真夏の肝試し

マスター:きりん

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2018/08/22 12:00
完成日
2018/08/24 13:16

みんなの思い出

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オープニング

●肝試し大会
 ある村では、毎年夏になると村を挙げて恒例の肝試し大会が行われる。
 今年もその時期になり、準備と打ち合わせのために村人たちが村長の家で会議を行っていた。
「ううむ、今年はどんな肝試しにしようかねぇ。誰か意見はありゃせんか?」
 今は朝食時が過ぎた午前中。
 村長が集まった村人たちに意見を求めると、車座になった村人たちが口々に喋り始める。
「前回はどんなのにしたっけな?」
「あれだ。井戸からバケモノが出てくるやつ」
「あー、待っている間寒いし狭いしで不評だったやつだな。しかも驚かされる側も驚かす側も顔見知りだから全く怖くないっていう」
 村人たちが言っているのは、去年の肝試し大会のことだ。
 真夜中に村中に点在していくつかある井戸にお化け役が隠れ、蓋をして開けられたら驚かすという単純なものだった。
 しかし井戸の中で待つというのは中々難儀で、しかも驚かし役は衣装の関係で寒さに震えていざ驚かす時にはそれどころではないという本末転倒振りだった。
 しかもメイクをした上でも、顔を見れば誰だか分かってしまうので、心配した驚かされる側が助けようとする始末。
 お互いの様子を窺う村人たちの内心は共通していた。
 またやるのはいいが、驚かし役はやりたくない。
 話が進まないのを悟った村長が、別の意見を出す。
「……あー、前々回のはどうだ?」
「ああ、ゾンビに扮して村全体で鬼ごっこしたやつか。あれはもう肝試しじゃなかったな」
「しかも旅人に通報されてハンターがゾンビ退治にやってくる騒ぎになったしな。危うくゾンビに間違えられて殺されるところだった」
 前々回というのは、一昨年に行われた肝試し大会のことである。
 村にゾンビが発生し、それがどんどん感染していく中、村を逃げ出さなければならないという設定で、鬼ごっこをしたのだ。
 既にこの時点で驚かすという目的から離れていたが、面白ければいいと企画が通ってしまった。
 肝試しとしてはともかく、イベント自体は大盛り上がりだったのだが、たまたまイベントの途中で村に立ち寄ろうとした旅人がその光景を見ていて、勘違いしてすぐに村を離れてハンターズソサエティに討伐依頼を出したため大変な事態になり、あわや肝試し大会自体が廃止になりかけたのだ。
「今年はどうすんべ。ありきたりにしちまうか」
「でもよぉ、それもつまらんだろ」
「だなぁ。どうするかねぇ」
「下手にハンターに呼ばれそうになるなら、もう最初からハンターを呼ばねえか?」
「どういうことだ?」
「ハンターに驚かし役をやってもらうんだよ。ハンターなら、恐ろしい化け物と戦った経験もたくさんあるだろうし、真に迫った演技をしてくれるだろ」
「それはいい考えだ。ハンターなら顔見知りでもないから、きっと恐怖も倍増するに違いない」
 そんなわけで、ハンターズソサエティに依頼が届けられた。

●ハンターズソサエティ
 承認された依頼を上司から受け取った受付嬢ジェーン・ドゥは、そのまま真っ直ぐその依頼を掲示した。
 特に緊急性があるわけでもないし、きつそうな依頼でもないので、特にジェーンとしてはこの依頼に対してアクションを起こすつもりはない。
 ただ、面白そうなので当日は半休でも取って遊びに行ってみようかと考えている。
(……はてさて、どんな肝試し大会になるのやら)
 ジェーンはくすりと微笑むと、通常業務に戻っていった。

