• 空蒼

【空蒼】願わくば、安らぎを

マスター:大林さゆる

シナリオ形態
ショート
難易度
不明
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
3~4人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2018/08/08 07:30
完成日
2018/08/13 02:05

このシナリオは5日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング


 コードネーム、OF-004。
 彼は、暴走する強化人間たちの鎮圧に加わっていた。
 仲間とは言え、暴走するならば、消し去るしかない。
 OF-004の思考は、『任務』という正当化で、強化人間たちを捕えては統一地球連合軍へと送り込んでいた。
 その後、強化人間たちがどうなるかは……推測はできるが、自分が生き残るためには『任務』を淡々と熟していくだけだ。
 それでも、世間の強化人間に対する心象は良くなかった。
 さらにも増して、最悪の事態が繰り返されていた。
 OF-004は、しばらくの間、名古屋付近の山中に隠れていた。
 何故なら、自分も『ヒト』が嫌う強化人間だったから。


 翌日。
 OF-004は愛用のヘルメットを被り、山小屋から出ると、一人の男が出迎えていた。
「……何の用だ?」
 OF-004の問いに、白い仮面をつけた男が礼儀正しく一礼する。
「私の名は、カッツォ・ヴォイ。君の生い立ちは調べさせてもらった。なかなか面白いことがあったようだな」
「……人の不幸は、蜜の味とでも言いたいのか?」
 拳銃を構えるOF-004。
 見計らって発砲するが、カッツォは軽々と回避してしまう。
 ステッキの先を地面に叩きつけて、OF-004を誘うように呼びかけていた。
「OF-004、いや、クドウ・マコトと呼ぶべきか。お前の心は、憎しみで支配されている……この私にも分かるほどにな」
「……それで、俺のことを理解したつもりか? 馬鹿馬鹿しい」
 OF-004が銃の引き金を引き、銃声が響き渡る。
 その音を聞き付けた猟犬二匹が、獣道を抜けて走り寄り、誰かに知らせるように吠えていた。
「……どうやら、邪魔が入ったようだな」
 そう告げると、カッツォは瞬間移動で、その場から立ち去った。
 猟犬二匹を山に放っていたのは、マクシミリアン・ヴァイス(kz0003)だった。
 ハンターズソサエティの依頼で『OF-004』という強化人間を探していたのは、カッツォ・ヴォイに付け狙われている可能性が高かったからだ。
「あんた、覚醒者か? 俺が危険分子だから排除しに来たってところか?」
 銃口をマクシミリアンに向けるOF-004。
「違う。OF-004、おまえを守るためだ。俺はマクシミリアンと言う」
 動じることもなく応えるマクシミリアン。
「覚醒者が、強化人間を守る? 非常識だな」
 OF-004は、冷やかに苦笑した。
 世界各地では、強化人間排除が進んでいる。
 そんな状況で、未だに強化人間を守るというならば、バッシングを受けるか、最悪は殺されることもあるだろう。
「クドウ・マコト、お前はまだ正気を保っている。それは、尋常ではない精神力だ」
「マクシミリアンとか言ったな。俺の精神力は、あんたら覚醒者に比べたら、微々たるものだ……」
 OF-004は、そこまで言うと、気を失っていた。
 度重なる緊張と疲労で、眠りに落ちていた。



 OF-004が目を覚ますと、山小屋の天井が見えた。
 どうやら、マクシミリアンがOF-004を肩で支えて背負い、ベッドまで運んでくれたようだ。
「……余計なことを……」
 悔しそうに呟くOF-004。
 ヘルメットは、古びた棚の上に置かれていた。
 テーブルには、マクシミリアンが用意していたコーヒーがあった。
「目が覚めたようだな」
 カップから、珈琲の香りが漂う。
 マクシミリアンが壁を背にして、両腕を組んでいた。
「クドウ・マコト、お前が俺たちのことをどう思おうと、それでもマコトと話がしたいという者もいる。少しは気晴らしになるだろう」
「……俺は、あんたらと話す気はない」
 OF-004は、ベッドの上で横になったまま、立ち上がろうとはしなかった。
 何もかもが、どうでもよくなってきたのか?
 自分でも、どうすれば良いのか、分からなくなってきたのだ。
 俺と話したい者がいる?
 ……暇つぶしにはなるか。
 そう思い直したのか、OF-004は少しの間だけ、ハンターたちと話し合うことにした。
「言っておくが、綺麗事なら、余所でやってくれ」
 溜息をつくOF-004であった。

