店番をして欲しい

マスター:きりん

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2018/08/03 15:00
完成日
2018/08/06 10:51

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●ある街の何でも屋にて
 店主である女性はカレンダーを目にして思案に耽っていた。
 現在時刻は夜。既に閉店時間を過ぎていて、後は明日の準備をして寝るだけだ。
「……参ったな。妹の結婚式に呼ばれるのは嬉しいんだけど、閉めるのもねぇ……」
 この店は、街で一番老舗の店だった。
 長らく旅商人として生計を立てていた女性は、旅商人として稼いだ資金を元手に、まだ街の規模が村程度だった時に店を開いた。
 それまで店が一軒もない村で、定期的に訪れる女性が生命線だったのだ。
 そして、ある時村に身を落ち着けて店を開いてくれないかと頼まれたのである。
 旅商人としての自転車操業に限界を感じていたのもあるし、出店にあたって村の援助も得られるということで、女性は快く引き受けた。
 今では店は繁盛して村に旅人やハンターたちも多く立ち寄るようになり、人が集まり村は街に発展し今では食料、服、雑貨、果ては武器防具まで、需要があれば何でも取り扱う店になっている。
 閉めてしまえば困ってしまう客が多く出るのは目に見えている。
「街の人たちに店番頼むのは……うーん、知ってる顔は全部お客さんだしなぁ。まさか客に店番頼むわけにもいかないし」
 何か思いついたらしい女性はにやりと笑った。
「うん。困った時のハンター頼みと行こうかな」
 女性はハンターズソサエティに依頼することを決めたのである。

●ハンターズソサエティ
 今日もハンターズソサエティは通常営業で、受付嬢たちが申請された依頼をさばいている。
 その受付嬢の一人、ジェーン・ドゥが上司であるエルス・モウザルの承認を得た依頼を掲示した。
 依頼の内容は、店主が別の街で暮らす妹の結婚式に出席するため店を空ける一日の間、店主の代わりに店番をすること。
 結婚式自体が一日あれば終わるので、一日を乗り越えればいいのである。
 たった一日ならば、商売の知識がないハンターばかりが集まっても何とかなるだろう。
 自分が貼った依頼を見て、ジェーンは思う。
(……まあ、普通の依頼ですね)
 少なくとも、ジェーンがわざわざ斡旋するような依頼ではないことは確かだ。
(募集人数は四人から八人まで。業務内容は、商品の陳列と販売及び補充、他は可能ならば客の呼び込み……ですか。マニュアルはあるから、それに合わせて行って欲しい、と)
 ざっと自分が経った今掲示した依頼を読んだジェーンは、掲示板に背を向けて受け付けカウンターに戻る。
 ジェーンがその依頼に目を向けることはもう無かった。

リプレイ本文

●開店準備
 早朝の時間帯、依頼人の店にハンターたちが集まっていた。
 既に依頼人の店主は出かけており、開店の準備をしている段階だ。
 一部そこそこ手馴れている様子の人物もいるようだが、おっかなびっくり手探りの様子の者もいて、店内では荒事に慣れた普段のハンターたちとは一味違った雰囲気を味わうことができた。
「この手の仕事は初めてなのですが、なぁに、エクラ教シスターたるもの人付き合いは良くねぇと。何より、たまにはこーゆー血生臭くねぇ依頼も受けねぇとですね!」
 普段は豪腕を唸らせ、力で強引に押し通るスタイルのシレークス(ka0752)だが、姿は黙ってさえいるなら清楚な聖職者である。しかもスタイル抜群の。
 今回は見た目通りに愛想を振りまき、普通の聖職者として振る舞う方向のようだ。
 普段の戦いがあるからこそ、このような穏やかな日常を噛み締められるのである。
「さーって、気張ってやりやがりますかっ。皆様、よろしくなのですよ」
「こういうのはあまりやったことないですが、何事も経験ですよね……」
 挨拶をするシレークスと、私服のスカート姿にエプロンを装着し、可愛らしく気合を入れているサクラ・エルフリード(ka2598)の目が合った。
 親友と出会ったことで表情を輝かせるシレークスに対し、サクラは驚いているようで目を丸くしている。
「とはいえ、まさかシレークスさんがいるとは思いませんでしたが…。…見た目は似合ってるんですけどもね、見た目は……」
 同じ依頼を受けた以上、一緒に働くことになったことには違いないので、サクラはシレークスを上から下まで観察した。
 どこからどう見ても、完璧に淑女である。
 サクラ自身と比べても遜色ない淑女ぶりだった。
 友人であるサクラから見ても、まさか内面がああだとは思えない擬態っぷりである。
 いや、友人であるサクラにしてみれば、外見もシレークスという人物の本質、その善性を捉えた確かな一面であると分かっているのだが。
「店番か……。ハンターやっててこんな依頼を受けたのは初めてだが……面白そうだ。やるからにはきっちりと成果を出さなければな」
 普段は戦闘などの荒事関係の依頼を受けることが多いレイア・アローネ(ka4082)だが、今回は別の食指が動いたようだ。
 開店前の店内というものは見るもの全てが新鮮なようで、先ほどからきょろきょろと周りを見回しながら商品を運んでいる。
 しかし運んでいるものは剣や鎧などの武器防具ばかりだった。
 何だかんだいって普段見慣れているものの方が手に取りやすいようだ。
 しかし密かに可愛い女の子に憧れているせいもあるのか、ちらちらと女性用のお洒落な服飾品などにも目が向いている。
 レイアは思い出したようにきびきびと動き出した。
「さて、何でも扱っている店のようだが……。うん、わからん!衣類も食料品も骨董品もよくわからん! わからんものを売るのは無責任極まりない! という訳で私は武器を売ろう!」
 服飾品に目が向いても、それを自分がつけるというのは思考の外にあるようで、可愛い女の子がそれを付けている姿を想像し、保護欲がかきたてられるレイアだった。
 そして、メイド型オートマトンが動く。
 フィロ(ka6966)だ。
「来店時間の目途がついているのですから、その時間に合わせ商品をお出ししましょう。そして情報を一番発信して下さるのは奥様お嬢様方です。来店時間帯に食料品や服飾品が多くある方がよろしいと思います」
 まずは開店直後の需要を店主から渡されたマニュアルを調べて見極め、よく売れると思われる食料品を並べていく。
「お客様の好まれるものが最低一つあることは譲れません」
 真面目にどうすれば売り上げが伸びるか考察を始めたフィロは、最終的に主婦と街娘を優先し、他の時間帯は実際に訪れる客を見て合わせることに決めたようだ。
 そして服飾品を持って倉庫へ向かっていく。
 需要が多いであろう午後を見据えて、倉庫のすぐに目につく位置に保管しておこうと考えたのだ。
 倉庫に来たついでに、自分が立てた陳列予定に合わせてスムーズに入れ替えられるよう、倉庫内の商品を取り出しやすいように整理しておく。
 さあ、依頼の始まりだ!