リプレイ本文

●肝試し前
 色々準備を整え後は配置につくだけとなったハンターたちは、そこでようやく村人たちから誰が一番に肝試しに来るのか伝えられた。
 その一番乗りをした者はジェーン・ドゥと名乗ったらしい。
 なお、レイアだけは村人に協力を求めるため一時的に席を外していたので、入れ違いになりこの情報が伝わっていなかった。
(あれ、驚かされ役でやってくるのって……ジェーン? ま、ジェーン相手と分かれば、多少荒っぽいことしても大丈夫だよね!)
 キャーとか悲鳴をあげて驚く姿がまるで想像できず、そもそもジェーンがオバケに本当に驚くのか疑問だった夢路 まよい(ka1328)は、冗談交じりにそう思った。
(肝を冷やす恐ろしい存在といえば……それは、魔女! 魔法少女の不倶戴天の敵、異形の化け物、それが魔女と呼ばれる存在なのです!)
 学び舎に堂々と潜み、大好きな魔法少女が立ち向かうラスボス的存在、大魔女の着ぐるみを被ってジェーンを驚かせるつもりの青峰 らずり(ka3616)は、今からやる気十分だった。
(肝試しに命でもかけてるかのような熱心さだな……。ハンターに頼んでまでやりたいのか……。私がやるのは化け物退治であって化け物の物真似ではないのだが……)
 とりあえず引き受けたからには頑張ってみようと、出発前に仲間に聞いたり本を読んだり現場を見たりなど、レイア・アローネ(ka4082)は努力をした。
(ふむ…常日頃から異形に襲われる心構えをしておこうとは……。一般人としてはなかなか見上げた心意気ですね……。わかっております! 身体には傷をつけずに出来るだけ鍛錬となるように、ですよね!)
 絶賛勘違い中でありながらも、歪んではいるが一応間違っていないともいえる認識を示した多由羅(ka6167)は、目を爛々とやる気で漲らせた。
 そんなこんなで、肝試しの会場にジェーン・ドゥがやってくる。
 さあ、依頼の始まりだ!

●ジェーンを驚かせろ!
 肝試し会場に到着したジェーンはいつもの受付嬢として勤務している時と同じ格好だった。
 仕事が終わってから直でやってきたらしい。
 入口を通り抜ける前に、ジェーンは何かを探しているようだ。
(えっと……順路図は……。あ、ありました)
 どうやら、どこから回るか考えていたようで、チェックポイントとしてカードが置いてあるという記述を熱心に読んでいる。
 読み終わると順路図に従うことにしたらしく、少しの思案の後入口を通り抜け、中に入った。

 学び舎にて待ち構えるらずりは、自作した大魔女の着ぐるみに拘りまくっていた。
 一見するとフリルのついたドレスを着た高貴な女性なのだが、よく見ると……顔に目がない。口だけでニタァと笑う姿は、明るい中で見ても肝試し要素をばっちり含んでいる。
 それが、真夜中の学び舎に佇んでいる。
 所々、歯車を身につけている姿もらずりにしてみれば押さえておくポイントの一つで、これが機械仕掛けの人形を想起させて、ホラーとしてのらしさを加速させるのだ。
 時折「ヒヒヒッ」と甲高く笑うのも、異形とはいえ魔女らしさを際立たせている。
(我ながら惚れ惚れとするデザインです!)
 らずりは、元々の魔法少女作品としてのキャラクターデザインと、それを忠実に再現した己の腕を自画自賛した。
 やってきたジェーンは佇む着ぐるみインらずりを見て仰け反った。
 どうやら驚いたらしい。
 ジェーンの前で、らずりが着たきぐるみは「ヒヒヒッ」と笑った。
 急に着ぐるみが笑い声を上げたことで、ジェーンはうさんくさい笑顔のまま逃げた。
「魔女は肝試しというより、万節の間違いじゃないでしょうかって突っ込んでくださいよー!」
 綺麗な逃走フォームで逃げるジェーンを、らずりは着ぐるみの中で自分の声が聞こえないのをいいことに追い回した。

 民家入口真正面の部屋で、手足を投げ出して仰向けの姿で転がるレイアは、特殊メイクで頭から血を流し、身体中血塗れになった状態で惨殺死体に扮していた。
 村人の協力者が、部屋のドアをバタンと音を立てて開く。
 ドアの向こうには、カードを拾った姿勢のままで、ジェーンがぽかんとした表情でレイアの方を見ている。
「……え? 死んでる? え? 本当に?」
 困惑するジェーンの声が聞こえる。
 そこでガクガクと震えて起き上がり、おかしな動きでジェーンを襲おうとするレイアは、ちょっと楽しそうだった。
 しかしそれも、相手がジェーンだと気付くまで。
(……なんでここにジェーンが!? ……お、落ち着け。ジェーンだろうが誰だろうがやる事をやるだけだ…! というかこいつ驚くのか…?)
 演じるレイアはジェーンが何故か覚醒して戦闘態勢を取ったことに気付く。
「なんてこと……! まさか、ゾンビになっているなんて……! ここは私が責任をもって処理しないと……!」
 ジェーンの表情は真剣だったが、目だけは細められて笑っている。確信犯だ。
(……なにが「ハンターなら顔見知りでないから驚かせ役にぴったり」だ……!)
 レイアは知らない。
 迫真の演技過ぎて、ジェーンは一瞬本気でレイアの身を心配してしまい、これはその結果取った彼女なりの照れ隠しなのだということを。