リプレイ本文

 リアルブルー、名古屋の山中。
 その近郊に山小屋があった。
 マクシミリアン・ヴァイス(kz0003)が、OF-004という強化人間を保護したという話を聞き付け、四人のハンターたちが訪れていた。
「久しぶりだね。あの時は言葉を交わしただけだったが、こうして会うことができて光栄だ。私の名前は久我・御言。宜しく頼む」
 久我・御言(ka4137)が挨拶するが、OF-004は何も言わずにベッドから起き上がった。
「久しぶり、になるのかな。僕はキヅカ・リク、宜しく。お土産のスコーン置いてくね。お腹すいたら食べて」
 キヅカ・リク(ka0038)はOF-004の様子を窺いながら、テーブルの上にスコーンを置いた。
 だが、なかなか話すきっかけが掴めなかった。
 アウレール・V・ブラオラント(ka2531)も、OF-004と話し合うため、皆の出方を見計らっていた。
 OF-004は、正気を保っているように見えた。
 ならば、アウレールにとって『今』のOF-004は、人として助ける対象となる。
 だが、暴走するならば、歪虚として処理する考えもあった。
 アウレールは、人の守り手という自負があった。
 それはどこまでも内面的な、在り方についての『概念』らしい。
 歪虚が、憎み、壊し、無に帰すのならば、
 人は、受け入れ、創り、前に進む…そうあるべきだというのが、アウレールの自論だ。
 そうしたアウレールの考えを知ってから知らずか、OF-004は黙り込んだままだった。
 台所では、リーベ・ヴァチン(ka7144)がチョコマシュマロフレンチトーストを作っていた。
 マクシミリアンに料理を作ってもいいか聞いてみると、「軽い食事なら、クドウ・マコトも食べるかもしれんな」という返答だった。
「クドウ・マコト。お前、腹減ってるか?」
 リーベが声をかけても、OF-004は顔を背けていた。
 手際よくチョコマシュマロフレンチトーストを作るリーベ。
 その後ろ姿を見て、OF-004は、どこか懐かしい眼差しをしていた。
 おそらく、家族との思い出だろうか。
 出来上がると、リーベはフレンチトーストを半分に割り、まずは自分が食べ始めた。
「お裾分けだ。腹が減ってるなら食え」
 リーベが、フレンチトーストの半分を手渡すと、OF-004はしばらく考え込んだ後、受け取り、一気に頬張った。
 OF-004がフレンチトーストを食べている様子を見て、リーベが尋ねた。
「美味いか?」
「……」
 OF-004は何か言いたげだったが、やはり無言……だが、頷いていた。
 不器用なヤツなのかもと、リーベがうれしそうに微笑む。
「頷いたということは、美味いということだな」
 リーベの笑顔を見て、OF-004は躊躇いがちに話し出した。
「……あんたの名は?」
「私はリーベ・ヴァチンだ。……マコト、お前は何で強化人間になりたかったんだ? なって、願いが叶ったと思えたか?」
「……世界を守るために『力』が欲しかった……だが、力を得たからと言って、俺の願いが叶うことはないだろうな」
 自嘲気味に言うOF-004。
 願いが叶うことはない?
 リーベは真摯な表情をしていた。
「お前がどう生きたいかは、お前自身が選ぶもの。腹括れ。誰もお前の代わりはできん。運命を人に委ねるな。綺麗事で腹は膨れないし腹も立つが、お前の道はお前しか歩けないのは事実だろ」
「正論だな。もっとも、俺がこの世で一番ムカつくのは、自分自身だがな」
 OF-004の言葉に、アウレールは涼しげな顔をしつつも、言わずにはいらなれかった。
「OF-004、いやクドウ・マコト、卿は何だ。世界に絶望したか、身の上を呪うか、運命と諦めたか? ならばヒトのなりをしているだけだ。遠からず私は卿を殺すだろう」
「……ああ、殺す時が来たら、躊躇わず殺せ」
 冷やかな声で応えるOF-004。
 彼の態度に、アウレールは想定内だと判断して、話を続けた。
「そうだな、ある女の話をしよう。そいつは昔、大事なものを守れずに失った。
世界は滅び、自らは歪虚に成り果て、荒野を彷徨う宿命を負った。過去を悔やみ、己を憎み……それでもなお、希望を忘れなかった。
身を挺して戦い、命の価値を謳い、ありがとうと言って消えた。消えると知っていて、最期まで他人の未来を願っていた。本当に……バカな女だ」
 OF-004は、溜息をついた。
「……それは、その女の生き方だろう。結局、あんたも、俺がヒトでなくなったら、殺すと言った。だから、殺す時が来たら、躊躇わず殺せ」
 OF-004が、アウレールを睨み据えた。
「どんな過去を背負っていようが関係ない、と言いたかったのだが……堕ちるならそういうモノだったというだけだ。もう一度聞くぞ。卿は一体何ものだ、何になりたい? 答えられなければ探せ、そして忘れるな。そうすればきっと、望まぬモノになりはしない」
「何者と聞かれたら、強化人間と言うしかない。なりたいもなにも、すでになっている。あんたの言う『望まぬモノ』というのは、俺には理解できない」
 OF-004は、どうやら本当に分からないことは、『理解できない』という思考らしい。
 アウレールは、もう少し咀嚼してから言うべきだったかと、思っていた。
 だが、OF-004が暴走した時、どう対応すべきか、いや、彼がヒトとして望んでいるのは、少しだけ分かってきた。
 繰り返して、『殺す時が来たら、躊躇わず殺せ』と告げたOF-004。
 それは、何を意味するのか…それが、彼なりの答えなのか?
「VOIDのクソ共が…気に食わんな」
 リーベが、思わず呟く。
 彼女の声は小さく、気が付いた者はいただろうか?
 強化人間が暴走するという事件が相次ぎ、実際に消されている者たちもいる。
 そういう経緯が事実ならば、リーベには気になることがあった。
 民間人は、強化人間の『力』を恐れ、それ故に拒絶して、彼らを排除しようしている動きがあるからだ。