●営業開始
 開店した途端、大量の主婦が店内になだれ込んできた。
 主婦パワーはすさまじく、店内はたちまち陳列棚に並べられた食料品を吟味する主婦たちでいっぱいになる。
 どうやらこの店は生鮮食品が新鮮で安いことで評判らしく、ハンターに店番を頼んだから営業すると聞いて皆飛んできたらしい。
「いらっしゃいませ、なのですよー」
 商品に匂いが移らないよう注意しながら、出入り口付近などに福音の香木を焚いて礼拝堂のような清冽さを出そうとしたシレークスの試みは、大量の主婦パワーによって破壊された。
 店内の雰囲気は厳かな礼拝堂ではなく、どう考えても買い物客でごった返すリアルブルーのスーパーである。
 仲間たちが会計に追われる中、それでもシレークスは会計付近で、会計を待つ主婦たちをそれぞれの列に振り分けながら商品の種類ごとにきっちり売上を記録し、礼儀作法通りに笑顔で接して応対していたのだが、さすがに予想外だったようだ。
 一方で、自分も会計対応に追われながら、サクラは暴れるでもなく啖呵を切るでもなく、主婦の勢いに負けたのか普通に会計をしているシレークスの様子に目を見張っていた。
 そのサクラの前に、どさどさどさっとバッグが大量に置かれる。中身は全てこの店の商品である食料品だ。
 そして愛想笑いを浮かべて会計を始めるサクラへ怒涛に降り注ぐ、主婦のマシンガントーク。
 内容は旦那の愚痴からこの店を自分がいかに気に入っているか、ハンターへの感謝の言葉など次から次へと切り替わり、サクラに相槌を打つのと会計以外の作業を行う隙を与えなかった。
「……主婦の話は長かったです……。よもや此処まで大変とは思いませんでした……」
 大体の客がはけて一息つける頃には、サクラはぐったりとしていた。
 そして、九時が過ぎ食料品を骨董品に入れ変えて少しすると、裕福そうな身なりの老人が店内にやってきた。
「部屋のアンティークに武器や鎧はどうだろう? 掘り出し物の伝説の名剣が領主の目に留まるかも……」
 接客に出たレイアが自ら売り物の武器を手に、老人に武器を売りつけようと頑張っている。
 断るかと思われたが、老人はレイアの熱意に負けてその武器に美術的価値を見出したのか、興味深そうに眺め出した。
 しかし最終的には骨董品を一通り眺めるだけで、何も買わずに去っていった。
 どうやら今回は巡り合わせが悪かったようだ。
 まあ、単価が高い品物は売れる方が珍しいと考えるのが、精神衛生的にもいいだろう。
 そして再び昼の主婦ラッシュがやってくる。
 めげずに主婦に武器を売りつけようとしたレイアだが、食料品を求める主婦たちは見向きもしない。
 何とか昼の主婦たちを乗り切ったハンターたち一行は、慌てて陳列品を切り替え始めた。
 昼が過ぎれば、服飾品を求める街娘が訪れるようになる。
 その需要を狙った店内は、たちまち服飾品で溢れ返った。
 ちらほらと店内に入ってくるのは洒落た装いの街娘たちで、華やかな雰囲気の彼女たちはいかにも都会っ子といった様相だった。
 すかさずフィロが接客を始め、フィロの澄んだ声と街娘たちの黄色い声が飛び交う。
「お嬢様のお顔色ですとグリーン系が映えるかもしれません」
 色見本で説明するフィロのトークは分かりやすく、購買意欲を刺激するもので、服飾品を試着した街娘たちはほぼ必ずそれを購入した。
 フィロの客の捌き方は主婦ならば食料品として夏野菜を薦め、さらに具体的にラタトゥイユのレシピをつけて提案するなど巧みだった。
「武器好きの彼氏の気に入る一品を。武器が嫌いな男はいない」
 レイアは洒落た街娘に武器を薦めて煙たがられていた。
 熱意は凄いのだが、明らかに薦めるものが間違っている。
 そして三時が過ぎる前に、再び陳列棚の一部の商品が並び変えられる。
 兵士が来ることを見込んで、武器が並べられるのだ。
 武器防具の陳列に関してはレイアのセンスが光り、戦士だけあって兵士たちに対する魅せ方をよく心得ていた。
 本人としては客引きとして誰かを誘って剣舞でも披露しようかとも思っていたのだが、思っていたよりも陳列作業が忙しかったようだ。
 代わりに陳列が終わるまでの間、シレークスが幅広い知識と聖職者仕込みの巧みな話術を駆使し外で客引きを行って間を持たせた。
「暫くの間、わたくしがお付き合いをするのですよ」
 その結果、多くの兵士たちを店内に招き入れることに成功する。
 シレークスに対しては彼女が動くたびに揺れる何かに惹かれた可能性も無きにしもあらず、かもしれない。
 己の肉体の魅せ方を知っているシレークスの機転が成功したのだろうか。
 途中からサクラも客引きに参加していたのだが、彼女の場合は声のかけ方が怪しく、変な勘違いをして顔を真っ赤にする兵士たちを見てきょとんと首を傾げていた。
「……? 何か誤解されるようなこといいましたかね……?」
 サクラ本人には悪気がなく、むしろそれが普通の客引きだと思っている。
 さすがにそういうお店だと思われるのも困るので、きっちりと仲間がフォローしていたが、それでもサクラはいまいち分かっていない様子だった。
「最近は恋人にハンカチやブローチを贈るのも好まれているようですよ、旦那様」
 兵士たちに対しても、フィロの接客は隙なく完璧で、さすがメイド型オートマトンなだけあり、武器と一緒に恋人などの異性に贈る小物を薦めるなどの小技も利かせていた。
 フィロは誰が相手でも接客にそつがなく、安定している。
 最終的に、商品として販売していた武器はあらかた完売した。
 倉庫にはまだ残っていたが、単価が高い商品としては、十分な結果である。
 閉店間際の主婦ラッシュも無事乗り切り、この日は閉店となった。

