた女が娼館で相手を待っていたが、ハンター達が踏み入れた時にいたのは蛇の歪虚だった。
 今回は鬼が出るか、また蛇が出るか……。
 そんな事を口に出すか出さないかの中、館から倒れる音がした。
 正面玄関のドアを開けると、差し込む光源で見える場所に男が倒れている。
 首から出血しており、動いていなかった。
「おや……」
 どこか人を馬鹿にしたような芝居がかった声が奥より響く。
 ハンターが見た方向にはハンターオフィスの情報で見た者もいるかもしれない。
「その姿はハンター諸氏……ですかねぇ」
 月光の如く青みを帯びた髪を揺らし、被っていたうさ耳帽子を外して胸元に当てて一礼する。
 愉しそうに歪ませる笑顔は不敵な様子すら思わせてしまう少年と青年の間のような姿をした者の名は歪虚、アクベンス。
「今日はそこの裏切り者の始末を頼まれましてねぇ。あ、私の仲間ではありませんよ」
 警戒するハンター達にアクベンスは挨拶もそこそこに口上をあげる。
「私は仕事を終えたので、失礼しますよ。こう見えて多忙ですので」
 そう言ったアクベンスはハンター達がいる場所とは反対方向の窓へ蹴り破って去っていった。
「待て!」
 ハンターの一人が追おうとしたが、行く手を阻んだのはオークと骸骨兵。
 そして、倒れている男は絶命しており、手の施しようがなかった。
 この娼館を出るには歪虚を倒すしかない。

リプレイ本文

 依頼に応じたハンター達はまず、ドワーフ工房に赴いて詳しい場所の地図を渡された。
 応対してくれたのはカペラとシェダルであり、前回の依頼に参加していたオウガ(ka2124)と星空の幻(ka6980)は「フォニケが世話になった」と礼を言われる。
「今日はいないの?」
 星空の幻が視線を巡らす。
「またゴネそうだから仕事増やした」
 シェダルが言い切ると、オウガはなるほどと頷く。
「人数はわかりそう?」
 南條 真水(ka2377)の問いにカペラは肩を竦めた。
「それがさっぱり……大抵は三人で来るみたいだけど」
「口をつぐんでいるというのではなく、把握してないというわけか」
 どこか呆れた口調で言葉を返すのはコーネリア・ミラ・スペンサー(ka4561)だ。カペラもまた、頷いている。
 いくらなんでも、人の物を奪って売買するには不用心に思えたから。
「まずは行ってみないとわからないようですね……」
 うーんと、唸るように穂積 智里(ka6819)が呟く。
「そうね、行きましょうか」
 アイラ(ka3941)が促すと、他のハンター達も歩き出す。彼らの背を見送ろうとしたカペラは「あ」と声を出す。
「そうだ。アイラさん、オウガ君。テトちゃんとルックス君、たまにこっちに来ることがあるんだけど、元気よ」
 あまり姿を見ていない二人の姿を思いだし、アイラとオウガは顔を見合わせて微笑む。
「ちょっと気になることがあるから、後で寄ってちょうだい。みんなでお茶していって」
「あ、嬉しいな。お邪魔するね」
 ぱぁっと顔を明るくする真水にカペラが笑顔で見送ってくれた。

 向かった辺境郊外は人の気配がなく、人の気配はあっても、世捨て人くらいなもの。
 嘗て、現在の要塞管理官が前の管理官とその側近の調査をした際に発覚した横領の件で娼館を調査しに行った後、他の店も検挙の対象となり、一気に寂れていった。
 今の要塞管理官の手腕によるものであり、それを影で喜ぶ者がいれば、恨む者もいる。
 娼館の正面玄関に到着すると、オウガが扉のノブに手をかけようとした瞬間だった。
 ドアの向こうから何かが倒れる音が聞こえる。
 勢いよくドアを開けたオウガが見たのはドアの光源で確認できる場所に男が倒れていた。
 見た目は旅人といった姿であったが、その首から血が流れ出ており、埃に塗れた床を更に汚す。
 声をかけられたハンター達の中には聞き覚えがあった者もいた。
 忘れるわけにはいかない。
 共に歪虚と立ち向かった戦友の仇……歪虚、アクベンス。
「な、なんで貴方がここにいるのよ! ストーカー!」
 即座に叫んだのはアイラだ。
「おや、今日も元気そうですね。何よりです」
 高潔な魂と勝手に認定されてしまった彼女にとって、アクベンスは目障りな存在。
「アクベンス! てめぇ!!」
 一気に身体中の血が沸くような感覚に襲われたオウガは怒りを叫びに変えた。
 アクベンスの名を聞いたハンター達は心当たりがある者もいた模様。
「どうしてこんなところに……」
 思案する智里だが、それ以上に今の現状に青ざめてしまう。
「今日はそこの裏切り者の始末を頼まれましてねぇ。あ、私の仲間ではありませんよ」
 警戒するハンター達にアクベンスは弁解を述べる。
 彼自身は危害を加えるつもりはない様子だ。
「私は仕事を終えたので、失礼しますよ。こう見えて多忙ですので」
 そう言ったアクベンスはアイラに茶目っ気を含んだウィンクを向けた。反射的に拒絶反応を見せるアイラを横目に愉快そうな様子でアクベンスはハンター達がいる場所とは反対方向の窓へ蹴り破って去っていった。
 銃を構えるコーネリアを阻んだのはオークだ。
 声を出さずに周囲をみやるコーネリアの視界に現れたのはオークと骸骨兵。
「話が違ってきてる……」
 買い手とお話合いと思ったが、歪虚退治と理解して真水はストレートにがっかりした様子を見せる。
「倒し終わってからガッカリしよっかぁー」
「多分、がっかりの使いどころが違うと思います」
 星空の幻の言葉にしっかりと智里がツッコミを入れた。