 多由羅は井戸の中に隠れ、ジェーンが来るのを楽しみに待っていた。
(……黒髪長髪の女にうってつけの役があるのです! 以前りあるぶるーのびでおで観ました!)
 和ホラーとして有名なアレをやろうというのである。
 そのビデオを見た時は多由羅が自分一人の犠牲で済むのならとディスクを叩き斬ろうとして周りに止められたのだが。
 先達に倣い髪を解いて白いワンピースに着替えていた多由羅は、太刀鬼霧雨を手に井戸から這い上がった。
「……」
「……」
 井戸から出た多由羅は、ちょうど井戸を注視していたらしいジェーンと目と目が合う。
 ジェーンは多由羅と、多由羅が持つ鬼霧雨を凝視している。
(大丈夫、これでも剣士のはしくれ。一般人を誤って斬ったりなどしません)
 別の意味で怖がられるということには、気付いていない様子の多由羅だった。
(……これはいつぞやの受付嬢では……? 困りました……どうしましょう……。……やる事は一つしかないですね。同じように驚かせるしかありません。ほらーが活劇にならないことを祈るばかりです……)
 くわ、と目を見開いた多由羅は抜き身の鬼霧雨を手にジェーンを追いかけた。
 割と本気でジェーンは逃げ出した。
 真剣を持ったハンターが迫ってくるのだ。ある意味当然である。

 墓地の脇にある墓石の裏に隠れ、まよいはジェーンがやってくるのを待ち受けていた。
 しばらく待っていると、ジェーンがやってくる。
 ジェーンが墓地の中に入り、ちょうどいい位置まで歩いてくるまで辛抱強く待ってから、墓地の奥のほうに、射程を延長させて魔法の火の玉を出現させる。
 視界の端に飛び込んできた人魂に勢いよく反応したジェーンは、つぶさに見つめてそれが何か見定めようとしている。
「火……? 魔術の火? それとも、本当に人魂なの……?」
 気を取られている様子のジェーンの隙をついて、まよいは背後で自分の杖に飛行魔法をかけて夜空に舞い上がった。
「い、今、背後で気配が動いたような……」
 機敏に振り返ったジェーンだったが、間一髪まよいは空の上におり、ジェーンが視線を向けた先にはいない。
 とても楽しそうな笑顔で、まよいは用意しておいたとっておきを取り出した。
 固めに作っておいたゼリー状の物体を長い紐に吊るして、ジェーンの上空を通りすぎるように飛ぶ。
 ジェーンの背中にそっと近付き、あらかじめ井戸の水で冷やしておいたゼリー状の物体を首筋にぶつけた。
 瞬間、心なしか丸まっていたジェーンの背筋がピンと伸びた。
 足先まで張り詰めんばかりの伸びようである。
 高い、乙女のような悲鳴が墓地に響いた。

●彼女の誤算
 ジェーンの悲鳴はまよいの他にも、らずり、レイア、多由羅の三名にまで聞こえていた。
「ち、違います! さっきのは恐かったわけではなくてですね、あくまで吃驚したというか、生理的嫌悪感というか! 大体まよいさんのことだって私は気付いていたんです! まさかあんな手で驚かしてくるとは思わなかっただけで!」
 必死に弁明するジェーンを、集まったらずり、レイア、多由羅、まよいの四人が生暖かい眼差しで見つめている。
 あんな可愛らしい反応をした時点で、説得力がない。
「信じてくださいってばぁ!」
 真っ赤な顔で叫ぶジェーンを置いて、彼女たちはそれぞれの持ち場へ戻っていった。
 まだまだ驚かされたい村人たちが残っているのである。
 ハンターたちの肝試し大会は、まだ終わらない。

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MVP一覧

重体一覧

参加者一覧

  • 夢路に誘う青き魔女
    夢路 まよい(ka1328
    人間(蒼)|15才|女性|魔術師

  • 青峰 らずり(ka3616
    人間(紅)|16才|女性|闘狩人
  • 乙女の護り
    レイア・アローネ(ka4082
    人間(紅)|24才|女性|闘狩人
  • 秘剣──瞬──
    多由羅(ka6167
    鬼|21才|女性|舞刀士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 覚醒肝試し
レイア・アローネ(ka4082
人間(クリムゾンウェスト)|24才|女性|闘狩人(エンフォーサー)
最終発言
2018/08/22 10:26:19
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2018/08/22 10:06:59