●閉店後
「いやあ、助かったよ。ありがとうね、ハンターさんたち」
 帰ってきた店主は、どうやら結婚式で呑んできたらしく、酒臭かった。
 店主はテンションが高く、報告を聞きながら自分も酒が呑みたそうな顔のシレークスが渡した帳簿を確認して、その売り上げに喜んでいた。
 どうやら店主が思っていた以上の金額が稼げたようだ。
 上機嫌な店主は、ハンターたちのために茶と茶菓子を準備して振舞った。
 そして雑談に興じるうちに、色紙を差し出す。
「よかったら記念にサインくれないかい? 四人分用意してあるからさ。今日のお礼も兼ねて、お店に飾らせて欲しいんだ。あなたたちのこと、宣伝させてよ。とっても優しくて魅力的なハンターたちがうちの店で一時期働いてたんだよ、ってさ」
 まさかそんな提案をされるとは思わなかったハンターたちに向けて、店主は茶目っ気に笑う。
 その後店にその色紙が飾られたかは定かではないが、それからしばらく店を訪れる客たちは彼女たちは次いつ来るのかとしきりに店主に尋ねていたそうだ。
 依頼が終わった後も、シレークス、サクラ、レイア、フィロの四名目当ての客が完全に途絶えることはなかったようである。

依頼結果

依頼成功度成功
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MVP一覧

重体一覧

参加者一覧

  • 流浪の剛力修道女
    シレークス(ka0752
    ドワーフ|20才|女性|闘狩人
  • 星を傾く者
    サクラ・エルフリード(ka2598
    人間(紅)|15才|女性|聖導士
  • 乙女の護り
    レイア・アローネ(ka4082
    人間(紅)|24才|女性|闘狩人
  • ルル大学防諜部門長
    フィロ(ka6966
    オートマトン|24才|女性|格闘士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン はじめてのおみせばん
レイア・アローネ(ka4082
人間(クリムゾンウェスト)|24才|女性|闘狩人(エンフォーサー)
最終発言
2018/08/03 01:17:13
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2018/08/03 08:04:03