 敵の数はオークと骸骨兵がそれぞれ三体。
 拳銃を手にしたコーネリアは敵と倒れている死体、人形歪虚アクベンスの言葉を思い出す。
「飛んで火に入る夏の虫か、虎児を得る為の虎穴か……」
 どうにしろ、コーネリアにとって、歪虚は殲滅すべき存在。
 コーネリアが動くよりも速く、オーガが武器を振り上げ、彼女の方へと向かう。自身の間合いに入るなり、武器をコーネリアへと振り下ろした。
 回避をしたコーネリアだが、背後にいた骸骨兵に肩を殴打される。
「く……っ」
 自身の間合いを取ったコーネリアを確認したアイラの背に白龍にも似た虹色の翼が広がる。
 アイラが発動させた魔法は白龍のドラゴンブレスに似たものが骸骨兵へと向けられた。混乱が生じたのか、ぴたりと不自然な歩きかけの姿勢で止まってしまう。
 隙を逃すことなく、アイラは手にしていた魔導剣斧「シャッテンシュピール」を思い切り振り上げ、重い一撃を浴びせてコーネリアと別方向に吹き飛ばした。
 骸骨兵はアイラに任せ、コーネリアは魔導拳銃をオーガへと向ける。
 彼女の周囲に粉雪のようなオーラが舞い、銃口へと冷気が集まっていく。
「相手が悪かったな」
 コーネリアが呟くと、冷気に還元したマテリアルを集束させた弾丸を射出するべくトリガーを引いた。
 弾丸はオーガの右腕に当たり、冷気が飛散すると、娼館より微かに入る光源に反射した冷気が煌めく。
 痛みを感じて身を屈めるオーガを見たコーネリアは視線を外さずに口を開く。
「リアルブルーの物語に出てくる女騎士のように容易くやられると思うなよ」
 そんな戯れの言葉をオーガが知っているとは思えないが、挑発と受け取ったオーガはもう片方の腕を振り上げてコーネリアを狙う。
 オーガの攻撃よりも早くコーネリアは再びフローズンパニッシャーを込めた弾丸を撃った。両方の腕を氷漬けにされたオーガは動かすことも儘ならず、身悶えしてしまう。
 コーネリアは一気に間合いを詰め、鉄爪で凍ったオーガの腕を砕くように殴った。
 唸り声をあげるオーガは一歩後退るが、背に何かが当たる。
「逃がしません」
 先ほどまでなかった壁がオーガを遮ったのは、智里が形成させたアースウォール。

 コール・ジャスティスを発動させていた真水はオーク相手に正義を騙るのか……と客観的に見て、少々テンションが下がっていた。
 とはいえ、目の前の歪虚は倒さないとならない。
 少し下がってしまったぐるぐる眼鏡の位置を直し、真水は歪虚を見据える。
 彼女の足元近くに横たわるのは今回の捕縛予定だった買い手の男。これ以上の遺体の損傷を防ぐため、彼女は遺体を守るように立ち回っている。
 短く息を吐いた真水は錬金杖「ヴァイザースタッフ」をオーガへ突きつけるように構えた。
 錬金杖より展開されるのはクライアの光。
 オーガは光に貫かれるが、闘争心は打ち消されていなかった。真水へ伸ばされる手を遮ったのは、虚空より現れた無数の手。
「それ以上近づくな」
 真水を守ったのはオウガのファントムハンド。彼が発動させた無数の手はオーガの身体に絡みつく。
「そうそう、お触り禁止だよ」
 茶目っ気のある台詞を告げる真水は微動だに出来ないオーガへもう一度発動した。