 リーベが話のきっかけを作り、アウレールと会話したことで、OF-004は少しずつ本音に近い気持ちを話すようになっていた。
 御言が、OF-004に対して誇りに満ちた笑みを浮かべて声をかける。
「力を得る為にどう言われて、どう考えて、どの様なものだと思い、その力を得たのかは私は知らない。けれど、それは君自身が選んだ道だ。何かのために戦うと誓った意思だ。私はそれを軽んじる事はできない」
 OF-004の想いを尊重する御言。
「今、それをどう思っていようとも、暴走の危険があろうとも、それを、後悔しているのだとしても……自ら戦う意思を決めた、何かの為に戦いたいとそう願った君の心は本物だったと私は信じる。その強さを尊敬する」
「……後悔はしていない。そんなことが言える久我が、うらやましいな」
 OF-004は、まるで少年のような顔つきをしていた。
「そうか。君は、自分の道を後悔していないのだね」
 そう言いながら、手を差し伸べる御言。
 OF-004が、怪訝な表情を浮かべる。
「なんの真似だ?」
「他の誰でもない、君と共闘がしたい」
 握手を求める御言だが、OF-004はそっけなく、手を払い除けることはしなかったが、御言の手を握り締めることはしなかった。
「悪いな。そんな気分じゃない」
 御言は、上辺だけの友愛を語る気はなかった。
「私はかつて肩を並べて戦った君を評価する。君の戦いに君の誠実さを感じている。それはとても好感を抱けるもので、いつか友として語り合えるのではないかとも思っているのだよ。だから私は、その機会を可能性のままで放り出したくはない」
「任務は『任務』として全うしているだけだ。一歩でも間違えば、命の保証はないからな。ただ、それだけだ」
 OF-004が、自分に言い聞かせるように応えた。
 それでも、御言は…だからこそ、OF-004にもう一度、伝えたいことがあった。
「クドウ君……私は、その意思を弄ぶ者が気に食わない。君はどうだろうか? その横っ面を張り倒し、拳銃を突きつけて命乞いさせたくはないだろうか? その意思があるならば私と君は同志だ。共闘を、考えてはくれないかね?」
「そういう考えはないが、今後も共闘できるかは、俺にも分からないな。俺自身、どうなるか、分からないからだ。俺が暴走しないという保証もない」
 OF-004は、苦しそうに胸を押さえていた。
「しっかりしたまえ、クドウ君」
 御言が心配してOF-004の背中を支えると、リクが『機導浄化術・浄癒』を施す。
 だが、OF-004の不調を完全に癒すことはできなかった。
「浄化術を使っても、体調が戻らない? どういうことだ?」
 熟練のハンターであるリクでさえ、OF-004を癒すことはできなかった。
「……浄化術? その技も、異世界の『力』か……」
 OF-004は深呼吸をして、自らの体勢を整えた。
 リクには、彼が救われない存在、救えなかった者達…そういう所に固執している様に見えた。
 力を手にしても、どうにもならない現実。
 自分の事が嫌いで。でも諦められなくて。
「マコト、ありがとう。僕の友達を助けてくれた。それはちゃんとした事実だから。助けられなかった僕にとって、君はちゃんとした英雄だってこと」
 リクが、穏やかな笑みを浮かべる。
 OF-004はただ黙って、リクの話を聞いていた。
「僕はオトナが大嫌いだ。諦めて、何もせず自分の事を必死で守る。それで割を喰うのはいつも僕ら子供でさ。そうなるのが嫌で、誕生日が嫌いだった」
 さらに、リクがこう告げた。
「力は強さじゃない。転移して得た力は莫大だった。けどその総量が強さじゃなかった。
色んな人に会った。過去の怨念を取り込み歪虚となっても明日の希望を託した人がいた。
何百と自分が死ぬループの中で諦めず歌っていた人がいた。