 星空の幻はコーネリアの方を向きつつ、何か思案しているようだった。
 彼女が持つ知的好奇心の琴線に触れたようだが、今は戦闘中。
「おっとー」
 タイミングよくしゃがんだ瞬間にぶぉんと、星空の幻の頭スレスレをオーガの武器が空ぶる。
 くるりとターンを決めた星空の幻は魔導拳銃を構える。彼女が見上げるのはオーガだ。
 マテリアルを込めてトリガーを連続で引いた。
 雨……否、泪の弾丸がオーガへと撃ち込まれていく。
「逃げないようによろしく」
 星空の幻は近くにいた智里へ所持品をチラつかせつつ、声をかける。
「わかりました」
 リクエストに応えてくれた智里はアースウォールを星空の幻と交戦していたオウガの背後に錬成した。
 オーガの逃げ場を塞いでもらった星空の幻は周囲に冷気を漂わせる。
 冷気を弾丸に込めてダメ押し宜しく氷の女王のキスをオーガの足元へ命中させ、移動を阻害した。
「行くよ」
 告げた相手はオーガだ。星空の幻が手にしているのはマテリアル花火。
 注意書きには人に向けてはいけませんと書いてあるアレである。
 大好きなもっち花火に逢える瞬間だ。

 前衛にいたオウガはそっと苛立ちも含み、ため息をつく。
 暫く姿を見せなかったアクベンスが再び現れた。
 今度は賊とはいえ。人間の殺害。
 単独ではなく、歪虚の同胞を連れていた。それが何を示すかはまだわからない。
 顔を上げたオウガは骸骨兵が長剣を振り上げていることに気づく。オウガはナックルを眼前に構え、長剣を受け止める。
「オウガ君!」
 気遣うアイラの呼びかけに「大丈夫だ」と彼は返す。
 オウガはナックルで長剣をいなしてそのまま拳を骸骨兵の大腿骨目がけて叩きつけた。骸骨兵に痛覚は存在しないが、火属性を持つナックルの一撃は骨を黒く焦がし、折れた骨から床に落ちる。
 周囲を確認したオウガは目の前に崩れる骸骨兵を持ち上げ、アイラの攻撃でフラフラとなっている骸骨兵目がけ、思いっきり振り回し、二体の骸骨兵を砕く。

 娼館の中にいた歪虚を全て倒した後、ハンター達は周囲に他の歪虚がいないか確認した。
「特に歪虚や賊はいないみたいね」
 アイラが他のハンターに確認を取ると、いなかったという答えが返ってきた。
 何処か重い空気の中心は買い手の男だ。
「あれ……」
 ぽつりと呟いたのは智里だ。彼女の視線は男の外套の奥。
 失礼して、気になったものを指で挟んで取り出すと、炎のような色合いの赤い羽根の首飾りが取り出された。
 それにオウガとアイラが反応する。
「……辺境に、同じ部族の者に赤い羽根の首飾りが与えられるエーノス族という部族が存在していた」
 ぽつりと呟いたのはオウガだ。
「していた……ということは今は……」
 言葉を促す真水にオウガは頷く。
「賊に襲われたんだ。若い女は攫われ、他は戯れに殺された。一人を残してな」
「生き残りは今、部族なき部族という集団に所属しているの」
 アイラが言い終わると、更に空気が重くなった気がするが、オウガは横たわる買い手の男の傍らに片膝をついた。
「とりあえず、訊けるものならきいてくる」
 そう言ったオウガは深淵の声を発動させる。
 どれほどの情報を齎せてくれるかわからないが……。
 分かった情報は苛立ちや嫉妬……悔しさのような感覚、そして、アクベンス。
 アクベンスは買い手の秘密を暴いていると思えるような情景。
 ぼんやりと聞こえたのはアクベンスの「彼を東方まで出向かせて無駄骨だったようですね」という言葉。
 そこで情報は途切れた。
 オウガは分かった部分を仲間に伝える。
「……東方にわざわざ仲間を行かせていた……か」
 ぽつりと、呟いたのは真水だ。
「真実を得るには情報が足りない」
 一度ハンター達の思案を遮ったのはコーネリアだ。
 とりあえず、今回の件は治安部隊に連絡して然るべき、処置をして貰わないとならないと彼女は判断した。

 治安部隊を呼び、現状を確認してもらう。
 ハンター達も現場検証に立ち会った。オウガが治安部隊に深淵の声で見たものを報告する。
「買い手さん、見たことってあるかな?」
 真水の問いに治安部隊の隊員は「手配書では見たことがないよ」と返した。
「これから調べればまた違った情報が出てくるかもしれない。ハンターに依頼するようなことがあれば、その情報は必ず渡される」
「うさ耳つけたお兄さんが「裏切者」って言ってたけれど、買い手さんは『普通の』買い手さんじゃないよね」
 更に真水が質問を投げると、隊員達は「その方向で調査する予定だ」と返す。
 彼らも常識内の市場ではないところに居る買い手だと推察してくれていたようだった。
 少し遅れて、カペラとフォニケがハンター達を迎えに来てくれた。
「グラムちゃん、大丈夫だった?」
 フォニケが声をかけると、グラムは満足そうに頷く。
「今日ももっちは、可愛かった……」
 またやったらしい。

 ハンター達は検証や調査を治安部隊に任せ、ドワーフ工房へと赴いた。
 水出しハーブティーで喉の渇きを潤す。ほんのり甘酸っぱい味だが、ミントに近いハーブが入れてあるのか、清涼感がある。
 供された焼き菓子は全粒粉とナッツのクッキー。よく咀嚼すると甘みが出てくる素朴な味だ。
「美味しい」
 思いがけず、涼を得ることが出来た真水は嬉しそうに息を吐く。
 カペラとフォニケがハンター達が先ほど体験した話を聞いてくれた。茶と菓子を出してくれたシェダルは仕事へ戻っていった。
「アクベンスはエーノス族を襲った賊に関係する者と繋がっていた可能性があるってことね」
「まだ確定ではないが、それに近いものはあると推察できるな」
 話を纏めたカペラの考えにコーネリアも同意の姿勢だ。
「辺境は、こんなに歪虚と人の位置が近しいんですね」
 ぽつりと呟いたのは智里だ。
 彼女が受けた依頼の地域は王国と東方が主だった。
「歪虚は勿論自分のためにしか行動しませんけれど、そのために眷属を動かすことはあっても人と結んで人に協力して事を起こすということがあるなんて……」
「アクベンスは変わっているという事に関しては確かにそうね」
 どこかげんなりした様子のアイラは過去の事を思い出している。
「あ……そういえば」
 真水の隣でハーブティーとお菓子を満喫していた星空の幻が声を上げた。
「誰かが言ってたんだけど……『クッコロ』って……何?」
 あどけなく首を傾げる星空の幻の様子に他意というものは存在せず、彼女の知的好奇心を満たしたいという欲だけが見られる。
 分からないのはクリムゾンウェストの住人達。
 リアルブルー出身者の方へと視線を向けた。
「あ、そういえば、リアルブルーの物語で何かあるのよね」
 思い出したようにアイラがコーネリアに話を投げる。
「ああ、確かにあるよね」
 真水が頷くと、悲鳴のような声を上げたのは智里。
「で、でも!? そういうのは、グラムさんには過激なのでは!?」
 何故か動揺している智里にコーネリアは表情を変えない。
「物語の女騎士が敵に捕まっても命乞いをせずに、そのまま殺せと言う気高い騎士精神を讃える表現と言えば問題ないだろう」
 問題ない。色んな意味で問題ないし、正解だ。
「なんだか……かっこいい……」
 目を輝かせて星空の幻は好奇心を満たせて嬉しそうだった。

 治安部隊の調査報告が上がるのは少し経ってからの事だ。

依頼結果

依頼成功度大成功
面白かった! 4
ポイントがありませんので、拍手できません

現在のあなたのポイント:-753 ※拍手1回につき1ポイントを消費します。
あなたの拍手がマスターの活力につながります。
このリプレイが面白かったと感じた人は拍手してみましょう!

MVP一覧

  • 援励の竜
    オウガka2124
  • ヒースの黒猫
    南條 真水ka2377

重体一覧

参加者一覧

  • 援励の竜
    オウガ(ka2124
    人間(紅)|14才|男性|霊闘士
  • ヒースの黒猫
    南條 真水(ka2377
    人間(蒼)|22才|女性|機導師
  • 太陽猫の矛
    アイラ(ka3941
    エルフ|20才|女性|霊闘士
  • 非情なる狙撃手
    コーネリア・ミラ・スペンサー(ka4561
    人間(蒼)|25才|女性|猟撃士
  • 私は彼が好きらしい
    穂積 智里(ka6819
    人間(蒼)|18才|女性|機導師
  • 白銀の審判人
    星空の幻(ka6980
    オートマトン|11才|女性|猟撃士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談内容
穂積 智里(ka6819
人間(リアルブルー)|18才|女性|機導師(アルケミスト)
最終発言
2018/07/11 17:15:15
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2018/07/11 08:55:35