僕はその人達を救えなかった。
…そんな英雄になれない自分が今も大嫌いで」
 そこまで言うと、OF-004が、ようやく返答した。
「おまえは、相変わらずだな。大人になること自体、俺は嫌いではない。英雄になろうが、なるまいが、知ったことではないな。それで何もかも解決するなら、誰かが犠牲になる必要もない」
 リクが、目を見張った。OF-004から、そう言われるとは思ってもみなかったからだ。
「マコト、僕は…この世界の皆も、君の事も諦めたくない。それは、覚醒者だからってことじゃない。すぐに諦めるようなオトナに僕は成りたくないから。もし君が困ってたら、今度は僕が助けに来る。暴れてたら止めに来る、だから……君は独りじゃない」
 少しずつ不機嫌になるOF-004。
「……ああ、俺は独りではない。家族がいたからな。大人がいるから、子供もいる。全ての人々がいてこそ、この世界は成り立つ。好き嫌いの問題ではない。どんな感情があろうとも、惨めに思えても、生きてさえいれば、俺は…それだけで良かったんだ」
 ふと、我に返るOF-004…自分でも、こんな言葉が出てくるとは信じられなかった。
「……言いたいことは、言えたか?」
 リーベが、間に入った。どことなく、OF-004の顔色が良くないように思えたからだ。
 OF-004は冷静さを取り戻し、静かに応えた。
「まあ、ある程度はな。……言い忘れたが、あんたの料理、美味かった」
「次は、もっとちゃんとした料理を振舞いたいがな。何作って欲しいか考えておけ。生きる執念になるから」
 リーベがそう告げると、OF-004は応える余裕もなく、ベッドに寝っころがった。
 皆と話しているうちに、どっと疲れが出たのだ。
 どうにも話をする気力もなく、OF-004は眠りに落ちた。
「遊び疲れた子供のようだな」
 アウレールが、苦笑する。
 御言と言えば、OF-004が風邪を引かぬようにタオルケットをお腹の辺りに被せていた。
「クドウ君、無理はせずにゆっくり休むと良い。ここには、療養で来ていたのだからな」
「……僕は、マコトのことを知りたかった。簡単に連絡することはできないんだな……なんだか寂しいな」
 リクは、OF-004に自分の連絡先を教えるつもりでいたが、気軽に連絡し合える手段がないことに気が付いた。



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MVP一覧

  • 負けない強さを
    リーベ・ヴァチンka7144

重体一覧

参加者一覧

  • 白き流星
    鬼塚 陸(ka0038
    人間(蒼)|22才|男性|機導師
  • ツィスカの星
    アウレール・V・ブラオラント(ka2531
    人間(紅)|18才|男性|闘狩人
  • ゴージャス・ゴスペル
    久我・御言(ka4137
    人間(蒼)|21才|男性|機導師
  • 負けない強さを
    リーベ・ヴァチン(ka7144
    ドラグーン|22才|女性|闘狩人

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 質問卓
鬼塚 陸(ka0038
人間(リアルブルー)|22才|男性|機導師(アルケミスト)
最終発言
2018/08/04 10:38:11
アイコン 相談卓
アウレール・V・ブラオラント(ka2531
人間(クリムゾンウェスト)|18才|男性|闘狩人(エンフォーサー)
最終発言
2018/08/07 11:06:54
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2018/08/03 23:35:00